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[E3 2014]E3会場で「Sid Meier's Civilization:Beyond Earth」のハンズオンを体験。リードデザイナーへの単独インタビューも掲載
本作の舞台は近未来で,21世紀末に発生した「Great Mistake」(大きな失敗)により,地球上で人類の生存が不可能になりつつある状況だ。そこで異なるイデオロギーや世界観をもった複数の組織が,宇宙への「遠征隊」に投資し,地球外に見つけた“新天地”の惑星で勢力争いをしていくという流れになっている。
これまでのCivilizationシリーズでは,人類が歩んできた文明がベースになっていたが,本作では人類が「自分の進むべき道」を選び「プレイヤーの考える未来」を作り上げていくという,新たなアプローチが注目のポイントだ。
「Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth」公式サイト(※英語)
4Gamerでは,4月15日のニュースで本作の概要を紹介したが,今回は実際にプレイして分かった新情報をお伝えしよう。また,リードデザイナーのWill Miller(ウィル・ミラー)氏にインタビューを実施して,気になる部分について話を聞いてきたので,シヴィライゼーションファンは目を通してほしい。
プレイヤーの選択で惑星だけでなくストーリーも“開拓”されていく
今回,筆者がプレイしたのは,Kavitha Thakurというリーダーが率いる,おそらくインドを中心とした「Kavithan Protectorate」という勢力で,宗教と成長,文化を重視している。
そのほかの勢力として,「The Pan-Asian Cooperative」「The Peoples' African Union」「American Reclamation Corporation」といった勢力があることが判明していたが,今回のデモではさらに,オーストラリアを中心にする勢力や,スラブ系勢力の存在も確認できた。なお,プレイヤーが選択できる勢力の最終的な数はまだ決まっていないとのこと。
実際のプレイでは,地球とは生態系がまったく異なるであろう風景が広がる世界で,「Mandira」という首都を設置するところから始まる。
画面上に表示されるインタフェースやパラメータは,シリーズファンには馴染み深いものが多いという印象だ。ミニマップの位置など一部が変更されていたが,全体的にはそれほど違和感を感じることはなかった。
今回のプレイにおいて,最初に利用できるユニットは,探索を行う「Explorer」と基本兵士ユニットの「Soldier」の2種類のみだった。
Explorerを行動させると,周囲の地形が判明し,首都の近くで「入植に失敗した地球人による遺跡」を発見する。Explorerは「Sid Meier's Civilization V」(以下「Civilization V」)における考古学者のような役割も担っているようで,遺跡を発掘すると,ゲーム内通貨に相当する「Energy」を入手する代わりにExplorerは消滅した。
Soldierはその名のとおり戦闘を行うユニットだが,序盤ではエイリアンとの戦いがメインとなる。エイリアンはバーバリアンのような存在で,マップ上にスポーンしている場合はその近くにある「巣」を破壊して根絶やしにする,といった感じだ。
ちなみに本作では,これまでのシリーズで採用されていた「Tech Tree」ではなく「Tech Web」と呼ばれるシステムが採用されている。
ベースとなる「Habitation」を中心に,中央から四方八方に広がっていくようなイメージで,習得済みのものに隣接する新テクノロジーを手に入れたり,アップグレードしたりできるのが特徴だ。今回のデモでは,Habitationのアップグレードで習得できるテクノロジーが2つ,隣接するテクノロジーが5つ存在することを確認できた。
プレイヤーの選択によって次々と新しいストーリーが“開拓”されていくという「Quest」も体験できた。
筆者がプレイしたときは,10ターンほど経過したところで最初のQuest「Familiar Exotics」が発生。地球から持ち込んだ植物が惑星に適応して大繁殖しそうになっているので,それを「根絶する」か「そのままにする」かという選択を求められたのだ。
「そのままにする」を選択したところ,次のターンでその植物が進化して,何らかの資源になる可能性が高い,という結果がもたらされた。もちろん,選択によっては異なる効果がもたらされることがあるだろう。なお,Questの多くはランダムに出現するそうだ。
そして,ゲームにおいて非常に重要になってくるのが,本作最大の特徴である「Affinity」(親和性)だ。惑星の環境に自分達を適応させていく「Harmony」,環境を自分達に合わせて変えていく「Supermacy」,適応を拒絶する「Purity」というように,勢力の基本姿勢を決めるもので,「Civilization V」の社会制度をさらに煮詰めたような概念といえる。
たとえばSoldierなら,テクノロジーの方向性によって「Browder」「Sentinel」「Disciple」に分岐し,さらにそれぞれが「Marauder」「Centurion」「Apostle」へとグレードアップする模様。ゲーム内で何百年も経過すると,ほかの勢力が自分の勢力とまったく異なる外見になっている,といったことも起こり得るのである。
今回,筆者がプレイできたのは30分という短い時間だったので,本作のすべてを確認することは到底できなかったが,少なくとも序盤においては,自由度の高さと深くやり込めそうな雰囲気はしっかりと感じ取ることができた。
なお,海外の大手通販サイトであるAmazonやGameStopでは,本作の発売日は2014年12月31日予定とされている。公式サイトのリリース予定は「2014年秋」のままなので真偽は定かではないが,本作を遊べる日が近づいてきているのは間違いないだろう。日本での発売は未定だが,リリースされることを期待したい。
リードデザイナーのWill Miller氏にインタビュー
というわけでここからは,Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth(以下,Beyond Earth)のCo-Lead DesignerであるWill Miller(ウィル・ミラー)氏にインタビューした内容をお伝えしよう。今回のデモでは確認できなかった部分についても詳しく解説してもらったので,最後まで目を通してほしい。
4Gamer:
よろしくお願いします。まずは,本作におけるMillerさんの役割を教えてください。
私は,Firaxis GamesでBeyond Earthのリードデザイナーを務めています。
本作に関しては,私の同僚で友人のDavid McDonough(デイヴィッド・マクダナー)と2人でリードデザイナーを共同で担当しています。ですがDavidは,奥さんの陣痛が出産予定日より早く始まってしまって,ロサンゼルスの空港に着いた途端,自宅に引き返すことになってしまったので,会場には来ていません。
昨晩,無事に元気な男の子が生まれたそうです。
4Gamer:
マクダナーさんにも話を聞けないのは残念ですが,無事でなによりでしたね。おめでとうございますとお伝えください。
それでは早速,ゲームの話を聞かせてください。
Beyond Earthはサイエンスフィクションをテーマにしていることもあって,過去シリーズのファンにも分かりづらい部分が生まれることが予想されます。
Sid Meier(シド・マイヤー)氏は,以前から「ゲームが始まって15分で内容を理解できなければゲーマーは離れてしまう」と発言していますが,このあたりはどのようにとらえているのでしょうか。
Miller氏:
これまでのシリーズ作品では「過去の文明」をモチーフにしていたので,「火薬が発明されて戦術が変わった」ことを,プレイヤーは教えられなくても理解できました。
ですが,今回のテーマは「自分たちが築き上げる文明」なので,その部分は我々がもっとも考慮しているところです。
我々はデザイナーとして,「分かりやすいSF」から「遠い未来のわかりづらいSF」へと,プレイヤーの皆さんの興味をうまく誘導していくことが課題だと考えています。
4Gamer:
今回プレイしたデモでは,最初のターンにすべての勢力が活動を開始するのではなく,数ターン経ってから徐々に他勢力が加わってくる形になっていました。これにはどういう意図が込められているのでしょうか。
Miller氏:
ある意味実験的な要素なのですが,Beyond Earthでは0〜50ターンの間でランダムにほかの勢力が加わる,という形になっています。もちろん,後発の勢力は最初からそれなりの資源を持っているなど,弱小勢力にならないような配慮もしています。
これは,「Civilization V」が常に均一的なバランスを保ったゲームなので,それとは異なる表現をしてみたかったのが理由です。「ストラテジーゲームでありながら,すべての出発点が同じではない」ということは,開発当初から目標の一つとして掲げていました。
4Gamer:
本作で重要な要素になっているAffinityは,どのような経緯から導入されたのでしょうか。
Miller氏:
ゲームデザイナーである我々からの提言でもあるのですが,Affinityは,プレイヤーの1人1人に「人類の未来をどう捉えているのか」という,非常に哲学的な究極の選択をしてもらうものなんです。
たとえば,私の隣に何万年か前の石器時代の人がいても,外見上は「同じ人類である」と判断するのはおそらく難しくないはずです。ですが,現在は文明が驚くほどのスピードで進化していますから,1000年後の人類が今の我々と同種であると言えるのかは分かりません。
そうした未来像を大別して表現したのが,Beyond EarthにおけるAffinityの概念なんです。
4Gamer:
Harmony,Supremacy,Purityの3つですね。
Miller氏:
ええ。Harmonyは,新しい永住地となる惑星と共生,同化することで人類の存続を図ろうとする思想です。映画「アバター」におけるナヴィのような形を想像されるかし知れませんが,必ずしも現地のエイリアン達と共生する必要はありません。映画「プレデター」に登場する獰猛な地球外生命体のように,テクノロジーを進化させていくことも可能です。
Supremacyはその正反対で,工業化や機械工学といった手段で,惑星の環境を自分達の都合の良い形にすることを望む思想です。ロボットの生産やコンピュータ技術の発展などに焦点を置いています。なので,「この惑星が破壊されたり汚染されたりしたら,別の星に移ってしまおう」なんて考えているわけですね。
そしてPurityですが,これは「未来への適応の拒絶」であり,人間の力を持ってしてその尊厳を維持するという思想です。我々の歴史で言えば「狂信者」的な存在であると言えるでしょう。
4Gamer:
ユニットやテクノロジーの選択がAffinityに影響するそうですが,最終的にはいずれかのAffinityに特化する形になるのでしょうか?
Miller氏:
いえ,そういうわけではありません。たとえばHarmonyなら,Harmonyが60%とPurityが40%というような感じにもなって,Harmonyでの勝利条件を達成することはできます。
ただ,いずれかのAffinityに特化することで生産できるようになる特定のユニットなどがありますから,勢力の進化過程で,いずれかのAffinityに寄っていく選択をしていくことになると思います。
4Gamer:
一度のゲームプレイで,テクノロジーすべてをアンロックすることはできますか?
Miller氏:
プレイヤー勢力の科学開発の能力にもよりますが,最大でも全体の60〜70%くらいしかアンロックできません。
Tech Webでは,隣り合うテクノロジーは枝と枝でつながっているように見えるので「Branch Tech」,テクノロジーのアップグレードは葉っぱが重なっているように見えるので「Leaf Tech」と呼んでいます。
Branch Techのほうが研究開発に時間がかかるので,どのテクノロジーを進化させていくかで,最終的に取得できるテクノロジーの数は変わることになります。
4Gamer:
Beyond Earthでは,基本資源はEnergyとなっていましたが,これは過去シリーズにおけるGoldと同じような役割だと考えていいのでしょうか?
そうですね。Energyは施設やユニットを生産するときに必要になりますし,他勢力への輸出品として利用できるようになっています。
Energyはある意味,我々の未来に対する予想とも言えます。今後,文明がさらに成長して富が十分に分配されれば,文明に必要なのは貨幣ではなくエネルギーそのものになるのではないか,という考えに基いているんです。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,ゲーム中に古今東西のSF作品をオマージュしたようなネタは入っているんですか?
Miller氏:
いろいろありますが,せっかくなので一つだけお教えしましょう。本作には「Fungal Biome」という生物性の霧のようなものが発生します。純粋なSFとはちょっと違うかもしれませんが,あれは「風の谷のナウシカ」をオマージュしたものなんです(笑)。
4Gamer:
最後に,Beyond Earthをプレイするゲーマーに伝えたいメッセージを教えてください。
Miller氏:
Beyond Earthにおいても,小さな町から偉大な文明へと発展させていくというコンセプトは,過去のシリーズとまったく同じです。
このゲームに1つの大きなメッセージがあるとすれば,それは「過去のストーリーではなく,未来のストーリーを作るのはあなた自身」ということだと思います。
本作をプレイする皆さんには,地球文明に自分がどのような未来像を持っているのかを自分自身で発見してほしいし,それがどのようなものであっても,“楽観的”に偉大な発展を楽しんでもらいたいです。
4Gamer:
発売を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
Civilizationシリーズ公式Webサイト(英語)
4GamerのE3 2014特設ページ
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Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth
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