プレイレポート
赤ずきんちゃんがお酒を飲んで大暴れ! カジュアルに遊べるローグライク「Dragon Fin Soup」のプレイレポート
Kickstarterで目標額の約5倍となる11万9000ドルあまりの資金を集めたことでも話題となった本作。酒好きの赤ずきん「Robin」がファンタジー世界で戦うという世界設定もユニークだが,日本のプレイヤーの目を惹くのは,スーパーファミコン時代のRPGを思い起こさせるグラフィックスだろう。Grimm BrosのメンバーはローグライクゲームやJRPG好きが多いとのことで,まさに彼らの好みが詰め込まれたタイトルなのだ。
本稿では,そんな「Dragon Fin Soup」のプレイレポートをお届けしよう。なお,今回プレイしたのはPC版で,掲載しているスクリーンショットもそのプレイ中に撮影したものだ。
酒で凶暴化する赤ずきんが戦う,JRPG的ローグライク
本作の舞台となるのは,宇宙を漂う巨大なカメの背中に広がるファンタジー世界「Asura」。Robinをはじめとしたゲーム中に登場するキャラクターは,日本のアニメとアメコミのテイストをミックスさせたようなデザインになっている。戦闘や会話の状況に合わせて,画面に表示されているRobinの表情が変わっていくところや,トップダウン視点の2Dグラフィックスに,古き良きJRPGの雰囲気を感じ取れるはずだ。
マップがゲーム開始時にランダム生成されたり,プレイヤーと敵が交互に行動するターン制が採用されていたりと,基本的なシステムは,オーソドックスなローグライクゲームと同様だ。「風来のシレン」「トルネコの大冒険」といった作品を想像してもらえば分かりやすいだろう。
本作にはいくつかのモードが用意されているが,中でも特徴的なのが「ストーリーモード」だ。ここでは,Robinが失った記憶を取り戻すべく,怪物退治や護衛などといったクエストをこなしていくという物語が展開される。快活でタフな少女に見えるロビンだが,どこか危なっかしさが感じられて,実際,酒を飲み過ぎたり,攻撃を続けて受けたりすると,怒りのあまりプレイヤーの手を離れて暴走してしまうのだ。
「酒好きの少女」というのは確かに突飛な設定だが,「記憶喪失」「二面性」「暴走」といったキーワードで捉えれば,ここにもJRPGへのリスペクトが垣間見られる。“今度日本で発売される新作RPGのヒロイン”といわれても,それほど違和感はないと感じられた。
そんなRobinが活躍するストーリーも気になるところではあるが,このモード最大の特徴は「死んでもロードすればやり直しがきく」ことにある。ローグライクゲームでは,一度死ぬとアイテムや所持金などがすべてパーになって再スタートするしかない「パーマデス(永遠の死)」がお約束だが,このモードではセーブしたときの状態に何度でも戻れるのだ。一般的なRPGに近いプレイ感なので,ローグライク初心者はここからプレイするのがいいだろう。
本作にはもちろん,死んだらすべてを失ってしまう,ローグライクゲーム本来の緊張感が楽しめるモードも用意されている。それが「サバイバルモード」と「ラビリンスモード」だ。サバイバルモードはモンスターを倒した数,ラビリンスモードは踏破したエリアの広さがスコアに大きく影響してくるのだが,この2つのモードでは,キャラクターのレベルは1,かつ標準装備のスタートで,一度死ぬとゲーム進行がすべて失われてしまう(セーブやロードは可能だが,死ぬとデータが削除される)。
迷路の構造や棲息するモンスター,アイテム配置はランダムなので,テクニックに加えて運も必要だ。開始直後にモンスターの群れと遭遇し,袋叩きにされて死んだと思ったら,次のプレイでは役立つアイテムが次々に入手できて楽に進めた……といった揺らぎが実にローグライクらしい。ストーリーモードよりレベルアップやスキル習得のテンポが早いのも,プレイしていて心地いいところだ。
戦い方の幅は広い。“酒とのつきあい方”も重要
モードの紹介が終わったところで,ゲームシステムをもう少し詳しく紹介しよう。本作はターン制でゲームが進行するが,いわゆる「満腹度」の概念がないため,じっくりと時間をかけてフロアを探索できる。
モンスターを楽に倒せるほど強くなっているのに,満腹度の回復アイテムが発見できずに行き倒れ……というパターンは発生しないので,ローグライクとしてはかなりカジュアル寄りと言えるだろう。
主人公が装備する武器や防具は,ダンジョンで拾ったり,集めた素材から製作したりして手に入れる。より深くダンジョンを探索して,強い敵と戦うためには,いい装備が欠かせないのだが,落ちている装備はランダムなうえ,装備するために必要なレベルが設定されている。つまり,せっかくいい装備を拾ったり,それを作れる素材が揃ったりしても,身につけられないという状況が頻繁に発生するのだ。
ストーリーモードではこれでも問題ないのだが,死んでしまうとすべてを失うサバイバルモードやラビリンスモードでは,大きなストレスになる。ローグライクを面白くする揺らぎ要素が増えたと見るかどうかは,意見が分かれるところだろう。
武器には剣,斧,槍などの系列があり,斧なら正面に加えて左右のマスも攻撃可能,槍なら2マス先まで届くなど,それぞれが特徴を持っている。ストーリーモードなら自分の得意な武器を存分に使えるし,それ以外のモードでも,拾った武器でなんとかやりくりするのが意外と楽しい。
ショットガンや爆弾を使えば,複数の相手にまとめてダメージを与えられるが,爆弾は設置から爆発までの間に敵が逃げてしまったり,自分が爆風に巻き込まれたりといったことがあるので,注意が必要だ。
敵が爆弾を使ってくることもある。攻撃力がかなり高いうえ,サッカーボールのように蹴り飛ばしてくることもあるので,かなり危険だ。やり直せるストーリーモードなら笑って済ませられるが,ほかのモードでは洒落にならないので,即座に逃げた方がいいだろう。このあたりの緊張感は,ローグライクならではだ。
こういった装備品の中には,「マイクロビキニトップ」「バスローブ」「ブルーム」(ほうき)や,酒場での喧嘩を思わせる「壊れたボトル」,懐かしいセクシー格闘ヒロインを思わせる「赤いクノイチの着物」などといった変わり種もある。見ているだけでもなかなか楽しいのだが,装備してもキャラクターの外見が変わらないのは少々寂しい感じがした。
さて,敵を倒すには,レベルを上げていい装備を揃えるだけではなく,周囲の地形や罠を利用した立ち回りも重要だ。
モンスターたちの数は多く,むやみに突っ込むと袋叩きにされてしまう。プレイヤーだけは「斜め移動」が可能なので,囲まれそうになったらモンスターたちの間を抜けたり,ジグザグに動いて追撃を振り切ったりするといいだろう。相手の数が多い場合は,斜め移動で距離を取った後,一本道に誘い込んで一体ずつ処理するのが“定石”だ。ダメージや状態異常を与える罠はローグライクのお約束通り,敵も引っかかるので,こちらもうまく利用したい。敵を罠にはめた時の爽快感は,正面から戦って倒したときとはまた違った味わいだ。
ボス級の敵を倒すと出てくるクリスタルや,ダンジョンに落ちている巻物を拾うと,魔法を使える。どんな魔法を覚えるかはランダムなので,ここでも運頼みだ。
一般的なRPGと同様に,魔法を使うにはMPが必要となるのだが,本作のHP回復アイテムであるお酒の中には,MPを減少させる副作用を持つものが少なくない。ピンチのときは魔法で一気に形勢を逆転したいところだが,死ぬとすべてを失う状況では,どうしてもHPの回復を優先せざるを得ず,結局使えなかったりする。このあたりは実に悩ましい。
主人公と一緒に戦ってくれるペットも用意されている。ヒツジやネコといったカワイイ系から,クモやゾンビの手といったグロめのものまでさまざまだ。
ペットと戦っている敵の後ろへ回り込んでクリティカルダメージを狙うような連携プレイもできるうえ,プレイヤーと同様に経験値によって成長するので,育てがいがあるというもの。その一方で,周囲のモンスターに見境なく襲いかかって大混乱に……という場面もあって,それはそれでペットらしい。
こんな感じでモンスターと戦いながらダンジョンを進んでいくのだが,お酒を飲んだり,敵からダメージを受けたりすると,画面右下にある「怒りメーター」が上昇していく。これがMAXになると怒りモードに突入し,キャラクターがプレイヤーの手を離れて一定ターン数暴れ回るのだ。能力自体は通常時よりもアップしているようだが,ダメージは受けてしまうので,体力が少ないときの怒りモードは危険だ。
なので,怒りメーターが最大近くまで溜まっていて,体力が少ないときに,HP回復アイテムのお酒を飲むかどうかは大きな決断だ。
筆者は飲んで暴れるという選択をするほうが多かった。痛飲した後に目が覚めるとボロボロになっている,というリアル飲酒さながらの状態になるが,死ななければオーケーだ。
改善してほしい点も目につくが,今後の完成度アップに期待
ここまで説明してきたように,さまざまな要素が詰め込まれている本作なのだが,改良の余地もあると感じられた。
JRPG風のグラフィックスは,桜咲く野原,砂漠,雪原,一面クモの巣で覆われた森などの風景を美しく表現しているが,手前にキャラクターなどがいるときの透過処理が分かりづらく,慣れないうちはストレスになる。何もない空間なのに先へ進めないと思ったら,実は透過処理された木が行く手を遮っていた,といった感じだ。
前述した,装備を変更しても見た目が変わらないという仕様もそうなのだが,グラフィックスの表現力が高いだけに,残念さが目立ってしまっている。
すでに少し触れているが,素材を集めての装備製作にも少々問題があると感じられた。武器や防具には装備するために必要なレベルが設定されているということは説明したが,実は製作に必要な「クラフティングレベル」というものも設定されている。これを上回っていないと,素材が揃っていてもその装備を作れないのだ。
そのため,クラフティング要素は,何度でもやり直しが効くストーリーモードはともかく,サバイバルモードやラビリンスモードになるとほとんど使わない。クラフティングレベルを上げたところで,死んでしまえば一からやり直しだし,強力な装備品を作るには素材を二次,三次加工していく必要があるからだ。
開発側としてはストーリーモードを前提とした要素として入れたのかもしれないが,プレイする側としては,それ以外のモードで機能していないのがどうしても気になってしまう。
戦闘も,テンポ自体はいいのだが,HPが減って死にかけたモンスターは全力で逃げ回るようになるのが気になった。マニュアルにあるように,敵が逃げたときには背後から銃で撃つのが有効。近接武器と銃を併用させるのが狙いだと思うのだが,この切り替えが少し手間に感じられたのも事実だ。
操作面でも,キーボード&マウスではメニュー関係の操作が少し煩雑(ほかのローグライクゲームでは半ば常識となっているアイコンをダブルクリックしての装備ができないなど)で,ゲームパッドだと斜め入力がやりづらい場合があるなど, 改善の余地はあるようだ。
メインとなるストーリーモードに注力した結果,ローンチの段階では細かいところまで手が入れられなかったのではないか,といった印象を受けた本作だが,Grimm Brosは積極的なパッチ対応を行っており,本稿執筆中にも新バージョン「1.04」がリリースされた。持ち物を預けられる宝箱がラビリンスモードに置かれるようになり,マウスホイールで各種リストをスクロールさせられるようになるなどの変更が加えられている。
この調子なら,完成度はどんどん高まっていくはず。レトロゲームに敬意を払いつつも,意欲的なチャレンジが随所に見られる作品なので,大いに期待したい。
「Dragon Fin Soup」公式サイト
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