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水口哲也氏と飯田和敏氏がBitSummitでVRの未来を語る。飯野賢治氏の遺作「KAKEXUN」も新映像が公開
最初に話題に挙げられたのは,故・飯野賢治氏が遺した企画書をもとに,飯田氏や再結集した旧ワープのメンバーが開発している「KAKEXUN(カケズン)」の現状について。「KAKEXUN」はクラウドファンディングこそ振るわなかったが,それでも飯野氏が「マルチプレイのオンライン暗算ゲーム」というコンセプトの先に何を見ていたのかを考えながら,開発が進められているという。
壇上では,「KAKEXUN」の最新映像が上映された。最新版ではかなりビジュアルが抽象的になっており,アラビア数字や地形的な背景が描写されていた初期のイメージから大きな変貌を遂げている。一見しただけではどのようなルールなのかも分からないくらいだ。
また,「KAKEXUN」は水口氏が特異とする音と映像の“共感覚”もコンセプトに含んでいる模様で,「BGMのリズムに対し,裏拍で数字を返していくと気持ちいい」というゲームプレイの魅力が紹介された。
飯田氏は現状の「KAKEXUN」について,「思ったより『Rez』に近くなったかな?」とコメント。水口氏はそれを受けて「『Rez』は1つの大きなスタートだった」と述べ,さらに「(Rezについて)いろいろ考えています」と語った。「Rez」の精神的続編である「Child of Eden」が2011年にリリースされたように,新たなタイトルがそう遠くないうちに姿を見せてくれるかもしれない。
続く話題は,現在流行のVRコンテンツについて。早い時期からVRコンテンツの製作に携わっていた水口氏は,これまでのVRコンテンツは市場に浮き上がっては沈みを繰り返してきたが,Oculus「Rift」やソニー・コンピュータエンタテインメントの「Project Morpheus」などは,廃れて消えるものでない「戻らない波」だと確信しているとのこと。また,日本におけるVRは技術面からのアプローチが先行しているものの,VRが提唱され始めた頃のコンセプトは「どうやって人間の意識を拡張するか」という点にあり,デバイスはそのために求めれたツールであるとも語った。
「Rift」などが購入可能な価格で流通しており,UnityやUnreal EngineなどVRコンテンツを実現させられるテクノロジーが世に出ている現在。飯田氏によると,この現状は「大袈裟に言うと,人類の夢が現実化している。新章に向けて助走を切ったところ」だという。また,「こういった技術が普及した先には爆発的なVRコンテンツの拡散が起きるので,開発者はそれに懸けるといい」といった旨が両氏より述べられた。
両氏はさらに,未来のVRについても言及。片眼4Kや8Kほどの画質になったHMDや,さらに進化したUnity/Unreal Engine,視覚以外の情報を提供するVR,リアルタイムレンダリングによるサウンド表現など,そういった技術が普及すれば,商品の体験が可能な広告や,ドローンを用いた選手と一緒に泳いだり走ったりする感覚を得られるスポーツ中継などが可能になる中で,「イマジネーションの挑戦状がつきつけられる」現象が発生するとの予想が論じられた。
水口氏は,30年前にはBitSummitのようなイベントやゲームデザイナーという職種はなかったと語り,ゲームからさまざまな可能性が広がるという旨を述べた。同氏が「ルミネスII」用に作った楽曲「Heavenly Star」は大ヒットを記録し,DJライブなども行われたが,そのような曲にしても出発点はゲームあってのことだという。また,“元気ロケッツ”の楽曲にまつわる余談として,Lumiという女性の一生を小説として書き,楽曲の詞はすべてその小説から引用していること,「Child Of Eden」はLumiがこの世を去ってから200年後の話ということなど,裏設定的な部分も明かされた。
飯田氏の手掛けた「巨人のドシン」や「アクアノートの休日」こそVR向きのタイトルだという水口氏は,話の流れで「アクアノートをVRでやってほしいんだよね」と飯田氏に要望を投げかけた。すると飯田氏は「やりますよ」と即答。さらに,水口氏が自身の活動について「今年の年末から来年くらいに新しい発表ができるかな」と語ると,それについても飯田氏は「僕も来年何かやります」と言い,「BitSummit 2016」への出展に意欲を見せた。
「BitSummit 2016」の頃は,「Rift」やHTC製のHMD「Vive」が発売された後となり,VR技術を取り巻く環境はまた変化しているだろう。そういった世界に向けてVRに造詣の深い両氏が投じるのはどのようなコンテンツなのか,今後も注目したい。