レビュー
初の拡張パック「RoS」が本編の不満点を見事に改善
ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ アルティメット イービル エディション
残念ながらPC向けの日本語版は登場していないが,PlayStation 3向けの日本語版「ディアブロ III」がスクウェア・エニックスから2014年1月30日に発売され,8月21日には,本編とRoSがセットになった日本語版「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ アルティメット イービル エディション」がPlayStation 4とPlayStation 3向けにリリースされた。テキストだけでなく,ボイスまで日本語化されているので,言葉の問題でPC版に手を出しづらい人にもプレイしやすい内容となっている。
本稿では,PlayStation 4版「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ アルティメット イービル エディション」をプレイしたうえで,RoSによってDiablo IIIがどう変わったかのレビューをお届けしよう。また,筆者はPC版の経験もあるので,コントローラでの操作を始めとするコンシューマゲーム機版のプレイ感についても紹介したい。PC版からの乗り換えを考えている人に参考にしてもらえれば幸いだ。
レビューに入る前に,Diablo III本編がどのようなゲームかについて簡単におさらいしておこう。基本的なシステムについては発売直後に掲載したインプレッション記事に詳しいが,本作はアクションRPGのなかでも,アイテム(装備品)の収集,いわゆるトレジャーハンティング(以下,トレハン)に重点が置かれた作品となっている。
ステータスの振り分けが廃止され,スキルの組み直しも自由な本作では,育て方によってキャラクターの性能が変わるということがまずない。おまけにレベルキャップへの到達が比較的容易(カンストしてからが本番との声も多い)なので,「レベルを上げて殴る」も通用しない。
結果として,所持している装備品の強さと,その選び方がダイレクトにキャラクターの強さに反映されるのだ。面倒な要素を極力省いたうえで,戦闘とトレハンを堪能してもらう,というのが開発側の意図なのだろう。
PC版の発売直後は,まだそれほどのボリュームがないコンテンツを長くプレイしてもらうためなのか,難度が高めに設定されており,前述したように最高難度「インフェルノ」のシビアさはかなりのものになっていた。
だが,幾度ものアップデートとRoSのリリースによって,「レアアイテムを集めるゲーム」という方向性を維持したまま,問題点がほぼ解消された印象だ。以下でそのRoSによる改善部分を見ていこう。
新章Act5に加え,新たなクラス「クルセイダー」も登場
RoSで最も目を惹く追加要素は,なんといっても新章となるAct5だろう。「Diablo III」本編でプレイできるAct4までの物語では,主人公が悪の帝王をすべて倒し,世界に平和が訪れるまでが描かれたのだが,Act5では,死を司る天使「マルサエル」が,封印された悪の帝王の魂を我が物にしようと動き出したことで,つかの間の平和が破られる。
プレイヤーはマルサエルの襲撃を受けるウェストマーチへと赴き,その野望を阻止するために戦うことになる。
新たな物語もさることながら,レベルキャップが60から70へと引き上げられ,それに対応するスキルやアイテムが追加されたことも,これまで本編を楽しんでいたプレイヤーにとっては嬉しいポイントだろう。とくに,レベル61以上向けの装備が解禁されたことの影響は大きく,「強い装備が次々と手に入る」というテンポの良いプレイを久々に堪能できるはずだ。
また,6番目のクラスとなる「クルセイダー」が追加されたのも見逃せないポイントだ。クルセイダーはザカラム教団に仕える戦士という設定で,重厚な甲冑を身にまとい,巨大な盾を構える,防御重視の前衛職である。
全体的なスキル傾向は,攻撃と同時に体力や憤怒(MPのようなもの)を回復するといった攻防一体のものが多い。また,盾を投げつけて攻撃するような,ほかのクラスにはない技も多数用意されている。面白いところでは,「両手武器を片手持ちにしたうえで,空いた左手に盾を装備する」というパッシブスキルもあるなど,とにかく盾の使い方が重要になる職業という印象だ。
ストーリークリア後のお楽しみ,アドベンチャーモード
さて,RoSのリリース前に本編を遊び尽くしてしまったようなプレイヤーは,Act5もすぐに終わり,レベルも70でカンストして……と,早晩やることがなくなりそうだと思っているかもしれない。しかし,RoSにはそのあたりを見越した新モードが追加されている。
Act5のクリア後にプレイできるようになる「アドベンチャーモード」は,クエストをこなしながら各ステージを自由に冒険できるというもの。ストーリークリア後のやりこみ要素といった感じで,具体的には以下のような内容になっている。
このように,「報酬クエストをこなす」「各種報酬を集める」「リフトに突入する」という流れになるのだが,これがなかなか楽しい。ポイントは,ただ漫然と狩場を周回するトレハンとは異なり,要所要所で「リフト」や「箱」といった,より大きなチャレンジの機会が用意されていることだ。
この挑戦の機会は「報酬クエスト」をこなせば確実に与えられるため,苦労が無駄にならないというのも嬉しい。また,クエストやリフトで冒険するマップはさまざまで,行く先々で起こるイベントにもランダム性があるので,プレイに変化が生まれ,作業感や徒労感を感じる場面が減ったように思う。
「ホラドリムの箱」や「血の破片」などで,モンスターを倒さずにアイテムを集められる方法が追加されたのもありがたい。「ボスドロップは散々だったけど,溜め込んだ血の破片で一山当てる」といった“気分転換”になるためだ。もっとも,本当に一山当てられるかは運次第だが……。
運任せでなく,自分の好みをキャラクターへ反映可能に。難度周りの不満も解消
RoSでは「秘術師」(Mystic)という職人が追加されたことで,ゴールドと素材を消費して装備品のさまざまな「特性」を付け直せる「特性の変更」(Enchant)が可能になった。つまり,「手持ちの装備を改良する」という要素が追加されたのである。ただし,特性は自由に変更できるわけではなく,次のような制約がある。
(1)一つのアイテムにつき,付け直せる特性は一つだけ。
(2)付け直す特性は,ランダムに表示される2つと,変更前の特性の3つから決める。選ばれる可能性のある特性の一覧は事前に確認できる。
(3)特性の変更は何回でもできるが,2回目以降は,すでに変更済みの特性しか変更できない。また,繰り返すほどに素材とゴールドの必要量が増える。
装備に複数ある特性のうち,1つしか変更できないので,思い通りの装備を作るといったことはできないが,1つの特性を変えるだけで“化ける”ような装備に再チャレンジのチャンスが与えられたというのは非常にありがたい。振り直しの結果がどうなるかには依然として運が絡むが,溜め込んだ素材とゴールドを投じるに値するような魅力的なギャンブルに仕上がっているといえるだろう。
RoSでは,通常のレベルがカンストしたキャラクターに用意される「パラゴンレベル」にも修正が加えられた。
パラゴンレベルは通常のレベルと同じように経験値を溜めて上げていくもので,レベルアップ時にキャラクターのステータスが上昇するという点も同様。新しいスキルやルーンが開放されることはないが,レベルキャップに到達したキャラクターの強さを底上げできる。
RoSでは,パラゴンレベルがアップしたときのステータス上昇をある程度自由に振り分けられるようになった。また,レベルが使用する全キャラクター共通のものになり,2人目以降のキャラクターの育成がやりやすくなっている。さらに,レベルの上限も撤廃された。1レベルあたりに得られる恩恵は微々たるものだが,運に左右されるドロップとは異なり,確実に成長を実感できるというのはやはり嬉しいところである。
PC版リリース直後に問題となった難度周りのシステムについても,RoSでは大きくメスが入れられている。従来の難度設定は「ノーマル」「ナイトメア」「ヘル」「インフェルノ」という4つの大きなモードから1つを選び,それぞれに用意されている「イージー」から「マスターV」までの8段階の難度(PC版では10段階のMonster Power)を設定するという仕組みで,1つ上のモードに挑戦するためには,シナリオを一周する必要があった。つまり「インフェルノ」に挑戦するためには「ノーマル」「ナイトメア」「ヘル」を順にクリアする必要があり,何周もするのが醍醐味のゲームとはいえ,この仕様はさすがに面倒であった。
これに対してRoSではモードが廃止され,「ノーマル」「ハード」「エキスパート」「マスター」「トーメントI〜VI」の10段階から難度を選ぶという方式になった。上位の難度は周回をせずとも条件を満たせばアンロックされるので,常に自分に合った難度でプレイできる仕組みになっている。また,一度アンロックした難度は,別のキャラクターでも選択可能になっており,複数のキャラクターを育てるのも快適になった。
コントローラでの操作に合わせて作り込まれたコンシューマゲーム機版。完成度は非常に高い
最後になったが,PC版とコンシューマゲーム機版の違い,とりわけ移植後の操作感の変化について触れておこう。「Diablo III」はキーボード+マウスでの操作を前提とするPC向けに開発された作品なので,コンシューマゲーム機へ移植されると聞いて「コントローラでDiablo IIIがプレイできるのか」と不安を覚えたのは筆者だけではないはずだ。
まずは操作面から見ていこう。結論を先に言えば,アクションゲームとしての操作性は,いくつかの問題こそあるものの,基本的にコンシューマゲーム機版のほうが上と感じられた。筆者がプレイしたPS4版では,移動が左スティック,攻撃用の6種類のアクティブスキルが[○][×][△][□][R1][R2]にそれぞれ割り当てられている。PC版では左クリックに移動と攻撃(プライマリスキル)が割り当てられており,移動したつもりなのに攻撃してしまうといったミスが起きることもあったが,コンシューマゲーム機版では移動と攻撃の操作が完全に切り離されているので,確実な操作が可能になっている。
また,コンシューマゲーム機版には,PC版に存在しなかった「回避」というアクションが,右スティックに割り当てられている。これは,アクションゲームでよくあるローリングによる回避動作で,ノーコストで使用可能だ。「強力だが,きちんと操作すれば避けられる」というボスやエリートの攻撃を一発で回避できて,非常にありがたい。
ただし,「回避」で移動できる距離は短く,さすがに敵をすり抜けられはしないため,囲まれてしまった場合は従来からある回避用のスキルを使ったほうがいいだろう。
攻撃については,キャラクターが向いている方向の敵が自動でロックオンされ,そこに攻撃が飛んでいくようになっている。これはこれで便利ではあるのだが,マウス操作と異なり,ピンポイントで対象を選ぶのはやはり難しい。とくに困るのが「集団の奥の方にいるエリートを狙って攻撃したい」という場合で,そういった場合は先に前衛の集団を倒す必要がある。
このような操作性の違いは,ある程度ゲームバランスの調整によって補われているようだ。筆者が感じたところでは,コンシューマゲーム機版はPC版に比べて一度に出現する敵の数がやや少ないが,ドロップの質は良いようだ。
また,UIもコントローラでの操作に最適化されており,全体としてはベタ移植ではなく,丁寧に作り込まれている印象だ。
RoSでは「レアアイテムを集めるゲーム」という「Diablo III」のコアの部分を守りつつ,アドベンチャーモードでトレハンの楽しみ方が増え,秘術師やパラゴンレベルによってアイテムドロップに頼らずにキャラクターを強化することも可能になった。難度が高く,自由度があまりないという,非常にストイックだった本編に比べ,自分の意思をより反映できるようになった印象だ。新章や新クラスも追加され,さらに遊び甲斐が高まったと言えるだろう。
RoSはぜひとも導入するべき,完成度の高い拡張パックだ。「無印はやったけど,なんか違ったんだよね」という人はもちろんだが,シリーズに触れたことがない人にとっても,本編とRoSがセットになり,さらに日本語化もされている「アルティメット イービル エディション」があるので,ゲームの世界へ入りやすいはず。これを機に天使と悪魔の戦いに参戦してみてはいかがだろうか。
「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ アルティメット イービル エディション」公式サイト
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(C) 2014 Blizzard Entertainment, Inc. All rights reserved. Diablo, Reaper of Souls, Ultimate Evil Edition, Blizzard, and Blizzard Entertainment are trademarks or registered trademarks of Blizzard Entertainment, Inc., in the U.S. and/or other countries. All other trademarks referenced herein are the properties of their respective owners.
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