プレイレポート
ついに発売された「ディビジョン」のレビューをお届け。荒れ果てたリアルスケールのニューヨークでは,多数のミッションと容赦ない暴力がプレイヤーを待つ
小説家トム・クランシー氏の名を冠する完全新作というだけでなく,無政府状態となった「崩壊後のニューヨーク」が,ゲーム内でそのまま再現されるということでも大きな注目を集めた本作。この日を待ち望んでいたゲーマーも多かったことだろう。2月に実施されたオープンβテストでは全機種累計で640万人が参加し,改めて期待の大きさが明らかになったわけだが,ついにそのすべてをプレイできるときが来たわけだ。
4Gamerでは,すでにクローズドβテストおよび,オープンβテストのプレイレポートを掲載しているが,今回はPlayStation 4の製品版をプレイしてみたので,改めてそのプレイフィールと魅力をお届けしたいと思う。カオスと化したニューヨークに飛び込むかどうか迷っている人は,参考にしてほしい。
「ディビジョン」公式サイト
秩序が完全に失われ,地獄と化したニューヨーク
今こそ「ディビジョン」の力が必要だ
冒頭でも書いたように,ディビジョンの舞台はアメリカ合衆国のニューヨークだ。アメリカ経済の中心として知られ,タイムズスクエアやブロードウェイなど,世界中の人々が訪れる観光地でもあるこの都市が,本作では実物大のオープンワールドとして構築されている。
インフラが破壊され,利用できる乗り物などはないので,ファストトラベルを除けば基本的に徒歩で移動するしかないが,しばらく歩いてみると,その広さに圧倒されるはずだ。一部の建物は内部も作られていて,さらに地下道や地下鉄部分も存在する充実ぶり。隅々まで探索するにはどれだけの時間が必要なのか,ちょっと想像がつかないほどだ。
さて,ゲームを開始して簡単なキャラクターメイキングを終えると,さっそくプレイヤーはブルックリンに降り立つ。多少郊外とはいえ,あのニューヨーク。さぞ多くの人で溢れていそうだが,前述のとおり,ここはすでに正常な状態ではない。
本作のニューヨークは,現実のきらびやかな観光地としてのイメージとはまったく逆の,完全な無秩序状態と化している。至るところに無人の自動車が放置され,回収されないゴミは散乱し,店舗は閉鎖され,道路には死体が平然と転がっている。ある科学者によって引き起こされたウイルステロの震源地となったこの街は,街並みこそかつての姿を留めているものの,その機能は完全に失われている。治安維持組織は集団化した犯罪者にまったく歯が立たず,本拠地すら暴徒に乗っ取られる寸前。
プレイヤーはそんなニューヨークを救うため,特殊機関「ディビジョン」の一員として,ウイルステロの収束と犯罪者集団の排除を目指し,秩序を取り戻すために困難な任務を果たしていかなければならない。
ゲームシステムは三人称視点のアクションシューターとなっており,ディビジョンの拠点やセーフハウスでミッションを引き受け,敵拠点の破壊や人質の救出,テロに使われたウイルスの解析などをこなしていく。ミッションをクリアすると取得できる経験値によってキャラクターのレベルが上がるほか,クレジット(お金)や,より強力な装備などのアイテムが入手できる。
パッと見はTPSそのものの本作だがRPG要素も強く,実際,自分より高レベルな敵は耐久力や攻撃力が非常に高いため「押し切られる」場面が多い。たとえ射撃やカバーの腕前に自信があっても,それだけでゲームを進めるのは相当に厳しい。そのため,プレイヤーは物語の進行と,キャラクターの強化を並行して進めていく必要があるのだ。
規模が大きい作戦は「メインミッション」と呼ばれ,道程が長いだけでなく敵も多く,さらに名前があるボスが最後にいるなど,より困難な戦いを強いられる。ストーリーを進めるにはこれを避けては通れないが,一方で報酬も多く,拠点の施設がアンロックされるなどリターンも大きいので,とりあえずはこのメインミッションを順次クリアしていくことが目的になっていくはずだ。
メインミッションは難度が高いだけでなく,通常のミッションと違い演出も凝ったものが多いので,ぎりぎりでクリアできたときの嬉しさもひとしお。どうしてもクリアできないときは,手近な通常ミッションをこなしてキャラクターを強化するか,後述するオンライン要素のCo-opプレイで味方と協力するのも一つの手だ。
充実したキャラクターの強化要素
装備やアビリティを駆使して手強い敵を撃破しよう
前述のとおり,ディビジョンのキャラクター強化要素にはレベルと装備があるが,このほかにも,拠点に存在する「医療棟」「技術棟」「防衛棟」をアップグレードすることによって「アビリティ」が使えるようになる。
アビリティはプレイヤーキャラが使える特殊能力のことで,任意のタイミングで繰り出せて戦闘が有利になる「スキル」,スロットに装備するとさまざまな能力が追加される「タレント」,アンロックするだけでキャラクターが自動で強化される「PERK」の総称だ。どれも非常に強力だが,スキルやタレントは装備できる数が決まっており,これをどう組み合わせるかで,そのキャラクターの強さや有効な立ち回りが決まるといっても過言ではない。
種類は非常に多く,組み合わせ方に関してはほぼ無限にあると言えるが,攻撃に特化してとにかく敵を素早く片付ける,回復や防御手段を充実させて安全を優先する,マルチプレイで味方のサポートに徹する……といったテーマを決めて選んでいくのも面白いだろう。
これらの施設のアップグレードにはクレジットではなく,メインミッションや「エンカウント」と呼ばれるミッションのクリア時に取得できる,施設ごとの「物資」が必要になる。当然,少しでも早く強くなるため,積極的に物資を集めていきたいが,エンカウントで入手できる物資は多くない。逆に,多くの物資を入手できるメインミッションは,敵が強く,非常に遠い場所にあって容易に挑戦できなかったりと,なかなかもどかしい。
そういうときは,とりあえず別の棟の強化などに励んでいると,いつの間にかレベルが上がって楽にメインミッションに挑戦できるようになっていたりするので,“急がば回れ”の精神で進めていくのも悪くない感じだ。
装備は基本的に,装着するのに必要なレベルが高いものほど強力。レアリティが高く,入手困難なものには特殊な能力が備わっているが,性能はランダムで個々のばらつきが大きく,なかなか狙ったものは出ない。とくに防具は種類が多いだけなく,それぞれに「銃器」「スタミナ」「電子機器」といった値が設定されており,「防御力は上がるがHPは全然増えない」とか「HPはグンと増えるが,前の装備に比べてスキルパワーが一気に減る」といった状況がしょっちゅう発生する。
それだけに組み合わせも重要で,場合によっては「強力な装備が手に入ったけど,今装備しているものを外すとHPが減りすぎて危険なので,それを補える防具がゲットできるまであえて装備しない」といったバランス感覚が必要になることも。望みどおりの装備が手に入ったときはテンションが上がり,思わずガッツポーズが出てしまうこともしばしばだ。
装備は敵がドロップしたり,街中に隠されているチェストから入手したりできるが,ミッションをクリアすると入手できる「設計図」などを元に,自分で好きなものを作ることも可能だ。作業は拠点にある「クラフトステーション」で行い,材料は「武器パーツ」や「布」といった形で落ちていることが多いが,手持ちの不要な装備を「分解」すれば材料にできる。これらの装備は手間がかかるぶんだけ強力なものが多く,狙った装備をなかなか入手できない,筆者のような運の悪いプレイヤーには嬉しい要素だ。
とはいえ,不要な装備は店に売ることもでき,そのクレジットで強い装備を買うという選択肢ももちろんある。店に何が並ぶかはランダムなので,装備を材料にしすぎると,いい装備が買えそうなときにお金が足りない……といったことも発生してしまう。アイテムを持てる数には限界があるので,店に強力な装備が出ることを期待して金に換えるか,確実に作れるクラフトアイテムを優先して材料にするかが悩ましい。
マルチプレイ要素はCo-opとPvPの両方を完備
どちらもゲームをいっそう盛り上げる
本作はオンライン専用のタイトルであるため,ソロプレイでもネットワークへの接続が必須となっており,プレイヤーのデータは基本的にすべてサーバー側で管理されている。セーフゾーンに入れば,ほかのプレイヤーが何人も表示され,「数多くいるエージェントの中の一人」というシチュエーションを自然と感じられるはずだ。とはいえ,ほかのプレイヤーと何かの関わりが必須というわけではないので,ソロでじっくりプレイしたい人も安心してほしい。
マルチプレイの基本となるCo-opでは,最大4人のパーティでマップの各所に存在するミッションをクリアしたり,より困難なメインミッションに挑んだりすることができる。通常のミッションは,あまり難度が高くないお手軽なものが多いので,野良パーティはもっぱらメインミッション目的で組まれている印象だ。サブミッションは,気心が知れたフレンドとワイワイ楽しみながらプレイするのに向いているだろう。
Co-opプレイは味方が増えるぶんだけ火力も高くなり,あまり頭が良くないNPCと一緒に戦うのと違い,高所に回り込んだり,スキルで一気に攪乱したりとプレイの幅がグンと広がるのが面白い。スキルには派手なものも多いので,戦場が一気に華やかになるのも見どころの1つだ。また,マップは全体的に広めなので,狭い場所でひたすら味方と一緒にカバーと射撃を続ける,といったプレイになりにくいのも嬉しい。
だが,敵も数が増えて強力になるので,一概に楽になるというわけでもない。ステージによっては通常の「ノーマル」難度でもぎりぎりまで追い込まれたり,意外とあっさり全滅したりと,気が抜けない戦いが繰り広げられることも珍しくない。場合によっては,前述のアビリティをよりチームプレイに向いたものに変更するなどの工夫が必要になってくるはずだ。
マルチプレイのもう1つの目玉が,PvPエリアでもある「ダークゾーン」だ。汚染が酷く,壁に囲まれ外界から隔離されたこの区域は,より強力なNPCの敵が多数出現するだけでなく,プレイヤーであるエージェント同士の戦いすら平然と行われ,まさに「カオス」としか言いようがないエリアとなっている。しかもストーリーの進行上は足を踏み入れる必要はなく,完全に自己責任で立ち入る場所という扱いだ。
では,なぜ多くのエージェントがダークゾーンに飛び込んでいくかといえば,ここでしか入手と使用ができない「DZファンド」という通貨や,より強力な装備が高確率で入手できるからだ。ダークゾーンには強力な装備を売っているショップが各所にあり,ここで買い物をするにはDZファンドを使うしかない。また,敵がドロップするアイテムも,よりレアリティが高いものが頻繁に出現し,運が良ければあっという間に装備を調えることができる。もちろん,人間同士の気が抜けないシビアな戦いができるというのも,魅力の1つだ。
だが,当然ながらリスクもかなり大きい。まず,ダークゾーンで倒されるとせっかく入手した装備やDZファンドを落としてしてしまうので,なるべく死を避けなければならない。それを狙った「ローグエージェント」(=ほかのプレイヤー)はそこら中に跋扈しており,運が悪ければ何も入手できずに何度も倒されることも珍しくない。さらに戦闘中はダークゾーンから抜けられないので,敵に出会ったら倒すか逃げ切るかしないと,安全に戻ることすらままならないのだ。
また,いくら戦闘で勝利してもダークゾーンでは通常のレベルは上がらず,「DZランク」というダークゾーン内でのランクが上がるだけなので,低レベルで長期間こもっていても,そこまでキャラの強化につながるわけでもない。ダークゾーンはあくまで「トレジャーハント」の場所なのだ。
さらにそのトレハンも,一筋縄ではいかない。ダークゾーンで入手したアイテムは汚染されており,その場で装備したり,そのまま持ち帰ったりすることはできない。マップに固定配置された「回収地点」に移動してフレアで回収班を呼び,その場で待機したあと,飛来してきたヘリにアイテムを装着してはじめて自分のものにできる。しかも,これらの行動は同じダークゾーンで活動するエージェントにすべて筒抜けで,お宝が手元にあることを全員にアピールしているに等しい状態となってしまう。回収のタイミングは,まさに「ここで襲わずに,いつ襲うの?」というシチュエーションなわけだ。
実際,この回収地点は激戦の舞台になる確率がかなり高く,筆者もアイテムを奪われた回数をあまり思い出したくない。ヘリを呼んだあとにローグに襲われ,そのままそのヘリで「ついさっきまで自分ものだったアイテム」を回収されてしまうこともあり,その精神的なインパクトはなかなかのものだ。逆にローグエージェントを返り討ちにすると,いいアイテムが入手できる可能性もある。まさにこのタイミングがダークゾーンの醍醐味でもあり,筆者を含め多くの人が熱くなってしまうのだ。今日も回収地点で,激しい戦いが繰り広げられているはず。
なお,Co-opプレイとダークゾーンへの進入は,PS4版ではPlayStation Plusへの加入,Xbox One版ではXbox Liveゴールドメンバーシップへの加入が必要となる。マルチプレイを存分に楽しみたい場合は,忘れずに準備しおきたい。
ソロプレイとマルチプレイが見事に融合した良作
カオスと化したニューヨークで暴れ回るなら今だ
本作は一見すると,射撃や立ち回りの腕前が重要視されるハードなTPSのように思われるが,実際は装備やスキルにキャラクターの強さが大きく左右される,かなりカジュアルなアクションゲームだ。敵も味方もヘッドショットの一撃で死ぬような事態はほとんどなく,強力な敵などは,かなり弾丸を撃ち込まないと倒すことはできない。もちろんテクニックを駆使すればより有利に進められるが,筆者のように腕に自信がない人でも,レベルを上げて装備を充実させれば十分に楽しむことができる。
街中に無数に用意されているミッションをクリアし,徐々に施設をアップグレードして,クレジットや素材で装備を充実させる……といった一連の流れは,まさにRPGと言っていいだろう。キャラクターを強化してニューヨークの奥地に進み,セーフハウスを手に入れてプレイ可能なミッションを増やし,より強いアビリティをアンロックするというサイクルが非常に楽しい。Co-opプレイでは味方が増えると同時に敵も強化されるため,ソロプレイとは違ったスタイルの戦いが楽しめるのもポイントだ。
PvPエリアのダークゾーンは,リスクとリターンがかなりはっきりした形で調節されていて,ソロやCo-opとはまったく違う立ち回りが必要とされる。強いアイテムが少しでも早く欲しいなら進入したほうが有利だが,確実にアイテムが手に入るわけではないし,トレハンに特化している関係で装備以外の能力は伸びない。そもそもダークゾーンへ侵入するかどうかは任意であり,あくまでゲームをより刺激的にするスパイスといった立ち位置なわけだ。
PvPには抵抗がある人もいるはずなので,このあたりが完全にプレイヤーの選択に任されているのは,個人的に好感が持てた。ただ,アイテム回収時の攻防など熱くなれる要素は多いので,興味があるなら飛び込んでみるのをお勧めしたい。
プレイしていて気になったのは,オンラインが必須であるゲームデザインの関係上,サーバーにトラブルが起きるとソロプレイにも影響が出てしまうことだ。とくに,筆者がプレイしたのが発売直後のタイミングということもあってか,たびたびサーバーが不安定になって,敵のワープや弾丸が発射されないといった現象が散見され,時にはゲームが動き出した直後に死んでいたといったトラブルに見舞われた。現在は安定に向かっているようだが,時間帯によってはログインの順番待ちが発生するなど,完全に解決したわけでもないようだ。
とはいえ,ソロプレイでも十分に楽しめるシステムにしたうえで,マルチプレイに参加すればより楽しめるという「ソロとマルチのシームレスな融合」はなかなか見事だ。あとちょっとで新たなスキルをアンロックできそうなときは,筆者も仕事を忘れて「もうちょっと!」とプレイを続けてしまうこともあった。
キャラクターの強化が大きなウェイトを占めているので,純粋な立ち回りや射撃の精度を重視する人には若干物足りないかもしれないが,逆に普段はFPSやTPSをあまり遊ばない人でも,十分楽しめるのではないかと思う。圧倒的なスケールでプレイヤーを待つ,荒れ果てたニューヨークに,ぜひ足を踏み入れてみてほしい。
「ディビジョン」公式サイト
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(C)2016 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Tom Clancy’s, The Division logo, the Soldier Icon, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.
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