テストレポート
「Surface Pro 3」テストレポート。アスペクト比3:2の液晶パネルを搭載する第3世代SurfaceはWindowsタブレットとして洗練されたものに
同日に都内で開かれた製品発表会では,MicrosoftでSurface&Windows Hardware担当マネージャーのBrian Hall氏が登壇し,ハードウェアの特徴を中心とした説明が行われている。
本稿では,発表会の様子を交えつつ,Surface Pro 3のテストレポートをお届けしよう。なお,製品ラインナップや価格については,以下のニュース記事を参照してほしい。
日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏(左)は,「ヤバい!スゴイ!」と直感的すぎる表現でSurface Pro 3をアピール。Brian Hall氏(右,General Manager,Surface and Windows Hardware Sales and Marketing,Microsoft)はSurface Pro 3をかっこよく掲げて,その薄さをアピール |
「Surface Pro 3」の国内発売は7月17日,価格は9万1800円からに決定。2160×1440ドットの高解像度液晶を搭載するMicrosoft純正タブレット
薄さと軽さがSurface Pro 3第一の魅力
まずサイズと重量から見てみよう。第2世代機である「Surface Pro 2」は,10.6インチサイズの液晶パネルを採用し,本体サイズは275(W)×173(D)×13.5(H)mm,重量は約907gであった。サイズはともかく,10インチ級のタブレットとしては,当時としても分厚く重いほうだったのが弱点だと,発表当時のテストレポートでも記したものだ。
一方,Surface Pro 3は,一回り大きな12インチサイズの液晶パネルを採用している。液晶パネルが大きくなったことで,本体サイズは292(W)×201.3(D)×9.1(H)mmと,フットプリントこそ大きくなったものの,Surface Pro 2と比べて3割もの薄型化を実現しているのが大きなポイントといえよう。
さらに重量も約800gと,Surface Pro 2よりも1割以上の軽量化を実現している。手に持って使うことの多いタブレットでは,この軽量化は素直に歓迎したい。
フットプリントは大きいのに薄型軽量化されたとなると,堅牢性が気になってくるところだ。
筆者は厚さ8.9mmの「Surface 2」を所有しているのだが,使い込むにつれて堅牢性に少々疑問を感じるようになっていた。ボディの素材が薄いというか,「ペラい」ような感覚があったのだ。実際,過酷なテストを課した筆者のSurface 2は,ボディが軽くねじれてしまっている。
Surfaceシリーズは一貫して,ボディ素材に「VaporMg」と称するマグネシウム合金を採用しており,この点はSurface Pro 3でも変わっていない。しかし,Surface Pro 3では今までのSurfaceシリーズで感じていた脆弱さを感じることはなく,手に持った限りでは,むしろ頑丈になったような印象を受けた。手に持ったときに,軽さと同時に堅牢さへの安心感を感じる。
堅牢になったように思えた理由は判然としなかったが,ボディ素材の厚みを見直したり,素材自体の改良も行われたのではないだろうか。
しかし,縦画面で持ってみると収まりがよく重さも感じにくかったので,手に持つときは縦配置が中心という考え方による変更かもしれない。
インタフェース関連も見てみよう。まず,第2世代Surfaceの特徴であったフルサイズのUSB 3.0端子は,Surface Pro 3でも継承されている。ただし,数は相変わらず1つだけだ。一方,配置は大きく換わっており,横置き状態での本体右側面のやや上側になった。
Mini DisplayPort出力は右側面配置のままだが,USB 3.0端子のさらに上側面側に置かれている。本体下側面近い位置にあったSurface Pro 2での配置に不満の声があったのか,それとも内部構成の都合によるものかは分からない。これらの配置変更が使い勝手にどのような影響を与えるのかは,使い込んでみないとなんともいえないのが正直なところだ。
本体上側面。前面から見て左上(写真左)に[電源/スリープ]ボタンがある。細かいスリットは排気孔だ |
本体下側面には,Type Cover接続用の接点があるだけとシンプル。別売りのドッキングステーションに接続するときもこの接点を使う |
本体左側面。ヘッドフォン端子が上端よりにあり,その下は音量調節ボタンがある。吸気孔と思われるスリットも見える |
本体右側面。上側(写真左)からMini DisplayPort出力,USB 3.0が並ぶ。メモリーカードスロットのような細いスリットは,ACアダプター用のコネクターだ |
液晶パネルは解像度だけでなく,3:2のアスペクト比に注目
そのうえ,極端に縦長の表示にはなるものの,Surface Pro 3では画面を3分割して3つのアプリケーションを並列表示することも可能である。複数のWindowsストアアプリを同時に表示できる点が売りであるWindows 8.1搭載タブレットらしい特徴といえようか。
Surface Pro 2で,開く角度が2段階に改良されたキックスタンドだが,Surface Pro 3では大幅に改良され,0〜150度までの無段階角度調整が可能になっている。そのため,卓上では任意の角度に調整できるし,大きく開けば膝上での操作もやりやすい。
開く角度を自由に選べるようになった新キックスタンド。左は自立できるギリギリの角度で,右は最大の150度まで開いた状態だ |
キックスタンドの自由度が増したのは喜ぶべき点なのだが,その代償として,スタンドを開くときに聞こえる小気味いいクリック音がなくなってしまった。設計者のこだわりが詰まっているように思えた部分なので,個人的には残念である。
ただし,Surface Pro 3ではN-trigのタッチペン技術を採用しているため,筆圧感知レベルは256段階となった。Surface Pro 2はワコムの技術による1024段階の筆圧感知に対応していたので,大きく後退したともいえる。
試用機でデジタルノートアプリ「OneNote」とペイントソフト「FreshPaint」を試してみたところ,メモを書いたり,簡単な図を描く分には問題を感じなかった。しかし,使い込んでみると,細かい描写は苦手であるのが分かった。ペンの書き味を重視する人には残念なところだろう。
ホバー性能は目測で約20mmほど。画面端ではややポイントがズレるのが確認された。ポイントの精度自体はかなり良好なので,「このペンはRTSを遊ぶときに役立つかもしれない」と感じたものだ。試用機は開発中のモデルとのことなので,製品版では精度が向上していることを期待したい。
専用キーボードSurface Pro Type Coverも軽い
本体と合わせてもMacBook Air並みの重量
Surface Pro Type Coverの厚さは約3mmで,その中にパンタグラフ式キーボードとLEDバックライトを内蔵している。本体に合わせてフットプリントが大きくなったおかげで,タッチパッド部分が大型化されたのもメリットの1つだ。タッチパッドの表面も改良されたようで,指の滑り具合がよくなったのには好印象を受けた。キーの感触自体は,従来品とあまり変わっていない。キーストロークは少し重めになったように感じられた。
気になる重量は294.8g。本体と合わせれば1.1kg弱になる。MicrosoftがSurface Pro 3の仮想敵に位置付けている11インチサイズの「MacBook Air」は,重量約1.08kgなので,ほぼ同等というわけだ。
ところで,Surface Pro 3には,従来モデルに用意されていた薄型キーボード「Touch Cover」が存在しない。その理由は明言されていないのだが,Surface Pro Type Coverが十分に薄くて軽いので,無理に作る必要もないとMicrosoftは判断したのかもしれない。実際,手に持ってみるとイイ感じに軽いので,店頭展示が始まったら,とりあえず持ち上げてみることをお勧めする
Surface Pro Type Coverの厚さはわずか3mm。本体と合わせて持ち歩いても違和感は皆無だ。必須のオプションなのは間違いないのだが,1万2980円(税別)という価格が少々ネックか |
Surface Pro Type Coverには,液晶パネル下端に沿って折り曲げるギミックがあり,キーボードに角度を付けられるようになった。少したわむ感じはするものの打鍵しやすい |
余談だが,Surface Pro Type Cover自体はSurface Pro 3だけでなく,Surface Pro 2でも使えるそうだ。もちろん逆も可である。とはいえ本体のサイズが違うので,あくまでも「互換性はある」というレベルの話だが。
洗練された第3世代Surface。シリーズのファンなら即買いも可
試用機のSurface Pro 3に搭載されていたCPUは,いずれもHaswell Refresh世代の「Core i5-4300U」だった。リッチな3Dグラフィックスのゲームを動かすのは困難だが,Windowsストアアプリやグラフィックス負荷の軽い3Dゲームならば,それなりに動かせると思われる。
どちらかといえば,メインのPCやゲーム機でプレイしつつ,セカンドスクリーンとしてWebの情報を表示しておくといった使い方のほうが,ゲーマーには向いているのではないか。そういった使い方であればスペックはまったく問題ないレベルである。
とはいえ,タッチペンでの操作感などに,まだ作り込みの甘さを感じる部分があるので,ペン操作にこだわる人は,製品版が店頭に並んでから,じっくり触って確認してみるべきだろう。
あるいは,6月3日から台北市で開催中のCOMPUTEX TAIPEI 2014に合わせて,Surface Pro 3に負けないくらい魅力的なWindows 8.1タブレットや2-in-1デバイスが,他のPCメーカーから出てくる可能性もある。Surface Pro 3は,そうした競合製品と比べても優秀な製品であるのだが,今すぐ欲しいという人以外は,7月17日の発売を待ってから決めても遅くはないかもしれない。
ちなみに,OSにWindows RTを搭載した第3世代Surfaceは今のところなしのつぶてである。このままWindows RT版は消え去るのか,それとも時期をずらして登場するのか,Surface 2ユーザーである筆者としては,気になるところだ。
●Surface Pro 3の主なスペック(Core i5搭載モデル)
- サイズ:292(W)×201.3(D)×9.1(H)mm
- 重量:約800g
- OS:Windows 8.1 Pro
- プロセッサ:Core i5-4300U,動作クロック 1.6GHz
- ディスプレイ仕様:12インチ液晶パネル
- ディスプレイ解像度:2160×1440ドット
- メインメモリ容量:4GB,8GB
- ストレージ容量:内蔵128GB,256GB
- 3G/LTE通信:非搭載
- 無線LAN:IEEE 802.11a/g/n/ac
- Bluetooth:4.0 搭載
- NFC:非搭載
- センサー類:加速度,磁気,環境光,ジャイロ
- 外側カメラ:500万画素
- 内側カメラ:500万画素
- バッテリー:Webブラウジング時で最長9時間駆動
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