インタビュー
「戦国無双4」発売記念インタビュー。10周年記念タイトルとして制作されたナンバリング第4作にはどんな思いが込められているのか,鯉沼久史氏と三枝 修氏に聞いてみた
「戦国無双4」公式サイト
地方編から天下統一編に向けての流れを
「大人が感動できるドラマ」として描く
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「戦国無双4」は,シリーズ10周年の節目に発売される,ナンバリングタイトルとしては4作めの作品ですが,どういったコンセプトで企画開発に臨んだのか,あらためて教えてください。
これまでの「戦国無双」シリーズでは,無双武将それぞれの物語を描いてきました。ただ,それだとどうしても史実に沿った中央政権寄り……知名度の高い「勝った」武将がメインになってしまいます。だからと言って,「負けた」武将を描いても,志半ばで散っているわけですので,中途半端な形でストーリーを終わらせざるを得なくなります。
それが嫌だったので,今作のシナリオでは,地方ごとにストーリーを組み立てました。各地方で,中央政権には関わっていないけれども,熱い戦いがあったことを紹介し,そこに登場する武将達が天下統一に向けて絡んでいくという形で描いています。たとえば「関ヶ原の戦い」の西軍大将は毛利輝元ですが,その祖父の元就は何をやっていたかと言っても,ちょっと分かりにくいですよね。そういった部分を表現するにはどうしたらいいかというところからゲームデザインを始めました。
4Gamer:
アクション面のコンセプトは,いかがでしょう?
鯉沼氏:
キャラクターのモーションは,シリーズを重ねるごとにリニューアルしてきているのですが,その一方で初代「戦国無双」で使ったものも健在だったりします。それらのモーションはPS2のスペックに合わせて作ったものですので,PS3向けとは言えない。けれども,今さら変えてしまうと,その武将らしさが薄まってしまうというジレンマがありました。
そこで新たに導入した「神速アクション」を軸に,PS3 / PS Vitaだからこそ実現できる気持ちよさ,敵を一掃する爽快感を追求しています。
4Gamer:
それでは,ゲームの内容についても教えてください。メインとなる「無双演武」モードは,「地方編」と「天下統一編」に分かれていますが,シナリオのコンセプトからすると,まず地方編をプレイしてから天下統一に向かうのがオススメですか?
鯉沼氏:
基本的にはそうですね。
地方編の織田の章と武田の章をクリアすると,天下統一編がプレイできるようになります。もちろん,地方編を全部クリアして,すべてのシナリオを確認してから天下統一に向かうこともできます。
鯉沼氏:
つまり,この二つの地方で「こういう経緯があって,天下統一の覇権争いに参加する」という時代の流れを確認してはじめて,天下統一編を遊べるようになるわけです。
また地方編で起こることが天下統一編の出来事の布石となって,「ああ,あれはこういうことだったのか」と感じていただけるような展開も用意しています。
三枝氏:
信長の時代を知らないと,そのあとに起こる関ヶ原や大坂の陣の経緯は分からないですよね。今回,メインで取り上げた真田兄弟の話にしても,武田時代の2人を知らなければ,ドラマとして成立させるのは難しいです。地方編と天下統一編に分けた大きな理由は,そこを解消するためでもあるんです。
4Gamer:
分かりました。それでは今回,ストーリーに真田兄弟を大きく取り上げた理由などを教えてください。
鯉沼氏:
今作はシリーズ10周年記念という意味もあり,初代「戦国無双」で主人公に据えた真田幸村をもう一度フィーチャーしようと考えました。その一方で真田の話は,幸村に大きく関わっているはずの父親や兄にほとんど触れていなかったという,ある意味でいびつな状態でしたので,今回はそこをきちんと描こうという意図があります。
また今作では,裏のテーマとして「大人も感動できるドラマ,ゲームでも感動できるドラマ」を掲げていました。そのため,シナリオ班にも「泣けるドラマにしてほしい」というリクエストを出していたんです。そういう意味でも,兄弟の別れがあって,最後に対決するという真田兄弟がいいのではと。
三枝氏:
「戦国無双4」のメインビジュアルでは,真田兄弟が向かい合っていますが,史実を知っている方からは「これだけで泣けてくる」と言われますね。我々としては,まさにこれがやりたかったんですよ。
地方ごとのストーリーを盛り上げるべく選出された9人の新武将
4Gamer:
今回,真田信之を含め,完全新規で登場する武将は9人になります。それぞれの武将の選択基準や理由を教えてもらえますか?
各地方にスポットを当てるということを基本にして,九州なら島津,中国なら毛利といったように,誰をフィーチャーすれば一番話が盛り上がるかをまず考えました。武将人気もありますが,やはりストーリーを大事にしている「戦国無双」ならではの人選になっています。
また,たとえば中国地方では毛利元就の三男である小早川隆景を取り上げましたが,この親子は智略に長けた武将として知られていますので,必然的に地方編では智略合戦を描こうということになります。そうなると今度は,相手として黒田官兵衛,竹中半兵衛という智力に長けた武将を出そうじゃないかというふうに,自然と決まりました。
鯉沼氏:
基本的には,各地方に一人ずつ,シナリオに合うタレントを持った新武将を当てはめていくという考え方ですね。
4Gamer:
新武将の中でも,四国の小少将は,今までにないタイプだと思うのですが,やはり興味深いストーリーが展開されるのでしょうか?
三枝氏:
ええ。彼女は実在した人物で,次々に男性を乗り換えて阿波一国を傾けたという逸話を持っていますから,非常にシナリオを盛り上げやすいだろうと。
あとは今回,関東の新武将となる早川殿が清楚な女性ですから,その対極として,お色気系の小少将を出そうという狙いもありました。
鯉沼氏:
シナリオの方向性や,アクションを含めたほかのキャラクターとのバランスなど,考慮すべきポイントがいろいろあるので,最初から「この人物を新武将にしよう!」と気持ちよく決まるケースは少ないんですよね。「この人はここに利点があるけれども,こんな欠点もある」と検討しながら一人一人決めていきました。
三枝氏:
正直なところ,真田信之以外はたくさん候補がいる中から,いろいろ悩んで決めた感じです。
鯉沼氏:
それでも大谷吉継は,何となく決まっていたね。
三枝氏:
石田三成との感動のエピソードがありますからね。今回は三成斬首のあたりまでも描きたかったので,大谷は欠かせないだろうと。
4Gamer:
「戦国無双 Chronicle 2nd」で登場した藤堂高虎,井伊直虎,柳生宗矩も,今回,新登場扱いになるんですよね。
三枝氏:
はい。発表しているとおり,ナンバリング初登場です。
鯉沼氏:
実は藤堂高虎は,今作のキーマンだったりします。史実でもさまざまな勢力に仕えているので,当然と言えば当然ですが。
三枝氏:
結構,最初から最後までいいポジションにいますよね。
4Gamer:
注目していると,結構面白いキャラクターという感じでしょうか。
鯉沼氏:
結果的にそうなりました。
新しい「戦国無双」の遊び方を提案する「流浪演武」と「操作キャラ切替」
4Gamer:
今回,プレイヤーがオリジナル武将をエディットして遊ぶ「流浪演武」モードが追加されますよね。このモードでは,プレイヤーは最終的に何を目指すのでしょう?
三枝氏:
最初の分かりやすい目的としては,全国で武将と出会い,図鑑「武将列伝」を埋めていくことが挙げられます。その過程で,流浪演武でしか手に入らないエディットパーツ(衣装)や称号などを集めるという,サブ目的も生まれます。
また武将とのイベントは,流浪演武ならではのものですから,武将それぞれのファンの皆さんには喜んでいただけるのではないでしょうか。
実は,無双演武を真面目に作り込んだ結果,本編のif要素がいつもより少なくなってしまい,あまり出番のない武将もいるんですよ。そういった武将も流浪演武でガッツリと登場するので,ぜひこちらで楽しんでほしいですね。
4Gamer:
女性ファンが喜びそうなイベントもありますか?
三枝氏:
そうですね。恋愛をテーマにしたイベントや,ちょっとコミカルなイベントも用意しています。もちろんシリアスなものもありますので,いろいろ楽しんでいただけると思いますよ。
また本作はフルボイス仕様ですから,「戦国無双」シリーズの中ではボイスの量もダントツで多いんです。
4Gamer:
そうなると期待が膨らむ一方で,ダウンロード版の容量が心配になりますね。
三枝氏:
ゲーム全体でカットシーンのプリレンダリングを減らし,可能な限り実機データを使った演出をしていますから,データの圧縮は結構できていますよ。
鯉沼氏:
ダウンロード版があるからプリレンダリングの多用はダメと,ずっと言ってきましたからね。DLCなどで着替えた衣装がカットシーンに反映されるほうが,プレイしていて楽しいですし。
4Gamer:
なるほど,そういう理由もあるわけですね。そのほか,流浪演武の注目ポイントはありますか?
鯉沼氏:
あとは,やり込み要素ですね。何かをコンプリートするというような要素は,流浪演武のほうに入れています。
4Gamer:
それでは,システム面についても教えてください。今回,メイン武将とパートナー武将を切り替えてプレイできますけれど,これにはどういった狙いが?
もともと2人協力プレイ(2Pプレイ)に関するリクエストは多いので,それを前提に開発しているのですが,今回はシングルプレイでも武将2人が戦場で動くようにするのもいいのではと考えました。武将切り替えに関しては,「戦国無双 Chronicle」シリーズでやっていましたので,それなりにこなれたものになるだろうと。
このシステムの利点としては,まず武将1人でも遊べるし,切り替えても遊べるという点があります。また従来の2人プレイだと,1人がメインで,もう1人がオマケ的に同じミッションをこなしていくシーンが多くなってしまいましたが,今回の形式だと,各々のプレイヤーがそれぞれのミッションを楽しめるようになります。
三枝氏:
「戦国無双 Chronicle」だと,武将の切り替えが前提にあり,基本的に切り替えなければすべてをクリアできないようになっていました。
しかし「戦国無双4」では,武将を切り替えてもいいし,どちらか1人だけでもクリアできるようになっています。
鯉沼氏:
やはりナンバリングタイトルですから,王道要素の一つとして,好きな武将1人だけでもクリアできることが必要だろうと。そこに武将を切り替えても遊べるという遊びを加えているわけです。
三枝氏:
そこで,2人の武将のスタート地点を近づけておき,ゲームが進むにつれてだんだん離れていくようにしています。そうすることで,それぞれの武将に異なる状況が発生し,より切り替えが有効になるわけです。
4Gamer:
スタート画面でパートナー武将を選択できますが,そのラインナップはどのような仕組みで選ばれるのでしょうか。
三枝氏:
合戦ごとに,史実に沿った武将を選んでいます。
鯉沼氏:
メイン武将との相性も設定されており,マークの付いたパートナー武将を選ぶと,ゲーム中で特別な掛け合いが発生したり,特別なミッションが起きたりします。
4Gamer:
なるほど。そういった部分も含めて,「戦国無双4」で武将切り替えを採用したのには,「戦国無双 Chronicle」シリーズからのフィードバックも大きいのかなと感じるのですが。
鯉沼氏:
確かに,私にもそういったイメージを抱かれてしまうのではないかという想定はしていました。開発チームには,常々「『戦国無双』とは,基本的に武将1人を操作して遊ぶものだ」という話をしていました。
「戦国無双4」の切り替えは,あくまでもエッセンスであり,かつ2人プレイにも応用できるシステムとして導入したもので,それ前提にゲームを開発したわけではないことは明言しておきたいですね。もちろんミッションを全て成功させるには,切り替えを使った方が効率ははるかにいいですよ。
ゲームとしての進化だけでなく,さまざまな取り組みが可能になった「戦国無双」
4Gamer:
アクション面では,新たに導入した神速アクションが目立ちますが,そのほか「無双極意」「殺陣」も加わりましたよね。
ええ。従来の「戦国無双」の操作感を継承していますので,ぜひそういった新しい要素を組み込みつつ,爽快なバトルを楽しんでいただければと思います。慣れないうちは,ボタンのガチャ押しでも十分楽しめますよ。
4Gamer:
「殺陣」は一定の条件で発動するそうですが,具体的に教えてもらえますか?
三枝氏:
相手武将の体力を一定以下に減らし,かつ気絶状態にすると,画面に[△]ボタンを押すように促す表示が出て,入力に成功すると殺陣が発動します。いわゆるフィニッシュアクションといいますか,トドメを刺す演出が入りますので,非常に格好いいですよ。
4Gamer:
武将の成長要素として,通常攻撃,チャージ攻撃,特殊技,神速攻撃の4つの熟練度があります。
鯉沼氏:
基本的には,使った回数の多い攻撃手段が成長していくというものですね。
三枝氏:
つまり,プレイヤーの戦い方次第で成長のしかたが変わるので,同じ武将でもいろんなタイプになって結構面白いですよ。
4Gamer:
ずっとプレイを続けることで,全部の熟練度をMAXにできますか?
三枝氏:
できます。ただ,武将ごとに能力値の上限が設定されていますので,最終形態はそれぞれの武将で異なります。
鯉沼氏:
そのほか,ゲーム中で拾った武器を強化したり,究極武器を作ったりといった形で,武将を育成していくことができます。さらにやり込みたい人向けに,レア武器や,それ以上の武器を合成できるという要素も用意しています。
またレア武器の一部は,流浪演武を通じて入手できるようになっていますが,これは時間を掛ければどなたでも入手できるようにと配慮したものです。従来どおり,通常のバトルを通じて入手するレア武器もあります。
4Gamer:
「戦国無双4」にはPS3版とPS Vita版がありますけれども,両者の違いはありますか?
三枝氏:
ゲームの内容は基本的に同じです。ただボタンの数が違いますから,操作面で一部異なるところがあります。
鯉沼氏:
あとは画面解像度など,スペックの差に基づく違いがどうしても生じてしまいます。「無双」シリーズは,おかげさまで据え置き機版の人気が高いのですが,最近はPS Vitaで手軽に遊びたいという方も増えているので,プレイスタイルに応じて選んでいただければと思います。
4Gamer:
3月5日の完成発表会で上映されたビデオメッセージでは,SCEJAの河野プレジデントが「PS4版も期待しています」とおっしゃっていましたが,実際のところ,予定はどうですか?
コーエーテクモグループでは,「信長の野望・創造」と「真・三國無双7 with 猛将伝」のPS4版をリリースしていますので,技術的には可能だと考えています。このあと実際にどうしていくかについては,まだ検討段階です。
ただ作り手としては,新しいハードが出て,ゲーム市場が盛り上がるのはうれしいですね。
4Gamer:
分かりました。それでは,「戦国無双4」のタイアップについても教えてください。今回,日本赤十字の献血会場にコラボポスターが展示されるとのことですが,これはちょっと珍しい試みですよね。
鯉沼氏:
ゲーム寄りのタイアップだけでなく,地域に貢献するような取り組みもどんどんやってみたいと考えています。
「戦国無双」は10年の歴史があり,また残虐性も低いということで,いろんな企業さんからお声がけいただいています。先方の担当者さんも,「学生の頃,遊んでいました」という方が結構いらっしゃいますし。そういう意味では,10年続けてきたことに意味があるのかなと感じています。このあとも,「えっ?」と思うようなタイアップが控えていますので,期待してください。
4Gamer:
それでは最後に,「戦国無双4」の発売を心待ちにしている人に向けて,メッセージをお願いします。
三枝氏:
どのシリーズタイトルも気合を入れて作っていますが,「戦国無双4」は10周年記念ということで,スタッフ一同,いつも以上に注力しました。10周年に恥じない作品に仕上がっていますので,ぜひ皆さんプレイしてください。
鯉沼氏:
繰り返しになりますが,「戦国無双4」では「大人でも楽しめるドラマ作り」を掲げ,シリーズ最高の爽快さを目指して新しいアクションを導入しました。ぜひ,10周年を機に,多くの方に遊んでいただきたいです。
またシリーズ10周年を記念して,スマートフォンアプリ「戦国無双シュート」のリリースをはじめ,各種イベント展開や,「ゲーム的な何か」の企画を予定しています。2014年は,ぜひ「戦国無双」に注目してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「戦国無双4」公式サイト
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