テストレポート
KDDI 2016春モデルスマホ&タブレットをテスト。コンパクトな「AQUOS SERIE mini」と新タブレット「Qua tab 02」をデレステで検証してみた
新製品といっても,2015年秋冬モデルが遅れて登場したという印象があるのも事実で,新型SoC(System-on-a-Chip)を搭載するハイエンドモデル,といった強烈なハイスペック製品もない。どちらかといえば,価格を重視した端末が目立つ印象だ。
そこで今回は新製品の中から,「AQUOS SERIE mini SVH33」と「Qua tab 02」をチェックしてみた。
AQUOS SERIE mini SVH33
本体サイズは66(W)×126(D)×8.9(H)mmで,とくに,66mmという幅がポイントだ。大型化が進んだ昨今のスマートフォンからすると,片手で保持・操作できるという点で本気の特徴といえる部分だ。外観は,前面と背面がフルフラットで四側面が丸みを帯びた形状をしているという,2015年のトレンドに沿ったものであり,特筆すべき点はない。
重量は約120g。重心位置は中央よりやや下にあるようで,手に持った感じは重くも軽くもない,カタログスペックどおりの重さという印象だった。
ハイスピードIGZOの理屈は,高リフレッシュレート表示に対応したゲーマー向け液晶ディスプレイと同じで,対応するアプリケーションであれば,1秒あたりの表示回数が多くなり,動きが滑らかに見えるというわけだ。とくに,スクロール表示での差は大きく,下に掲載した動画でもその違いがよく分かるだろう。スマートフォン向けゲームでも,理屈のうえでは表示が滑らかになるはずだ。
そのほかに特徴的な機能としては,握るだけでスリープを解除できる「マジックグリップ」の搭載があげられるだろう。ただ,生体認証機能には非対応であり,ロック解除は普通のスマートフォンと同じというのが残念ではある。
画面サイズは小さいが,使用中のアプリ上に別のアプリを表示する「ミニアプリ」機能もあり |
LEDによる通知は本体下側面で確認できる。車のテールライトみたいな印象だ |
スペックも見ていこう。小型のスマートフォンでは,スペックを低めに抑えた製品が珍しくないが,SERIE miniのスペックは低くない。搭載SoCは,Qualcomm製の「Snapdragon 808」で,メインメモリ容量は3GBとなっている。内蔵ストレージ容量は16GBと少ないが,最大200GBまでのmicroSDXCカードに対応するのが救いか。バッテリー容量2810mAhである。
スペックは悪くないものの,ゲーマー視点での懸念は,シャープ製スマートフォンでよく見られる電源管理の傾向がどうなっているのかだ。
スマートフォンではバッテリー残量に応じて,SoCの動作を動的に変更する仕組みを備えている。動作クロックが落とされたりするので,ゲームには好ましくないこともある仕組みだが,どういう状況でどのように動作を変えるかといったチューニングの傾向は,端末の種類やスマートフォンメーカーによって傾向が異なるのだ。そして,シャープ製スマートフォンの場合,バッテリー駆動時間を伸ばすことを重視して,動作するCPUコア数や動作クロックを早めに下げる傾向にあることが,筆者によるテストで明らかになっている。SERIE miniはその点がどうなっているのだろうか。
展示会場の説明員によると,SERIE miniでは電源管理に大きな見直しがあったそうだ。従来のシャープ製スマートフォンでは,バッテリー残量が89%になったあたりから1コアを完全に止め,50%を切った段階で高クロック動作が可能なCPUコアを完全に停止するといった動作をしていた。だが,SERIE miniをテストした限りでは,そうした動作はしなくなったようで,高い性能で動作し続けられるようにチューニングされたようだ。ゲームを遊びやすくなったのは,素直に喜ぶべきだろう。
それでは,筆者定番のベンチマークテストで,SERIE miniの実力を検証してみたい。テスト内容は,「3DMark」によるグラフィックス性能検証と,「A1 SD Bench」によるメインメモリおよびストレージアクセス性能検証,「CPU-Z」による動作クロック変動の確認,そして連射測定アプリ「ぺしぺしIkina」による連打応答性の検証,そして「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(iOS / Android,以下 デレステ)のプレイテストとなる。また,米国の赤外線カメラメーカーであるFLIR SystemsのiPhone用赤外線カメラ「FLIR ONE」を使った筐体の温度計測も行ってみた。
まずは,3DMarkの「Ice Storm Unlimited」プリセットから。スコアは「14195」で,高いとはいえないものの,可もなく不可もなくといったところか。Monitoring dateのグラフを見ると,CPUコアもそれなりに動作しているようだ。ただ,温度計測結果が40度フラットになっており,これは数値を正常に取得できていないようだ。
A1 SD Benchの結果は,ストレージ性能を測る「Internal memory」が,書き込み(Write)は48.93MB/sと遅めだったものの,読み込み(Read)は186.90MB/sで,2015年のハイエンドスマートフォンと変わらないレベルだった。
ぺしぺしIkinaの結果は,連打回数が93〜96になるように連打して「85」と優秀だ。初回の飽和は25タップめに発生し,それ以降は,70タップめで長い飽和があるという具合。25〜70までの間はストレートに取得していたため,連打にも十分追従できると思われる。
A1 SD Benchの結果。RAMのスコアは,やや低めか |
ぺしぺしIkinaのスコア。結果はかなり優秀で,音ゲーにも問題なさそう |
CPU-Zで動作を確認してみると,CPUコアは,big.LITTLE構成のbig側がCortex-A57×2,LITTLE側はCortex-A53×4となっていた。ただ,CPU-Zで見ている間は,big側がほとんど停止したままで,アプリインストール中でも動く様子がなかった。高クロックのbig側はなるべく止めておき,LITTLE側も最低動作クロックに抑えておくという,いつものシャープ製スマートフォンといったところか。
では,お待ちかねのデレステによる実機テストに入ろう。チュートリアル途中のスペック判定は「3D標準」。これは,「MVが普通に動く程度のスペック」といっていい。実際のプレイでは,プレイ後半の紙吹雪や,引きでのアングル時にもたつきが目立った。計3回プレイしてみたが,いずれも同様のタイミングでもたつきが起きたため,処理落ちとみてよさそうだ。
MVを撮影した動画を掲載しておくので,参考にしてほしい。
チュートリアル途中での判定は「3D標準」。いまどきのスマートフォンでは珍しくない |
チェック前にガシャを回したところ,SSレア速水奏さんをゲット。いつになったらSレアの楓さんがやってきてくれるか…… |
表示がもたつくあたりは,タッチの入力取得も怪しくなったことを考えると,SERIE miniでデレステをプレイするときは,2D軽量に設定するのが無難だと思う。2D軽量でのプレイなら,取得漏れやもたつきはなかった。120Hz表示の効果がどうかは明言できないのだが,譜面も心なしか見やすかったように思える。
さて,FLIR ONEを使った発熱チェックは,画像で説明しよう。撮影はデレステをプレイする前と,3回連続でのプレイ後に行った。テスト前の状況はデモ機として展示されていた状態で,負荷の高いアプリはほとんど使われていない。
デレステの2D軽量時や,MVのスムーズな表示からすると,2Dグラフィックスのゲームであれば,意外とゲームにも向いたスマートフォンかもしれない。ゲームを楽しむコンパクトサイズのスマートフォンとしては,ちょうどいい存在ではないだろうか。5インチサイズのスマートフォンが好みに合わないという人は,SERIE miniを検討する価値があるといえよう。
●AQUOS SERIE mini SVH33の主なスペック
- メーカー:シャープ
- OS:Android 5.1(Lollipop)
- ディスプレイパネル:4.7インチIGZO(IPS),解像度1080
× 1920ドット - プロセッサ:Snapdragon 808 MSM8992(2+4 CPUコア 最大CPU動作クロック1.8GHz,Adreno 418 GPUコア)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量16GB)+microSDXC(最大200GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1310万画素
- インカメラ:有効画素数約500万画素
- バッテリー容量:2810mAh
- 待受時間:約490時間
- 連続通話:約1350分(LTE)
- LTE通信周波数帯:未公開(受信時最大速度225Mbps)
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.1
- 本体サイズ:66(W)×126(D)×8.9(H)mm
- 本体重量:約120g
- 本体カラー:スカーレット,ホワイト,サファイア,ブラック
- 主な対応サービス&機能:au VoLTE,WiMAX 2+,グローバルパスポート(LTE/GSM/UMTS),おサイフケータイ,Wi-Fiテザリング(同時接続数10台),NFC,防水(IPX5/8),防塵(IP6X)
Qua tab 02
価格が価格なだけに,外観に高級感といったものは皆無で,むしろ安っぽい印象を受けてしまうかもしれない。ただ,過剰な装飾や凝ったデザインを採用せず,
サイズは259(W)×156(D)×8.6(H)mmで,10インチ級のAndroidタブレットとしては厚みがあるほうだが,手に持った感じは持ちやすい。重量は約486gで,約444gのiPad Air 2に比べるとやや重いのだが,重心配置のおかげか,それほと重くは感じなかった。厚みや重さが気になる人は,店頭にデモ機が展示されるようになったら,自分でもチェックしてみてほしい。
特徴としてあげられているのは,ステレオスピーカーとHuawei独自のサラウンドサウンド技術「Super Wide Surround 2.0」(以下,SWS)による,サラウンド再生に対応する点だ。SWSは,Qua tab 02で再生するすべてのサウンドに効果がある機能なので,動画や音楽だけでなく,ゲームでも利用できるのが大きなポイントだ。
サブウーファーは持たないので,やや低音の迫力にはかけるが,サラウンド具合は良好だったので,いい音でゲームを楽しみたい人には喜ばれるだろう。
スペックも見てみよう。搭載SoCは,Qualcomm製の「Snapdragon 615」で,メインメモリ容量は2GB,内蔵ストレージ容量は16GBとなっている。ストレージ容量の少なさは気になる要素で,最大128GBのmicroSDXCに対応する点を生かして,データはmicroSD側に逃がすといった工夫が必要になりそうだ。
Qua Tab 02でもベンチマークテストを行ってみた。結論からいってしまうと,スペックの割には頑張ってるなという印象で,2Dグラフィックスのゲーム中心であるのであれば,選択肢に入ってくるレベルだった。
まず3DMarkを見てみると,「Ice Storm Unlimited」のスコアは「7271」で,正直かなり低い。
ぺしぺしIkinaは,93〜96になるよう連打して「69」。だいぶ低い結果だが,21タップめまではストレートだったので,大半のゲームで実用の上の問題はなさそう |
A1 SD Benchの結果は,Internal memoryのReadが早めで,Writeはやや遅め。RAMは4883.67MB/sと,かなり早い結果だった |
最後にデレステのプレイテストもしてみた。チュートリアル途中での判定は「3D標準」だったが,この設定で快適にプレイするのは困難だ。MVモードはおおむね快適に動作していたが,それでも多少もたつくことがあるので,リッチな3Dグラフィックスのゲームを楽しむマシンではない。
なお,「2D軽量」でプレイしたときは,たまに軽いもたつきを感じたが,プレイ感は全体的に良好だった。
チュートリアル途中での判定は「3D標準」だが,実際には性能不足。プレイ時には「2D軽量」を選び,MVモードで3D側を選ぶのがよさそうだ |
MVモードならギリギリなんとか再生できる印象。性能面は物足りないが,画面が大きいのはやはりいい |
3Dゲームは荷が重いとはいえ,カードゲームスタイルの2Dグラフィックスゲームを大きめの画面でプレイするという用途であれば,十分な性能を有する製品といえる。10インチ級で低価格のタブレット端末を求めている人なら,本機は狙い目ではないだろうか。
●Qua tab 02の主なスペック
- メーカー:Huawei Technologies
- OS:Android 5.1(Lollipop)
- ディスプレイパネル:10.1インチIPS,解像度1600
× 1200ドット - プロセッサ:Snapdragon 615 MSM8939(8 CPUコア 最大CPU動作クロック1.5GHz,Adreno 405 GPUコア)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量16GB)+microSDXC(最大128GB)
- アウトカメラ:有効画素数約800万画素
- インカメラ:有効画素数約200万画素
- バッテリー容量:6500mAh
- 待受時間:約1050時間
- 連続通話:通話非対応
- LTE通信周波数帯:未公開(受信時最大速度150Mbps)
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.1
- 本体サイズ:259(W)×156(D)×8.6(H)mm
- 本体重量:約486g
- 本体カラー:エアリーブルー,パウダーホワイト,チャコールブラック
- 主な対応サービス&機能:au VoLTE,WiMAX 2+,グローバルパスポート(LTE/GSM/UMTS),Wi-Fiテザリング(同時接続数8台)
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