インタビュー
「ガンスリンガー ストラトス2」公式全国大会直前インタビュー。プロゲーマー・ふ〜ど率いるチーム「勝ちたがり」に聞く,その見どころと勝負哲学
ふ〜ど,ノー・ゲーム・ノー・ライフ
4Gamer:
では,ここからは少し趣向を変えて,プロゲーマーとしてのふ〜どさんについて,いろいろと伺っていきたいと思っています。そもそもなんですが,ふ〜どさんがゲームに真剣に取り組み始めたのって,いつ頃からでしたか?
ふ〜ど選手:
えーと,花札は本当に真面目にやっていましたね。5歳ぐらいのときの話ですけど。
4Gamer:
5歳!?
ふ〜ど選手:
花札は選択肢が少ないので,最善手を考えるのが簡単なんです。物心がついた頃にはそこに気付いていて,お姉ちゃんやお母さんと毎日遊んでいたように思います。お年玉を掛けたりしてね(笑)。
4Gamer:
ゲームセンターに行きだしたのは,いつ頃から?
ふ〜ど選手:
小学生の頃かな。最初はメダルゲームばっかりやってたんですが,基本的にはジャンルに関係なく,それこそ「THE KING OF FIGHTERS」シリーズ(以下,KOF)から「DanceDanceRevolution」(以下,DDR)まで,新作は何でも遊んでました。
タカシ選手:
あ,DDRもやってたんすか。
ふ〜ど選手:
いやいや,俺めちゃくちゃうまかったからね! もうバーを掴まないとキツくて,年は感じるけど,今でもできるはず(笑)。まあそれぐらい,出たゲームは何でもやる感じでした。
4Gamer:
では,格闘ゲームはKOFから?
ふ〜ど選手:
真面目にやり出したのは「バーチャファイター4 エボリューション」(以下,VF4EVO)からで,全国大会に出場したのも「格闘新世紀II」が最初ですね。それまでは,完全な村勇者※でした。
※「その地域では最強」の意。
4Gamer:
全国大会に出場しようと思ったのは,どうしてですか?
ふ〜ど選手:
当時はゲームフジ船橋というゲーセンに通っていて,そこの大会で優勝したら,それが実は格闘新世紀IIの予選だったという。まだVF4EVOを始めて半年ぐらいだったんだけど,決勝大会に出場したことで,うまい具合にコミュニティに入っていけた感じです。ちなみに,VF4EVOを始める前は,「機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオンDX」ばかりやっていて,だからガンストを始めたときも,違和感なく入り込めたんだと思います。
4Gamer:
「ストリートファイターIV」(以下,ストIV)を始めたきっかけはなんだったのですか?
ふ〜ど選手:
当時の時点でもう,バーチャはもうかなり長いことやっているゲームだったので,そろそろ新しいものをやりたいなと思っていたんです。そこに丁度でてきたのがストIVだったという。だから結構,偶然なんですよね。
4Gamer:
なるほど。基本的には対戦ゲームが多い印象ですが,それ以外のゲームはどうでしょうか。例えば……RPGとか。
ふ〜ど選手:
RPGはあまりやらないですけど,自分自身がうまくなっていけるゲームなら,何でもプレイします。今でもメダル勢だったりしますし。もう,メダル入れるのめっちゃ速いんですよ。まあ……今は手で入れるメダルゲームも減っちゃいましたけど。
4Gamer:
どんなゲームでも,攻略法を見つけようとしてしまう感じですか?
ふ〜ど選手:
基本的には,楽しんでやってるだけだと思いますけどね。例えば「モンスターハンター」シリーズ(以下,モンハン)でも,俺はほかの人を支援するのが好きなんですよ。あまりうまくない人と一緒に遊んで,「どれぐらいしれっと楽にクリアさせるか」に心血を注いでいた時期もあります。周りからは“ゆとり製造機”って呼ばれていたくらい(笑)。
4Gamer:
ああ,なるほど(笑)。では,プロゲーマーになったときも,あまり悩んだりはしなかった?
ふ〜ど選手:
なりたいと思って何かをやったわけじゃないけど,気が付いたらなってましたね(笑)。でもまあ,自分でもゲームはうまい方だと思ってますし,海外にもたくさん行けるし,何よりゲームは好きだし,天職だって思ったんです。それで飛び付いた感じかな。
4Gamer:
ちなみにくっきーちゃんさんとタカシさんは,プロゲーマーになれるならなりたいと思いますか?
タカシ選手:
うーん……自分はゲームはやっぱり大好きだし,もしガンストでなれるんだったら,なりたいと思いますね。
ふ〜ど選手:
ガンストでプロゲーマーになれるんなら,タカシはなるべきだよ。ゲームのうまさにも色々あるから,一番を決めるのってなかなか難しいけど,もしガンスト2で一番うまいプレイヤーを投票で決めたとしたら,俺はタカシが選ばれるって思うから。
くっきーちゃん選手:
僕は逆に,プロになっても成功する自信がまったく沸いてこないから,向いてないですね。ふ〜どさんを見ていると,余計にそう思います。ほかのプロゲーマーがどういう感じなのか分からないけど,この人はマジでどんなゲームをやってもうまいですから。プロ格闘ゲーマーじゃなくて,プロゲーマーって感じなんですよ。
タカシ選手:
トランプなんかも,めちゃめちゃ強いですからね。色々やったけど,七並べがとくにヤバい。手札は酷いのに,駆け引きのうまさだけで勝ちに来るんですよ。
ふ〜ど選手:
長い目で見てブラフを張ってるからね。
4Gamer:
ふ〜どさんは麻雀はやらないんですか?
ふ〜ど選手:
やりますけど,ウメハラさんみたいにガチ勢ではないです。
4Gamer:
ウメハラさんは,「麻雀はすごい運ゲー」って言ってましたけど,ふ〜どさんはどう思います?(関連記事)
ふ〜ど選手:
いや,それはだってゲームですからね。どんなゲームだって,つまるところ最後は運じゃないですか。そのゲームが出たての頃なら,技術や知識,戦略なんかで実力差が出るかもしれないけど,時間が経てばそれは均らされていくでしょう。そうなったらガンストだって格ゲーだって,“当てる運”次第ですよ。
4Gamer:
「ウルトラストリートファイターIV」についても,それは同じだと?
ふ〜ど選手:
プロとして,これを言っていいのか分からないですけど,ウルIVくらいになると,大きな大会で優勝できるかどうかなんて,もう運の要素が8割ぐらいだと思うんですよ。だって,東京で一番レベルが高いタイステ(タイトーステーション 新宿南口ゲームワールド店)で,圧倒的な強さを誇るウメハラさんが,Evolution 2014(以下,EVO2014)の途中でコケちゃうぐらいですから。全体のレベルがそれぐらい上がってきている。
くっきーちゃん選手:
でも10本先取ガチみたいなやり方なら,実力差は出るんじゃない?
ふ〜ど選手:
もちろん,時間をかければまた違ってくるとは思うよ。でも,その結果が本当に実力差で決まったかどうかなんて,実際には分からないわけで。それがギリギリの良い勝負だったとしたら,なおさらね。
4Gamer:
極まってしまえば,どんなゲームも勝敗は運で決まる?
ふ〜ど選手:
それぐらいの捉え方で丁度良いと思うんですよ。将棋ぐらい選択肢が多くなってくると分からないですけど,それでも上級者同士の実力差は,どんどんなくなってきているらしいですから。……これはこないだ読んだ羽生さんの本の受け売りですけど(笑)。
4Gamer:
しかし結果としてふ〜どさんは,そのEVO2014で3位入賞を果たしています。もちろんこれまでの戦績も含めてですが,その強さの秘訣はなんだとお考えですか。
ふ〜ど選手:
……目の前の勝ち負けにこだわらないというか,うまくなるためにゲームをやっているからじゃないかなあ。俺は色んなゲームをやっている分,負けてる回数もめちゃくちゃ多いんですよ。
4Gamer:
勝負をしている回数自体が多い分,負けも多いということですか?
ふ〜ど選手:
ええ。だから,負けても感情的に何も感じないんです。負けた理由を毎回ちゃんと直視して,正しい選択肢さえ見つけられればそれでいいというか。そこは,ガンストでも格ゲーでも変わらない。
4Gamer:
負けとの付き合い方が,結果を出す秘訣だと?
ふ〜ど選手:
例えば,「勝ちたがり」のフルメンバーでガンスト2をプレイすると,それこそ100連勝してもまだ負けないくらい,勝ちまくれるわけです。でも,全国大会で優勝することが目標なのだとしたら,普段の対戦で勝つことってあんまり意味がない。それよりも劣勢になったときに,盛り返すための経験を積むべきです。
タカシ選手:
勝ってると,思考が止まるんだよね。
ふ〜ど選手:
そう。だから大会とキャラ構成は同じにして,メンバー2人を女の子に入れ替える,みたいな練習を俺らはよくしてるんです。そうすると,やっぱり負けるんですよね。その負けたときに,自分の何がダメだったのか,あのときどうするべきだったのかを考えて,答えを出す。
タカシ選手:
メンバーを入れ替えてプレイするのは,本当に良い練習になるんです。例えば羅漢堂のプレイヤーを,たわばさんとは別の,あまりうまくない人に替わってもらったら,当然勝てなくなる。それはダメージソースとして羅漢堂が機能しなくなるからですよね。この状態で勝つためには,支援キャラであるふ〜どさんとくっきーちゃんが,それをカバーするダメージソースにならなくちゃいけないんです。俺のジョナサンだって,一つ一つの行動の重要性が増すわけで,押し引きの見極めとかで,頭をフル回転させなくちゃいけなくなる。
ふ〜ど選手:
4人でやるゲームだから,たまたまその日不調だったり,徹底的にマークされちゃったりして,誰かしらがコケる可能性は常にあるんです。でも,こういう練習をしておけば,誰か1人が機能しなかったとしても,チーム全体としてパニックになるようなことはない。
4Gamer:
負け慣れているからこそ,見えてくるものがあると。
ふ〜ど選手:
ま,自分はたまたま今まで結果が伴ってきたから,このやり方が続けられているというだけなのかもですが。もし結果が出せていなかったら,もっと勝ちに対して貪欲になっていたかもしれないですし。
4Gamer:
いや,外側から見ていたふ〜どさんの印象とは違ったので,少し驚きました。ふ〜どさんって,格闘ゲーマーの中でもとくに反応速度の速さに定評があるプレイヤーじゃないですか。もっと,いわゆる人間性能を重視した考え方をされるのかなって,勝手に思っていたんです。
ふ〜ど選手:
よく言われるんですけど,それも「反応」の定義次第だと思うんですよね。前にバーチャ勢のみんなで,赤く光ったらボタンを素早く押す,というだけのゲームをやったんですけど,俺はかなり下の方でしたから。
4Gamer:
確かに格闘ゲームにおける「反応」は,そういう純粋な反応速度ではないですよね。結局は,意識配分ができているかどうかであって。
ふ〜ど選手:
うん。だから,反応が速いかどうかは分からないけど,意識配分はちゃんとできている方だとは思います。だって実際,崩し技をガードできていることが多いわけだから(笑)。
4Gamer:
なるほど。しかしこれだけ色々なタイトルをプレイして,しかもどれも結果を出すというのは,本当にすごいですよね。
ふ〜ど選手:
やっぱり,ゲームが好きで,そこに自分の時間を100%注いでいますから。結局は,そこなんですけどね。
チーム「勝ちたがり」の勝算は?
4Gamer:
では,目前に迫った賞金制公式大会について,現在は東京予選までが終了※していますが,通過を果たした10チームの中で,とくに注目しているチームはありますか。
※この座談会の収録は2014年8月9日に行われた。
ふ〜ど選手:
チーム「にょん」(夕陽選手,もち@もちっッ^ω^選手,Rewriter選手,ミーシャ選手)は優勝候補の一角ですね。全国のガンストプレイヤーが,今もっとも注目しているチームといっていい。
くっきーちゃん選手:
僕とタカシは,そのチームの夕陽と組んで,「スーパーふるさとカップ」で優勝したんですよ。全体的に個人スキルが高いチームですね。
タカシ選手:
しかも,「にょん」の放り込まれた予選Kブロックは,東京予選の中でもかなりの激戦区でしたからね。あそこを勝ち抜いてきたチームは,どこであれヤバいです。
4Gamer:
そんな中で,チーム「勝ちたがり」の勝算はというと?
ふ〜ど選手:
ま,でも前回は32チームで決勝トーナメントをやったけど,今回はもう16チームまで絞り込まれてるんで。少なくとも前回よりは楽だよね。
くっきーちゃん選手:
あとは当日のくじ運だけですね。
ふ〜ど選手:
「にょん」と早い段階で当たりさえしなければ,優勝は十分あり得るんじゃないかと。1回戦なんかで当たっちゃうと,こっちも動きが堅いだろうからきっとしんどいことになるだろうけど。
4Gamer:
「勝ちたがり」と「にょん」では,組み合わせの相性はどうなんですか?
くっきーちゃん選手:
まず,「にょん」は戦いにくいと言われている秋葉原をホームステージ※にしているんですよね。
※公式大会での対戦は3試合制(2勝先取勝ち上がり)となっており,最初の2試合はそれぞれが指定したホームステージが舞台として選ばれる。決定戦となる3試合目までもつれ込んだ場合は,兵庫「三宮」ステージが固定で選ばれるレギュレーションだ。
ふ〜ど選手:
秋葉原ステージを選んでるのは,たぶん「にょん」だけじゃないかな。ほかのチームは概ね日本橋ステージなんだけど。
4Gamer:
日本橋をホームステージにするチームが多いのは何故ですか?
くっきーちゃん選手:
お互いに戦いやすいステージなので,全国的に「日本橋で対戦するのが基本」みたいな流れがあるんですよ。なので,単純に戦い慣れているからでしょうね。
4Gamer:
一方で,「勝ちたがり」のホームステージは?
くっきーちゃん選手:
うちは三宮です。3試合目までもつれ込んだらどうせ三宮が選ばれるので,絶対に練習しておく必要がある。それならいっそのことホームステージにしておけば,そこだけ絶対落とさなきゃ優勝できるじゃん,という。
タカシ選手:
ステージに応じたチームの動き方を詰めておくと,相手がどんな構成であってもなんとかなりますから。
秋葉原ステージ |
日本橋ステージ |
三宮ステージ |
4Gamer:
では,キャラクター構成や戦略の面で,差が付く組み合わせなのでしょうか。
ふ〜ど選手:
構成の相性はこっちに分があるんじゃないかと。ただ「にょん」にはウェポンパック※を頻繁に変えてくるプレイヤーがいるので,そこがどう響くかは分からないですね。
※各キャラクターに用意されている武器セット。ウェポンパック次第で,耐久値や倒された際に消費するコストも変わってくる。公式大会のレギュレーションでは使用キャラクターは固定されるが,このウェポンパックに関しては毎試合変更が可能となる。
くっきーちゃん選手:
例えば,ウェポンパック次第で指向性シールドという盾を使えるキャラが何人かいるんですが,盾の有無で優劣が大きく変わってきます。ちょっとオーバーに言うと,盾有りなら100%勝てるけど,盾無しだと100%負ける……それぐらい影響を受けることもある。
4Gamer:
なるほど,ウェポンパックを含めた戦略面が重要になるわけですね。
ふ〜ど選手:
だからもう,ここからは情報戦ですよね。
くっきーちゃん選手:
大会前に,あえてTwitterで「今日はこのウェポンパックでやってみたけどアリだったな」とか書いてみたりね(笑)。
ふ〜ど選手:
なんで,うちのチームもウェポンパックの戦略は100通りある……ということにしておいてください(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,応援してくれている読者に向けてメッセージをお願いします。
ふ〜ど選手:
じゃあここは俺が代表して。このメンバーで出場するからには,絶対優勝したいと思っています。応援よろしくお願いします。
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。
複数人のチームで行われる対戦ゲームは,取れる戦略が幅広い分,観戦する側にも相応の知識が求められることが多い。その点,チーム「勝ちたがり」の面々が語ってくれた本大会の見どころはかなりシンプルであり,ガンスト2の未経験者にもかなり分かりやすかったように思える。インタビュー終了後,筆者もチーム勝ちたがりの練習に立ち会ったのだが,試合の流れがある程度理解できるようになっていたことを付け加えておきたい。
また,ふ〜ど選手の語った勝負哲学――「運の要素をポジティブに捉えることで,敗因をより冷静に分析できるようになる」という話は,とくにコアな対戦ゲーマーにとって,目から鱗が落ちる思考法なのではなかろうか。……まあ,言うが易しではあるのだが,ふ〜ど選手がこれまでに幾度となく発揮してきた勝負強さの理由が,少しだけ分かったような気する。
「ガンスリンガー ストラトス2」公式全国大会,「GUNSLINGER'S BATTLE ARENA -HOPE-」は,2014年8月23日の15:30より開幕となる。優勝賞金300万円と,最強の栄冠を手にするチームは果たして誰なのか。ガンストファンはもちろん,ふ〜ど選手ファンの格ゲー動画勢も,全国から集結した強豪チーム同士が繰り広げる熱戦に期待しておこう。
「GUNSLINGER'S BATTLE ARENA -HOPE-」公式サイト
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