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この優勝はGODSGARDEN視聴者のおかげ──見事優勝を果たしたかずのこ選手へのインタビューで振り返る「Capcom Cup Finals 2015」
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印刷2015/12/12 00:00

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この優勝はGODSGARDEN視聴者のおかげ──見事優勝を果たしたかずのこ選手へのインタビューで振り返る「Capcom Cup Finals 2015」

 「ウルトラストリートファイターIV」PC / PS4 /PS3 / Xbox 360 / AC)を競技種目に,世界10か国から集った32名の超強豪達が,世界最強の栄誉と総額25万5000ドルの賞金(優勝は12万5000ドル,日本円にして約1500万円)を懸けて競った「Capcom Cup Finals 2015」
 現地からのレポートについては,Twitterの@4GamerLiveでのツイート,およびそのまとめ記事をすでに掲載しているので,その結末をご存じの方も多いはず。本稿では見事優勝を果たしたかずのこ選手へのインタビューで,本大会の激闘を振り返っていこう。

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表彰式で優勝のトロフィーを手にするかずのこ選手
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「Capcom Cup Finals 2015」リザルトまとめ


順位 選手名 国籍 使用キャラ 賞金
優勝 かずのこ選手 日本 ユン 12万5000ドル
準優勝 ウメハラ選手 日本 殺意の波動に目覚めたリュウ 6万ドル
3位 Xian選手 シンガポール 元,ポイズン,ダルシム 2万5000ドル
4位 Poongko選手 韓国 セス 1万5000ドル
5位タイ Snake Eyez選手 アメリカ ザンギエフ,殺意の波動に目覚めたリュウ 1万ドル
5位タイ ミッセ選手 日本 まこと 1万ドル
7位タイ Keoma選手 ブラジル アベル 5000ドル
7位タイ Infiltration選手 韓国 ディカープリ,春麗,ポイズン 5000ドル

準優勝のウメハラ選手。それでも6万ドル(約730万円)という破格の賞金額である
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「ウルトラストリートファイターIV」公式サイト


「Capcom Cup Finals 2015」覇者 かずのこ選手インタビュー


4Gamer:
 まずは優勝おめでとうございます。 今の気持ちを聞かせてください。

かずのこ選手
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かずのこ選手:
 うーん,あんまり実感が湧かないんですよね。CEO2015のときなどは,「よし,優勝したぞ!」って思えたんですけど,今回はちょっと大会の規模が大きすぎて,まだそういう気持ちになっていないというか。

4Gamer:
 ストリートファイターIVシリーズの総決算と言えるトーナメントでしたが,その中でもっとも苦しかった相手をあげるなら,誰になるでしょうか。

かずのこ選手:
 最初の801 Strider選手ですね。CEO2015では勝てた相手なので,対策するのが難しくて。「自力の差で勝つしかない」というつもりで臨みましたが,いざ試合が始まってみたら緊張してしまい,同じ選択攻撃を何度もくらってしまったり,攻めが同じパターンばっかりになってしまいまいました。一方で,相手はしゃがみ強P暴れだとか,腹をくくった選択肢をしっかり選んできたので,かなり苦しめられました。


4Gamer:
 かずのこ選手は,強豪選手の中でも常にマイペースというか,どんな場所でもいつもどおり動ける選手という印象があったのですが,実は緊張していたんですね。

かずのこ選手:
 初戦はもう,相当にテンパってましたね。ただ,そこで勝ち切れたことで,一気に調子が上がった気がします。緊張しているときって,やり込んだ結果が手癖としてそのまま出てくるものなのなんですけど,それでも勝てたわけですから,「自分のやり込みは間違っていなかったんだ」って自信が湧いてきました。「これ以上悪い状況にはならない」って,気が楽になったんです。

4Gamer:
 そのとおりに,その後のかずのこ選手はGrand Finalまで,1試合も落とすことはありませんでした。トーナメントが進むにつれて,どんどん動きが良くなっていった印象です。ではGrand Finalの相手となったウメハラ選手についてはいかがですか。Winner's準決勝とGrand Finalで2回あたることになりましたが,まずWinner's準決勝では圧倒していましたよね。

かずのこ選手:
 2015年1月にCanada Cup Master Seriesという大会がありまして,ウメハラさんにはそこで負けているんです。そのとき,大きい大会で優勝するためには,ウメハラさんは避けられない相手と実感して,重点的に対策を始めました。おかげで,3月のFINALROUNDでは勝つことができ,そこで自分のウメハラ対策,殺意リュウ対策に自信が持てたんです。

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4Gamer:
 その結果が,第5期TOPANGAリーグでの7連勝,そして今回のWinner's準決勝での3連勝につながっていると。

かずのこ選手:
 そうですね。なので,ウメハラさんについては,第5期TOPANGAリーグや今回のために,特別に対策をしたわけではなかったんです。

4Gamer:
 ちょっと脱線するのですが,今大会でとくにマークしていた相手は誰だったのでしょうか。

かずのこ選手:
 第5期TOPANGAリーグで負けたボンちゃんですね。ももちさんもキツい相手なんですが,ブロックが離れているので,当たらない可能性が高そうだと。それに比べてボンちゃんは,順当にいけば3回戦で当たると思っていたので,サガット戦はかなり念入りに準備してきました。結果的に無駄だったわけですが,仮にボンちゃんが上がってきたとしても,勝つ自信はそれなりにあったんですよ。

4Gamer:
 なるほど。ウメハラ選手とのGrand Finalに話を戻します。……かずのこ選手はこの時点で,TOPANGAリーグと合わせて10連勝しているわけで,見ている側としては,最後も3連勝して終わると思った人も多いと思うんです。しかし,ウメハラ選手が食らいついてきて2勝を返しましたよね。あれは,なにが違ったのでしょうか。

かずのこ選手:
 ウメハラさんって,数あるプレイヤーの中でも,ディフェンシブなスタイルとオフェンシブなスタイルを完璧に切り替えられる,稀有な人なんですよ。普段防御的な人が攻めっ気を出したりとか,いつも攻めまくる人がたまに様子を見たりとか,そういうちょっとした切り替えは誰でもできますが,ウメハラさんのはそういうレベルじゃなくて……まったく別の人格が出てくるというか。

4Gamer:
 なんとなく分かります。

かずのこ選手:
 ただ,そういう変化があるだろうことは,予め予想もしていました。それがGrand Finalを勝ち切れた理由だと思っています。


4Gamer:
 壮絶な殴り合いになったGrand Finalですが,ウメハラ選手がオフェンシブに切り替えてくるだろうことは分っていた?

かずのこ選手:
 ええ。しかしまあ,さすがに昇龍(拳)を擦られたときは,「おい! この試合に800万かかってるんだぞ!」って,ちょっと思いましたけどね(苦笑)。

※優勝と準優勝の賞金差額。

4Gamer:
 そういえばウメハラさんは,日本でお話を聞いたときから「”高額賞金が懸かったGrand Finalでこんなことやっちゃうの?“というプレイがしてみたい」って言ってました。つまり,見事に有言実行したわけですね。しかし,高額賞金が懸かっていることの影響は,かずのこ選手自身には何もなかったのですか。

かずのこ選手:
 ラウンド間やキャラクターセレクトのような空き時間には,賞金が頭をよぎってしまうこともありました。でも,試合中はそういう邪念を意識せず,いつもどおりプレイできた気がします。控室で練習しているときも,意識して”普通の対戦”だと思い込むようにしていたので,それがうまくいったみたいです。

4Gamer:
 準備していたとおりに,落ち着いて戦えたと。

かずのこ選手:
 ええ。ああでも,暴れを食らったりガードを崩されたときの,「やばい!」っていう感覚は,普段より強かったなあ。

4Gamer:
 分かりました。ウルIVについては,とりあえずこの大会で一段落といったところかと思いますが,今後の活動はどうされるのでしょう。何か考えていますか?

かずのこ選手:
 まずは休養期間ですね。「GUILTY GEAR Xrd -REVELATOR-」をやり込んだり,「ストリートファイターV」に向けて準備をしようかと。ただウルIVも,とくに今年は楽しさよりも勝つことを目標にやってきたので,今ならもっと純粋に楽しめるんじゃないかとも思っているんです。ここ最近は,GODSGARDENでウルIV配信をすることも減ってましたし。

4Gamer:
 ウルIVの配信をしてしまうと,ライバルに癖を見抜かれるかもしれませんし。

かずのこ選手:
 そうそう。「かずのこはウルIVをまったくやってないけど大丈夫なの?」と思った視聴者がいたかもしれませんが,対戦相手がいないときや休憩したいときに,息抜きとしてほかのゲームの配信をしていただけで,それ以外はずっとウルIVの練習をしていました。色々我慢したことが結果に出てくれて,本当に良かった。

4Gamer:
 改めて,おめでとうと言わせてください。最後に,応援してくれていたファンに向けて,メッセージをいただけますか。

かずのこ選手:
 まず,僕らの活動を支えてくれている,GODSGARDENチャンネルの会員の皆さんにお礼が言いたいです。僕の遠征費用はほとんどGODSGARDENから出ていることもあって,色々と経験を積むことができたのも,そして今回優勝できたのも,皆さんのおかげだと思っています。本当にありがとうございました。
 それと,今回僕が着ていたTシャツに気付いた方もいるかもしれませんが,近々良い知らせができるかと思います。今後はほかのGODSGARDENメンバーの活動の幅も広がると思うので,Team GODSGARDENの活躍に期待していて下さい。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。これからの活躍にも期待しています!

mouse computerのゲーマー向けPCブランド「G-Tune」のロゴがついたTシャツで出場したかずのこ選手
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 各国の強豪達が珠玉の名勝負を演じたCapcom Cup Finals 2015。これまでワールドクラスのトーナメントでは目にする機会の少なかったダークホース──ミッセ選手やKeoma選手の奮闘もあって,昨年以上に白熱したトーナメントとなった。YouTubeのCapcom Fighters公式チャンネルでは,すでにアーカイブが公開されているので,見逃してしまった試合があれば,ぜひチェックしてほしい。

Loser'sでInfiltration選手を破ったまこと使いのミッセ選手(左),驚異的な対空精度を武器に大きな存在感を見せつけたブラジル代表アベル・Keoma選手(右)など,ここに来てのニューカマーの健闘は,本作の競技レベルの高さ,そして層の厚さを知らしめるものとなった
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YouTube「Capcom Cup 2015」Top 32 - Top16

YouTube「Capcom Cup 2015」Top 8


 筆者としては,普段どおりの力を発揮できず,早々に敗退することになった選手が続出したことが,何より印象深い。中でも,ももち選手やボンちゃん選手,ネモ選手やふ〜ど選手は,全員がEvolutionにてベスト8以上の成績を収めている,百戦錬磨の強者達だ。そんな彼らでさえも気負いから来る緊張に押し潰されてしまうとなれば,名実ともに格闘ゲーム史上最大規模のイベントだったと言っても,間違いではないだろう。

 そして,そんな環境でありながら常と変わらない力を発揮し,上位につけてきた選手達の“心量”は,掛け値なしに素晴らしいものがあった。とくに,「無敵技を出すか,出さないか」というシンプルな駆け引きが繰り広げられたかずのこ選手 vs. ウメハラ選手によるGrand Finalは,筆者に鮮烈な印象を残した。7年間にわたって技術と知識を蓄積してきたその総決算が,純粋な人間同士の読み合いに帰結したというのは,とても格闘ゲームらしいと思うからだ。

試合中,「よっしゃあ!」「これは大きいぞい〜!」と一人雄叫びを上げながら好勝負を演じていた板橋ザンギエフ選手。本人曰く「なんなら,家で練習してたときもこんな感じだよ」とのことで,恐るべきは家と同じつもりでCapcom Cup Finals本戦に挑める,その精神力だろう
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Loser's準決勝で行われたウメハラ選手vs.Poongko選手の対戦では,Poongko選手が追い詰められたのち,会場では恒例の「脱げ!」コールが。普段なら応えるPoongko選手であるが,あえてそのままプレイを続行をしていたのが印象深い。惜しくも敗れはしたが,本大会に賭ける熱意が確かに伝わってきた瞬間だった
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 なお,イベントの最後に登壇したカプコン・小野義徳総合プロデューサーの告知によれば,2016年度に開催されるCapcom Pro Tourでは,シリーズ最新作である「ストリートファイターV」が競技タイトルになるという。それ自体は半ば予想されていたものだが,来たる2016年にシーンが大きな転機を迎えるのは間違いない。プロゲーマー達の今後の活動はどうなるのか,コミュニティはうまく移行できるのかなど気になるところはあるが,いち格闘ゲーマーとして,格闘ゲームジャンルのさらなる前進を心から期待したい。来年もまた,史上最高の興行が見られますように。


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