インタビュー
【PR】ユグドの創成期はなぜ明かされたのか。「チェンクロ3」の“年表と伝承篇”に迫る,5周年インタビュー
セガゲームスのスマホ向けRPG「チェインクロニクル3」(iOS / Android / PC。以下,チェンクロ)が,2018年7月26日にサービス5周年を迎えた。大きなメモリアルの節目ということもあって,これまでゲームの内外を問わずさまざまな施策が展開されてきたが,今回4Gamerが着目したのは先日のイベント「ユグド祭 2018」で公開された“年表”であった。
件の年表は“ユグド世界と義勇軍の歩み”と題され,会場の展示パネルで目にすることができたほか,物販の「チェインクロニクル 5th Anniversary パンフレット」に収録されている。年表には作中の物語(第1部,第2部,第3部)が時系列順にまとめられており,加えてこれまでまとめられていなかったユグドの世界の創成期に関する記述もあり,ゲーム内の物語がはじまる以前の,世界の真相を再確認することができた。
しかし,メインストーリー第3部の前半戦が終わり,第8章から新たな動きを見せはじめている今このタイミングで,過去を掘り下げることの意味とはなんなのか。今回は総合ディレクターの松永 純氏に,5周年を迎えた心境とあわせて,年表の存在や,新規展開の「チェインクロニクル エピソード0 伝承篇」を提供する意図などを尋ねてきた。
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みんなの愛情,5年分
4Gamer:
今回はチェンクロの5周年にあわせて発表されたもののなかから,いくつか気になる話を聞かせてください。
松永 純氏(以下,松永氏):
はい,分かりました。よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございます。まずは,まもなく迎える5周年の感想から教えてもらえますか(※インタビュー収録日は2018年7月18日)。
今から5年前のことを考えると,本当に当時の想像の外まで来てしまったなと。
チェンクロのような運営型のスマホゲームで,定期的にストーリーを追いかけてもらう作品が5年も続いた例はそうはありません。だから,プレイヤーの皆さんにいかに新鮮なプレイ感覚を届け続けていくかという想定は,当初の想像を遥かに越えてしまいました。
当のプレイヤーさんにしても,さまざまな遊び方で楽しんでいただいたり,キャラクターを強く愛していただいたり,本作の主軸となるストーリーを深く体験していただいたりと。本当になんというか,プレイしてくださっている皆さんの中に5年分の物語が息づいているのを強く感じています。
4Gamer:
5年ともなると「良いゲーム」であることだけでなく「プレイヤーの熱量」も必要になると思います。しかも,かなりのカロリーが。
松永氏:
それで言うと,2周年を迎えたころにはもう“想像もしていなかったような熱量”を受けていたので,これまでも常に意識してきました。一般的なコンシューマRPGと比べて,膨大な数のキャラクターが登場するゲームにもかかわらず,皆さんのキャラへの愛情は年々高まっていて,今はさらに深くにまで到達されています。大変,嬉しいかぎりです。
4Gamer:
正確には分からないかもしれませんが,「5年前の松永さん」と「今の松永さん」に心境の変化はありますか。
松永氏:
そうですね,5年前とは考え方も見方もまったく変わっている気がします。むしろ,2年前や3年前ですら全然違うかもしれません。基礎的なゲームの設計を除けば,5年前は「物語を提供し続けるスマホRPG」というものの意味を,今ほど深く考えていませんでしたから。
4Gamer:
そういうのは続けているうちに身になっていったと。
松永氏:
はい。例えば,第3部の前半戦では「義勇軍の隊長の主人公」と「第3部の新主人公」が合流し,プレイヤーの皆さんに懐かしさと新しさを同時に楽しんでもらう仕掛けを用意しました。これは5年間,「どうすればプレイヤーさんに一番面白い形で物語を届けられるのか」を考え続けた,ひとつの結果だと思っています。でも,まだまだ足りないです。
4Gamer:
もっとですか。
松永氏:
ええ,もっとです。ここから先もメインストーリーはさらに進んでいきますし,メインストーリーだけに収まらないレベルで,キャラクター達とその世界も広がっていきます。だからもっと多くのアイデアを用いて,物語を楽しんでいただけるようにしていきたいです。
4Gamer:
続いて,先日の「ユグド祭 2018」大阪会場に参加した感想を聞かせてください。
松永氏:
今回のユグド祭は“過去と未来のページを開こう”をテーマに,できるだけ多くの人達と5周年を祝いたいと考え,東京と大阪の2会場で同時開催させていただきました。開発チームが作った「ちぇんくろVR」など,メモリアルだからこその試みもさせてもらいました。
4Gamer:
現地の温度感はいかがでしたか。
松永氏:
とても熱気があり,ステージや展示を存分に楽しんでいただけたと思っています。会場ではプレイヤーの皆さんとコミュニケーションを取らせてもらいましたが,大阪でのイベントということで印象的だったのは,「5年遊んでいて,はじめてイベントに足を運んだ人」が結構いたことです。
4Gamer:
嬉しい話ですね。
松永氏:
そういう人達の熱量は低いものではなく,むしろ「事前登録からずっとチェンクロを追ってきました」という人もいらっしゃいました。プレイヤーさんの熱い想いというのは,すぐ見えるところにあるだけじゃなくて,普段見えないところにも強く深くあるのだなと肌で感じられて。今回は足を運んで本当に良かったと,今あらためて思っています。
4Gamer:
実際に見聞きする機会は貴重ですものね。ちなみに反省点は?
松永氏:
生放送の進行,ですね。両会場をモニタリングしているだけだと,画面上では「なにをやっているのかよく分からない場面」が多々生まれてしまい,配信の視聴者さんが楽しみきれない内容になっていたなと。それと,新情報として発表した「新英雄祭」に関しても,内容を変更させていただくことになってしまいました。
4Gamer:
公式サイトにも告知を出されると聞きました。
松永氏:
はい。これについては発表内容をいきなり変えることになってしまい,大変申し訳ありませんでした。元の内容で一度でも施策を実施してしまうと,今後も同じやり方になるのではと懸念させてしまうことになるため,今回は慎重に検討を重ねたうえで,内容を大きく変更いたしました。楽しみにしていた方々には本当に申し訳ありませんが,RPGとしてより楽しめる形でお届けしたいと考えておりますので,今しばらくお待ちいただければと思います。
4Gamer:
期待しています。それとゲーム本編,第7章にて第3部の前半戦が終わりましたが,手応えはどうでしょう。
松永氏:
第3部では昨年12月に「主人公 帰還篇」を始動させ,主人公と新主人公がストーリー上で合流しました。これについては当初から想像していたとおりのものを作れたため,プレイヤーの皆さんに大きな盛り上がりを提供できたと思っています。ただ,個人的にはもっと盛り上げたかったなと。
4Gamer:
まだ足りなかったと?
今回はあくまで物語前半のクライマックスで,物語全体のエンディングではないので当然と言えば当然ですが,完全な全員集合というより各主人公達に焦点をあてたものになりました。
しかし,先ほど言ったように,プレイヤーの皆さんがキャラクターに注いでくれている愛情は今ではものすごく幅広くなっているので。
4Gamer:
5年分ともなると,キャラクター数がすごいですからね。好みも個々人で違うでしょうし。
松永氏:
例えば第2部のクライマックスでは,第1部と第2部の主要キャラクターがなにかしらの形で登場し,物語をつなげていく演出にしていました。第3部でも同じようにしましたが,最終的に主人公と新主人公を強くアピールしています。面白い内容にできたと確信していますが,同時に「主人公達と新主人公達だけじゃ,足りない」と感じる部分もあって。
4Gamer:
とはいうものの,主人公達と新主人公達だけを集めても,すでに20人以上の顔ぶれになっていますよね。
松永氏:
そうなんですよね。なので「クライマックスの章でとにかく集合すればいい」という話ではなく,今後の物語やゲーム全体で意識していかなければと思っています。
4Gamer:
物語全体でより綿密に織り込まれていったら,もっと面白くなりそうですね。
松永氏:
第3部の後半戦では,より多くのキャラクター達が舞台を駆けめぐり,物語をひとつにつないでいく壮大な流れを届けられるよう,頑張っていきます。すでにはじまっている第8章も含め,今後は前半戦の積み重ねと制作経験を活かして,さまざまなつながりと伏線を用意していき,作中の世界をより広く感じてもらえる工夫をしていきますので,楽しんでいただければ嬉しいです。
誰にでも分かりやすく
4Gamer:
それでは本題のひとつ「年表」についてお尋ねします。毎年,ユグド祭では年表が展示されていましたが,それらはゲームの運営史といったものでした。しかし,今回のものは「作中の物語の時系列」を年表にされていましたね。
松永氏:
はい,そうです。5周年ということで趣向を変えてみました。
4Gamer:
また,年表には既存の物語だけではなく,“ユグドのはじまりの設定”も記載されていました。これらも踏まえて,年表を公開した理由を教えてほしくて。
松永氏:
プレイヤーの皆さんより「ストーリーを取りまとめた設定資料が見てみたい」という声は前々から上がっていました。しかし,どのような形で出すべきか,本にでもまとめて出すべきか,などと考えていたら5周年まできてしまったので,この機会に思いきって公開することにしたんです。
4Gamer:
今のところ年表は会場の展示パネル,あと物販のパンフレットにのみ記載された情報でしかありませんが,パブリックコンテンツとして公開する予定は。
松永氏:
はい。検討しています。
4Gamer:
フリマアプリ頼みというのも世知辛いので,ぜひお願いしたいところですね。
松永氏:
ストーリーも膨大になってきましたからね。あまりの量に「誰かが一言くらい説明したけど,どこでだったかはよく憶えていない」といった情報も増えていますので,プレイヤーさんが各々で物語全体の流れを整理し,把握し,楽しんでもらえるよう,コンテンツ化していければと考えています。
4Gamer:
当のストーリー年表は開発現場ではいつから存在していたんですか。
松永氏:
僕が現場でゲーム全体を仕切っていたころには存在していませんでしたね。いわゆる,「頭の中にだけあった」感じでした。
4Gamer:
となると第2部や第3部と続いて,現場のスタッフの流入・流出も増えて,「こりゃ整理しないとアカン」となってから?
松永氏:
ですね。きっかけはライティング担当者が増えて,ノベライズやアニメ化といった話も出てきたとき,あらためて物語を整理したときでした。物語を年表にすれば,物語の展開の矛盾もすぐに気づけます。シナリオをその場その場で紡いでいくのも限界がありますしね。
4Gamer:
共通認識のための便利アイテムというわけですね。すると,ストーリー年表は開発用の素材なんですか。
松永氏:
はい,今回公開したものは元々は制作用のツールです。年表内の記述に完全な新情報というのは実はありませんし,隠された真実みたいな情報はもちろん消してありますので,“現時点で必要な情報だけを取りまとめたもの”として見ていただければと。
4Gamer:
物語で一番最初に考えたのは,年表のどの部分にあたるのでしょう。
松永氏:
最初に考えていったのは,普通に「第1部の第1話」からです。
4Gamer:
物語のスタートですね。いえ,物語の創作って「設定」や「ラスト」から考える人もいるようなので,ちょっと聞いてみたくて。
松永氏:
もちろん,第1部を書きはじめる前には物語の展開や世界観も形にしていましたが,一番最初はやはり「第1話で義勇軍が登場し,なににどう立ち向かっていくのか」からですね。結局,プレイヤーの皆さんにワクワクしてもらえないのなら設定を作る意味がないので,最初になにを楽しんでもらえるのかを起点にして考えていきました。
4Gamer:
今回の年表でユグドの世界の創成期を目にしたとき,私は「STAR WARS」や「ファイブスター物語」のように年表が先にある物語,言ってみれば“チェンクロサーガ”的な印象を持ちました。作品内で描いていったことを年表にするのと,「その世界で起きていたこと」を年表にするのとでは,興味の持たれ方が違うと言いますか。
松永氏:
年表の第1部以降の記述はこれまでの物語のまとめではありますが,ユグドの創成期に関する記述ではそういった楽しみ方もできると思います。年表を見てワクワクして,物語本編への興味が強くなってくれるといいですね。
・黒の軍勢により、ひとつの世界が滅びる。その滅びは、新たな世界を生み出す(再世)ための浄化を目的としたものである
・ユグドの聖都に次の世界への入口が開かれる
・選ばれし者たちはその入口から次の世界へ到達し、ふたたび人間の世界が広がっていく
■約1万年前
・新たな世界に到達した者たちは、入口が開かれた場所にて、かつての世界の知識や再世の真実を後世に残すための機関を設立する
・その場所が大神殿となり、知識を伝承していく者たちが十七聖人と呼ばれるようになっていく
・次第に各大陸へと旅立つ者が現れるようになる。ゆえに、この世界でユグドは「はじまりの大陸」と呼ばれる
※「年表〜ユグド世界と義勇軍の歩み〜」より一部抜粋
4Gamer:
ぶっちゃけ,最近はどこまで知っていて,どこまで知らなかったのかも定かではないくらい曖昧になっていました。第2部の終盤のやり取りもアヤフヤになってきていて。
松永氏:
実際,そういう方々も少なくないと思います。なにしろ物語のスタートから5年経っていますから。というか,最近は開発側でも「あれって,どうなってたっけ?」となることがあるくらいで(笑)。
4Gamer:
第3部 第8章からは「救済教団」や「ビアルジャ」などが出てきて,過去との関連性が表面化してきていますし。
松永氏:
そうですね,第3部はユグドという舞台を深く掘り下げるストーリーになっていますから。けれども,今のところ年表はすべてのプレイヤーさんに行き渡るものではないので,なくても楽しめる物語を厳守しています。あくまで資料として手元にあるとより分かりやすくなるし,楽しみ方が変わるかもしれない。そういう立ち位置のコンテンツとして公開できればと思います。
4Gamer:
こうして物事が整理された年表を読んでいると,第2部で見ていたときよりも世界の循環の仕組みがわりと科学的に感じられて,「チェンクロの世界を動かすものは科学なのか? 魔法なのか?」と疑問に思いました。年表上の十七聖人達や「超古代文明」の存在もそうですし,最近だと「セレステ」の存在もドンピシャです。
松永氏:
セレステなんかは,かなりSFが入ってますね。
4Gamer:
魔法というにはロジカルで,科学というにはマジカルで,要は「ファンタジーの定義」に対するイメージ問題と言うのでしょうか。チェンクロの根幹のテイストをどう受け止めるべきなのか。ハイファンタジーと思っていた世界が実は,SF(サイエンスフィクション)まではいかずとも,サイエンスファンタジーだったのかもしれない,みたいな。
松永氏:
世界観のテイストについては,今後の物語との関わりもあるのでハッキリとは明言できませんが,セレステ篇のSFチックな流れや用語など,“デジタルな世界観”が根幹のところにいくつかあるのは確かです。
4Gamer:
ですよね。
松永氏:
古典的な剣と魔法のファンタジーの世界観というものは,根っこの部分が観念的,もしくは哲学的であるケースが多いです。「指輪物語」などもそうですね。SFのように,少なくとも描写のうえでは物質的な表現ではないです。しかし,チェンクロのように多人数の書き手が物語を紡いでいく制作構造を採っている場合,物語の核を曖昧にしてしまうとどうしても取り扱いが難しくなってしまいます。
4Gamer:
あっ,理に適った構造が見えてきました。
松永氏:
はい,だから,作家達と一緒にこの世界を描くにあたり,世界観のイメージをパッと理解し合い,明確な意味で共有するには「SF的なデジタルさ」は最適なんです。観念的な設定だと理屈を合致させるのに技術がいりますが,SF的なデジタルさであればシンプルな一行の説明文で済ませやすいです。読む側にとっても,小難しい哲学が連続すると物語体験の間口が狭くなりますから,“誰にとっても分かりやすく”を目指すための世界観の編み方なんです。
4Gamer:
制作面との両立をも考えていたとは,驚きです。
松永氏:
もちろんゲームを遊んでもらっていたら分かるように,チェンクロは“王道ファンタジー”です。プレイヤーの皆さんにはそこを最も楽しんでほしいですし,SF感を過度に推すつもりはありませんので,セレステ篇のテイストと世界観の深部にその要素もある,くらいに留めていきます。あくまで長大な物語におけるちょっとしたスパイス程度に感じて取ってみてください。それとこういった要素って。
4Gamer:
はい。
松永氏:
僕の趣味嗜好も混じってます(笑)。いや,物語の深いところに,なんというかSF的というか,厨二っぽいキーワードがあるのって,熱いですよね!
4Gamer:
必要ですよね,そういうの。結局,一番気になっていたのは「プレイヤーはチェンクロの世界観をどう見ていればいいのか」ってところの保証なんです。「ファンタジーだと思ってたのにSFで,しかも主人公達は“ゲームのキャラクター”だった」とかのどんでん返しは切れ味が鋭すぎて,人によっては気持ちが離れることもありますから。
松永氏:
そういうちゃぶ台返しは絶対にしません。王道ファンタジーであることを捨てるつもりはありませんし,なによりプレイヤーである主人公達が勝ち取ってきた義勇軍の物語を否定したり,覆したりも絶対にしません。この想いは年表に書いた設定よりもさらに手前,チェンクロが掲げている物語のルールとして,物語に携わるスタッフ間で共有していることです。プレイヤーの皆さんにはこれからも王道ファンタジーとして楽しんでもらうことをお約束します。
4Gamer:
セレステ以外は。
松永氏:
セレステ以外はですね(笑)。セレステも物語のストーリーラインは,むしろ王道ファンタジーなんですけどね。それに5周年の人気投票ではさまざまな森妖精を抑えて1位(精霊島ランキング)になりましたし,「SF感が強すぎる」と受け入れられていないわけではなさそうで安心しました。
4Gamer:
人気投票では第3部の主要キャラクターがだいぶ上位に食い込んでいましたね。
4周年のときも結構食い込んでいましたが,この1年でどうなっていくのかもドキドキものだったので,一安心でした。
第7章以前は「主人公が新主人公を食ってしまうのでは」とのご意見もいただいていましたが,新世代キャラクターと既存キャラクターの魅力はどちらも押し出していきたいので,今回はバランスのいい結果が出てくれてなによりです。
4Gamer:
ただし,発表時から確信していましたが,ドラマチックバディ投票に関してはやっぱり「リヴェラwithフィーナ」が1位でしたね。
松永氏:
あれは,そうですね。正直,圧倒的な人気でしたね。
4Gamer:
実際の得票数もですか。
松永氏:
10対1のような極端な比率にはなりませんでしたが,2位の得票数とはかなりの開きがありました。toi8さんに描き下ろしをやっていただけることが決まったときも,やはり「これが本命かな」と予想していました。それでも「第7章完結の今なら主人公withフィーナなんかもありえるのでは」と均衡するであろう投票結果を想像しながらチーム一同でラインナップを選定しましたが,ふたを開けてみたら本命がぶっちぎりといった感じで。
4Gamer:
それだけ存在感が強いんですよ,良い意味で。話を戻しますが,年表の創成期の記述は「これからゲーム内で描かれる」のでしょうか。
松永氏:
そこはもう,今回発表させていただいた「伝承篇」と,メインストーリーでの展開に期待してもらえばという部分ですね。
4Gamer:
年表というのは壮大すぎるほど,お約束では「そういうもの」として放置されることもあります。1行に込めた説明を1000行の内容に膨らませていったりすると,最終的に膨大になりすぎて手つかずになっちゃったりして。
松永氏:
そうですね,そういうケースはよくありますし,プレイヤーの皆さんに公開予定の年表がどのような形になるか次第でもあります。ただ言えることは,チェンクロの物語は戦記や歴史といった事実を埋めるために描いているものではなく,原則としてキャラクターがいて,彼らの物語があるんです。
4Gamer:
歴史ではなく,プレイヤーとキャラクターの視点で描く物語ということですね。
松永氏:
ええ,創成期から第1部がはじまるまでの出来事についても主軸は,まず該当するキャラクターがいて,関連性が強い題材をピックアップして,この世界がどのような転換を迎えてきたのかを紹介することです。キャラクターが主体でなければ,チェンクロ全体の物語の見せ方から外れていってしまいますので。
4Gamer:
なるほど。じゃあ話を移しますが,伝承篇は期間限定イベントなのか,あるいは絆の軌跡シリーズに相当するのか,どのような形式で提供されるのでしょう。
松永氏:
提供方法は詰めている段階ですが,基本的に「外伝」になるかと思います。とはいえ完全に過去を語るだけ,歴史を埋めるだけのものにはしないつもりです。例えば,第1弾の「九領vs精霊島 戦争篇」は第3部 第8章・第9章と伏線がリンクした物語として展開します。精霊島へやってきたシュザが昔を振り返り,それが物語につながっていく,そういうところも楽しんでいただければと!
4Gamer:
いいですね。現在発表されているエピソードは,第1部の10年前で,作中でも度々触れられていた鬼と森妖精の確執の原因を描く「九領vs精霊島 戦争篇」をはじめ,魔法兵団が結成される以前の物語「魔法兵団学生篇」,王都陥落後の副都の戦い「シルヴァ篇」,そして「ユリアナ編」「アシュリナ篇」「主人公篇」でしたか。
松永氏:
そうです。
4Gamer:
個人的に主人公篇は気になります。「主人公とピリカを中心として義勇軍が発足される」のは知っていましたが,実際にどうだったのかは触れられていませんでしたし。
松永氏:
そこ,今までいっさい描いていなかったので。「実は過去にこのキャラとこのキャラが関わっていたのか!」といった楽しみを味わってもらえるものを目指して制作中です。
4Gamer:
キャラクターに関しては“若武者時代のヨシツグ”が登場するとのことですが,風貌が変わるケースは多いですか。
松永氏:
主要キャラクターを中心に新しいビジュアルを用意していきますのでご期待ください! と言っても,無理してまで全員を新しくするつもりはないです。物語上で必然性があるキャラクターであれば,ですね。例えばラファーガなんかは10年では見た目の歳は変わらないです。シュザもヨシツグよりオトナでしたから,10年の差だと容貌はギリギリそのままだと考えられます。それぞれのイメージごとですね。
4Gamer:
ちなみに,コンテンツ名に「伝承」の語を使っている理由はありますか。過去篇だったり,追憶篇だったり,ほかにも単語があるなかで。
松永氏:
意味はあります。過去や追憶とすると,どうしても終わった物事として捉えられてしまいますが,伝承篇では「過去が現在の物語につながっている」ことを感じてほしいので,それをうまく表す言葉にしたいと考えました。プレイヤーの皆さんにはこれから提供する物語をとおして,「そういうことか」と思ってもらえれば嬉しいです。
メインストーリーの楽しみ方の拡張?
4Gamer:
これから6周年を目指して再出発となりますが,今後の大きな方針はなんでしょう。
松永氏:
今年は「過去と未来に広がる物語」というテーマを掲げていましたが,そのなかには大目標として“たくさんのキャラクターの魅力をどのように見せていくか”が内包されています。5年を経て,これだけのキャラが登場している現在,ただメインストーリーを描いていくだけでは多くのキャラの活き活きとした姿を描ききるには至りません。
4Gamer:
ふむふむ。
松永氏:
だから舞台をあえて過去にすることで,今の主人公達のドラマを追うだけでは描けないものを描く,伝承篇にはそういう意図を込めています。また今年から導入しているものとして,大型イベントのストーリーなども本編とリンクさせ,サイドストーリー的に楽しんでもらえるようにしました。たくさんキャラクターのそれぞれの活躍を楽しんでもらう,そのための方法をもっと模索していくのがこれからの大きな方針ですね。
4Gamer:
とりあえず,年内に第3部が完結することはなさそうですね。
ないですね。なにせ,後半戦がスタートしたばかりですから。
4Gamer:
早いもので,第3部も開始からもう1年半が経ちましたか。
松永氏:
第1部だったら,もう完結していただけの時間が経ってますね(笑)。
4Gamer:
とくに膨らまないとは思いますが,先日のイベントに出展された「ちぇんくろVR」が,なにか新規展開のための基礎開発だったりする可能性は?
松永氏:
今回は単純にファンの皆さんに楽しんでもらうためのものでしたが,最近は「もっといろいろな展開を試したい」と強く考えていて,今後はゲームを飛び出した先でもなにかしたいです。できれば先日のユグド祭で発表したかったのですが,水面下で着々と進んでいるゲーム外での展開などもたくさんあるので,ぜひ期待していてください。
4Gamer:
今年のトレンド「eスポーツ」に乗っかって,eスポーツ化しちゃったりは。
松永氏:
毎回オフイベントで盛り上がるタイムアタックなんかは,アリかもしれないですね。最近はもうプレイヤーさんの操作スキルが高度になりすぎて,どのようなテクニックが発揮されているのか,同じくコアなプレイヤーさんにしか分からなくなっていたりもしますが(笑)。
4Gamer:
未だに置きチアリーもできない私にはちょっと……。
松永氏:
真逆の話になりますが,昨年公開した「アリーナ」や「年代記の塔」などのバトルコンテンツは,プレイヤーさんに広く求められるものとは少しズレていたり,用途が足りなかったりを実感しています。今度は各コンテンツを遊んでくださっている方々に向けて,きちんと改修していきたいと思います。
4Gamer:
その2つは結果的に,初心者には少し縁遠かったかもしれません。
松永氏:
サービス5年めのチェンクロにおいて,新コンテンツの実装は内部プログラムの圧迫にも関わってきますので,今後は遊びの幅をどう広げていくかを慎重に検討しつつ,チャレンジを続けていきたいと考えています。
4Gamer:
なんだかんだで昨年の発展は目覚ましいものでしたし,期待しています。
松永氏:
ありがとうございます。ひとつひとつの遊びを,もっと深めていきたいですね。ゲームシステムに関してもサービスから5年経って,これからも快適に遊んでもらうために,今だからこそ必要な最適化を施していく予定です。
4Gamer:
一番大きいのはやはり「オートバトル」の実装ですよね。
松永氏:
そうですね。非常に悩ましい部分でした。オートバトル自体は数年前にも検討していましたが,僕はRPGとしてのプレイ体験を大切にしたかったので,そのときはNGと判断しました。当時はバトルコンテンツ自体が今ほど豊富にありませんでしたし,周回プレイが求められがちなものも魔神襲来イベントなどの一部に留まっていたからです。
4Gamer:
よく「レベル50くらいまで勝手にやってくんねえかな」と思っていました。
松永氏:
そういう声は昔からよくいただいています。しかし,当時はその点を置いてもマニュアルでプレイしてほしいと考えていたんですよね。なにしろ,そのころは“ゲームとして遊べる部分”がそこにしかなかったので。
4Gamer:
では,オートバトル実装の決め手はなんだったのでしょう。
松永氏:
探索や絆の大出撃など,バトル以外のちょっとしたコンテンツが増えたのもありますが,決め手は深淵の渦と年代記の塔ですね。現在のコアプレイヤーさんはこの2つを遊んでいる時間がとても長くなってきています。そのため「雑なプレイでもいける初級の場面」などが転じてストレスにならないよう,実装することを決めました。それにオートバトルがあっても“プレイヤー操作が求められる重要な場面”は当時より増えているので,感覚で使い分けてもらえると遊び方にもメリハリが出るかと思っています。
4Gamer:
今だからこその判断だったんですね。オートバトルの仕様は「キャラクター移動」と「スキル発動」の自動化ですか。
松永氏:
いえ,キャラクターの移動だけです。なので,スキル発動が求められる場面では使わないほうが賢明です。
4Gamer:
じゃあ「戦士パや騎士パでも操作せずにバトルできるもの」だと。
松永氏:
基本的な考えはそれです。ただ,キャラクターを自由に移動させ,プレイヤーさんはスキルボタンを押すだけというプレイも可能です。
4Gamer:
オート中でも任意に操作できるのはいいですね。それと新機能については「シークレットクエスト」も搭載されるとのことで。こちらはメインストーリーに対して,どのような立ち位置にあるのでしょう。
松永氏:
シークレットクエストは現在調整中ですが,読むのが必須の追加シナリオというより,章ごとの補足や騒動の裏側にあたる“おまけストーリーがクエストとして出現する”ものです。出現条件は該当の章のクエストを一定回数プレイすることですが,メインストーリーに登場するキャラクターでパーティを組むと出現しやすくなります。このシステムの目的は,メインストーリーの楽しみ方の拡張です。
4Gamer:
楽しみ方の拡張ですか。具体的には?
松永氏:
ほかのコンテンツのような戦略的な広げ方ではなく,物語を楽しむうえでの“ごっこ遊びの感覚”を深める,と言うのでしょうか。ストーリーを中心に楽しんでくれているプレイヤーさんの中には,アリーチェ篇は「フロスのメンバーで挑む!」という遊び方や,アマツ篇は「アマツをリーダーにしたい!」という遊び方をしてくれている人が多くいます。
4Gamer:
ああ,そこに付加価値をつけると。
松永氏:
はい。そうやって楽しんでくれている方々には今まで,その手応えと言いますか,そうプレイすることでのゲーム的なメリットはとくになかったんですよね。でもシークレットシステムがあるとパーティ構築にも意味が生まれて,さらに章クリア時におまけストーリーがポンッと出現しやすいという喜びを感じてもらえるようになります。
4Gamer:
そのほかサウンドトラックを発売するとか。
松永氏:
はい,発売します。CD 3枚組です。
4Gamer:
また大ボリュームで。
松永氏:
楽曲数も例にもれず,膨れ上がってきましたからね。最初はCD 2枚組くらいで考えていましたが,甘かったです。かといってどれを採用し,どれを削るとは考えたくなかったので,メモリアルの勢いで既存楽曲をすべて収録することにしました。
4Gamer:
ちなみに松永さんにとってゲーム音楽とはどのようなものでしょう。目に入るものが先,世界観は音楽で作られる,ゲームBGMで育ってきた,いろいろあると思いますが。
僕はビジュアルなどと同じ,「ゲームの体験を形作るうえで大切なパーツのひとつ」と考えています。
4Gamer:
楽曲自体の構成はどうでしょう。ループ性だったり,耳に残るクセだったりありますが。個人的には,最初の5秒で印象に残るBGMでないと意識しづらく。
松永氏:
ゲームBGMって特殊ですからね。繰り返し聞くことによって味が出てくるみたいな,一般的な音楽とは作りが違っているので。ですが,セガのコンポーザーはそもそも,そういう部分への意識やこだわりが強い人が多いため,僕がとくに口出しすることもなく完璧に作り上げてくれます。
4Gamer:
チェンクロのサウンドはずっと内製オンリーなんですか。
松永氏:
はい。第1部から第3部までずっと内製です。最初のころは「王道ファンタジーの音楽とは,なにか」を話し合い,ホーム画面やバトルなどそれぞれのシーンごとに擦り合わせていました。
4Gamer:
音楽の創作って「こんな雰囲気で」の注文の仕方が,私のような素人にはまったく想像できないのですが。
松永氏:
そうですね。実際,明確な方法はないんじゃないかと思います。擬音で伝えてもうまく伝わりきらない。「こんな感じで」と楽曲を持ち込んでもイメージが強すぎて合致しない。コンポーザーさんによって“良い”の共有の仕方は違いますね。
4Gamer:
メモしときます。あとは7月から9月まで,1年の4分の1を祝っていく5周年イベントに関してはどうでしょう。まだ発表していない隠し玉もありますか。
松永氏:
はい。まだ発表していないこともたくさんあります。もちろん,9月以降も盛りだくさんなので,ご期待いただければと思います!
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,これからの1年に対する意気込みをお教えください。
松永氏:
昨年のチェンクロは「ずっと走っていくための体力をつける」ための期間でしたが,5周年という大きな節目を迎えた今後は,より細かなサービスに目を向けていき,プレイヤーの皆さんと向き合い,ひとつひとつに対応していければと思っています。当然,ストーリーもバトルももっと喜んでもらえるよう厚みを加えていきますし,ゲーム外でも広がりを見せられるよう動いています。5年を越えて,義勇軍の物語はますます広がっていきますので,引き続きチェインクロニクルを一緒に楽しんでいきましょう!
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