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クラウドファンディングによる新Ver.の開発が決定したインディーズ格闘ゲーム「ヤタガラス」。AC版も登場予定の本作について,制作者の二人に話を聞いた
また,本作はクラウドファンディングサイト「Indiegogo」で,新バージョン「ヤタガラス Attack on Cataclysm」(2014年2月発売予定)の開発費が募集され,目標額の6万8000ドルを大幅に超える11万8243ドル(約1170万円)を達成したことも記憶に新しい(関連記事)。国産格闘ゲームでは初のクラウドファンディング利用の資金調達事例であり,さらにこの新バージョンは,アーケード向けコンテンツ配信システムであるNESiCAxLive版(2014年内稼働予定)の制作も予告されているなど,格闘ゲームファンにとっては,注目すべき点の多いタイトルと言えるだろう。
今回4Gamerは,東京ゲームショウの会場にて,本作の開発を統括するしざ氏と,バトルプランナーを務める梅園氏にインタビューする機会を得た。「ヤタガラス」が目指したものや今後の展望,インディーズゲームデベロッパから見たクラウドファンディングの魅力など,興味深い話をうかがったので,ぜひご一読いただきたい。
同人版「ヤタガラス4」公式サイト
「Yatagarasu Attack on Cataclysm」公式サイト
「ヤタガラス」誕生の経緯とローレゾの魅力
4Gamer:
よろしくお願いします。まず「ヤタガラス」の制作経緯から聞かせてください。
しざ氏:
ヤタガラスを制作した主要メンバーは,僕と梅園と,あとデザイナーのコタニさん※の3人なんですが,各自が遊びたい格闘ゲーム像を具現化するために制作を始めた,というのがそもそもの発端です。6年前ぐらいのことですね。
※コタニ:トモユキ氏……「THE KING OF FIGHTERS」シリーズや「虫姫さま」「鋳薔薇」「ピンクスゥイーツ」などのデザインを手がけたゲームデザイナー。本作ではキャラクターデザインおよびグラフィックスを担当している。
4Gamer:
しざさんご自身は,どんな格闘ゲームが作りたかったのでしょうか。
しざ氏:
僕とデザイナーのコタニさんは,ローレゾドットの格闘ゲームが作りたかったんです。ただ,それを普通のゲーム会社で企画したとしても,通るわけがないですよね。それなら,自分達で作るしかないと考えました。
4Gamer:
では,梅園さんの理想は?
最近の格闘ゲームって,まずコンボができないと戦えないじゃないですか。
4Gamer:
確かに「コンボができて,はじめてスタートライン」という風潮はありますね。
梅園氏:
格闘ゲームのプレイスキルって,例えば読み合いが強いとか,差し合いがうまいとか,いろいろな要素があると思うんです。ただ,最近はそのどれが欠けても勝てないゲームが多くなってきたように思います。なので,どれか一つでも得意な部分があれば戦える格闘ゲームが作りたいと考えました。
4Gamer:
その結果,シンプルかつクラシカルなプレイフィールになった訳ですね。しかしヤタガラスには,「ストリートファイターIII」(以下,ストIII)シリーズにある,ブロッキングを模したゲームシステムがあります。これを取り入れたのは何故でしょうか。
梅園氏:
これは,自分自身が元々ストIII 3rdのプレイヤーだったというのが大きいですが,一発逆転の要素と,読み合いに幅を持たせる,というのが狙いです。相手の安定行動に対し,リターンを取るシステムとして,ブロッキングはものすごく秀逸だと思うんです。
4Gamer:
ただ,ブロッキングを始めとした高度な防御システムは,プレイヤーのハードルをあげてしまうことにもなりませんか?
梅園氏:
ええ。なので,本作ではボタンでブロッキングを行えるようにしました。こうすれば,ガードしながらでもブロッキングを狙えるので,初心者の人にもチャレンジしてもらいやすいんじゃないかと。
4Gamer:
なるほど。しざさんは「ローレゾドットの格闘ゲームが作りたかった」とのことですが,ローレゾドットの魅力って,どんなところですか。
しざ氏:
なんというか,見ていて安心するんですが……そんなことないですか? 逆に,ヤタガラスを作り始めるまでは,ローレゾドットの魅力を説明するのがこんなに大変だとは思いませんでした。
4Gamer:
いや,お気持ちはすごく分かります(笑)。初期のKING OF FIGHTERS(以下,KOF)なんか,職人芸を感じますよね。
梅園氏:
昔のKOFシリーズなどは容量制限が厳しくて,アニメーションのコマ割りなどは,かなり節約されていたと思います。その分,デザイナーの創意工夫が反映されて,ものすごくカッコ良いものになっている。
しざ氏:
印象深いモーションは,そうした創意工夫の中から生まれてくるんです。現行タイトルは,解像度が高くてコマ割りも滑らかですが,記憶に残るかと言う意味では,必ずしもそうではない。
梅園氏:
もちろん,現在のハイレゾ路線のグラフィックスはとても美しいわけですが,そこでは生まれにくい表現が,ローレゾの世界では可能だと思うんです。
4Gamer:
日本のリミテッドアニメ的な手法ですね。個人的な例で恐縮ですが,KOFだと草薙 京の+弱K(外式・轟斧 陽)なんか,コマ数は少ないのに凄くカッコイイ。一方で,+強K(八拾八式)なんかはヌルヌル動くわけで,その緩急の付け方がすごいな,と当時思ったものです。
梅園氏:
そうした例としては,自分はストIII 3rdのまことが印象深いですね。彼女,実は物凄く手がデカいんですよ。良く見るとちょっとおかしいんですけど,動いたときに物凄い迫力がある。
4Gamer:
ああ,確かに。PA(パーソナルアクション)時なんか,頭より手の方が大きいんじゃないかという気がします。
しざ氏:
そういうデフォルメの効いた表現というのは,荒めのドット絵の方が,やりやすいんですよ。とはいえ,僕ら2人はデザイナーではないので,そこはコタニくんがこだわりが反映されている部分なんですけど。
梅園氏:
デザイナーさんはすごい! という話です(笑)。
しざ氏:
そんな感じで,それぞれのこだわりを,なるべく否定せずに盛り込む方向で,これまで制作してきたんです。
インディーズゲームとクラウドファンディングのこれから
4Gamer:
新バージョンである「ヤタガラス Attack on Cataclysm」ですが,クラウドファンディングから生まれるタイトルということで,格闘ゲーム界隈ではかなり話題になりました。NESiCAxLive版の制作も予定されていることのことですが,この経緯についてお聞かせください。
しざ氏:
最初は,日本のゲームをローカライズして海外で販売することを業務としているイギリスのパブリッシャー,Nyu Mediaさんから,ローカライズ費用を捻出するのに,クラウドファンディングを利用してみないか,という話があったんです。でも,どうせやるなら新作をぶち上げた方が絶対面白いだろうと思いまして。結局こっちでいろいろ膨らませる形で,やらせてもらいました。
4Gamer:
ヤタガラスのクラウドファンディングは,ストレッチゴールの見せ方がうまかったように感じています。段階に分けた特典であるとか。
梅園氏:
その辺りは,Nyu Mediaさんと僕たちが一緒に考えたのですが,「Skullgirls」さんの事例は,かなり参考にさせていただきました。格闘ゲームって,新キャラクターを1体追加するだけでも,すごくコストがかかるんですよ。だからいきなりそこを目標にせず,細かく段階を分けたのが良かったのかな,と思っています。
しざ氏:
集まったお金をどう使うかを詳細に公開したのも,良かったんじゃないかと。とくに日本では,まだあまりこういう事例も少ないですから,そういう透明性は大事なんじゃないかと。
4Gamer:
なるほど,確かにそうですね。では実際にクラウドファンディングに挑戦してみて,どんな感想をお持ちですか?
しざ氏:
一番良かったのは,応援してくださる方の声が直接届くという点ですね。資金的な援助はもちろんなんですが,開発者としてはその声がものすごくありがたいんです。
梅園氏:
反響という意味では,海外のイベントの写真や,感想などもたくさんいただきました。こういうクラシカルなゲームを,海外のプレイヤーが僕等の想像以上に好きでいてくれていることが分かって,嬉しかったですね。
しざ氏:
それに,今回ヤタガラスでは約3500人から援助をいただいたわけですが,それってつまり,ゲームのリリースと同時に,少なくとも3500人の方が遊んでくれるってことじゃないですか。それが開発のモチベーション向上という意味で,すごく励みになるんですよ。
4Gamer:
ではインディースゲームの開発において,クラウドファンディングは今後大きな潮流となるのでしょうか。
しざ氏:
うーん。日本の同人サークルをベースとしたゲーム開発では,そこまで大きな流れにはならないでしょうね。同人サークルに一番足りないのは,お金ではなくて時間ですから。先ほど言ったような,プレイヤーとの交流という意味では,意味があるとは思いますが。
4Gamer:
なるほど。
しざ氏:
コストをかけずに作ることをポリシーにしている人も少なくないですからね。もちろん,それはそれで素晴らしいことです。ただ,今回の僕らのように,クラウドファンディングを利用することで,初めて可能になるプロジェクトもあるわけで。
梅園氏:
同人も商業も,第一は物作りじゃないですか。その理想に向かううえで,資金が障害になることもある。そんなときは,クラウドファディングは強力な味方になってくれると思います。
その先駆けとして,ヤタガラスの成功には大きな意味がありますね。ところで話は変わるのですが,NESiCAxLive版については,クラウドファンディングとは何か関わりがあるのですか?
梅園氏:
いえ。NESiCAxLive版は,タイトーさんから直接お話をいただいたもので,クラウドファンディングとは関係ありません。こちらは3人の追加キャラクターが完全に揃った状態で出したいと思っているので,PC版の「ヤタガラス Attack on Cataclysm」よりも後になります。
4Gamer:
3人の新キャラクターは,どんなコンセプトなんですか?
梅園氏:
現行バージョンは登場キャラクターが8人と少ないので,「もっとこういうキャラが遊びたい」という要望に応えるものにしたいと思っています。具体的な情報については,順次発表する予定なのでご期待ください。
同じく追加キャラクターのアズール。忍者らしい見た目だが,性能的にはスタンダードなものになる予定とのこと |
人気投票で見事1位となり,追加が決まったエイジャ・ソールズベリー。大振りな剣戟で戦うキャラクターとのことだ |
4Gamer:
分かりました。……ところでヤタガラスといえば,特徴的な実況システムが印象深いのですが,これもNESiCAxLive版に搭載されるんですか?
梅園氏:
それはどうなるか。まだ分かりません(笑)。あれはもう完全に悪ノリというか……同人というフィールドだから許された部分もあると思うので。ただ,僕達としてはやりたいですね。あと新バージョンには,Evolutionの実況ではお馴染みのJames Chen氏やUltraDavid氏の実況も新たに収録となる予定です。
しざ氏:
Evolution 2013の配信を「ああ,この人がヤタガラスで喋るんだ……」という感じで見ていました(笑)。とても感慨深いです。
4Gamer:
分かりました。アーケードゲームファンとしても,期待したいと思います。それでは最後に,読者にメッセージをお願いします。
梅園氏:
皆さん,クラウドファンディングへの多大なご協力,ありがとうございました。
しざ氏:
自分が面白いと思うものをこれからも作っていきますので,よろしければぜひ遊んでいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
同人版「ヤタガラス4」公式サイト
「Yatagarasu Attack on Cataclysm」公式サイト
- 関連タイトル:
ヤタガラス Attack on Cataclysm
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ヤタガラス Attack on Cataclysm
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