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信長の野望・創造公式サイトへ
  • コーエーテクモゲームス
  • 発売日:2013/12/12
  • 価格:【通常版】
    パッケージ版:1万290円(税込)
    ダウンロード版:8900円(税込)
    【30周年記念TREASURE BOX】
    パッケージ版:1万4490円(税込)
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プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー
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印刷2013/09/14 00:00

インタビュー

プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

画像集#015のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー
 コーエーテクモゲームスは2013年11月14日に,シリーズ最新作となるシミュレーションゲーム「信長の野望・創造」PC / PlayStation 3)を発売する。
 シリーズ第1作である「信長の野望」が発売されたのは1983年。まだまだ限定された能力しか持たない(それこそ現代のスマートフォンにも遠く及ばない)PCの上で動いていたそのゲームは,その後幾多の続編と,数えきれないほどの戦国ファンを生み出した。30年たった今,「信長の野望」は,日本におけるストラテジーゲームの代名詞ともなっている。

 そんな歴史を持つシリーズの最新作は,どのようなゲームを目指して作られているのだろうか。プロデューサーである小笠原賢一氏に話を聞いてみた。

「信長の野望・創造」公式サイト



生粋の「信長の野望」ファンがプロデューサーに


4Gamer:
 小笠原さんは「信長の野望」を作りたくて当時のコーエーに入社されたと伺っていますが,最初にプレイしたシリーズ作品は何でしたか。

「信長の野望・創造」プロデューサー 小笠原賢一氏
画像集#020のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー
小笠原賢一氏(以下,小笠原氏):
 いわゆる“17か国版”,最初に出た信長の野望です。

4Gamer:
 一番初めの作品からプレイしていたんですね。

小笠原氏:
 ただ当時はPCが家になくて,友人の家まで行って,その友人の父親のPCで遊びました。あれは本当に「こんなゲームがあるんだ!」という衝撃でしたね。そもそもPCゲームというだけで新鮮な時代でしたが,その中でもとくにハマりました。

4Gamer:
 それはもともと戦国時代に興味があって,ということでしょうか。

小笠原氏:
 最初から戦国時代がすごく好きだった,というわけではないんです。ただ,親が日曜8時からのNHK大河ドラマをよく見ていたので,小さな頃から徳川家康などは知っていましたが。小学校6年生になると,社会科で歴史を勉強するようになって,そこでとりあえず武田信玄や織田信長,徳川家康,豊臣秀吉,上杉謙信といったあたりが頭に入ってきて。でも,まだこの頃は特段「戦国時代が好きだ!」というのはなかったですね。

4Gamer:
 それなら,どこにでもいる“ごく普通の小学生”ですね。

小笠原氏:
 ええ。ところがある日,社会の歴史資料集を見ていたら,うちの家紋が武田家の家紋と同じということに気がつきまして。それで武田信玄に興味を持ったんです。その後,新田次郎の「武田信玄」を読んで,これにハマりました。
 そうやって戦国時代が好きになってきたときに,「信長の野望」と出会いまして。ゲームを見たら武田信玄がいるじゃないか! と。初めてプレイした武将も武田信玄でしたね。そこからはもう戦国時代大好き,「信長の野望」大好きという人間になりました。

画像集#016のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 その頃からずっと「信長の野望」漬けというわけですね。

小笠原氏:
 ただ,その頃は野球部に入っていたので,部活が忙しくてぜんぜん遊べなかったんですよ。その後,大学に入ってファミコンを買いまして。そのファミコン向けに「信長の野望・戦国群雄伝」が出たんですね。
 一人暮らしだったので,親の目を気にすることもなく,ひたすら遊び続けました(笑)。その1つ前の「全国版」も遊んでいるのですが,「戦国群雄伝」では大名に加えて配下武将がでてくるんですよね。これがまた面白くて。
 そのうえ,周囲に信長の野望が好きな友人がいまして,家に集まってコントローラを回しながらマルチプレイを遊んで,本当にもう徹夜の連続でした。このあたりで人生の方向性が決まりましたね(笑)。

4Gamer:
 なるほど(笑)。
 「信長の野望」以外のストラテジーゲームは,何かプレイされましたか。

小笠原氏:
 ファミコンでコーエー(当時)のいろいろなゲームを遊びました。「蒼き狼と白き牝鹿」とか,「水滸伝」とか。
 「蒼き狼と白き牝鹿」は世界が舞台ということで,これはやりたいと。「水滸伝」は,「コーエーが水滸伝という新しいゲームを出す」という情報を得たので,わざわざ水滸伝の本を読んで予習しました(笑)。
 「水滸伝は」シミュレーションゲームですが,RPGのようなプレイ感覚もあって,ゲームデザインとしてこれはすごい,面白いと思いましたね。

4Gamer:
 オンラインゲームなどはどうでしょうか。

小笠原氏:
 「信長の野望 Online」を作ったのが自分です(笑)。

4Gamer:
 そ,それは知らずに失礼な質問をしました。それなら当然遊び込んでいますよね。

小笠原氏:
 はい。信長の野望 Onlineの構想が生まれたのは,2000年に「真・三國無双」をリリースして,さあ次はどうしようと考えていた頃に,シブサワ・コウから「新しいスタイルの『信長の野望』を作ってみないか」と言われたのがきっかけでした。
 その前からMMORPGは結構プレイしていましたので,「MMOを作ってみたい」と思っていたのですが,それには莫大な制作費がかかるし,チャレンジは難しいだろうと考えていました。ところがそこにシブサワコウが「MMORPGにしてみたら? オンラインゲームにしようよ」と。まさに渡りに船でした(笑)。

4Gamer:
 自分の好きなMMORPGで,「信長の野望」を作れることになったんですね。

小笠原氏:
 自分がもともとハマった「信長の野望」とは明らかに違うゲームですが,ともあれ「信長の野望」が作れるということで,ものすごいハイテンションになりましたね。
 初めてのMMORPGということで,しんどいこともてんこ盛りでしたし,だいたい2年半くらいかかってサービス開始にこぎつけるという状況でした。ですが作っていて楽しかったですし,非常に思い出深い作品です。10年経った今でもプレイヤーの皆さんに楽しんでいただけていて,本当にありがたいですね。サービスがずっと続いてほしいと思っています。

4Gamer:
 立場的に言い難い部分もあると思いますが,具体的にこの武将が好きというのはありますか?

小笠原氏:
 そうですねえ,確かに邪推されちゃうと困るんですが(苦笑)。ともあれ,武田から戦国時代に入った人間なので,武田家が好きで,山県とか馬場などの武田関係の武将が好きですね。
 最終的に武田家は滅んでしまうわけですが,その後の江戸時代を経てもなお,山梨県の方は「信玄公」を尊敬していますよね。これこそまさに「歴史に名を残す」そのものだなと思っています。

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進めるも無視するも「自由」なフリークエストシステム


4Gamer:
 それでは「信長の野望・創造」のお話に移らせてください。まずは新たに採用される「フリークエストシステム」について。これまでのシリーズになかったクエスト方式が採用されるということで,プレイヤーには期待感もあれば,不安もあるのではないかと個人的に思っているのですが,導入の狙いなどを教えていただけないでしょうか。

小笠原氏:
 シミュレーションゲームには基本となるゲームの仕組みがあります。その仕組みの上でプレイヤーがプレイを楽しむわけです。
 「信長の野望」の場合,国を富ませ,軍事力を整え,天下統一のために他国を攻める,というのがゲームのベースです。ですが極論を言えば,これは数字を追うだけ,と言うこともできます。

画像集#023のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 言われてみれば確かにそうですね。

小笠原氏:
 一方で,戦国時代には特有の魅力があります,政治家として,あるいは軍人としての武将たちの人間性,武将たちが集まるひとつの勢力である国にまつわるドラマ,そして日本が統一に向けて世の中が変わっていき,時代が激しく動く様子といったものです。
 その戦国時代らしさ,武将の人間ドラマや激動する時代,いわば戦国の息吹といったものを,プレイする方にはゲームを遊ぶなかで感じてもらいたいのです。「戦国らしさ」を,ベースとなるシステムに乗せる形ですね。それでたどり着いたのが,フリークエストシステムです。

4Gamer:
 なるほど。ですが,これまでのシリーズ作品にも,例えば歴史イベントなど,戦国時代らしさを感じさせるものがあったと思うのですが。

小笠原氏:
 はい。しかしそういったイベントは,ゲームのギミックとして捉えられてしまう傾向があるんです。例えば攻略サイトでイベントを起こす条件が紹介されて,じゃあそれを起こしてみようとプレイし,実際に起こった,よかったよかった,という楽しみ方になりがちでした。戦国時代の雰囲気を楽しんでほしくて作った歴史イベントなのに,「歴史イベントを再現する」というゲーム的な手順になってしまうんです。

4Gamer:
 確かにそうかもしれません。

小笠原氏:
 プレイヤーは,日本の統一を最終的な目標としてゲームをプレイしますが,そこには隣の国を落としたいなどといった,中期的な目標があります。そのために何をやらなくてはならないのか。そしてこの「やらなくてはならない」は,戦国時代においては具体的に何をすべきなのか。
 「創造」では,この目標を提示します。そしてそういった小さな目標を連続的に達成していくことにより,結果として大きな中期目標が達成できる,という流れになります。いわば,戦国時代らしさと,ゲームシステムの,融合を図ったわけです。
 このシステムをフリークエストシステムという名称でご紹介しました。

画像集#021のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー 画像集#022のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 なるほど,大きな目標のために小さな目標を達成していくというのは自然な流れですね。

小笠原氏:
 ただ,「信長の野望」は10人いれば10人が違う楽しみ方をするシミュレーションゲームです。戦国らしい要素と言っても,ゲームとして純粋に楽しみたい方もいらっしゃいます。ですので,クエストは「絶対やらなくてはならない」というものにはしていません。発生したクエストを,やるもやらないも自由です。そこが「フリー」な部分ですね。

4Gamer:
 では,発生したクエストを実行しなくても,ペナルティなどはないということですか。

小笠原氏:
 ありません。ただしクエストを達成すると,ちょっといいことがあります。また,ゲームが史実に沿った形で進みやすくもなります。ただ,あくまで「やればお得,やらなくても楽しめる」ものです。

画像集#013のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 クエストにはどのようなものがあるのでしょうか。

小笠原氏:
 クエストには大きく分けて3種類あります。
 まず「大名録」。いわゆる大名クエストといわれるもので,主要な大名家に用意されています。次に「武将録」。武将個人の逸話や,人物にクローズアップしたクエストです。最後が「戦況録」。汎用クエストとでも言いますか,「ゲームシステム上,国がこういう状態になったから,こういうことをしましょう」という,システムからの提案的なクエストです。
 「大名録」は,一定の条件を満たすとクエストが発生するという仕組みで,まずは有名な大名に設定される予定です。「信長の野望」は大名の数が多いゲームですから,最初から全部というのは難しいですね。ダウンロードコンテンツなどで対応していきたいと思っています。「武将録」についても同様です。

4Gamer:
 史実では滅んだ大名が,うまく国作りを進めて歴史を変えたとき,そこから先の大名録はどうなるのでしょうか?

小笠原氏:
 「大名録」は,戦国時代の雰囲気を出そうというのが基本的な狙いです。各勢力で実際にあったであろうことが主となり,そこから先のIF的なものは基本的に入っていません。
 個人的にですが,IFの領域を入れてしまうと,信長の野望の持つ「らしさ」から外れてしまうのではないかと思っています。ですので,現時点では積極的に入れていこうという計画はありません。

4Gamer:
 「武将録」というのは武将の個人史ということですが,極端に言うと,例えば「茶釜を持って爆発四散」したりするようなイベントであると理解していいのでしょうか。

※一説によると,織田信長と敵対し,追い詰められた松永久秀は,所有していた名器「平蜘蛛茶釜」に爆薬を仕込んで自爆死したという

小笠原氏:
 そうです(笑)。そういう形です。

4Gamer:
 「戦況録」についてもお聞きします。これの狙いは何でしょうか。

小笠原氏:
 「信長の野望」は,シリーズファンの皆さんに満足していただけるものにしなくてはならないと思っていますが,「創造」では,ちょうど30周年という記念すべきタイミングですので,「昔は遊んでいたんだけど……」という人に向けての提案もしたいとも思っているんです。

4Gamer:
 はい。実は私も昔のシリーズ作品をプレイした経験はあるのですが,最近の作品はちょっとハードルが高そうだな,と感じて少々手が出しづらかったんです。

小笠原氏:
 ええ。何しろ30年かけてシステムを深化させてきましたから,ぱっと見難しく感じるかもしれません。
 そこで,久々にプレイする人にも楽しんでいただくために,「これをやればよい」という目的,ゲームを進めていく上での小さな指針を,ゲーム側からも提示できたらいいのではないかと考えました。それが汎用クエストです。
 もっとも,繰り返しになりますが,やりたくないクエストは,それがどんなクエストであれ,放置して構いません。あくまで,「これに沿って行けば,戦国大名たちが残した足跡に似た形でゲームが進む」というところを,しっかりと楽しめるという仕掛けです。


キーワードは「リアリティ」


4Gamer:
 システム周りでもう少しお聞きします。これまでの紹介記事を見たところ,リアルタイムなのかターン制なのかというところが明言されてはいませんね。これはどちらになるのでしょうか。

画像集#003のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー
小笠原氏:
 実はここがなかなか難しいところでして……。あくまで基本はリアルタイムです。合戦も1枚マップを使ったものですし,やはり戦国時代の燃えるシチュエーションを楽しんでいただくには,リアルタイムのほうが良いと考えました。これは「天道」「革新」から引き継いでいます。
 ただ,内政に関しては,こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんが,一種のターン制です。ある意味で,初期のシリーズ作品のプレイヤーにもしっくりくるシステムだと思います。

4Gamer:
 内政のほうは前作から変わったんですね。

小笠原氏:
 はい。「天道」「革新」では,内政もリアルタイムで行いました。どのくらいの時間で内政を終えるのかというところで,内政とゲーム性を融合させるというシステムです。
 ですが,時間と戦いながら内政をするというのが,自分が戦国時代に対して持っている感覚とちょっと合わない気がしていまして。内政というのは,勢力のどういう部分を伸ばし,何を武器として周囲に対し優位に立つか,という方針作りだと思っているんです。
 あと,端的に言って,内政は考えながらじっくりやりたいですしね。

4Gamer:
 マップは1枚マップというお話ですが,これもまた少し変化があったりするんでしょうか。

小笠原氏:
 グラフィックスのクオリティなどは向上していますが,原則として大きな変化はありません。

4Gamer:
 では,1枚マップのままで行こうと決めた理由を聞かせてください。

小笠原氏:
 1つは,日本全土を舞台にしているというスケール感が出ることです。今のコンシューマ機ないしPC向けゲームのクオリティにふさわしい,「これは凄い」と感じられる表現方法だと思います。ただ,同じ1枚マップとはいっても,先程もお話しした通り,ビジュアルのブラッシュアップは行っていて,戦国時代らしい空気感のあるものとなっています。

4Gamer:
 確かに本当の日本列島という感じは出そうです。

小笠原氏:
 それに加えて,近作における流れというものもあります。
 「創造」では,「リアリティ」をキーワードの1つとしています。我々はこのキーワードをもとに,戦国時代に起きたことをどうゲーム化するか,すべての要素について検討し直しました。
 ですが,いきなりドカンと全部を変える,根底から全然違うというものにはしないほうがいいだろうとも思っていました。「前作と比べてここがこう変わっているな」という把握の仕方をするプレイヤーも多いでしょうし。マップを1枚の3D絵にしたのは,これが理由です。

画像集#007のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 マップの話が出たところで,ちょっと変わった質問をさせてください。ボードゲームのプレイヤーの間では,日本列島がゲームマップとして向いていないという問題が語られることがあります。例えば,南北に長い地形なので,東北と九州の勢力が相まみえるという状況はまず起こらない,海を背にして,目前の勢力だけに集中できる有利な地形がある,などです。これについてはどう思われますか。

小笠原氏:
 地図の端にある国が戦いやすい,というのは確かにあると思います。ただ,そういう国には中心地から離れているというデメリットはありますし,「創造」では人口の概念なども導入していますから,総合的に見ればそれほど有利ではないでしょう。
 たとえば当時の島津が「背後の心配をしなくていいから楽だぜ!」という国だったかというと,そうではなかっただろうと。海路とかもありましたしね。島津だったら島津なりの苦労や努力をしながら勢力を広げたんだというところを体験できるようにしたいですね。

4Gamer:
 確かに,戦いだけで天下統一ができるわけではないですね。

小笠原氏:
 あと,当たり前ですが,プレイヤーは今の日本地図を脳裏に浮かべながらプレイすると思うんですね。「ボードゲーム的な視点で見ると,日本地図はゲームに適していない」という意見には,同意するところもありますが,だからといって日本列島の形を変えるわけにもいかないですから。ゲームとして面白くなるから日本列島の形を変えてと望む「信長の野望」ファンもあまりいない思います。


有事への備えとしての外交


4Gamer:
 「創造」では外交が重要になるようですが,外交のシステムはどのようなものになるのでしょうか。

小笠原氏:
 外交と一口にいっても,そこにはいろいろな要素があります。ですがゲームの形として,「外交の状況が,合戦でどう機能するか」というところが重要だと考えました。
 あの時代,各大名,各勢力は,生きるか死ぬかの日々を送っていました。そんななかで,いざというときのための準備が外交でした。これがしっかりしていれば,合戦で力を貸してもらえたり,苦しいときに駆けつけてくれたりするわけです。
 どうやって兵を出してもらえるシチュエーションを作るか。これが「創造」における外交の基本です。

4Gamer:
 日頃の付き合い方が重要になってくるということですね。

画像集#018のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

小笠原氏:
 外交というものは,一朝一夕で成立するものではありませんので,システム的には,周囲の家に対して「信用」というものを溜めていくことになります。
 しかし,周囲の国全部にいい顔をしていれば,全員に対して信用が上がるようにはしていません。ABCと国が3つあったとき,ABが仲良くなったらCは当然警戒するわけです。こういった反応はAIにも搭載されます。
 また,実際の戦国時代では,各国が完全に打算だけで動けていたわけではありません。人間ですから,感情があるわけです。なので,考え方が違う家に対しては,なかなか信用が高まらない,という要素も取り入れています。

4Gamer:
 感情ですか。そのあたりは何というか,身につまされますね(笑)。

小笠原氏:
 ともあれ基本は,信用を溜めることが重要です。信用が高い勢力であれば,援軍要請に応えてもらえますが,実際に兵を出してもらった場合,溜めた信用を失うことになります。ここはちょっとゲーム的ですね。
 何度も何度もお願いするとやがて信用が尽きてしまうので,信用の溜め直しが必要です。

4Gamer:
 同盟状態にある他国から,「兵を出してくれ」という要請も来るのでしょうか。

小笠原氏:
 もちろんです。「創造」では同盟状態にない国にも要請をすることができるようになっていて,援軍がより扱いやすいものになっています。他国からの要請に応えると,信用を溜めることもできますね。

4Gamer:
 戦国時代の同盟は,裏切りがあったり,同盟期間が切れてからは敵対したりと,長続きしたものが比較的少ないと言われていますよね。「創造」では,こういった裏切りは起こるのでしょうか。あるいはプレイヤーから裏切ることはできるのでしょうか。

小笠原氏:
 今のところ,同盟の期限内に他国からの裏切りが発生することは基本的にありません。プレイヤーは裏切ることができるようになっていますが,もちろんペナルティは用意されています。
 戦国時代らしさということで日常的な裏切り要素を入れてもいいんですが,ゲームの仕組みとして「同盟」の効果が不確実だと,それを活用しながら統一を進めようという気にはなれないですよね。それでは外交の存在意義も薄くなってしまいます。
 ただ,同盟国からの援軍要請に応えない,ということは可能です。また同盟国との関係が非常に良好であっても,その同盟国が大変な状態になっていたら,「兵を出してくれ」といっても出てきません。

4Gamer:
 戦国時代の外交行動というと「調略」もありますが,これはどのように実装されるのでしょうか。

小笠原氏:
 「創造」では,「国人衆」という概念があって,その国人衆を味方となるように取り込むのが「調略」となっています。
 例えば織田家にはさまざまな武将がいます。その頂点に信長がいて,彼の下に武将たちがいる,という形ですね。でも当時はそんなに単純な縦割りが成立していたわけではありませんでした。それぞれの武将たちにしても,城を持っていればそこを領地として統治していましたし,その領地に付随する兵士がいました。これを細かく切り崩していくのが,実際の調略ということになります。

4Gamer:
 武将によっては小さな大名のような存在であるというわけですね。

小笠原:
 これまでの作品では,この調略を武将に対して行ってきましたが,例えば(織田家の本拠である)清洲城にいる武将の誰かに調略を仕掛ける,というのはいかにもゲーム的だなあと思っていたんです。
 これが城主に対してであれば,調略を仕掛けるのは不自然ではありません。実際に戦国時代らしさも出ると思いますが,これはこれで,「絶対に裏切らない武将」を第1条件として城主を選ぶようになってしまうので,少々不自然になりますよね。
 ですので,それぞれの土地にいて,自分たちの判断で誰に従うかを選んでいる「国人衆」に対して行う政治的な働きかけを,「調略」と定義しました。そのほうがゲーム上,使いやすい要素になると考えたんです。

4Gamer:
 つまり調略で国人衆を懐柔しておくと,合戦のときに動員できる兵隊の数が変わったり,攻め込んだときにその土地の国人衆が味方してくれたりする,という感じでしょうか。

小笠原氏:
 そうですね。他国に攻め込むときも参加してくれるというのが,国人衆との関係が最も良い状態です。無論,何もしないこともありますし,状況によっては敵になります。

4Gamer:
 今,道というお話がでましたが,道システムは継続されるのでしょうか。

小笠原氏:
 道はありますが,「天道」における道とは,ちょっと発想の出発点が違うものになっています。「天道」では,道を引くことである程度部隊が自由に移動できましたが,それだと,歴史本にあるようなシチュエーションを,リアルタイムの戦闘で楽しむのが難しいんです。
 計画を立てて,その通りにゲームが展開すると,「よし」と思えますよね。ですが,道の自由度が高すぎると,思わぬ展開が,しかもリアルタイムで進行することになります。久しぶりに「信長の野望」をプレイした方にしてみれば「どうやったら勝てるの?」または「なんで勝てたの?」ということになりかねません。そういうゲームにはしたくなかったんです。

4Gamer:
 なるほど。

小笠原氏:
 もちろん,道の重要性は,あの時代の要素として欠かせません。当時の合戦においても道は重要でしたから。ゲーム的なわかりやすさと,リアリティを同時に満たすシステムとして「道」があるという感じです。

画像集#019のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー


悩ましきは武将のステータスとバランス


4Gamer:
 武将のレーティングについて伺います。資料が少なくてその足跡が分からなかったり,地元では「故郷の武将」として尊敬を集めているけれど,一般的にはあまり名が知られていなかったり,という武将もいるかと思います。こういった武将たちのレーティングはどのような指針で行っているのでしょうか。

小笠原氏:
 武将が最初に登場したのは「戦国群雄伝」ですが,「信長の野望」シリーズはそこから作を重ねていくなかで,「この武将はこうだよね」というコンセンサスが何作もかけて作られてきたゲームでもあると思います。ですが,ステータスデータはずっと不変だったわけではありません。プレイヤーの方がそれぞれの武将をどう捉えているかということを反映してきたという部分もあるので,「創造」では,その歴代の担当者が調整してきた値を尊重し,これをステータスデータの基盤としました。

画像集#001のサムネイル/プレイヤーが思い描く戦国時代を表現したい。「信長の野望・創造」プロデューサーの小笠原賢一氏インタビュー

4Gamer:
 熱心なプレイヤーがステータスデータの変遷をまとめたWebサイトなどもありますし,やはり気になるところでしょうね。

小笠原氏:
 そうですね。まず今回は,30周年記念で久々にプレイする方に向けて,知名度の高い武将の評価を分かりやすくしようという指針があり,そこは強めに出しました。その結果,ステータスの分布がいびつになっている状態が見受けられたので,その部分は大幅に整えています。
 ただ,各武将のステータスのランキング的な順番は,これまでのデータが元になっています。また,近年ドラマや漫画などで取り上げられるなどして,印象が強くなっている武将は若干順番を上げたりもしています。

4Gamer:
 ゲームバランスの調整は,どのような方針で行っているのでしょうか。

小笠原氏:
 バランスについては,ゴールがないですよね……。こればかりはひたすら苦労して最善の形に調整していくしかないです。ただ発売後も,プレイ状況を見て,不満がありそうな部分は変えていこうと思っています。
 ネットの普及がここまでくると,PC・コンシューマを問わず,発売後もリクエストに対するブラッシュアップができます。クエストの追加なども含め,最初に揃えきれないところをしっかりと拡充できるのは,今の時代だからこそのサービスなので,ぜひやっていきたいですね。


戦国の息吹を感じられる,楽しいゲームとして


4Gamer:
 本日の話でも何度か出た「リアリティ」という点についてなのですが,戦国時代の研究はいまも熱心に行われていて,学説は変化し続けています。ときには従来の常識が覆されることもありますが,「創造」ではどのような判断をされているのでしょうか。

小笠原氏:
 まず大前提として,「信長の野望」は歴史シミュレーション“ゲーム”です。遊んで楽しいことが最も重要です。
 もちろん,なかには調略においての「国人衆」のような,あまり表に出てこない要素を取り入れた部分もあります。でも例えば「武田の騎馬隊はいなかった」とかいったところになると,そこをゲームから除外するのはさすがに難しいと言わざるを得ません。

4Gamer:
 “武田軍=騎馬隊”というイメージは強いですからね。

小笠原氏:
 歴史がとても好きなプレイヤーの方は,最新の学説にもアンテナを伸ばして,新しい戦国の形を頭に描いていらっしゃいます。
 でも私たちは,ゲームという形で,多くの方に楽しんでいただくことを考えなくてはなりません。ですから,多くの人が「こうだ」と考えているものについては,その解釈で残すようにしています。
 実際のところ,国人衆の概念を取り入れたのも,戦国時代のリアルを全部取り入れるためではなく,ゲームの一要素としての形と史実が一致したから,というのが理由です。

4Gamer:
 戦国時代をテーマにしたタイトルは数多くありますが,「創造」がほかの作品と一番違うのはどこでしょうか。また,従来のシリーズ作品との違いも教えてください。

小笠原氏:
 「信長の野望」シリーズと,それ以外の作品との違いは,“プレイヤーが考えるリアリティ”にあると思っています。「戦国時代ってこうだったよね」と言われて,「ああこうだった」と受け入れてもらえるラインを逸脱しないというのが,信長の野望というゲームの枠組みであると。
 ただ,そもそもゲームはプレイヤーが楽しめることが第一ですから,歴史設定一つとっても,自由でいいと思っています。実のところ,本当のことなんて誰にもわからないわけですし。

4Gamer:
 歴史物のアクションゲームなどでは,少々突飛な歴史解釈があったりしますね。

小笠原氏:
 ただ,「信長の野望」においては,そういうアプローチはしません。「プレイヤーが思い浮かべる戦国時代の人物を表現する」というのが「信長の野望」です。あえて言うなら,ゲームの作り方としては,正攻法のアプローチではないでしょう。
 正攻法でないから地味でつまらないかというと,そうではなく,「この武将ってこういう人間だったよね」と思えるリアルさが感じられるんです。真剣に戦国時代を戦い抜こうとしている,その戦国の息吹が感じられる,そんな形になっています。これが「信長の野望」の面白さであり,らしさなのかなと思いますね。

4Gamer:
 言われてみればそうですね。シミュレーションゲームなのに,「国」ではなく,「人間」が強く出ている気がします。

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小笠原氏:
 今回の「創造」が従来のシリーズ作品と違うのは,そのリアリティというキーワードに基づいて,「戦国時代ってこうだよね」というところをさらに強く追求しているところでしょうか。
 いろいろな史実に対する学説が新しくなっていることも含め,30年前と今のユーザーの戦国時代に対する印象は変わってきています。これまでの戦国時代の表現の仕方に,リアリティを加味して,再構成する。これが「創造」の特徴です。

4Gamer:
 それでは時間も残り少ないようなので,読者へのメッセージをお願いします。

小笠原氏:
 古き良き物と、最新の技術や表現がミックスされた、30周年にふさわしい最新作が、「創造」です。11月14日の発売に向け,開発はいままさに佳境という状態で,チームの人間が全力で取り組んでいます。
 まずは我々の発表する情報に注目していただき,「ここはどうなんだ」という疑問を私たちに発信していただければ,それを受けて新しい情報を出す,そんな形で,30年間の想いを共有しながら,発売まで皆さんと盛り上がっていきたいと思います。
 発売までは「どんなゲームだろう」という想像を楽しんでいただき,発売されたあとは自らの手で「創造」を楽しんでください。

4Gamer:
 期待しています。本日はどうもありがとうございました。

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