インタビュー
「World of Tanks Blitz」6周年インタビュー。人間で言えば,WoTBはまだまだ思春期の真っ最中
今回のお相手は,分析部門リードゲームデザイナーのアレクサンダー・フィリッポヴ氏(Alexander Filippov),2019年にテクニカルリードに就任したパヴェル・ブスコ氏(Pavel Busko)の2名だ。
スマホゲームにおける6年間となると膨大な月日に思えるが,WoTBはどうも人間で言うところ,まだまだ思春期の真っ最中にあるようで。
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6周年のWoTBは,ちょうど思春期のお年ごろ?
4Gamer:
WoTBの6周年おめでとうございます。今の心境はいかがでしょうか。
アレクサンダー・フィリッポヴ氏(以下,アレクサンダー氏):
今年でWoTBがサービス6周年を迎えられて,私たちも非常にうれしく思っております。ありがたいことに,プレイヤーの皆さんからもたくさんのお祝いの言葉をいただくことができました。
それを見るたび「これだけ多くのファンの方々に熱心に遊んでもらい,支えられているんだ」と再認識できて,次の7周年も,その先の8周年も末永く続けられたらと意気込んでおります。これからも皆さんをさらに喜ばせられる,そんなサービスを提供していきたいです。
パヴェル・ブスコ氏(以下,パヴェル氏):
6年という期間は,スマホゲームの開発・運営にとっても非常に長い時間です。スタッフもそうですが,ゲーム自体もさまざまな変化を遂げましたので。ただゲームや施策,それに携わる人たちの熱意を鑑みると,WoTBは今でも決して古い存在になったとは思っていません。
人間で言えば,そうですね。ちょうど思春期といったところですね。
4Gamer:
WoTBはお年ごろと。では,この1年を振り返ってどうでしたか。
アレクサンダー氏:
昨年,私たちはさまざまなことに取り組みました。
例えば,プレイヤーコミュニティからあまり反応を得られない時期は,これを学習の機会だと捉えて,なにをすべきかを日々顧みました。その結論がゲームモードの拡充です。プレイヤーの皆さんは,いろいろな形でゲームを楽しみたかったんだ。その気持ちを一同で認識できました。
4Gamer:
ゲームモードの拡充というのは,具体的には。
アレクサンダー氏:
過去12か月を振り返ると「ハロウィンモード」「低重力モード」「5対5モード」がそれにあたります。いずれもユニークな内容であったために,多くの人たちからポジティブなリアクションをいただけました。
これらも決して実験的な試みではなく,私たちは普段と変わらぬ計画性を持って,かつ高品質なアプローチをできたという一例です。
2020年5月にはじめた,新要素「バトルパス」を組み込んだ「猛攻」作戦もそのひとつです。パス制度はほかのゲームでもよく見るものですので,多くの人になじみのある仕組みだったことで,比較的すんなり受け入れられました。結果的にイベントも大成功でしたし。
これからも皆さんの期待に応えられるよう,高品質なゲーム体験,無料・有料コンテンツを,今までと変わらぬクオリティでお届けします。
4Gamer:
日本のプレイヤー向けに言うと,なにかありますか。
アレクサンダー氏:
そこはやはり「日本の駆逐戦車ツリー」の新規実装ですね。これにより,プレイヤーの皆さんには駆逐戦車の扱いにより慣れていただくことができ,また多くの方々にお気に入り車輛を見つけてもらえました。
そして日本向けの施策はこれにとどまらず,「日本の重戦車ツリー」も検討中です。実際,PC版の「World of Tanks」ではカルト的な人気がありますから。ですがシンボルの榴弾やサイズ感などが,WoTBとうまくかみ合わないという課題もあるため,最適な車輛探しからはじめています。
4Gamer:
日本も含めて,近々のプレイヤー数はいかがでしょうか。
アレクサンダー氏:
大変ありがたいことに,WoTBのプレイヤー数は各地域で確実に伸びています。現時点でもダウンロード数は全世界1億3700万件,1日あたりのDAU(アクティブユーザー)も約150万人を記録しています。
4Gamer:
ここ1年,ゲーム市場やプレイヤー傾向の変化は感じましたか。
アレクサンダー氏:
個人的な感想になりますが,昨年のスマホゲーム業界で世界的に大きかったのは「Call of Duty Mobile」の登場だと思っています。圧倒的な知名度と支持を誇るゲームシリーズがモバイル界隈に参入したのもそうですが,スマートフォン端末ならではのゲーム性も練り込まれていて,スマホ向けシューティングの存在感を確固たるものにしましたよね。
というのも,WoTBも同じジャンルにありますので,その盛り上がりの恩恵をいくらか感じられたのです。ああいった作品で腕を鳴らした人は,WoTBにもすぐに慣れてしまえるようなので,少し手が離れたときの一案として,これまで触ったことがない人にも遊んでもらえたらなと(笑)。
4Gamer:
プレイヤーがスマホ向けシューティングに慣れてきていると。
アレクサンダー氏:
スマホゲームのプレイヤーは年々,シューティングゲームをはじめとする複雑なゲーム性に慣れてきて,同時に好みやすい傾向が見えてきています。趣向の似たタイトルを次々と遊んでいることで,シューティングゲーマーとしての熟練度も上がってきているのが見て取れますね。
ですから,昨今のWoTBも中級者ないし上級者向けのゲームモードを用意しても,以前より皆さんが慣れるのが早くなっています。おかげで,当のゲームモードを継続して提供する意味も大きくなってきました。
4Gamer:
プレイヤーと同様,運営側にもいい慣れは出てきたでしょうか。
アレクサンダー氏:
先ほど話したとおり,私たち運営側にしても,プレイヤーの皆さんからのフィードバックをより綿密に分析できるようになってきました。それこそ6年前より,適切な対応ができているんじゃないかと思います。
過去には,業界では標準的な仕様だからと実装したものが,WoTBではそこまで熱量が生まれなかったので除外した,という失敗例もありました。しかし直近のバトルパスは,運営側から細かな説明をせずとも「すでに文化としてあるもの」だからと気軽に受け入れられたのです。この成功もまた,こちら側の分析が深まってきたことの表れだと感じています。
4Gamer:
ならば,お二人の仕事に関してはどうでしょう。アレクサンダーさんであれば,6年経ったゲームデザインは今も機能しているか,などは。
アレクサンダー氏:
もちろん,6年経った今でも問題なく機能しています。私たちが作るゲームは“根幹”を大切にしています。この根幹はプロジェクトの立ち上げから可視化できるようにしていて,時間をかけて,それでいて細心の注意を払って磨き上げたものです。それは現在も忠実に守っています。
だからWoTBがなぜユニークで面白いのかも,私たち全員はしっかりと共有できています。これがゲーム作りで,最も大事なことですから。
そうですね,一例を挙げるなら「砲撃しあう重戦車同士」でしょうか。これらは対戦上ではより仰々しいものをと表現しつつも,ゲームとしては至ってフェアな構図を厳守するようにしています。こういったルールはWoTBの心臓部であり,軽々しく変更することなどありえません。
そういったいくつもの制約を踏まえて,たくさんの車輛,イベントやキャンペーン,カスタマイズ要素,SNS投稿までをも調整しています。
仮にですが。もしゲームの根幹を変える日がくるなら,実験的な独創性にはとらわれず,慎重かつ正確な取り組みを最優先します。なにより大事なのは,ゲームが遊びやすく,操作しやすく,奥深いことです。
これは不可欠です。私たちはこれらを絶対に忘れずに挑戦します。
4Gamer:
なるほど。パヴェルさんのほうはいかがでしょう。2019年にテクニカルリードに就任とのことですが,そもそもどういったお仕事で?
パヴェル氏:
私の仕事はまず,スタジオ内で持ち上がるさまざまな技術的なやり取りを,開発各所のディレクション担当者に適切に割り当てていく,社内コミュニケーションの橋渡し役です。当然,WoTB以外のWargaming全体も,社外の人たちとのやり取りも領分にありますが。
そしてテクニカルリードの本分は,各所で設定されている目標やタスク,それらを達成するために必要なデータ分析です。開発や社内でのパフォーマンステストの結果など,日々のデータを確認しては検証します。
ほかにも,社内でのやり取り用の資料作成をはじめ,今まで私が経験してこなかったことを知れるよう,視野を広げられるようにと研究開発にも携わっています。最近では社内のレンダー(レンダリングエンジン)の大部分を開発し,その一部をサーバー側に導入したりもしましたね。
アレクサンダー氏:
ただ,残念ながら今年はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響もあって,世界各地でロックダウンなどの事態が起きています。
例に漏れず,私たちにとってもその影響は小さくありませんでした。
4Gamer:
昨今のCOVID-19の環境下では,なにか変化はありましたか。
アレクサンダー氏:
まずゲームに関してですが,ロックダウンなどの影響もあってかプレイヤー数が増加し,中級者層のプレイ時間が著しく伸びました。
この大変な時期にWoTBを遊んでくださっている皆さんに応えるためにもと,私たちもプレミアムアカウントのプレゼントをはじめ,イベントや新規ゲームモードの早期実装に取り組んできました。
一方でWargamingとしましては,COVID-19のような不測の事態への対処法はすでに用意がありましたので,大部分のスタッフは早急にリモートワークにシフトできました。サーバー利用などの技術的な試行錯誤が求められる場面もありましたが,なんとか対処できております。
会社もスタッフたちに,ノートPCのみならずオフィスで普段使いしている椅子を各々の家まで届けたり,必要であれば無線通信用の端末や,医療用のフェイスマスクを配付したりもしています。スタッフみんなが元気になれるような施策にも力を入れるなど,サポートは万全です。
4Gamer:
開発面ではどうでしょう。
アレクサンダー氏:
WoTBを開発するMS-1スタジオは,すでにリモートワークでの開発・運営に入っていますが,私たちはスタジオこそプロジェクトの要所と考えておりますので,プロジェクト全体の透過性は最大限確保しています。
最近は日々の業務報告や相談事,コミュニケーションを取るためのビデオ会議はもとより,各所のタスクの課題解決をいかに適切に行えるかを,後学に生かせるよう確かめながら進めています。
新国家「スウェーデン」の実装に向けて
4Gamer:
先日の6周年アップデートのコンセプトをお聞かせください。
アレクサンダー氏:
WoTBが6歳の誕生日を迎えるということで“お祝いのごちそう”をイメージしました。なにか楽しいことがあって,ひとりひとりに特別なプレゼントがあった子供時代。それをコンセプトとしつつ,感謝の気持ちを込めて,皆さんのために「誕生日プロフィール」を用意しました。
また,新車輌「P.43/06 Anniversario」を入手できる5対5モードをはじめ,こちらも“誕生”の意味を込めたグラフィックアップデート,さらにイギリスの高Tier 軽戦車としてTier VIII 「FV 301」,Tier IX 「Vickers Cruiser」,Tier X「Vickers Light 105」も実装しましたね。
4Gamer:
最初に5対5モードですが,こちらは導入の手ごたえはありましたか。
アレクサンダー氏:
短時間の対戦と小さいマップゆえにヒートアップできる,これをテーマにしたのが5対5モードです(ゲーム内では7月14日に提供終了)。
通常の7対7モードより,やや少ない人数での対戦ですが,実装するまでの背景には私たちなりの要因がありました。
まず本モードは,それ自体がブリッツらしさを象徴する“より手早く手軽なバトル”が展開するものです。通常の7対7における,各プレイヤーの自陣営での貢献度がおおよそ14%なのに対して,5対5では約20%に引き上がります。それがプレイの快感につながりました。
そしてマップを小さくしたこと。これは経験豊富なプレイヤーにとっては,身をひそめる隅や裂け目がなくなることで地形知識に関するアドバンテージが低減してしまったものの,逆に初心者や初級者にあたるプレイヤーにとっては活躍がしやすい,絶好のチャンスが生じました。
4Gamer:
長期運営だと,カジュアル層からの反響は喜ばしそうですね。
アレクサンダー氏:
開発側は当初,全プレイヤーに向けたモードと位置づけていましたが,結果的に初心者にも受け入れられたことはとてもうれしかったです。
ある意味,5対5モードはよりカジュアルなバトルですので,フランクな気持ちで遊べると同時に,体感での貢献度の上昇に伴い,いつもより勝ちにいく気持ちも高まったと思います。より小さなマップで遊びたいという需要も認識していたので,それもうまく作用しましたね。
ですが難点もありまして。このモードの存在はWoTBのクライアントサイズを肥大させてしまいます。そのため,どうしてもプレイヤー端末に負担をかけることから,残念ながらマメな提供の目途は立っていません。
4Gamer:
続いて,グラフィックアップデートについては。
アレクサンダー氏:
先日のアップデート7.0で行った,グラフィックアップデートの影響範囲は多大です。砲身の反動,炎やちり煙霧,水面のエフェクト,ダイナミックな影の表現,車輛が走ったあとに残る履帯跡に,砲弾のタイプごとに異なる被弾跡など。とくに被弾跡はゲームプレイにも作用します。鋭く観察すれば,敵が自車輛のどこを狙って撃ってきたのか,逆に敵車輛のどこに跳弾させる箇所があるのか,といった情報を得られるんです。
私もひとりのプレイヤーとして言うのなら,マップ内のオブジェクトが破壊可能になったことに歓喜しました。どれも損壊表現が素晴らしいので,ついわざとオブジェクトにぶつかったりもしています(笑)。
一方で開発者としては,ゲームが安定したパフォーマンスで動作し続けていることを誇りに思います。2万7000以上もの端末をサポートし続けてきた労力はそう簡単なことではありません。これもグラフィックスの刷新に踏み切ったきっかけのひとつですね。私たちはWoTBを常に,より多くのスマートフォン,タブレット,PCで遊べるようにしたいので。
4Gamer:
新車輛の追加もありましたが,今後の選別に課題はありますか。
アレクサンダー氏:
実装車輛に関しては,私たちのなかで「タンクビジョン」というコンセプトを共有しています。どの車輛も“ゲーム中では憧れのヒーローであるべし”と,現実世界であたかも実在しているかのような表現で,ユニークかつ記憶に残るものをという発想です。
ゲーム内にはすでに350以上もの車輛が登場していますので,ときには一筋縄ではいかないこともありますが,同じようなスペックは存在していても,それぞれの役割や特性は可能な限りの差別化をしてきました。
4Gamer:
そのなかの具体例を教えてもらってもいいですか。
アレクサンダー氏:
では,軽戦車に着目してみましょう。Tier Xの軽戦車は新規実装のイギリス,アメリカ,フランスの3ツリーから研究可能ですが,いずれの車輛もゲームプレイにおいては差別化が図られています。
イギリスの「Vickers」は素早い装填性と高精度な射撃性により,遠距離にいる敵に有効です。アメリカの「XM551 Sheridan」はVickersよりも装填時間を要し,射撃の正確性にも欠けるものの,近距離では持ち前の高火力により驚くほどのダメージを与えられます。フランスの「Bat.-Châtillon 25 t」はさらにハイリスク・ハイリターンです。欠点を補いつつ,タイミングよく敵前に躍り出れば,無類の破壊力を発揮できます。
4Gamer:
それらを踏まえて,2020年のWoTBの課題はなんでしょう。
アレクサンダー氏:
はじめに,現在私たちは新国家「スウェーデン」の実装に向けて準備を進めています。スウェーデン車輛は大変独特なデザインをしているので,ゲームに登場した際はきっと楽しんでいただけるはずです。
次いで今後の方針ですが,初心者の方々にもっと気軽に遊んでもらえることを念頭に置きつつ,ゲーム性の幅を広げるマップ内オブジェクトの追加,ツリー研究をさらにスムーズに行えるような調整,ヨーロッパ地域で人気の高まったTier VIのときと同様,Tier IV〜V間の差の減少,そしてオンラインのマッチメイクのブラッシュアップなどです。
最後のは完璧な解決策を申し上げるのが難しいのですが,システムがうまく動作しないことを理由とする不備を回避できるよう思索中です。
4Gamer:
最後にeスポーツシーンはどうでしょう。現在と今後を鑑みて。
アレクサンダー氏:
昨今のeスポーツの高まりは私たちも知るところです。
WoTBでも全地域でシーズンイベントを定期開催しており,公式サイトでもその模様を逐一報告しています。そしてAPAC(ニュージーランドやオーストラリアを含むアジア地域)を含む,WoTBのワールドカップに相当する「Twister Cup」も,今後とも続けていきたいと考えています。
当然,今年はCOVID-19の影響もありますので,例年とは違った取り組みになるかと思いますが,そのうえでプレイヤーファーストを第一に,皆さんの健康や制限を踏まえながら,皆さんとWoTBへの愛を分かち合いたいと考えています。もし将来的に安全が保障されるようになったら,そのときはぜひオフラインでのeスポーツイベントをやりたいですね!
4Gamer:
期待しております。最後にファンへのメッセージをお願いします。
アレクサンダー氏:
WoTBは少なからず複雑なゲーム性ではありますが,何度もゲームをプレイすることで,個人のスキルが磨かれていき,同じWoTBを遊んでいる人たちとのコミュニティの輪も広がっていきます。それを6年もの間,皆さんに楽しんでいただけていることを非常に光栄に思っています。
本当にありがとうございます。私たちのゲームを遊んでくれて。
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