インタビュー
[gamescom]「Call of Duty: Ghosts」をパブリッシャサイドから支えるプロジェクト統括者にインタビュー
大手ゲーム企業の幹部クラスともなると,特定タイトルの深い話を聞くのに難儀するものだ。ただ,例えばElectronic Artsのパトリック・ソダールンド(Patrick Soderlund)氏や,Bethesda Softworksのピート・ハインズ(Pete Hines)氏など,時として「この人,筋金入りのゲーマーだ」と思うほど,どんな質問にも考え込むことなく即答してくれるような人もいる。今回話を聞いたスアレス氏も同じ印象で,Call of Duty: Ghostsへの質問にいくつか答えてもらったので,その内容をお伝えしよう。
4Gamer:
よろしくお願いします。今回は,スアレスさんに初めて取材をさせていただくことになりますが,まずは自己紹介からお願いできますか?
Daniel Suarez(以下,Suarez氏):
はい。私はActivisionの制作副社長として,その年に発売されるActivisionの全タイトルの制作を管轄しています。それと,日本を含めたすべての地域でのローカライズなども担当します。Treyarchとも非常に綿密にコミュニケートしており,新しいフィーチャーやサービスが問題なく機能し,時間どおりにリリースされるかを管理するのも私の仕事です。
4Gamer:
自社製品の裏表を隅々までご存じなわけですね。今回は人気FPSシリーズの最新作となる「Call of Duty: Ghosts」の質問をさせてください。まず,Infinity Wardは本作の制作にどれくらいの期間をかけているのでしょうか。
Suarez氏:
ゲームエンジンの開発に取り掛かったのは,「Call of Duty: Modern Warfare 3」(PC/PS3/Xbox 360)のリリース直後からです。当時は,すでに次世代ゲーム機が視野に入っていましたから,その後2年かけて,ゲームエンジンとゲームそのものを並行して作ってきたことになります。多くのファンは「Modern Warfare 4」を期待していたと思いますし,実際に「4が出るのではないか?」という噂もありましたが,Infinity Wardでは,新しいゲームエンジンを使うなら,新しいストーリーや設定,そして新しいキャラクターを用意する方向で,当初から企画を進めていました。
4Gamer:
今回はタイトルが“Ghosts”ということで,やはりシリーズの登場人物であるサイモン・ライリーが思い浮かびます。今作で大きな焦点になっている警察犬も“ライリー”という名前ですし,近未来の舞台設定も「Call of Duty: Black Ops 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)を彷彿とさせるものですよね。過去のシリーズと,ストーリーや設定に関連性はあるのでしょうか。
Suarez氏:
直接の関連性はなく,「オマージュ」という感じです。ゲーム中でレジスタンスとして戦う彼らがゴーストと呼ばれている理由は,ゲームの序盤で語られることになるのですが,ファンの皆さんにそういった共通性を想像してもらえるのは,我々としても嬉しいことです。
今作の背景設定を紹介しておくと,戦略的衛星によってミサイルを撃ち込まれ,荒廃してしまったアメリカを中心にストーリーが展開されます。ミサイルは強大な破壊力を持っていますが,核兵器のような放射性はありません。ただ,それがまるで「神の杖」のように地上に何本も突き刺さり,その同時爆発によって,アメリカの南半分が完全に破壊されてしまっているという状況なのです。今回の相手は,南アメリカを本拠にする“Federation”と呼ばれる新勢力になりますが,彼らは兵器面でゴーストを上回っています。これは,「Call of Duty」シリーズ始まって以来のことになります。
より長く遊んでもらうための「Squads」というアイデア
4Gamer:
今回のgamescom前後で発表されたことで気になるのが,本作で新しく導入された「Marksman Rifle」です。これはどういった特性を持っているのでしょうか。
Marksman Rifleは,SniperとAssaultの中間にあたる武器カテゴリです。Sniperより照準距離は短く,Assaultよりパワーはあるがリロードは遅い,というイメージでしょうか。狙撃は苦手だけれど,距離を取って攻撃したいというプレイスタイルの人には,ぴったりの武器かもしれません。
4Gamer:
もう1つ気になるのが「Squads」モードです。これは,マルチプレイヤーモードに参戦するのが苦手な,シャイな人向けのコンバットトレーニングと考えてよいのでしょうか。
Suarez氏:
いえ,それ以上のものになると思ってください。確かに,1人でもBOTとプレイできるという点ではそう言えますし,これまで我々がフィーチャーしてきたコンバットトレーニングが,Squadsに大きなインスパイアを与えているのは事実だと思います。しかし,我々はSquadsモードを,シングルプレイヤー用キャンペーンとマルチプレイヤーモードの中核にある,第3のゲームモードとして位置付けています。
これまでのCall of Dutyシリーズでは,対戦モードを通じてキャラクターのレベルを上げて,ある地点でプレステージを得るというところで,キャラクターの育成は終わってしまいました。そこで今回は,分隊の一兵士として再利用できる仕組みになっているわけです。感覚としては,スポーツゲームで自分の好きな選手を組み合わせて,ドリームチームを作るようなものですね。
4Gamer:
より長く遊んでもらうためのシステムというわけですか。
Suarez氏:
はい。せっかく育てたキャラクターをどう生かせるかを考えて用意しました。プレイヤーがオフラインのときに,友人が自分のスクアッドを相手にゲームを楽しむこともできますし,その分だけ自分のスクアッドのキャラクターもXPポイントを得られるようにもなっています。
4Gamer:
Squadsモードのために,AIも非常に凝ったものになったとのことですが。
Suarez氏:
ええ。AIテクノロジーには多大な時間を費やして開発しています。Squadsモードでは,4人のプレイヤーと2人のAIキャラクターでプレイするといった混成部隊も作れますが,誰がプレイヤーで誰がAIなのかが分からないような,ナチュラルなAIの動きを実現したかったので。AI操作のキャラクター達も,「Knee Slide」などのアクションやキルストリークを駆使してきますよ。
4Gamer:
マルチプレイに関しては,今回はモードが12種類もあり,そのうち7種類が新しいものとのことで,いろいろな遊び方ができそうですね。
Suarez氏:
新モードは「Search and Rescue」と「Cranked」を発表しましたが,今回のgamescomでは「Blitz」をプレイアブル展示してあります。もう体験されましたか?
4Gamer:
ええ。Blitzは,旗を持ち帰る必要のないCapture the Flagという感じで,スピーディなゲーム展開を強調したモードという印象を受けました。Search and RescueもSearch and Destroyの変則型ですし,基本的にはこれまでのマルチプレイヤーモードの改良版が多いのでしょうか?
Suarez氏:
プレイヤーに新しい遊びを提供したいと思っても,あまり突拍子のないゲームモードを作ったところで,誰も遊んでくれません。ですから,今あるゲームモードに新鮮味を加える方向性はアリだと思っています。
ただ,ほかのモードに関しては順次発表していく予定なので,今は言えません(笑)。
4Gamer:
今作のマルチプレイといえば,オブジェクトが大破してリアルタイムでマップが変化していくのも大きな新要素かと思います。これは,すべてのマルチプレイヤーマップに用意されているものなのでしょうか?
Suarez氏:
はい。それぞれのマップに,ユニークなイベントが用意されています。それが小さな変化なのか,大きく破壊されるのかはマップによりますが,すでに紹介している「Strikezone」や「Free Fall」などは,マップの形そのものが変わってしまうくらいの,非常に迫力のあるデザインになっています。
4Gamer:
逆に,小さな破壊システムというのは,どういったものになるのでしょう。
Suarez氏:
まだ正式には発表していないマルチプレイヤー用マップに,刑務所をベースにした「Prison Break」というものがあります。ここには,木工作業のための木材があちらこちらに積まれており,身を隠すのに使えるのですが,これを崩すことで,隠れている相手にダメージを与えられます。
4Gamer:
オブジェクト破壊を駆使して戦うことになりそうですね。
Suarez氏:
マップによっては,壁を破壊すると部屋の向こうにケアパッケージがあると言った隠し要素もあります。こういった場所は,その存在がプレイヤー達に知られるようになるにつれ,奪おうとする人が集まって激戦区になってくるでしょう。これまでのシリーズとはちょっと異なる雰囲気になると思いますが,ゲーマーの皆さんには納得してもらえるはずです。
日本市場には,販売本数以上の価値がある
4Gamer:
海外ゲームの人気が出にくい日本市場ですが,それでもCall of Dutyシリーズには非常に多くのファンがいます。スアレスさんは日本市場をどのように感じていますか?
海外産で,しかもシューティングというジャンルのゲームでありながら,日本で50万本を超える販売実績を打ち立てているのは本当に素晴らしいことだと思います。長い間シリーズを愛し続けてくれるファンも多く,販売本数以上に,非常に価値のある市場ではないでしょうか。字幕版とローカライズ版の両方を出してくれているスクウェア・エニックスさんには,良いパートナーになっていただけだと思っていますし,これからもお互いがインスパイアを受け合えるような関係を築いていきたいです。
4Gamer:
そう言えば,Black Ops 2のDLCマップには,日本の火山という設定の「Magma」というマップがありましたが,寿司屋の激戦区だったり,日本語のジョークが散りばめられていたりと,日本では大ウケしていました。あれは何だったんですか?
Suarez氏:
そんなにウケていたというのは今知ったのですが(笑)。 おそらく日本語や日本の事情に相当理解のある人物がTreyarchにいたのでしょうね。DLCはファンへの一種のプレゼントと考えていて,あまりシリアスなものにならないよう気を付けていますから,そんなアイデアから生み出されたものなのではないでしょうか。日本のファンの皆さんに楽しんでもらえたのなら良かったです。
4Gamer:
みんな喜んでいた……というか,対戦そっちのけでマップを散策していたと思いますよ。本日はありがとうございました。
「コール オブ デューティ ゴースト」日本語公式サイト
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