レビュー
ついにフル版が登場した,ターン制ファンタジーRPG
マイト&マジック X レガシー(日本語版)
「マイト&マジック X レガシー(日本語版)」は,ユービーアイソフトから2014年1月24日にリリースされた一人称視点のターン制RPGだ(関連記事)。「Wizardry」や「Ultima」シリーズに並ぶ長い歴史を持つ「Might&Magic」だが,最近はスピンオフのシミュレーションRPG「Heroes of Might&Magic」シリーズの作品を多くリリースしており,そちらのほうが有名になっている。RPG版がナンバリング作品として世に登場するのは,前作から実に12年ぶりのことだ。
「Might & Magic X Legacy」英語公式サイト
本作については2013年11月15日掲載した記事でアーリーアクセス版のファーストインプレッションをお伝えしたが,今回はフル版のちょっと前というバージョンがプレイできたので,ここで改めて紹介してみたい。
プレイヤーが操る4名の冒険者は,かつて偉大な人物として知られた“オーウェン”の弟子達という設定だ。本作ではオーウェンは他界しており,師匠の遺灰を生まれ故郷である都市カーサルへ送り届けるのが主な目的となる。冒険者達は港町ソーピガルから出発し,エイジン半島を西へと横断してカーサルを目指す。
しかし,カーサルでは何者かによるクーデターが起こっており,立ち入ることができない。しかもこの勢力は,エイジン半島全土にさまざまな暗い影を落としており,冒険者は否応なしにこれらの問題に直面していくことになる……というのがザックリとした物語だ。もっとも,このジャンル全般にいえそうだが,ストーリーはそれほど込み入ったものではないので,シリーズ従来作のプレイ経験がなくとも問題はないだろう。
成長システムは比較的オーソドックス
ランクアップには,それぞれのジャンルの師匠が必要
プレイヤーはゲーム開始時に,4人からなるパーティを編成することになる。作成時に選べる種族は人間,エルフ,ドワーフ,オークの4種類で,各種族にはそれぞれ3種類の固有のクラスが用意されており,冒険を経てそれぞれの上位クラスへの転職が可能だ。
パーティの人数が4名というのは(ほかのRPGに比べて)やや少なめな印象を受けるかもしれないが,ヒーラーは必須ではなく,クラス構成の問題でゲーム展開に詰まることはないだろう。
むしろ,後述するように,このゲームでは近接戦闘と遠距離戦闘の両方に対応することが求められるため,たとえ近接戦闘が得意なファイター系であっても,クロスボウなどの遠距離武器にいくらかのスキルポイントを割り振っておきたい。
プレイヤーキャラクターは,ゲームを進めることでステータスとスキルポイントを獲得するが,このスキルポイントを溜めることで武器や呪文ごとにレベルが上がる。そして,それが一定量に達すると,初心者→エキスパート→マスター→グランドマスターとランクを上げられ,装備アイテムや習得できる呪文のラインナップが増えていく仕組みだ。ただしランクアップのために,師匠となるNPCの教えを請うことになる。
このランクアップを請け負ってくれるNPCは,マップの各地に散らばっている。エキスパートへのランクアップに必要なNPCの多くは拠点エリアにいるが,それ以上は,各地を探索したり,また彼らから受けるクエストをこなしたりしなければならない。
成長システムに関してもう一つ触れておきたいのは,伝説上の装備品である「遺物」の存在だ。装備した遺物は,ゲームを進めることでキャラクターと共に経験値を獲得し,レベルアップしていくのだが,これを入手するには,各地に点在している「クリプト」と呼ばれる小規模のダンジョンを舞台に,ちょっとした謎解きに挑む必要がある。
また,成長システムと直接の関係はないが,パーティメンバーとは別にゲストキャラを最大2人雇用できるのも特徴の一つだろう。ゲストキャラは戦闘に直接参加するわけではないが,たとえばショップでアイテム購入する際に値引き交渉を行ってくれたり,蘇生や状態異常の治癒をしてくれたり,ポーションやサプライの類を作ってくれたりと,さまざまなサポートをしてくれる。
彼らをうまく活用すれば冒険が楽になるが,ゲストは戦闘時に得られるゴールドのいくらかを報酬として要求するため,とくに必要がなければ雇わなくてもかまわない。
戦闘では,常にマップに目を配ることが大切
前回の記事でも軽く触れたが,戦闘はランダムエンカウント形式ではなく,本作の敵は最初からエリア上に出現しており,仮にこちらが先に敵を発見できれば,遠距離攻撃による先制攻撃を加えたり,バフなどの準備を整えて万全の状態で挑める。逆に,周囲に気を配ることなく進んでいると,死角にいる敵から手痛い先制攻撃を受けてしまうことがあるのだ。
本作のパーティは,意図的によほどトガッたクラス構成にでもしない限り,「近接戦闘メイン」+「遠距離戦闘もそこそこ」といった戦い方を得意とするようになるはずなので,その点を踏まえたうえで「敵を発見したあと,どのようにして近接戦闘へと持ち込むか」が大きなポイントだ。
例えば歩兵や猛獣といった近接タイプの敵は闇雲に向かってくるので,ブロックの縦軸あるいは横軸を合わせて遠距離攻撃を加え,蜂の巣にすればいいだろう。敵が1ブロック進むごとにパーティメンバーの全員が攻撃できるので,うまくやれば隣接するまでにかなりのダメージを与えられる。
近接&遠隔両用タイプの敵に対しては,ブロックの軸を合わせるとお互い撃ち合う形となるため,それよりは自分達が得意な近接戦闘に持ち込みたい。それには,物陰に1歩入ったうえで待機する(軸をずらす)と敵が接近してくるので,隣のブロックへ来た直後に先制攻撃を叩き込むのが得策となる。
キャスターなどの遠隔タイプの敵は少々厄介で,自らは近寄ってこないため,こちらから進んで距離を詰めるまで,ある程度ダメージを受けることを覚悟しなければならないだろう。
このように本作では,敵と隣接する前の段階から戦闘が始まっている。周囲に気を配りながら一歩一歩進んでいくのはかなり緊張感が高く,本作ならではの面白さがある。
古典的なターン制RPGジャンルの巻き返しに期待
本作では冒険を繰り返してレベルアップに励み,優れた装備品を獲得したらさっそく身に付け,お古の装備品を別のキャラクターに……といった風に,定番のゲーム展開が続いていく。つまり,良くも悪くも古典的なRPGを踏襲することが制作者の狙いとなっており,このジャンル,すなわち最近少ない「ターン制のRPG」を新鮮と思うか,懐かしさを覚えるか,あるいは古さを感じるかで評価は変わるかもしれない。
個人的な感想としては,敵がエリアに出現するところに,もう一ひねり欲しかった気がする。パーティを発見するまで,敵はその場にずっと立ち続けており,サプライを使って休息を取っても(ゲーム内で8時間が経過),同じ場所に居続けている。モンスターがマップを巡回してくれるだけでも,駆け引きの面白さはアップしていたはずだ。ちなみに,一度倒した敵は(少なくとも今回プレイしたバージョンでは)リポップしないようだ。
ただ,そういった不満点はさておき,昔ながらのRPGを現代に再現するという試みは評価したい。本作の開発では,公式ページ内のフォーラムを通じて各コンテンツ/ゲームバランスについてユーザーと積極的に議論したり,アーリーアクセスのビジネスモデルを採用したりと,さまざまな試みを行っている。またMODもサポートしているので,リリース後に有志によるシナリオ追加も期待できそうだ。
海外ではかなり久々の登場となるこのジャンルの新作タイトルだが,早い段階から日本語版で遊べるのも嬉しい。個人的には「昔ながらの洋ゲー」という雰囲気がかなり楽しめた作品だけに,一人称視点のターン制RPGに抵抗がなく,なおかつ海外ゲームのテイストが好きな人にはぜひチャレンジしてほしい。Wizardryなどを今でも愛する一人のファンとしては,このジャンルが再び盛り上がってくれると嬉しいと思っている。
「Might & Magic X Legacy」英語公式サイト
- 関連タイトル:
マイト&マジック X レガシー(日本語版)
- この記事のURL:
キーワード
(C)2013 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Might & Magic, Uplay, the Uplay logo, Ubi.com, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.