プレイレポート
ooOooOOooo……。どこか懐かしさを感じるリチャード・ギャリオット氏の新作RPG「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」のプレα版を遊んでみた
町に行けば迷子になり,森に入ればスケルトン達にボコボコにされ,気が付けば虚空に向かって「OoooOOooo」と叫んでいる始末だ。
幽霊語というワードから「Ultima Online」を連想する人もいると思われるが,本作はギャリオット氏の代名詞ともいえる「Ultima」シリーズの“精神的な後継作品”であり,2014年12月27日現在,プレα版が公式サイトおよびSteamにてリリースされている(公式サイトでは45ドル,Steamでは4580円)。
筆者は,Steamで配信されたのを機に始めたクチだが,実際に遊んでみて感じたのが“ゲームは面白いのに導入部が少し不親切”ということだ。もちろんチュートリアルは用意されているのだが,1つのシーンですべてを解説しようとしているせいか,なかなか頭に入ってこない。ここで投げ出してしまう初心者も多いのではないだろうか。
まだプレαなので,システム的な粗が目立つのは仕方ないが,導入部でつまずいてしまい,面白くなる段階までたどり着けないのは非常にもったいない。
ということで本稿では,右も左も分からないまま「New Britannia」(本作の世界)に飛び込んだ筆者が,全身重装備のたくましい戦士になるまでの道のりを,ゲームの紹介を交えつつお届けしよう。本作に興味のある人はぜひ読んでみてほしい。
New Britanniaへようこそ!
本作には,「Single Player Online」「Multiplayer Online」「Single Player Offline」「Friends Online」という4つのゲームモードが用意されている。現時点で遊べるのは,最初の2つとなっており,プレイにはネットワーク環境が必須となる。
Single Player Onlineは,その名のとおり1人用のモードであり,誰にも邪魔されず自分のペースで遊びたいという人向けだ。一方,Multiplayer Onlineは,オートマッチングした何人かのプレイヤーと1つの世界を共有するMO形式になっている。両モードのキャラクターデータは共有されるので,基本的には好きなほうを選ぶといいだろう。ちなみに筆者はSingle Player Onlineでゲームを始めてみた。
さて,ゲームモードを選択してキャラクタークリエイトを終わらせたら,いよいよNew Britanniaでの冒険が始まる。最初にプレイヤーが飛ばされるのは,「Battle of Solace Bridge」と呼ばれる要塞のような場所だ。
ここでプレイヤーを出迎えてくれるのが,Edvard the Wandererというおじさんであり,彼が本作のいろはを教えてくれる。
NPCとの会話は,チャットウインドウ上で行われ,会話中に出てくるハイライトされた単語をクリックすると,さらに話を掘り下げることができる。また,プレイヤー自身が手打ちで質問を入力することも可能だ。
とりあえずNPCに出会ったら開口一番に「What do you do」と聞いて,職業や役割を確認しておこう。
それはさておき,さっそくEdvardからいろいろ教えてもらうことに。1つ1つ丁寧に教示してくれるのかと思いきや,システムガイドの書かれたヘルプウインドウを次から次へと投げつけてくるという,まさかの指導方法に面食らってしまう。
正直すべてを頭に叩き込む自信がなかったので適当に読み飛ばしたが,Edvardの話を要約すると,「外にスケルトンがいるから武器を装備して倒してくれ」といった感じだ。Edvardの隣に目を向けると武器ラックが置かれていたので,そこから片手剣を拝借する。
ちゃんと取得できたか確認しようとカバンの中(インベントリ)を確認すると,先ほど拾った片手剣と盾のほかに,「SteamPunk Top Hat」という見覚えのない帽子が放り込まれていた。どうやらこれは,開発資金の募集額が500万ドルを突破したことを記念して出資者に向けて送られた帽子で,Steamで購入した人も含まれるようだ。
せっかくなので装備してみると,どこかに違和感を覚える。一見するとおしゃれなトップハットなのだが,何か大切なものが欠落しているように感じるのだ。そして,しばらくキャラクターを眺めていると,あることに気付いた。なんと,キャラクタークリエイト時に確かに生やしたはずの髪の毛が消えているではないか。
どうやらこれはバグの1つであり,SteamPunk Top Hatに限らず,帽子を被るとハゲてしまうようだ。ただ,このバグは12月18日に配信されたR13アップデートで修正されているので,最近抜け毛が多いかな? と思っている人も安心してほしい。
装備が手に入ったので,さっそくスケルトンを倒しに行くことに。スケルトンは門の前にある橋を占領しているのだが,話をちゃんと聞いていなかったせいか,門の開け方が分からないという事態に陥ってしまった。
結局は要塞の内側から階段を登って橋側に飛び降りたわけだが,ちゃんと門を開ける方法もあるはずなので,これから始めるという人はEdvardの話をしっかりと聞いておこう。
そんなアクシデントもありつつ,やっとの思いでスケルトン達のもとにたどり着いた。するとスケルトン達が間髪入れずに襲って来たので,さあかかってこいと言わんばかりに筆者も拳を構えたのだが……拳?
そう,先ほどのSteamPunk Top Hatに気を取られ過ぎたせいか,武器を装備するのをうっかり忘れていたのだ。本作のユニークな戦闘システムについては後述するが,スチームパンキーなハゲがこの後どうなったのかは言うまでもない。ooOOooOOOo!
そんなこんなで,なんとかスケルトンを退治すると,Edvardに「Breamar」という町を紹介される。どうやらそこが序盤の活動拠点になるようだ。橋を渡って左手に見える「Lunar Rift」と呼ばれるテレポーターを使えば飛べるとのことなので,そこからBreamarへ向かうことに。
New Britanniaでどう生きるかはプレイヤー次第
カードゲームの要素を取り入れた戦闘システムにも注目
本作のストーリーは,5つのエピソードで構成される予定なのだが,現段階ではストーリー絡みのクエストは実装されていない。したがって,Breamarに着いてから何をするかはプレイヤーに委ねられる。とはいえ,RPGである以上,まずはキャラクターのレベルを上げて装備を充実させたいところだ。
初期装備でもスケルトンが相手ならば十分に戦えることは,先ほどのチュートリアルで分かったので,外に出てスケルトン狩りをすることに。
町を出ると,俯瞰視点のワールドマップに切り替わり,大陸全土を自由に歩き回ることができる。ワールドマップの画面上では,町やダンジョンといった各エリアの名前がポップアップされ,そこに近づいてEnterを押すと中に入れるという仕組みになっている。
Breamarから少し歩くと「Valeway South」と呼ばれる森を見つけたので,足を踏み入れてみるとお目当てのスケルトンを発見。どうやらここが序盤の狩場になりそうだ。
ここで本作の戦闘について触れておこう。本作には,習得したスキルを使ってデッキを組むという変わったシステムが用意されており,プレイヤーは戦闘中,デッキから引いてきたスキルを駆使して戦うことになる。
デッキは,画面上部にあるメニューから「Deck Building」にアクセスすることで,新規作成や編集などが可能だ。「New Deck」を選択すると,デッキのカスタマイズ画面とスキルリストが表示される。ここで,リストにあるスキルをダブルクリックすると,デッキに組み込むことができる。さらに,特定のスキルを取得すれば,手札の最大数やドロースピードなども設定することが可能だ。
といったところで,さっそく筆者もオリジナルのデッキでスケルトンに挑戦してみた。結果としては,強いスキルを立て続けに引いてうまくデッキが回るときもあれば,なかなか良いものが引けず,長期戦になってしまうときもあり,まだまだ不安定といったところ。もっとデッキ構成を煮詰めていく必要がありそうだ。
また,戦闘中に「Slugs」という入れた覚えのないスキルを引くことがあった。どうやらこれは,手札を圧迫するだけのお邪魔スキルのようで,デッキを構成するスキルの数が規定数を下回っていたり,Slugsペナルティのある防具(重装備など)を着ていたりすると,勝手に組み込まれる仕組みのようだ。
手札のスキルは,Ctrlキーを押しながら選択すると破棄できるので,Slugsを引いたら捨ててしまおう。
うまく回らないデッキに四苦八苦しつつも,気が付けばレベル10になり,スキルポイントも大量に獲得していたので,一度Breamarに戻ることに。
本作ではレベルが上がると,HealthとFocus(マナのようなもの)という2つのステータスが上昇し,StrengthやDexterityといった基礎能力値は,特定のスキルを習得した時に少しずつ上がっていく仕組みになっている。
スキルは,冒険用の「Adventuring」と,生産用の「Crafting」(未実装)の2系統に分かれており,レベルアップ時にもらえるポイントを使って,町にいるトレーナーから教わることが可能だ。
筆者は,近接タイプの戦士を目指しているので,「Combat」カテゴリにある「Blades」系統のスキル全般と,「Tactics」系統にある2刀流スキルを習得。まだポイントに余裕があったので,「Magic」カテゴリにある「Life」系統の回復スキルと,「Focus」系統のスキル「Mental Reflex」を覚えて,デッキのドロースピードを上げてみた。
初期装備もだいぶ摩耗してきたので,この機会に一新して全身重装備にしようと思ったのだが,Breamarでは目ぼしいものが見つからなかった。聞くところによると,New Britanniaのナウなシティボーイ達は,Breamarの北にある「Owl's Head」と呼ばれる町を拠点にしているとのことなので,筆者もそこへ向かうことに。
新たな装備を求めてOwl's Headへ
目指すは全身重装備!
Owl's Headを目指してワールドマップを歩いていると,突然エリア移動が始まった。どうやらワールドマップ上では稀にエンカウントが起きるらしく,大量のスケルトンが闊歩する平原や,無数の蜘蛛がうごめく森など,さまざまなシーンに飛ばされるようだ。
ちなみに筆者が飛ばされたのは前者。大量のスケルトンに追われながら必死に逃げまわり何とか脱出することに成功した。
その後は何事もなくOwl's Headに到着。話に聞いていたとおり,ナウで都会的な雰囲気が漂っているのだが,なぜか人っ子一人いない。それもそのはず,筆者はSingle Player Onlineでプレイしているので,ほかのプレイヤーと出会う機会などあるはずもないのだ。
そろそろゲームにも慣れてきたので,このタイミングでMultiplayer Onlineに切り替えることに。するとどうだろう,座り込んで話をしている人や,何かをトレードしている人,決闘している人なんかもいて,だいぶ賑わっているではないか。
また,プレイヤーハウスもあちこちにあり,酒屋みたいな家からお城まで,ビジュアルは多種多彩だ。自分の家を持つには土地の権利書が必要なのだが,筆者が探した限り,ゲーム内ではまだ販売されていない様子。なお,プレイヤーのアカウントを「Citizen」(550ドル)にアップグレードすると土地の権利書と家がもらえるようだ。高い!
Multiplayer Onlineにしてもう1つ気が付いたのが,商人が売っている商品の違いだ。基本的なラインナップはSingle Player Onlineと同じだが,そのほかにも,プレイヤーが売却した商品が売り物として並んでいるのだ。食材屋を覗いてみるとなぜかお目当ての重装備があったので,購入しようとしたところ,1つ5000G以上とかなりお高い。
スケルトンを1体倒したときに入るお金が30G程度なので,単純に計算すると1か所の装備を購入するのに160匹は倒さなければならない。考えただけでもかなり骨が折れる,スケルトンだけに。えへへ。
なぜか寒気を感じてきたが,今はとにかく金策が必要だ。ということで,狩りのターゲットをスケルトンから,お金を持っていそうなバンディットに変えることに。
バンディットは,Breamarの近くにある「North Ravenswood」に出現するようなので,一度Breamarに立ち寄ることにした。町に着いてバンディット狩りの準備をしていると,突如パーティへのお誘いがあったので,喜んで参加することに。誘ってくれたのは,Gingerさんという女性プレイヤーのようで,開口一番に「Settai Yoro」とお願いされてしまった。
どうも見覚えがある名前だが,筆者が知っているgingerは頭文字が小文字なのできっと別人だろう。いろいろと引っかかる部分もあるが,パーティプレイを体験できる願ってもないチャンスなので,一緒にバンディット狩りに向かうことに。
パーティプレイでは,取得した経験値とゴールドがメンバー数に応じて分配されるようだ。バンディットは思いのほか簡単に倒すことができ,少し高めに売れる剣を落としてくれるので,ここでしばらく稼ぐことに。ちなみに,Gingerさんはアサシンを自称しており,戦闘中は常に姿を消していた。キャラクターのネームプレートを見るとAFKと付いていた気もするが,まあ気のせいだろう。
ひたすら狩りを続けていると,レベルが25に到達したので,一度Owl's Headに戻り戦利品を精算することに。1時間ほどバンディットを狩り続けて手に入れたゴールドはなんと10000G。全身重装備という目標に一歩ずつ近づいている感じがとても楽しく,気が付けばすっかり本作にハマっていた筆者だが,その時は突然やってくる。
大金を握りしめて町を歩いていると,武具屋があることに気が付いた。何があるのか覗いてみたところ,アイアンプレートアーマーが1つ250G前後で売っているではないか。つまりは,1500Gほどあれば全身重装備になれたということだ。今までの苦労はなんだったのだろうか。もっと早くに気付けていれば……。
天高く掲げた目標が,実は足元に転がっていたという事実に動揺を隠せなかったが,手探り状態でレベルを上げたりお金を稼いだりするのは面白かったし,姿の見えない女性アサシンとのパーティプレイも楽しめたので,良しとしよう。
ギャリオット氏が思い描く新たな形の「Ultima」
インベントリに最初からあるノートブックを開くと,今後行われるゲーム内イベントが書かれているので,これに参加するのも面白いかもしれない。
まだプレαの段階なので,はっきりとは答えにくいが,本作が万人にオススメできる作品かと聞かれると,少なくとも現時点ではそうではない。
ゲームを楽しむというよりも,ギャリオット氏が思い描く新たなUltimaのコンセプトを見て回るといった感じだろう。開発はだいぶ遅れている様子だが,その分ゲームとしての伸びしろは十分にあるので,これからに期待だ。
何もかも手探りで進めていくような,どこか懐かしい感覚を味わいたい人や,Ultimaというワードに思うところがある人は,この年末年始にNew Britanniaを訪れてみよう。
「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」公式サイト
- 関連タイトル:
Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues
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