インタビュー
「マリオゴルフ ワールドツアー」は,任天堂&キャメロットによるゴルフゲームの集大成に。伊豆野敏晴プロデューサーと高橋兄弟に,その魅力を聞く
すべてのプレイヤーに
世界を目指してもらいたい
4Gamer:
数あるゴルフゲームの中でも,マリオゴルフはカジュアル寄りなイメージがありましたが,今回はかなりシビアな側面を持っているように思いました。
近年のリアルな頭身のキャラクターが出てくるゴルフゲームでも,そこまシビアなものはなかなか見かけないですよね。
とはいえ,シビアになりそうなのはプリンセスクラブだけなんです。というのも,このゲームでは入口を「マリオゴルフ」と「プリンセスクラブ」の二つに分けていて,カジュアルな遊び方から入りたい方は,まず前者から選んでいただければと思います。
4Gamer:
逆に,最初から世界に挑みたいという人は,後者から遊べば良い,と。
秀五氏:
ええ。せっかくですからプレイヤーの皆さんには,最終的に世界を目指してほしいと思っています。
タイトルにもある「ワールドツアー」は,企画段階からのキーワードで,ネットワークを通じてマリオゴルフの世界一を決めることが,僕らにとっても目標だったんですよ。
宏之氏:
実際のゴルフの世界トーナメントって,ものすごくし烈な戦いが繰り広げられるわけですが,そこのトップに上がってくる数十人の個性的なプロゴルファーの1人1人に似た人達が,世界中にいるゲームファンの中に100人ぐらいずついるんじゃないかと思っているんです。
その人達が一堂に会すきっかけになるわけですから,腕に自身のある人には全員に参加してほしいんですよね。
秀五氏:
国旗を背負ってナショナルチームに所属できるチャンスなんて,普通に暮らしていたらまずないですからね!
これは開発中の裏話なんですが,当初はプレイヤーの国籍をリージョンで決めようと考えていたんです。ところがそうなると,アメリカ在住の日本人は,リージョンでアメリカ人になってしまうと。「アメリカに住んでいる日本人でも,日本の国旗を背負って戦いたいと思うんじゃないか」と社内でも指摘されて,最終的にキャラクターを作るときに最初に国を選べるようにしました。
実はこのことは,任天堂さんにも指摘されたんですよね。
伊豆野氏:
海外の日本人スタッフが,「地元で買った本体なんだけど,日本は選べないのか?」と言ってきたんです。確かにその指摘はもっともだな,と。
秀五氏:
僕らの考えとしては,ゴルフゲームをやるならば,誰もがマスターズに出るようなトッププロになりたい夢を持っていると思うんです。
どんなゲームでもその世界のヒーローやヒロインになりきって遊ぶわけですから,ゴルフの世界でもそうなれるように作ってあげるべきで,本作ではそのための舞台を用意させていただいているんです。
4Gamer:
ありふれた言葉になってしまいますが,疑似体験ができるというのは,ゲームだからこそですよね。
秀五氏:
本当にそこはゲームの原点ですよね。今回採用しているボールを打つときの新しいインタフェースも,よりその世界に入り込むための発想なんですよ。
4Gamer:
あの部分も,前作と比べてかなり大きく変わっていますよね。
秀五氏:
ショットのインタフェースに関しては,もともとマリオテニスと同じようなものを考えていたんですが,企画の人間が「下画面にボールを置いて,それが飛んでいったら気持ちいいですよね」と案を出してきたのをきっかけに,今の形になっていきました。
これまでの携帯機だと,ボールは数ドットで描かれているだけで,現実のゴルフとはかけ離れていましたからね。それを実際に画面に出してみると,これが本当に気持ち良くて,それならば! と,この演出を活かしたインタフェースを考えていった結果,あのスピンショットの操作が生まれたんです。
4Gamer:
単純とはいえ,これまで多くのゴルフゲームを手掛けてきたからこそ思いついた発想ではないかな? と思いました。
宏之氏:
確かにそれはあるかもしれませんね。
秀五氏:
これも実際にちゃんと使いこなせれば,けっこうスコアに影響するんです。マニュアル操作では,ショットに入ってからボールが飛んでいくまでにスピンの演出が入るんですが,その演出の間に若干入力の余裕があるので,ミスショットをしたときでも,トップスピンやバックスピンをかけることでフォローできます。
スピンをうまく使いこなせるようになれば,これまで以上にスコアアップが望めるはずですよ。
4Gamer:
となると,大会などでは強さを決めるだけでインパクトはオートの「かんたん操作」より,マニュアル操作のほうが有利になるかも……?
秀五氏:
確かにマニュアル操作のスピンは使いこなせれば武器になるんですが,インパクトのタイミングは自分次第ですからね。かんたん操作なら,インパクトが大きくずれてしまうようなクラブは選ばれないでしょうし,結果的にミスの幅は狭まるので,一概にマニュアル操作が強いとも言い切れません。
4Gamer:
なるほど。そこはちゃんと双方にメリットやデメリットがバランス良く配置されているんですね。
ゲームでしか楽しめない
ギミックを盛り込んだマリオのコース
4Gamer:
では,今回コースにはどんなものがあるんでしょうか?
いわゆるマリオらしいコースと,実際のゴルフに近いコースがあります。
4Gamer:
前者のほうはけっこう面白そうなコースがそろっていましたね。水の中で打ったりとか。
秀五氏:
あの水中のコースは,一番最初に決まったものなんですよ。
こちらでいろんなバリエーションのコースを考えて任天堂さんにお見せしたら,水中のコース(プクプクラグーン)の反応が一番良くて。これが決まってからは,ほかのコースの内容もとんとん拍子で決まっていきました。
4Gamer:
任天堂さんとしては,この水中コースのどこに惹かれたんでしょう?
伊豆野氏:
すごくキャッチーだったんですよね。プクプクが浮かんでいて,一目でマリオの世界だとわかりますし,背景の色味もこれまでのコースになかったものでしたし。
秀五氏:
この色味の背景でゴルフをやっても違和感がないことが分かったので,ヨッシーのパッチワーク風の色合いや,ピーチのピンクでもまったく問題ないということになって,それらに合ったギミックのアイデアも詰められました。
これまでのマリオゴルフでは,最後にコースを難しくするためにマリオのギミックを作っていたんですけど,今回はそうではなく最初から楽しんで回れるマリオのコースを作ることを目指したんです。そうなると,ギミックはただの障害物ではなく,うまく使えばスコアが上がるものという発想に至ったんですね。
4Gamer:
ギミックに関しては実際のゴルフと違う,ゲームならではの要素ですよね。
秀五氏:
それによって,普通のゴルフとは違う新しい戦略を学べますからね。
4Gamer:
面白い攻略方法が見つかりそうですね。トーナメントの成績もそれによって変わってくるでしょうし。
秀五氏:
それはありますね。マリオのコースはコインを取る競技などもありますから,偶然の結果が出ることがあるんですよ。打数とは違うところで勝負できる分,プレイスタイルが違う人も参加しやすくなりますよね。
伊豆野氏:
大会も常時複数が行われていて,コースやルールもかなり違うので,いつでも幅広く挑戦していただけると思います。
そのためにプリンセスクラブには,いろんなトレーニングができる場所を用意しているので,行き詰まってしまったときは,もう一回あらためていろんなトレーニングをし直してみて,一体自分の何が悪いのかに気付いてもらえればと思いますね。
世界同時発売を実現したことで
全プレイヤーが同じスタート地点に立てる
4Gamer:
ところで,当初発表されていた発売予定時期は2013年夏でした。それが延期されたのは,これまでお話しいただいたような,さまざまな要素を組み込むべく,開発期間を確保する必要があったということでしょうか?
宏之氏:
事情はいろいろあるんですが,やっぱり冒頭にお話したとおり,最初はプリンセスクラブがなかったというのが大きいですね。モードが一つまるごと増えましたから。
秀五氏:
すいません,僕のわがままで(笑)。
それに加えて,世界で同時に発売できるように調整していたこともありました。おかげさまで海外とも1日違いで発売できるようになりました。
4Gamer:
世界で対戦できるものが海外で先に出てしまうと,正直,最初から心が折れますからね(笑)。
宏之氏:
ですよね! 全員が同じスタート地点から始められるように,各国の任天堂さんが同時発売のために動いてくれたのは大きかったです。
それぞれの国で同時に発売するための調整は,かなり大変だったそうですよ。
4Gamer:
そんなに発売する国が多いんですか!?
秀五氏:
本当に多いですよね。でも,それだけ多くの地域で発売したいというご要望をいただけたのは嬉しいことです。実際,海外のチームや,京都のマリオクラブのチームと一緒にデバッグをしていたんですが,これがまた楽しくて楽しくて。
4Gamer:
その時点から!
秀五氏:
普段はバグが出やすいようなことを意図的にやりながらテストするんですけど,ワールドトーナメントだと思うと,スコアを伸ばすほうに心が行ってしまう自分がいるんですよ。
4Gamer:
その状態でバグが出ると腹が立ちそうです。
宏之氏:
何度かありました(笑)。
デバッグでそんな状況ですから,本番が本当に楽しみです。デバッグチームの限られた人数ですら,あれだけ楽しかったんですから,世界同時で,しかも国籍も違う未知の強豪達が相手になりますし。
秀五氏:
ただ戦うだけじゃなく,ゴーストが見られる仕様も入れているので,プレイスタイルの参考にもなると思います。ゴーストを見てもらえれば,「ああ,こんな打ち方があるのか」と気付いてもらえるとともに,1人でプレイしている孤独感が薄まるんですよ。
ゲームってアーケードの時代から,うまい人のプレイを後ろから見て覚えて上達していってたじゃないですか。それと同じ感覚ですよね。
4Gamer:
ひょっとしたら,作られた方々の予想もしなかった攻略法が出てくるかもしれません。
出てくるでしょうね。それは「やられた!」と思うと同時に,きっと嬉しくなってしまうと思います。
4Gamer:
こうしてお話を伺っているうちに,とにかく早く遊びたくなってきました。
秀五氏:
ありがとうございます。
モバイルゴルフの頃,制約はありながらもネットワークを使ったゴルフゲームの可能性は見えていたので,環境が整った今,ついにこれが実現できた! という気持ちでいっぱいです。
宏之氏:
どちらかというとマリオゴルフの続編ではなく,モバイルゴルフの続編という感覚に近いかもしれない(笑)。
4Gamer:
つまり,キャメロットさんがこれまで手掛けてきたゴルフゲームの,現時点での集大成ということですね。
秀五氏:
そうかもしれませんね。
発売後には,僕もナイショで大会に参加するつもりで楽しみにしているんですが……興味のある方は,できるだけ早く買ったほうが,アドバンテージが取れますよ(笑)。
4Gamer:
そこは大事ですよね。
宏之氏:
参加賞のウェアもマリオテニス以上の量を用意しているので,できるだけ早くから参加していただきたいですね。
4Gamer:
それらのウェアは,やはり大会でしか手に入らないんでしょうか?
伊豆野氏:
一応,大会が終わって時間が経ったウェアは,コインでも買える仕組みを用意しています。買えないとなると,あとからゲームを始めた人は絶対に手に入らなくなってしまいますから。ただコインはかなりの量が必要になりますし,相当時間が経ってからなので,ぜひ大会で手に入れてほしいですね。
4Gamer:
条件があるとはいえ,あとから手に入るのは嬉しいですね。それともう一つ,追加コースについても情報が公開されましたね。
伊豆野氏:
やはりゴルフゲームですから,やり込んだあとにもっとコースが欲しいという人は必ずいると思うので,そのために用意させていただきました。
4Gamer:
それもキャメロットさんが設計したものですか?
宏之氏:
もちろんです。本編のボリュームだけでも十分ですが,さらに遊びたい方にはオススメします。
4Gamer:
分かりました。そろそろお時間となりますが,やはり大会に参加して楽しむというのが,キャメロットさんとしては本作で一番推奨したい遊び方ということで,よろしいでしょうか?
宏之氏:
それに尽きますね。今までにないワクワク感や緊張感を味わってみてください。ゴルフというスポーツの性質上,やり直しは利きませんからね。もちろん参加は何度でもできるので,プレイできるかぎり,何度も何度も挑戦してみてください。
伊豆野氏:
今どんな大会が行われているかということは,いつの間に通信で常に送られてきて,ゲームを起動したときに分かるようになっていますから,まめにゲームを遊んでいただければ,参加を逃してしまうことはないと思いますよ。
秀五氏:
本当に国を背負って戦ってほしいですね。ナショナルカラーのウェアも用意していますので。それを着て世界一を目指してほしいです。
4Gamer:
我々もぜひ参加しようと思います。
本日はありがとうございました。
公式サイトが公開されたのも比較的最近だったので,マリオゴルフ ワールドツアーの全貌がまだ掴めていない人も多かったかもしれないが,今回のインタビューでおおよその内容を把握していただけたのではないだろうか。
これまでにキャメロットがさまざまなゴルフゲームで培ってきたノウハウをすべて詰め込み,ついに実現する世界大会を控えて,嬉しそうに語る宏之・秀五両氏の様子が印象的だった。
筆者が最後に交わした挨拶も決して社交辞令ではなく,その話を聞いて本当に大会に参加してみたくなったからで,実際に一刻も早く購入し,コースでクラブを振る気満々だ。
ゴルフゲームとしての完成度を備えたうえで,誰でも気軽に大会に参加できる仕組みが備えられた本作。ゴルフゲームファンなら,ぜひプレイしてみてほしい。
「マリオゴルフ ワールドツアー」公式サイト
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