インタビュー
「マリオゴルフ ワールドツアー」は,任天堂&キャメロットによるゴルフゲームの集大成に。伊豆野敏晴プロデューサーと高橋兄弟に,その魅力を聞く
「マリオゴルフ」シリーズとしては,前作「マリオゴルフGBAツアー」以来,約10年ぶりとなる本作は,Wi-Fi通信を使った世界大会に対応。プレイヤースキルだけでなく,Miiのカスタマイズについても,世界規模で腕を競い合えるような作品に仕上がっている。
今回,本作開発の経緯やゲームの見どころについて,任天堂の伊豆野敏晴プロデューサーと,キャメロットを率いる高橋宏之氏,そして高橋秀五氏に聞いてきた。
「マリオゴルフ ワールドツアー」公式サイト
当初は“パーティゲーム”という方向性
それを変えたのは「マリオゴルフ」ファンの声
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「マリオゴルフ」シリーズとしては,ゲームボーイアドバンスの「マリオゴルフGBAツアー」以来,約10年ぶりの新作発売となりますね。
ずいぶん間が空いていて,僕らもビックリしましたね。
伊豆野敏晴氏(以下,伊豆野氏):
この10年の間に,据え置き機ではWiiというハードが出たこともあって,Wiiリモコンで遊ぶゴルフゲームも考えていたんです。
4Gamer:
「Wii Sports」にもゴルフゲームは入っていました。
伊豆野氏:
ええ。ところがその後,ニンテンドー3DSが発売され,裸眼立体視でゴルフコースを表示させたら,かなり気持ち良くゲームが楽しめるのではないかと考えたんです。
それをきっかけに,キャメロットさんに「久しぶりに一緒にやりませんか?」と声をかけさせていただきました。
宏之氏:
任天堂さんからお話をいただいた時点では,携帯機らしく作るというイメージは,あまりなかったんです。
前作から10年が経過して,ハードの性能が向上したこともあって,3DS用に開発している画面をモニター出力しても,かつての据え置き機と遜色ないところまで来ていましたし。
4Gamer:
GBAからだと,2世代分の進化があるわけですからね。
宏之氏:
ええ。だから実際に3DSのスクリーンに出せるようになるまでは,僕らも任天堂さんも,据え置き機向けぐらいのつもりで作っていました。僕らにとって据え置き機のゴルフゲームは,みんなで一緒にプレイするパーティゲーム的なものという意識があって,今回のマリオゴルフもそのつもりで考えていたんです。
もちろん通信を使って対戦できるという仕様も込みで。
高橋秀五氏(以下,秀五氏):
任天堂さんも,最初はその方向性で問題ないと同意してくれていましたからね。
4Gamer:
携帯機のマリオゴルフというと,RPG風のテイストでシナリオを楽しみつつ,1人でじっくりプレイするものというイメージがありましたけど……?
宏之氏:
そうなんですよね。実はRPGのモードを入れるとなると,シナリオを作るのがけっこうたいへんなんです。
前作はゲームキューブの「マリオゴルフ ファミリーツアー」とリンクさせていたこともあって,いろいろやりようがあったんですが,今回のように1本だけだと難しい部分もあって,当初は携帯機でありながらパーティゲームに近い方向性を目指していたんです。
4Gamer:
それが現在の形になったのはどうしてなんでしょう?
宏之氏:
……作っている途中で秀五が「シナリオは入るんだよね?」って言い出して(笑)。
秀五氏:
違う違う(笑)!
「本当にシナリオはなくていいの?」って確認したんですよ。
4Gamer:
あくまで確認をしたにすぎない,と(笑)。
ええ。実は以前,別のゲームで海外のメディアの取材を受けたとき,どの媒体の人達もマリオゴルフGBAツアーのカートリッジを持ってきていて,「これにサインをしてくれ」って頼まれたんです。全員が「マリオゴルフは僕のMost Favoriteだ」と言ってくれて。そのときに,どこが面白かったのかを聞いてみると,みんながRPGモードだって答えていたんです。
4Gamer:
それはいい話ですね!
秀五氏:
そこにいたライターの女の子なんか,「ゴルフはまったく知らなかったけど,あのRPGモードでゴルフを覚えた」とか。そんなことを思い出して,新しく携帯機でマリオゴルフが出たときに,それがパーティゲームだけになっていたら,彼らはどう思うだろう? という話をしたんです。
4Gamer:
シリーズのファンは,やっぱりそこに期待しちゃいますもんね。
宏之氏:
それを考えちゃうとね(笑)。
いろいろと手間がかかることを覚悟しつつ,任天堂さんと相談をして,より遊び込めるようなプロトタイプを考えてみたんです。その結果,なんとか実現できそうだということになって。
ネットワーク環境が充実した今だから
約10年ぶりの「マリオゴルフ」を作ることに
4Gamer:
そういった提案を受けて,任天堂さんとしては……?
我々としてもゴルフをあまり知らない人のために,ていねいに教えてあげる要素がどこかに必要だと考えていたんです。キャメロットさんからの提案は,その解決法になると思いましたので,協力させていただくことになりました。
4Gamer:
そうして生まれたのが,「プリンセスクラブ」なんですね。
宏之氏:
はい。考え方でいうと,このプリンセスクラブはマリオゴルフにおけるクラブハウスなんです。
自分が所属するゴルフコースにプレイしに行ったとき,クラブハウスではきっとこういうことがあるだろう……ということを体験できるようになっています。
秀五氏:
マリオ達がゴルフを教えてくれますからね。「彼らこんなにゴルフが好きだったんだ!」ということを感じられますよ。彼らのあの一面は,マリオゴルフでしか見られません。
もちろんそれ以外にも,すれちがい通信でやってきたプレイヤー達がクラブハウスに集うので,みんなで一緒に遊んでいる感覚も味わえます。自分と同じ方向を目指しているプレイヤーが実際にそこに現れるのは嬉しいですよ。
宏之氏:
実はこのクラブハウスという形に決まった理由は,もう一つあるんです。
4Gamer:
もう一つ,ですか。
宏之氏:
はい。かつて僕らが任天堂さんと一緒にゲームボーイで作った「モバイルゴルフ」のロビーのシステムを,このマリオゴルフで再現したかったんですよ。
4Gamer:
これはまた,ずいぶん懐かしいタイトルが出てきましたね。
秀五氏:
当時はゲームボーイにケーブルを接続して,携帯電話やPHSを使って通信していましたからね。1回10円以内の通信でやりとりできることを一生懸命模索して(笑)。
それが今回は通信機能が最初から搭載されている3DSで,一般の家庭にもWi-Fi環境が普及していることから,世界レベルでのトーナメントなども実現可能になりました。そこで,あのモバイルゴルフのロビーシステムが本作にも適しているのではないかと考え,採用することにしたんです。
4Gamer:
なるほど。となると大会への参加も,プリンセスクラブを通じて行うことになるんですね。
宏之氏:
ええ,大会はこのプリンセスクラブでも一番盛り上がるところだと思います。日本全国の人達と競うジャパントーナメントから,レベルが上がればワールドツアーで世界の人達と競えるようになります。さらに上を目指すなら,その上にメジャートーナメントが待っています。
自宅で遊びながら世界に挑戦できるゴルフゲームというのは,これまであまり存在していないんじゃないでしょうか。
4Gamer:
確かにPC用のオンラインゴルフゲームでも,全世界の人が通信で一堂に会する大会というのは,あまり聞いたことがありません。
秀五氏:
僕らはモバイルゴルフの頃にも定期的に通信トーナメントを開催していましたが,先ほどお話したとおり,携帯電話やPHSが必要だとか,通信料が必要だとか,けっこうハードルが高いものだったんですよね。さらにトーナメントに参加するには,通信料とは別にラウンドごとの参加費まで必要でしたし。
もちろんお金を払って参加していただく分,ゲームで使える特別なクラブなどを提供していましたし,僕らも皆さんに楽しんで参加してもらえるように努力していました。
ただ,3DSで通信が標準となったことでハードルが一気に下がったので,今回は買っていただいた方,全員に参加資格があるわけですよ。
4Gamer:
思えば任天堂さんのゴルフゲームでは,ファミコンの「ゴルフJAPANコース」の頃から,プレイヤーが参加できる大会を実施していました。
懐かしいですね。僕らも毎週日曜日にお店に通って,「ディスクファクス」で成績を送ってましたね。
でもあの頃からもう,上位陣には全然敵わなかった(笑)。僕らもけっこういい成績を出していたつもりんですけど,雑誌に出ていた途中経過を見て諦めました。
4Gamer:
あの頃でさえそんなですから,今回は参加するプレイヤーも一気に増えるでしょうし,さらにすごいスコアが出そうです。
宏之氏:
きっとすごいことになるでしょうね。
4Gamer:
キャメロットさんは,モバイルゴルフの頃からネットワークを使ったゴルフゲームに積極的に取り組まれてきたと思うんですが,なぜ,マリオゴルフとしては約10年もの空白期間が生まれたんでしょう。それこそ,ニンテンドーDSにもWi-Fiコネクションというネットワークの仕組みはありましたが……?
宏之氏:
単純に,僕らは続編のために新作を作っていないということなんですよね。「こうしたら面白いことができる」ということが見えてこないと作るに至りませんし,もし僕らに何のアイデアもなく「マリオゴルフの続編どうですか?」と任天堂さんに相談しても,きっとGOサインは出ないと思うんです。
4Gamer:
では,それを踏まえて,今回の新作を作るに至った決め手は何だったんでしょう?
秀五氏:
そこはやはりネットワーク環境が充実したことでしょうね。
3DSで2年前に「マリオテニス オープン」を作らせていただいて,ネットワークの仕組みをほぼ把握できました。そしてこの3DSなら,マリオゴルフでももっと面白いことができると確信したんです。
きっかけとしてはそこが一番大きかったですね。
手に入れたウェアを装備させることで
Miiの能力をカスタムできる
4Gamer:
また少し話を戻させてください。
プリンセスクラブでの大会には,どういった形で参加することになるんでしょうか。
伊豆野氏:
各大会ごとにエントリー期間が決められていて,その間に大会用にプレイしたコースの成績をアップロードする形になります。期間中ならば何度でもチャレンジできるほか,その期間は常に成績がリーダーズボードに表示されるようになっています。
4Gamer:
成績をアップロードするということは,リアルタイムの対戦ではなく,いつプレイしてもいいということですね。
伊豆野氏:
そういうことですね。
秀五氏:
でもこれがね,通常のストロークプレイだといい成績が出るのに,アップロードする前提で回ると同じコースでも手ごわいんですよ(笑)。
4Gamer:
大会に臨むにあたっては,メンタル面の強さも必要になってくると。
秀五氏:
本当にそう思います。実際の競技の世界をかいま見ることができるんじゃないでしょうか。
さらに言うと,同じコースでもローカル大会とワールドツアーでは,ティーの位置が違いますし,風の強さなども変わりますからね。
4Gamer:
条件的にも厳しくなるわけですね。となると,ストイックにプレイヤースキルを磨くしかない,ということですか?
宏之氏:
いえ,もちろん腕もありますが,アイテムのウェアなどをカスタマイズすることで,ある程度はカバーできます。
4Gamer:
なるほど,ウェアによるカスタマイズは見た目だけでなく,Miiの能力にも影響するんですね。
秀五氏:
はい。今回,Miiそのものには成長要素を持たせていなくて,手に入れたウェアを身につけさせることで,パラメータを好きなように調整できるようにしました。だから前作までのように,成長過程でパラメータの上げ方を失敗してしまうこともなくなったんです。
宏之氏:
大会に挑むうえで,Miiのカスタマイズは重要だと思いますよ。ウェアはゴルフをプレイして集めたコインで買うことができるので,ぜひそこはいろいろと試してもらいたいですね。
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