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印刷2019/05/21 08:00

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CGと思ってくれたら勝ち!「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の撮影現場をレポート。山本監督とマイディーさんのインタビューも

 実写映画「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」が,2019年6月21日より全国で公開される。この発表は,「ファイナルファンタジーXIV」PC / PS4 / Mac。以下,FFXIV)のファンイベント「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2019 in 東京」にて行われたので,すでにご存じのファンも多いだろう。

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 スクウェア・エニックスは3月24日,「FFXIV ファンフェスティバル in 東京」で,「劇場版 FFXIV 光のお父さん」を6月21日より全国で公開すると発表した。その制作発表会を会場で行った。劇場版でW主演を務める役者の坂口健太郎さん吉田鋼太郎さんがゲストとして登場した,制作発表会の模様をレポートしよう。

[2019/03/26 00:00]

 本作は,マイディーさんのブログ「一撃確殺SS日記」で,「ファイナルファンタジーXIV」をプレイする親子の様子を綴った「光のお父さん計画」をベースとしたものだ。映像化されるのは今回が初めてではなく,2017年に連続ドラマとして「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」が放映されている。

劇場版では,息子・アキオ役として坂口健太郎さん,お父さん 岩本 暁役として吉田鋼太郎さんが出演するなど,新たなキャストで制作されている。なお,制作スタッフはプロデューサーおよび監督を含め,全員がドラマ版からの続投だ
画像集 No.001のサムネイル画像 / CGと思ってくれたら勝ち!「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の撮影現場をレポート。山本監督とマイディーさんのインタビューも
 本作の大きな特徴として,俳優が演じる実写パートと,FFXIV内のキャラクターが演じるエオルゼアパートとで,それぞれの物語が展開することが挙げられる。もちろん,エオルゼアパートでキャラクターを動かすのは登場人物達(という設定)だが,現実とゲーム内での発言や行動のギャップが面白さの1つになっている。
 ちなみにエオルゼアパートでは,CGなどは使われず,FFXIV内で実際にキャラクターを操作して撮影されている。ゲーム内で使用できるエモート(※キャラクターの表情やリアクションを操作する)で,どのような演技を実現しているのかは見どころになるだろう。

 今回,そのエオルゼアパートの撮影現場を取材することができた。取材後には,エオルゼアパートの監督である山本清史氏と,原作者のマイディーさんへのメディア合同インタビューも行われたので,合わせて紹介しよう。


プロデューサーの渋谷氏が語る「光のお父さん」。FFXIVチームから開発サーバーと同等の環境を撮影用に貸与!?


 撮影現場の取材の前に,本作の企画・プロデュースを務める渋谷恒一氏より,劇場版を含めた「光のお父さん」についての話を聞いた。

 渋谷氏によると,ドラマ版の反響はとても大きく,Netflixでも6言語,約230の国と地域で配信され,視聴数の実数は非公開としながら,当時不動の1位だった「テラスハウス」を抜いたほどだったという。これについて渋谷氏は「力を入れて(ドラマ版を)制作しましたが,それとは別にゲームIPの強さが刺さったのでは」と分析している。
 また,これまでのゲームを扱った映画作品を例に出し,主人公が「現実世界では傷を抱えたり,ネガティブな要素を持っていたりするが,『ゲームの中ではヒーローだ』みたいな描かれ方をする」と指摘。しかし,「皆さんがよくご存じのとおり,大多数は普通の人」だと渋谷氏は述べる。
 だからこそ「『光のお父さん』のように,普通のプレイヤーが,普通のドラマを抱えて,それがゲームを通じて深まっていくっていうドラマにこだわって制作している」と話し,「ゲームをポジティブに捉えたいというのは原作者のマイディーさんも,プロデューサーである私も,監督も同じ想いです」と力説した。

エオルゼアパートの監督 山本清史氏
画像集 No.015のサムネイル画像 / CGと思ってくれたら勝ち!「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の撮影現場をレポート。山本監督とマイディーさんのインタビューも
 そして今回の映画化についてだが,実はドラマ版の終了後,お父さん・稲葉博太郎(劇場版では岩本 暁)を演じた故・大杉 漣さんの生前から映画化の話はあったという。
 その内容として,シーズン2的な物語や「光のぴぃさん」(ドラマ版制作の裏話)を映像化するという案もあったそうだが,チーフプロデューサーから「これは良質な真実の話だ。ドラマが本当にいい話だったので,これをしっかり多くの人に観ていただこう」という提案があり,またFFXIVプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏からも「一体何を怖がっているんですか。いい話であれば,そこは訴求すればいいじゃないですか。変にこねくり回して変なものにする意味はないんじゃないですか」と背中を押され,劇場版制作に踏み切ったという。
 そうして,脚本も監督もドラマ版と同じスタッフを起用する方針が決まり,とくにエオルゼアパートに関しては,山本監督が候補から外れたことは一度もなかったそうだ。

 そうして制作が始まった劇場版は,基本的なストーリーこそドラマ版と大きく変わらないが,新しい家族,新しい家が舞台となる。最大の違いは,主人公のアキオの妹が登場し,3人家族から4人家族構成になったことだ。
 「実はブログを読むと,自転車の下りで(マイディーさんの)弟さんが出てくるんですよ。もともと実話をベースにしていて,物語の本質に支障のない範囲で家族を増やしているので,映画で大きく改編しているということではありません」と渋谷氏は説明する。
 また,ドラマ版ではお父さんとマイディーさんだけがFFXIVプレイヤーとして登場するが,ほかにもFFXIVプレイヤーが出てきたり,ゲーム内に登場するキャラクターも増えているとのことだ。

 そして今回,一番大きな特徴と言えるのが,エオルゼアパートの撮影に際して,撮影用にFFXIVの開発サーバーと同等の環境がスクウェア・エニックスから貸与されていることだろう。
 ドラマ版で苦労したゲーム中の時間や天候の変化を任意で変更できるため,撮影時間の大幅な短縮が可能になったという。このこともあってか,ドラマ版のように各所からログインして撮影するのではなく,劇場版は“撮影現場”に集まっての収録となっている。

 となると気になるのは,ライブ感を演出するためには欠かせない,出演者以外のキャラクター(いわゆるモブ)の存在だろう。ドラマ版では,通常の公開ワールド内を使って撮影していたので,実際に誰かがプレイしているキャラクターが街中にいたわけだが,劇場版では,開発サーバーを利用できたことでキャラクターの容姿をすぐに変更でき,撮影スタッフがエキストラも担当しているのだという。

 このように撮影面で強化された劇場版だが,もう1つ大きな変化がある。それは,ドラマ版の撮影のあとでゲーム内に追加されたグループポーズの新機能や,エモートの数々だ。これにより,ゲーム内での表現力が大きく増したそうで,劇場版ではより細やかな演出を心がけているのだという。実際の映像がどのように変化したのかも興味深いところだ。
 なお,今回のエオルゼアパートでは,フレームレートを120fpsにして撮影しているという。そうすることで,スローモーションが行いやすくなるらしく,山本監督が表現力を増すためにこだわった結果なのだとか。

エオルゼアパートの撮影現場に潜入! 部屋の中は,正に“撮影現場”だった


 渋谷氏の説明を聞き終えたあと,いよいよエオルゼアパートの撮影現場の見学へ移ることになった。

 撮影部屋には2つの大きなテーブルがあり,1つのテーブルに6人,もう1つのテーブルには山本清史監督とマイディーさんを含めた4人が腰かける。それぞれの席にはノートPCが1台あり,接続されたゲームパッドでキャラクターを動かすといった感じだ。

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山本監督の席には,編集用の機材が置かれ,その正面少し上には,大きめのディスプレイも設置されていて,その場で全員が撮影した映像を確認できた
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 見学時に撮影していたのは,砂丘からメンバー全員が歩いて降りてくるシーン。カウントを使ってスタートするも移動スピードが揃わなかったり,キャラとキャラの間がバラバラだったりと,何度かNGを出しながら撮影が進められていく。ここで重要なのが時間を変更する機能だ。当然だが,ゲーム内の時間が経過すると太陽の位置が変わってしまう。そのため,ゲーム内の時間を戻して,イメージ通りの景色で撮影が可能となるわけだ。

砂丘の上に勢ぞろいするキャスト一同。手前のアウラが山本監督のキャラで,位置などを指示した後,砂丘を下がってキャストが降りてくるのを撮影する。なお,フィールドに出現するモンスターは先に倒している
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撮影は主に景観カメラによる定点撮影で,特別なカメラアングルなどは使っていない。すべて通常のゲーム内の機能のみで撮影を行っている
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 撮影風景を見ていて,やはりチャットではなく,指示を声で掛け合えるのは大きいと感じた。離れた場所から指示ができるのはチャットの大きなメリットだが,ストレートに文字だけが伝わるので,誤解を生みやすい面があるからだ。この撮影現場では,声で指示を出すだけでなく相手のディスプレイを指さして「このあたりに移動して」と伝えられるし,操作やエモーションが分からない場合は,他のメンバーがすぐに教えられるなど,スムーズに撮影できる環境になっていたように思える。

 そうして納得のいくまで撮影を繰り返し,30分ほどで2〜3シーンの撮影が終了した。1シーンに掛かる時間はそれほどでもないようだったが,ドラマ版のときは1日では撮影が終わらなかったと山本監督は話す。それもこれも専用サーバーがあるからこそだ。

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「エオルゼアパートをCGだと思ってくれたら勝ち」。山本清史監督とマイディーさんにインタビュー


 撮影を終えた後,エオルゼアパート監督の山本清史氏と,原作者のマイディーさんへの合同インタビューが行われたので,その模様をお届けしよう。

――本日はよろしくお願いします。「光のお父さん」が劇場版になると決まった時は,どんな気持ちでしたか。ドラマ版でやりきったといった思いはなかったのでしょうか。

マイディーさん:
 キャラクターを動かすアクターとしては,ドラマ版のときに課題が残っていたので,もう少しやりたい気持ちがすごくありました。

山本清史氏(以下,山本氏):
 撮る側としても,できたこと,できなかったことが明確にありました。ドラマ版がちょうど終わった頃に,ゲームのほうがバージョンアップして,撮影環境がより良くなったので悔しかったんです(笑)。それこそ,やり直せるならやり直したいと思っていました。なので,劇場版は良いチャンスだなと思ったんです。

マイディーさん:
 エモートの数も増えましたし。

山本氏:
 そう,雲泥の差です。カメラもレンズが変えられるし……もうちょっと前にやってくれれば! ってずっと思ってましたね(笑)。

――エモートやカメラのバージョンアップに加えて,開発サーバーと同等の環境を借りられたというのは鬼に金棒という感じですよね。

山本氏:
 天気待ちがなくなりましたね。一方で,天候や時間が操作できることが演出になるので,曇り空から晴れにしたいといった欲が出てくるんです。このときは晴れてほしいとか,雨から晴れになってほしいとか。逆に考えることが増えたという部分はありますね。

――(撮影は)特定の時刻を設定して,その時刻に合わせて行う感じなんですか。

山本氏:
 そうですね。

――では,この時間の日差しがいいからここで,という場所を知っておかないといけないですね。

山本氏:
 ある程度,夕日はこうなるだとか,朝はこうなるというのを把握しています。

――とすると,思ったよりも入念なロケが必要そうですね。

山本氏:
 そうなんですよ。意外と伝わらないんですけど,ロケハンが実はすごく大事で。ここにこれがあるというのを知っておかないといけないので,違うゲームをしている感じです(笑)。

――ドラマ版での知識や経験はそこまで役立たなかった?

山本氏:
 全然そんなことないですよ。あのときの僕はただの(FFXIV)初心者だったので,散歩から始めましたから。それに比べれば知識があるので,ここでこれができるというのが分かっているんです。
 ただ,場所は分かっていても太陽がどういう風に見えるかは,ドラマ版では(撮影での)成り行きでしかありませんでした。今回はそれを狙って撮影できると考えると,もうちょっと入念な計画というか,狙いが必要になりました。

――ドラマとは意識的に変えているところ,また,あえて変えていないところを教えてください。

山本氏:
 意識的に変えているのは,ドラマ版で好評だったお父さんのキャラクターが(マイディーさんのキャラクターの周囲を)クルクル回るシーンですね。ただ,僕の中ではあまりヒットしていなくて。あれは,エオルゼア(ゲーム内)でのシーンだから何が起きているのか,よく分からないんですよ。
 今回はそれを(リアル側の出演者が見ている)ゲーム画面のなかで起きたらどうかというのを入れました()。そうすれば,見え方もだいぶ変わるので。
 ゲーム画面とエオルゼアパートをもう少しハッキリさせて,この動きはこっちで見せるというのを意識的にやるようにしています。

※ドラマ版の撮影でも,主人公達のリアルパートとゲーム内のエオルゼアパートのほかに,リアル側からプレイ中のゲーム画面を見る第3のパートが存在する。

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マイディーさん:
 演じる側としてはエモートの数,とくに表情が増えていますから,その組み合わせを意識して,よりレベルの高いものを作ろうとしています。

山本氏:
 (マイディーさんと)この距離で会話や演出ができるので,細かな要求が増えましたね。

マイディーさん:
 前は会話はチャットで,天候待ちもあり,待っている時間がほとんどでした。今回はこの距離でしゃべりながらできるのが,僕らもすごくやり易くて。
 絵づくり自体も,インディとマイディーが演技している後ろで,違うタイムラインで別の芝居が入っていたり,細かな演出を入れてもらえているので,だいぶ絵が変わりました。グレードが高くなっていると思います。

――30分ぐらい撮影の様子を見せてもらいましたが,1回のシーンの撮影に何時間ぐらいかかりますか。何回ぐらい繰り返して映画に使うシーンが揃うのでしょうか。

山本氏:
 1日5〜6時間だと思うんですが,全体で2週間ぐらいですかね。これはエオルゼアパートだけです。一方,ゲーム画面はめちゃくちゃ時間がかかります。ゲーム画面は,UIの配置とかチャット欄の広さ,文字の大きさとかも全部やっているキャラクターと直結するじゃないですか。
 例えばお父さんの画面はこうで,アキオの画面はこうでと決まっているので,それに合わせてやるとなると,実はエオルゼアパートを撮影するよりも,よっぽど大変だということが,今回よく分かりました。ただチャットの様子を撮るだけの画面なのに。

――先ほど,何度もリテイクを繰り返していましたが,今回の撮影はすんなりいったほうだったのでしょうか。

山本氏:
 今日は人数が多くて,また初めてお会いした方もいたので,わりと気を使ってましたね。いつもは灰皿が飛び交っています(笑)。

一同:

――じょびネッツア(※マイディーさんのフリーカンパニー)の方々も撮影に参加されているとのことですが,結構前からお伝えしていたんですか。

マイディーさん:
 今回,こんな撮り方にしようと思っていると話しても,1週間後にはそれはやっぱり無理だと二転三転することがあるので,全体に話したのは,つい最近です。
 今回手伝いに来てくれているのは,前も参加していて一生懸命やっていたメンバー達なので信頼しているし,飲み込みも早いので,ヨーイドンですぐ撮影がスタートできました。みんなに知らせたのは最近なんですけど,来てもらっているメンバー達には半年ぐらい前から状況は伝えていました。

山本氏:
 今回マイディーさんの演技の画面を見て,ちょっと衝撃を受けましたね。あの数字は何ですか。

マイディーさん:
 あれはリップシンクの秒数です。1秒のマクロ,2秒のマクロ,4秒のマクロ,と。(キャラクターがしゃべる)セリフがあるんですけど,それに合わせて使っていくので,監督もできたら秒数で言ってもらったほうがいいです。

山本氏:
 謎の数字が飛び交っていて,聞く人が聞いたらサッカーのフォーメーションに聞こえる……。それプラス,表情(の演技)もですね。

マイディーさん:
 表情も素顔からいきなり怒るよりも,なにかちょっといぶかしげな雰囲気の表現を入れてから怒るって3段階ぐらいにした方が,より自然な表情になるんです。
 エモートって基本的に自分の感情を誰かに伝えるものですから,いきなりその表情になってしまうんですよ。そのままだと安っぽいのかなと思って。間に何かを挟んだりとか,視線を動かしつつとか,普通にしゃべっているところでも棒立ちで会話するとゲームっぽさが出てしまうので,そうならないようにいろいろ工夫しています。

 さっき話していたゲーム画面では,ゲームっぽさを出していきたいので棒立ちでしゃべっている方がそれっぽいんですが,エオルゼアパートは主人公の脳内補完された世界というイメージなので,できるだけ人間らしく動かないとダメなんです。だから棒立ちでしゃべるんじゃなくて,しゃべりながらも体勢を変えたりとか,そういう動きを入れています。

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山本氏:
 結構座りながらしゃべってもらったり,振り返りながらしゃべってもらったりとか,人間っぽいことを結構いろいろやっていますね。

――特定のエモートから戻るときが気を使いそうですね。元の真顔に一瞬で戻っちゃうじゃないですか。そこも間に別のエモートを挟んで調整しているんですか?

マイディーさん:
 ええ。「微笑み」という表情にしても,微笑んだあとスッと真顔に戻るんで,いまの絶対ウソの笑いだろ,みたいになるんですよ。だから,監督がカットというまで,ずっとそれを連打してその表情をキープしてますね(笑)。

山本氏:
 でも,それが面白いこともあるんです。お父さんのキャラクターは,逆にスッと戻った方がそれっぽくて。「うそやん」みたいな。

マイディーさん:
 そういうところでキャラクター付けできたりする場合もあるのは,面白いですね。

――先ほど話していた残された課題を解決できた部分,または見てほしいところはありますか。

マイディーさん:
 嬉しいことに今回もドラマ版と同じストーリーで,同じようなシーンが出てきます。ですから気持ち的にはVer2.0な気持ちで挑むというか,前の演技をベースにして変えていくことができます。このあいだ撮った羅刹衝のシーンはうまくできたかな。

山本氏:
 あれは,してやったりですね。

マイディーさん:
 カメラアングルがスゴイ感じでしたね。

山本氏:
 10回ぐらいやり直したからね。

マイディーさん:
 大きいディスプレイで監督の画面が見えますから,演技したあとにどんな状態で撮れたのかがすぐ確認できるんで,どこがダメだったかすぐ分かるんです。前はそれが分からなかったので,何が良かったのか,良くなかったのかすべて委ねなければならなくて。

――監督とマイディーさんで意見が衝突することってあるんですか?

山本氏:
 意見の衝突は……。

マイディーさん:
 監督が,柔軟にしてくれているなといつも思ってます。最初にこのシーンを撮りますよと言われたときに,僕らが演技プランを出してこういう風にやりたいですというのを揉んでくれたり,そこだけ変えようか,みたいな意見をくれたり。
 まず僕らの意見を聞いてくれるので,のびのびできています。だからこそ(1人のキャラクターを)何人かでやってる演技に個性が出せるので,ありがたいです。

――監督はやりにくくないですか。すぐ近くに演者がいるわけだから,文句を言われるんじゃ,と。

山本氏:
 いや,実写の役者と変わらないですよ。実際に演技をしてもらって,こうこうこうだからこう撮りますと伝えると,文句を言う人はいる。それと同じ事です。

――ドラマ版のときはそれがなかった?

山本氏:
 そんなことはないです。むしろチャットこそ,感情がストレートに伝わるので,誤解があったりとか,意見の相違はあったと思います。お互い大人の対応をした,みたいなのもあったりするんですけど。

――では,やってることはあまり変わらないと。

山本氏:
 チャットでやろうが,ボイスチャットでやろうが,面と向かってやろうが,僕の気持ちはそんなに変わらないです。

――ドラマは全7話でした。映画はもっとコンパクトになりますが,シーンの選出はどういう風に決めたのでしょう。

山本氏:
 脚本の段階ということですよね。難しい話なんですよね,マイディーさんのブログのどこを摘むかという話になりますから。
 とくにドラマのファンもいることを考えると,ドラマでやってたことをある程度残しつつ,でもまったく新しいお客さんにも伝わらないといけない。さらに,マイディーさんのブログをずっと応援してきた人も納得するような……みたいなところの打ち合わせというか,議論というか,殴り合いというか(笑)。ここ1,2か月やっていましたね。

――それはもっとエオルゼアパートに尺が欲しいとか,そういうところですか。

山本氏:
 尺が長いというのが,そもそもあったんです。僕が野口さん(監督の野口照夫氏)に「この尺で本当にやります? 絶対長いですけど大丈夫?」というところから始まって。でも,削りたくない,削れないよねと。そこから,どう面白くするかという殴り合いが始まって,どうしても削らなくちゃいけない部分があるので,そこは泣こうか……というのがありました。
 マイディーさんの意見もあるし,スクエニさんの意見もある。関わっている野口さんや吹原くん(脚本の吹原幸太氏)も……と,そこはもうお互い腹の底を探りながら,こうじゃないか? って,にこやかに殴り合ってました(笑)。

マイディーさん:
 集まれる場所に貸し会議室がなくて,いい大人がカラオケボックスに集まってやってたんですよ(笑)。誰かが歌うような雰囲気もなくて。

山本氏:
 僕と野口さんが1〜2月ぐらいまでは,お互いの家の近くまで行って,夜中の1時〜2時ぐらいまで話をしてましたね。実写パートとエオルゼアパートのつなぎ方や演出で詰めないといけないので,それありきで脚本に落とし込むという打ち合わせを何回かしました。それはドラマのときもしたんですが,今回はもっと多かったです。

――2時間前後に話を収める段階で,テーマをどう表現しようとか,実写パートとエオルゼアパートでどの部分を重要視しようとかを考えられたんですか。

山本氏:
 一本の軸で考えた場合,絶対捨てちゃいけないのは,お父さんの成長部分です。光のお父さんというタイトルでもあるし,FFXIVを始めてのめり込んでいき,自分が隠していた思いや伝えきれなかった言葉を伝えられるようになる。その大きな意味でのテーマっていうのは絶対崩しちゃいけなくて,そのための仕掛けを置いていこうということにしました。

 それにプラスして,ドラマ版の光生(あきお)もゲームで学び,会社で仕事に生かすというシーンがありましたが,お父さんの成長に彼の成長もなんとなく絡めていきたいなというのが監督の中にありました。
 2人がゲームを通して絆を取り戻し,親子関係を再生させるという成長感のあるストーリーを描きたいとずっと議論していんたです。
 ほかにもいろいろな小ネタはありますが,そこにつながらないとただの蛇足になってしまうので,思い切って削ってもいいんじゃないかという話もしましたね。

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――新キャラクターとしてアキオの妹が登場しますが,どういった感じで登場させるのでしょうか。

マイディーさん:
 尺を詰めるためのテクニックというか,2人で会話するより3人で会話した方が話は転がりますし,展開も早くなるというところかなと。

山本氏:
 お父さんとアキオが,どうしてもお互いに言葉をかけづらい関係性で,ハブになる人物が絶対必要なんです。それがお母さんではなくて,もうちょっと弱い立場というか,家族に妹がいれば,妹も文句を言うし,文句を言いながらお前ら2人でやれよみたいな感じになる。そうすると,アキオとお父さんが縮図的に「お,おう」みたいな感じになりやすいかなという仕掛けですね。

――ドラマ版にはいなかったルガディンがいますよね。彼について何か語れることがあったらお願いします。

マイディーさん:
 ゴリオですね。僕らはとても気に入ってるキャラクターです(笑)。

山本氏:
 ゴリオのキャラに関しては,結構個人の裁量に委ねられていたんですよ。このキャラクターはどうする? という話は,実写のほうでは出てなかったので,こっちで作らざるを得なくて。
 そのキャラクターを使う女の子の性格を僕らでいろいろ考えたんです。こういう仕事してるからジョブはこれかなとか,台本を読み解くと「強そうなやつがいいよね」と言ってるから,強そうに見えるキャラクターはどれかと考えた結果,できあがったのはアクション映画スターみたいな。でも女の子っぽい入れ墨を足して,可愛らしさを出そうとか,結構キャラメイクは面白かったですね。一番ハマった気がする。

マイディーさん:
 イメージとしては,例えば全然オンラインゲームに興味のない友達をFFXIVに誘ったら,ガチ勢に成長して,自分を追い抜いていくっていうパターンがあるじゃないですか。ああいうキャラクターなのかなと思ったんです。
 映画ではそこまで進まないですが,そういう要素のある面白みというか,そういうのが表現できたらな,と。お父さんとは違う,もう一人の初心者さんを出したかったんです。

――ドラマ版のときは,マイディーさんが光生の部屋をプロデュースされていましたが,劇場版の実写パートも?

マイディーさん:
 しています。僕,調子に乗って10万円分ぐらいのファンフェスグッズを買ってしまって,ぜひそれを使ってください,と(笑)。最近のFFXIVプレイヤーの部屋にFFXIVグッズがないのも不自然なので,一番新しいお洒落なリングやサボテンダーのボードゲームとかを小道具として飾ったらいいんじゃないかなって,現場に持っていきました。
 結構お洒落な部屋のイメージで,FFXIVプレイヤーに格好いいかなと思ってもらえそうな,理想のFFXIV部屋を目指してもらいました。

――最後に映画の見どころをお願いします。

山本氏:
 僕らからすると(FFXIVが)日常的になりすぎて当たり前だから,ここがすごいんだよって判断が難しくなっているんです。でも,実際にゲームのキャラクターを動かして,それが銀幕やテレビ画面に耐えられる映像になるんだということを知ってほしいというのが根底にあります。
 「映画はこういう風に撮るんだ」という思いこみや先入観は僕らの中にも当然あり,カメラはこうじゃなきゃとか,こういう風にしなくちゃ撮れない,CGはやっぱり良くないと思うこともあります。でもそうじゃなくて,いまこういうゲームがあって,それを使うことでも映画が撮れるんだよというのが僕としては作品に関わるモチベーションになってるんです。
 「これってCGなの?」と思わせたら勝ちだと思っていて,「CGで撮ったんでしょ」と何も知らないお客さんが彼女とかに言うような作品になったらいいなと思います。そういう風に見えるように頑張っているので,エオルゼアパートがどう見えるかというのを,ぜひ映画館で確認してもらいたいです。

マイディーさん:
 基本的には親子のドラマですというストーリーにはなっているんですが,僕がずっと思っているのは,これがオンラインゲームの可能性であり,オンラインゲームプレイヤーのひとつの夢の形なんです。自分のプレイが映画になるってすごいロマンがあると思うんですよ。

――少し気恥ずかしい気持ちにもなりそうですけど。

マイディーさん:
 そうそう。俺,坂口健太郎なんやって(笑)。

一同:

マイディーさん:
 自分のキャラクターに声が付くというのも夢がありますし,監督もおっしゃっていましたが,確かにCGと思われたいというのもあります。ただ,もう一歩踏み込んで,1人1人(のキャラクター)に命があって,考えがあって,演技をしている。どちらかというと,本当に撮影現場,リアルな撮影現場に近い環境が存在するってことを知ってほしい。そう思って,一生懸命演技をしています。
 オンラインゲームというと「ゲーム」と付いてしまうので,敵を倒したりレベルを倒したりが注目されますけど,FFXIVというゲームはそれだけではなくて,そこから文化的な活動もできます。最近ではゲーム内で音楽を奏でてコンサートしている人もいますし,バーを経営している人もいます。そういう多様性を持ったゲームというのが,いまのオンラインゲームだということをとても知ってほしいと思っているので,ぜひ映画を見て面白そうだなと思っていただけたら,FFXIVを遊んでみてもらえればと思います。

――ありがとうございました。

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