レビュー
「FFXIV:新生エオルゼア」の新ベンチマーク「キャラクター編」を現行GPU計31製品で回してみた。エンジンの改良で快適度はどう変わった?
ではこの新しいベンチマークを前に,現行世代のGPUはどの程度のスコアを示すことができるだろうか。今回は,NVIDIAおよびAMD製の単体GPU,そして統合型グラフィックス機能(以下,iGPU)を持つ第4世代Coreプロセッサの計31製品を用いて,スコアを取得してみた。のべ320回のテスト試行によってどのような傾向が見られたかをお伝えしていきたいと思う。
召喚士がいたりするなど,変更が加えられたキャラ編
設定項目のプリセットには新たにノートPC向けが加わる
ベンチマークスコアを見る前に,新生FFXIVベンチ キャラ編とは何なのかを簡単に整理してみよう。
ソフトウェアとしての最大の特徴が,新生FFXIVのキャラクター作成を体験できることにあるというのは8月1日の記事でお伝えしたとおりだが,ベンチマークソフトとしての新生FFXIVベンチ キャラ編は,基本的に新生FFXIVベンチ ワールド編からそう変わっていない。実際,ドラゴンらしき大型モンスターとのパーティバトルのシーンから始まり,複数のパーティがフィールドで戦闘をしている中をチョコボで駆け抜けるシーンが続いて,ざっくり5分程度で全シークエンスが終了するといったあたりは,新生FFXIVベンチ ワールド編と同じだ。
左が新生FFXIVベンチ キャラ編で,右が同ワールド編。同じシーンでも,キャラクターの立ち位置やエモーション動作が変更されている | |
こちらも左が新生FFXIVベンチ キャラ編で,右が同ワールド編。後者で黒魔道士は杖を振りかざして詠唱しているのに対して,前者だと杖を地面に突き刺して詠唱を行っている |
さらに,「設定変更」の各選択肢にも変更がある。新生FFXIVベンチ ワールド編の「キャラクター移動時の効果表示」が「揺れの表現」に変わっていたり,「影の表示設定」がプルダウンメニューではなく,自分とそれ以外のキャラクターについてそれぞれラジオボタンから選択するようになっていたりといった感じだ。
新生FFXIVベンチ ワールド編でも「標準品質」だと「自分と背景のみ表示する」が選択されていたので,内容自体は変わっていないのだが,ベンチマークテスト中はプレイヤーキャラクターが登場しないこともあって,新生FFXIVベンチ ワールド編では,「自分と背景のみ表示する」を選択すると,すべてのキャラクターで影が表示されなくなっていた。
それに対して新生FFXIVベンチ キャラ編では,キャラクター作成機能で実際に作成したプレイヤーキャラクターをベンチマークテスト本編に登場させられるようになっている関係で,標準の(そして,入れ替えが可能な)ミコッテ男性はプレイヤーキャラクターとして設定されており,結果,影が表示されるようになっているのだ。
- 7000以上:非常に快適
- 5000〜6999:とても快適
- 3500〜4999:快適
- 2500〜3499:やや快適
- 2000〜2499:普通
- 1500〜1999:設定変更を推奨
- 1000〜1499:設定変更が必要
- 999以下:動作困難
という点も,先のベンチマークソフトから変わっていない。
この点について,新生FFXIVベンチのプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏へ確認したところ,「βテストを通じた最適化により描画負荷が下がったため」という回答が得られた。氏は「今後,DirectX 11対応版のリリースなど,大きな節目には,新しいベンチマークソフトも合わせて用意したい」と意気込みを語っていたりもしたので,今後の新ベンチ登場にも期待したい。
10万円超級から3000円台まで現行GPUのほとんどを用意
「最高品質」と「標準品質(デスクトップPC)」でテスト
意外と前置きが長くなったが,テスト環境の構築に話を移そう。
今回用意したシステムは表のとおりで,CPUはHaswellマイクロアーキテクチャを採用した「Core i7-4770K」(以下,i7-4770K),マザーボードはASUSTeK Computer製のゲーマー向け「Intel Z87 Express」搭載モデル「MAXIMUS VI FORMULA」,メインメモリはサンマックス・テクノロジーズ製のPC3-14900 DDR3L SDRAM 8GBの4枚セット「SMD-32G28CP-18ML-Q」から,2枚をDDR3L-1600設定で用いることにする。
グラフィックスカードは,詳細仕様まで記載すると,画像があまりに縦長となってしまうため,簡略版とした。画像をクリックすると完全版を表示するようにしてあるので,興味のある人はそちらを参照してもらえればと思う。
冒頭でも述べたとおり,今回用意したGPUおよびiGPUは合計31製品だが,内訳はGeForceが現行の16製品,Radeonは現行14製品,i7-4770KのiGPU「Intel HD Graphics 4600」(以下,HDG 4600)で1製品だ。おおむね,現行世代のGPUおよびデュアルGPUカードは揃っていると述べていいのではないかと思う。
なお以下,GPU名の「GeForce」「Radeon」表記は省略するが,以下のとおり注意事項があるので,あらかじめお断りしておきたい。
- GT 640にはGK208コア版とGK107コア版の2種類があるため,前者を「GT 640 GDDR5」,後者を「GT 640 DDR3」と表記して区別する
- GT 630にはKeplerコア(GK208)とFermi(GF107)コアの「GeForce GT 440」をリネームしたものがあるため,前者を「GT 630 Kepler」,後者を「GT 630 Fermi」と表記して区別する
- GTX 650 Ti BOOSTはグラフ中に限り「GTX 650 TiB」と表記する
- Radeonの「GHz Edition」は「GE」と表記する
- HD 7950 with Boostは,HD 7950リファレンスカードに「AMD PowerTune Technology with Boost」対応VBIOSを導入したもの(※なので1枚で2製品分テストすることになる)。記事中では「HD 7950 wB」と表記する
- GTX 660 TiカードおよびHD 7790カードなど,入手した製品の一部ではメーカーレベルのクロックアップ設定がなされており,これらの製品に対しては,MSI製のオーバークロックツールである「Afterburner」(Version 2.3.1)を用いて,リファレンスレベルに動作クロックを下げてからテストに使っている
用いたグラフィックスドライバは,GeForce用が「GeForce 326.41 Driver Beta」で,Radeon用が「Catalyst 13.8 Beta」,そしてHDG 4600用が「9.18.10.3165」と,いずれもテスト開始時点となる8月上旬の最新バージョンとなっている。
テスト方法は新生FFXIVベンチ ワールド編のときと同じ。1解像度につき,2回ずつテストを実行し,その平均をスコアとして採用することにした。
解像度は,ゲームPCにおける標準的なアスペクト比といえる16:9から,
なお,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)は,今回,有効化したままとなる。
MAXIMUS VI FORMULA ゲーマー向けのハイエンドZ87ボード。基板全体を覆う「ROG Armor」の採用が特徴的 メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:テックウインド 価格:未定(※2013年8月10日現在) |
SMD-32G28CP-18ML-Q PC3L-14900仕様のDDR3Lモジュール,8GB×4枚セット メーカー:サンマックス・テクノロジーズ 問い合わせ先:パソコンショップ アーク パソコンショップ アーク販売価格:3万5980円(税込,※2013年8月10日現在) |
おおむねスペックどおりの並びとなる「最高品質」
SLIは期待どおり機能するも,CFはドライバ待ち
以下,GPU性能のグラフでは基本的にGeForce→Radeon→Intel HD Graphicsの順に,モデルナンバーの高いほうから並べているが,グラフ画像をクリックすると,スコア順に並び変えたものを表示するようにしてあるとお断りしつつ,テスト結果を順に見て行こう。
グラフ1は,おそらく中上位クラスのグラフィックスカードを所持している,もしくはこれから購入しようとしている人にとって最も気になるであろう,解像度1920
前述のとおり,スクウェア・エニックスの指標だと,「非常に快適」とされるのはスコア7000以上だが,解像度1920×1080ドットの「最高品質」で,このラインをクリアしてくるのは,GeForceがGTX 660以上,RadeonならHD 7850以上ということになる。新生FFXIVベンチ ワールド編が公開された時点だと,順にGTX 670以上,HD 7970以上だったので(関連記事),「非常に快適」のレベルは,ゲーム自体の最適化によって,かなり引き下げられたと述べてよさそうである。とくに先のテスト時と比べてRadeon勢のスコア向上率は著しく,GPU(というかグラフィックスドライバ)側の最適化は相当に進んだとまとめられそうである。
なお,スコア全体を見てみると,デュアルGPUカードであるGTX 690が頭一つ抜け出し,その後をNVIDIAのウルトラハイエンドGPUであるGTX TITANおよびGTX 780が追う,という形になっている。新生FFXIVベンチ ワールド編はリリース当初,ウインドウモードしかサポートしておらず,3月のアップデートでフルスクリーンモードをサポートするまで,マルチGPU構成でのスコア向上は望めなかったが,そこは最新の新生FFXIVベンチ キャラ編。しっかりSLIが機能している。
ただし,RadeonのデュアルGPUカードであるHD 7990は,HD 7970やGTX 670の後塵を拝しており,CrossFireが正常に機能していない。スクウェア・エニックスのベンチマークソフト配布ページによれば,AMDは現在,対応ドライバを開発中だそうなので,なんとかサービスインまでに間に合ってほしいところだ。
1920×1080ドットで「とても快適」のラインをクリアできなかったGPUは,
というわけで,解像度を1280×720ドットにまで下げたときの結果がグラフ3だ。案の定というかなんというか,“スコア7000超えクラブ”へ新規に入会できたのはHD 7770 GEだけである。「最高品質」でゲームをプレイしたいのであれば,素直にGTX 660もしくはHD 7850以上のGPUを購入して,解像度1920×1080ドットを狙ったほうがいい,といったところか。
続くグラフ4〜6は,グラフ1〜3の平均フレームレートをまとめたものだ。前述のとおり,スコアは2回の平均値であるため,100%完全にスコア順のフレームレート値となっているわけではないが,全体的な傾向は一致しているのも分かるだろう。
1920×1080ドットで平均60fpsを超えてきているのは,GTX 660およびHD 7850以上なので,平均60fpsを超えると,スコア7000のラインを超えられる……という可能性はありそうだ。
「標準品質(デスクトップPC)」ならエントリークラス以下のGPUでも十分プレイアブルに
続いては「標準品質(デスクトップPC)」のスコアだ。
「最高品質」と比べると描画負荷が低くなるため,一定以上の性能を持つGPUでは,相対的なCPUボトルネックによって,スコアの頭打ちが起こりやすくなる。それを踏まえて見ていってほしい。
さて,グラフ7は解像度1920
もっとも,先ほどと同じように「非常に快適」のラインを見て行くと,条件をクリアしたのはGeForceがGTX 650以上,RadeonがHD 7750以上であり,快適にプレイできるラインはかなり下がっている。HDG 4600ですら「やや快適」のレンジに入っている点にも注目しておきたい。
続いて解像度1600×900ドット時のスコアがグラフ8で,ここではGT 640 DDR3やHD 7730といった“下の上”クラスのGPUでも,7000のラインを超えてきている。一方,上位陣は軒並み20000超えで,もうほとんど比較にならない印象だ。
さらに解像度を下げるとどうなるか。1280×720ドット時のテスト結果がグラフ9で,ここではGT 630 Fermiが7000超えを果たし,さらにHD 6570もあと一歩というところまで来た。最下位クラスのHDG 4600やHD 6450あたりは,ここでも7000のラインには遠く及ばないが,それでも「快適」「とても快適」ラインにいるわけで,グラフィックス設定さえ下げれば,たいていのPCで新生FFXIVはプレイできるともいえそうである。
グラフ10〜12は,「標準品質(デスクトップPC)」における3解像度の平均フレームレートをまとめたものだ。ここでも,平均60fpsを超えるGPUには,おおむね7000かそれ以上のスコアが与えられていると分かる。
CPUとスコアの関係も
ちょっと確認してみる
今回はちょっとしたオマケとして,GPUをGTX TITANで固定のうえ,マザーボードのUEFI(≒BIOS)からCPUのコア数や「Intel Hyper-Threading Technology(以下,HTT)の有効/無効を切り替え,CPUのコア数やスレッド数とスコアの相関を見てみよう。
今回は,以下のような設定を行って,スコアの変動を確認することにした。なお,CPU性能の違いが現れやすくなるよう,「グラフィック設定プリセット」は「標準設定(デスクトップPC)」を選択している。
- 4C8T:i7-4770Kの標準状態(4コア8スレッド)
- 4C4T:HTTを無効化し,擬似的にHTT非対応のクアッドコアCPU相当としたもの(4コア4スレッド)
- 2C4T:HTTは有効のまま,コア数を2基に減らし,HTT対応のデュアルコアCPU相当としたもの(2コア4スレッド)
- 2C2T:HTTを無効化しさらにコア数を2基に減らして,HTT非対応のデュアルコアCPU相当としたもの(2コア2スレッド)
- 1C1T:HTTを無効にし,さらにコア数を1基まで減らしたもの。シングルコアCPU相当(1コア1スレッド)
その結果がグラフ13となる。
まず目を引くのは,新生FFXIVベンチ キャラ編において,4C8Tと4C4Tでスコア差がほとんどないこと。CPUコアは4基あれば十分のようだ。
一方,2コアの場合は,HTTの効果が大きく,2C2T比で,2C4Tのスコアは20〜28%も高いスコアを示している。要するに,新生FFXIVベンチ キャラ編では4コア4スレッド対応のCPUが適しており,2コアCPUの場合はHTTのサポートがあったほうがいい,ということになりそうである。
念のためグラフ14に平均フレームレートベースのテスト結果も示しておくので,参考にしてほしい。
続けて,今度は4コア8スレッドのまま,動作クロックを変化させ,それがスコアにどういった影響を及ぼすかも見てみよう。今回のテスト条件は下記のとおりで,動作クロックの引き下げはUEFIから行っている。なお,3GHz以下でTurbo Boost有効時のスコアがないのは,動作クロックを引き下げるとTurbo Boostが無効になるというCPUの仕様によるものだ。
- i7-4770K@3.5GHz wTB:i7-4770Kの定格動作。Turbo Boost有効
- i7-4770K@3.5GHz:i7-4770Kの定格動作から,Turbo Boostを無効化した状態
- i7-4770K@3GHz:i7-4770K@3.5GHzから動作クロックを3GHzへ下げた状態
- i7-4770K@2.5GHz:i7-4770K@3GHzから動作クロックを2.5GHzへ下げた状態
- i7-4770K@2GHz:i7-4770K@3GHzから動作クロックを2GHzへ下げた状態
その結果がグラフ15で,スコアは動作クロックどおり,極めて順当に並んでいると述べていいだろう。GPU性能が十分にある限りにおいて,動作クロックは高いほうがいい,ということになりそうである。
こちらもグラフ16に,平均フレームレート取得結果をまとめておこう。
消費電力は性能だけでなくGPU世代も反映した結果に
デュアルGPUカードはさすがに高い
最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて取得した,「新生FFXIVベンチ キャラ編を実行している間に示された,システム全体の最も高い消費電力値」を,グラフ17に示す。ご覧のとおり,デュアルGPUカードの消費電力は当然だが高く,見事なワン・ツーフィニッシュだ。また,GTX TITANやGTX 780,HD 7970 GEもなかなかのものである。
下のほうだと,GeForceではGTX 650 Ti BOOST,RadeonではHD 7850を境に,消費電力の段差が生じている点と,Fermiアーキテクチャを採用したGT 630 Fermiが,性能からすると相当に高い値となっている点が目を引く。
快適にプレイするためのハードルが確実に下がった新生FFXIV
では,今回の結果をどう判断するかだが,βテストに参加した感触からすると,解像度は高ければ高いほうがプレイしやすかった。なので,画質を多少下げてでも,解像度は高く設定したほうがいいのではないかと思う。
ただ,これは新生FFXIVベンチ ワールド編のテストレポートでも指摘したことだが,「最高品質」と「標準品質」では,まったく別のゲームをプレイしているのではないかと思うほど,プリセットによる画質の違いは大きい。なので,予算に余裕があるのなら,できる限り高い性能のGPUを選ぶのがいいだろう。
また,今回のテスト結果からするに,SLIには十分な効果があり,また,公式サイトで予告されている以上,CrossFireも遅かれ早かれ,効果を発揮するようになるはず。デュアルGPUカードを選ぶかどうかはさておき,手元のPCがSLIやCrossFireに対応しているなら,FFXIVを機にマルチGPUという選択肢を考慮してみるのも,悪くないかもしれない。
ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア公式Webサイト
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