レビュー
「サイバーパンク2077」発売直前レビュー。圧巻の世界描写とグラフィックス,自由度の高いゲームシステムが魅力。巨大電脳都市を思うがままに駆け抜け,時代の伝説となれ
本作は,企業が国家を超えるほどの力を持った2077年の近未来を舞台に,“サイバーパンク”のV(ヴィー)となって陰謀渦巻く巨大電脳都市「ナイトシティ」を生きるオープンワールドアクションRPGだ。「ウィッチャー」シリーズでおなじみ,ポーランドのデベロッパ・CD PROJEKT REDが開発し,日本での販売はPC版,Xbox One版,PS4向けダウンロード版をCD PROJEKT REDが,PS4のパッケージ版をスパイク・チュンソフトが担当する。
正式発表がおよそ8年前の2012年10月(関連記事)。この日が来るのを待ちに待ったというゲームファンも少なくないだろう。そんな本作のPC版を,発売に先駆けてプレイする機会を得られたので,発売直前レビューをお届けしよう。6月にはプレビュービルド版での先行プレイレポートを掲載しているので,興味のある人はこちらと合わせてチェックしてほしい。
本稿の画像は,GeForce RTX 3070搭載のグラフィックスカードを使用し,ゲームのグラフィックス設定にてレイトレーシングをONにした「レイトレーシング:ウルトラ」にしたもので撮影したもの。発売当日に配信予定のDay0パッチが当たっていない状態のものであるため,発売時のバージョンとは異なる部分がある。
また,紹介している部分は序盤の展開と一部のミッションのみでネタバレには注意しているが,記述やスクリーンショットには物語の内容が一部含まれているので,読み進める際には注意してほしい。
「サイバーパンク2077」公式サイト
「サイバーパンク2077」を先行プレイ。ネオンきらめくナイトシティには,身体改造や自由度の高いクエストが楽しめる最高の世界が広がっていた
CD PROJEKT REDが開発,スパイク・チュンソフトがPS4用日本語パッケージ版を発売予定の「サイバーパンク2077」を先行プレイ。ネオンの街並みや身体改造,選択次第で何通りもの解決方法が生まれるクエストなど,サイバーパンク好きはもちろん知らない人でも没頭できる,最高の世界が広がっていた。
生粋のナイトシティっ子と元・企業のエリートで
“物語の始まり方”の違いを紹介
1980〜90年代にかけて発売されたTRPG「Cyberpunk」「Cyberpunk 2.0.2.0.」の世界観をベースとした本作の舞台となるのは,西暦2077年のアメリカ・カリフォルニアに位置する巨大都市・ナイトシティだ。テクノロジーは飛躍的に進化しており,「サイバーウェア」と呼ばれるインプラント型の人体強化装置が一般に広まっている。ロボットやアンドロイド,ドローン,“空を飛ぶ車”であるAVが至るところで活動しており,街を見渡せば,20世紀に人類が夢見た未来そのものといった風景が広がっている。
その反面,さまざまな社会的な混乱により政府や国家は力を失い,今や巨大企業体が世界を牛耳っている。「コーポ」と呼ばれる企業とその関係者は,富を独占し,あらゆることが自由に好き勝手できる力を持ち,そこからはみ出たものは虐げられながら貧しい生活を送るか,ドロップアウトして悪行に手を染めるチンピラやギャングになるしかない状況だ。
したがって治安は極めて悪く,警察もろくに機能していないか賄賂漬けといった状況で,権力者の思うがままにしか動かない。裏路地はもちろん,商店街のような場所でも殺気立ったガラの悪い連中がそこらでたむろしているありさまである。
そんなナイトシティで成り上がるため,フィクサーと呼ばれる仲介屋を介してさまざまな仕事を受けて暮らしているのが,主人公・V(ヴィー)だ。とはいえそのバックグラウンドはゲーム開始時点では定まっておらず,キャラクターメイキングの項目にある「ライフパス」をプレイヤー自身が選択することで決まる。
ライフパスは,ナイトシティの外からやってきた放浪者(アウトロー)の「ノーマッド」,ナイトシティの最下層でもがく「ストリートキッド」,巨大企業アラサカに勤務する成功者の「コーポレート」という3種類。この選択によって物語の導入部分が変わっていく。6月の先行プレイレポートではノーマッドでプレイした模様をお届けしているので,今回はストリートキッドとコーポレートの2つで,ライフパスによって物語の始まりがどう変わるのかを紹介しよう。
ストリートキッドでは,“生粋のナイトシティっ子”であるVが地元に戻ってくるところから物語は始まる。違った環境での成功を目論み街を出たが,思うように成功は掴めず戻るハメになってしまったV。出戻りとはいえ地元は馴染みの顔ばかりで居心地は良く,さらに,どうやらVはそれなりに顔の知れた存在でもあるようで,扱いもなかなかのものである。
地元での新たなサクセスを目指すVに,さっそく仕事が舞い込んできた。といっても,馴染みのバーの店主からの,「評判の悪い地元のチンピラから金を借りたものの,返す当てがないので何とかしてくれ」という非常にスケールの小さいもの。放っておけないVはそのチンピラと話をつけ,「ある高級車を奪ってくれば借金はチャラにし,さらに追加報酬までつける」という約束を取り付ける。
鍵のコピーもあり,警備員とも話がついているという実にうますぎる話だが,あっさりと目的の車に到着。本当に簡単な仕事だと思ったところに,1人の男が現れる。その名はジャッキー・ウェルズ。同じ車を狙っていたという男で,Vに銃を突きつけ「降りろ」と命令してくる。
緊張感のなか押し問答していると,今度はサイレンを鳴らしたパトカーが次々と現れ,あっという間に拘束されるVとジャッキー。さらに車の主であるコーポの人間が現れ,「こいつらを始末しろ」と言い出すありさま。絶体絶命のピンチだ。
ここで殺されては物語が進まない。もちろんVは助かるわけだがそのあたりは実際にプレイしてのお楽しみ。ともに危機を脱したVとジャッキーの2人は,同郷という縁もあったことであっという間に打ち解け,互いに成功を目指す相棒として活動していくことになる。
コーポレートのVは,超巨大企業アラサカの防諜部で働くエリート中のエリートだ。コンピュータが並び,ゴミひとつ落ちていない綺麗なアラサカの社内だが,その実体は世界を股にかけるビジネスと陰謀の中枢であり,ある意味ではナイトシティの裏路地より“汚い”場所とも言える。
とくに防諜部は汚れ仕事を請け負う部署でもあるため,内部の空気は張り詰めており,社内闘争が常に繰り広げられていた。人もうらやむ成功者であるコーポの実情は,一度失敗したり弱みを見せたりすればすべてを失うという状況のなか,ストレス全開で自身の地位にしがみつく人々が働くブラックな職場だったというわけだ。実際にVの健康状態も決して良いものではなく,「サイバーウェアからの通知」でそれが常に表示されている。
直属の上司の覚えもめでたく,何人かの部下もいる中堅社員としてアラサカに勤務するVだったが,ある日その上司から“特別業務”を与えられる。
それは社内の人間同士のゴタゴタに関するもので,バレれば取り返しがつかないことになる命令のため迷うVだが,そもそもここは上司の命令を断ることなどできはしないブラック企業。渋々引き受けたVが連絡した先は,かつて仕事を一緒にしたことがあるジャッキーだった。コーポレートのルートでは,ジャッキーは,「すでに知り合っているビジネスパートナー」として登場するのである。
ジャッキーとバーで待ち合わせ,依頼内容を話すと,“企業の汚れ仕事”への依頼に対してジャッキーは難色を示す。ストリートキッドのルートでも描かれたように,コーポの人間は,身内はともかくそれ以外の人々からはかなり嫌われている。ジャッキーにとってもアラサカ職員のVは,自分たちが暮らす街を牛耳り,そして搾取していく人間だ。ビジネスライクに付き合ってはいても,一線は引いているのだろう。薄汚い企業内のゴタゴタなど,内部でどうにかしろという話だ。
ジャッキーの助けが得られず途方に暮れるVだったが,そののちすぐにその悩みは解消される。とある理由によってVは会社を追われてドロップアウト。ジャッキーと組む形で,新たな人生を歩むことになる。もはや肩書きは一切通用しない,実力のみが問われるこの街で,だ。
以上のように,Vはどのライフパスを選んでも,「ジャッキーとコンビを組む」というスタート地点に立つ。ここで紹介した流れは本当に最序盤で,プレイ時間的にはせいぜい十数分程度とかなり短い。簡単な選択肢などはあるものの,Vの経歴や人となりを最初に見せるという側面が強い印象だ。
ライフパスの選択で以降のストーリーが大きく変わることはないが,出来事への反応や立ち振る舞いに違いが出る。これがV自身の特徴を表現するだけではなく,ゲーム進行にも関わってくるのが本作の特徴の一つだ。
筆者は今回,序盤を確認してからはコーポレートをメインでプレイしたのだが,かつての勤め先だったコーポの連中と渡り合う場面や企業関係の仕事をするときなどに,アラサカ出身という経歴を活かした固有の選択肢が出てきて,これによりジョブ(ミッション)を有利に進められることがあった。直接役に立つ場面はあまりなさそうだが,挨拶の仕方や物事に対する姿勢などにも元エリートというのか,元アラサカ気質(?)が出ており,ある人には感心され,ある人にはウンザリされるといった場面もあって面白い。
街で育ったストリートキッドなら地元の人々との話がスムーズにいきそうだし,流れ者のノーマッドであれば街で暮らしてきた人とは違った視点や考え方による選択があるかもしれない。そう考えるとどのライフパスも興味深く,選択時には悩まされることになりそうだ。
事前情報を追っていた人はすでにご存じだろうが,こののちVとジャッキーは,有能なハッカーであるT-バグという女性を仲間に加えてチームとなり,「Relic」と呼ばれる謎のインプラントをアラサカから盗み出すことになる。
そして,ある事情から約50年前の伝説のミュージシャンであり,テロリストとしても名を残したジョニー・シルヴァーハンドのデジタル化された意識と,Vは脳内で“共生”することになるのだ。
ネタバレを避けるために詳細は避けるが,序盤とは思えないほどの怒濤の展開が待っているので期待していてほしい。
プレイ前に読みたい「サイバーパンク2077」前史・徹底解説。英雄ジョニー・シルヴァーハンドの足跡から“暗黒の未来”を振り返る
11月の発売に向け期待が高まる「サイバーパンク2077」だが,そのベースとなったTRPG版について知る人は,日本ではそう多くないだろう。本稿では「2077」へと引き継がれているこの世界の成り立ちを,キーマンであるジョニー・シルヴァーハンドの足跡と共に紹介する。「2077」をより楽しむための副読本として活用してほしい。
プレイヤー自身が思い描く“らしさ”を持ったVとなり,欲望渦巻くナイトシティで成功を掴め
ここからは本作の基本システムを紹介しよう。プレイヤーは主人公のVとなり,オープンワールドで構築されたナイトシティを自由に動き回りながら,さまざまなミッションに挑んでいく。
序盤はVの自宅の周囲などごく一部のエリアしか移動できないが,メインのミッションを進めてある段階に至ると,街の全域が一気にアンロックされる。ほかにも,「物を運ぶ」「敵対ギャングを叩く」「人を探す」といったサイドミッションや依頼が各地に用意されており,その数や種類は豊富で「やることがなくなって困る」……などということにはならないはずだ。
ミッションや依頼に成功すると,お金や経験値,そしてVの知名度にあたる「クレド」が手に入る。経験値が溜まればレベルが上がり,金が貯まれば装備を充実でき,クレドがアップすればより良い武器が購入でき,仕事の依頼も増える。さまざまなミッションや依頼をこなしてVの能力と知名度を高め,さらなる上の仕事に挑んでこの街で成功を掴む……というのが基本的な流れとなるなるのだ。
ゲーム開始時のキャラクターメイクは,いくつか用意されたものを選択する形のため,外見のパターンはそこまで多くないが,瞳の種類やサイバーウェアのインプラント形態といった,サイバーパンク作品ならではの項目で個性が出せるので,こだわって作成したいところ。
最初に設定する能力値は体力やスタミナに影響する「肉体」,ハッキング能力に影響する「知力」,回避率や移動速度が上がる「反応」,クラフト技術や防御力に影響する「技術」,精神力やステルス能力を表す「意志」に分かれている。それぞれの能力値には2〜3つのスキルが紐付いており,「パーク」というポイントを割り振ることによって,「ハンドガン」「クイックハック」「ステルス」などの種類に応じた能力をアップさせることが可能だ。
スキル自体にも経験値があり,使えば使うほどボーナスが得られる。特定のスキルを極めるか,さまざまな技術をまんべんなく使えるようにするか。プレイスタイルはもちろん,育て方次第でプレイヤー自身の思い描く“Vらしさ”をもった人物に育てられるだろう。
本作のアイテムは大まかに「武器」「防具」「消耗品」「ジャンク」に分かれており,武器と防具はアタッチメントや改造パーツで強化できるほか,アップグレードやクラフトも可能だ。装備やアタッチメントにはレアリティが設定されており,ランダムで拾えたり敵がドロップしたりといったハクスラ要素もある。レア度が高く強い装備が拾えたときは嬉しいが,武器の使用にはレベル制限なども関係するため,強すぎる装備はすぐに使えず,しばらくお預けになるのはちょっともどかしい。
その反面,クラフト用のアイテムは,レアリティごとに「アイテム部品」と「アップグレード部品」が1種類しかなく,かつ店でも購入可能なので非常にシンプルで分かりやすい。クラフトは,仕組みによって「細かい材料をいろいろと集めるのが面倒」といったことになりがちな要素なので,この辺りが簡略化されているのは個人的に嬉しい配慮だと感じた。
本作特有の要素「サイバーウェア」を忘れてはいけない。これは体内に埋め込む,あるいは身体の一部と交換することで強化するガジェットだ。身体の一部を取り換えるわけなので,当然自分一人で行えるものではなく,サイバーウェアでの強化は「リパードク」と呼ばれる特定の施設で行うことになる。
種類としては,皮膚の下に装甲を埋め込んで防御力をアップするといった比較的に穏やか(?)なものから,「肺を人工にしてスタミナを上げる」「脳にメモリを入れてハッキング能力を上げる」「腕にランチャーやカマキリのような刃物を仕込む」といった覚悟がいる身体改造まで,さまざまな形でのアップグレードが可能だ。
通常の装備に比べて入手性が低く,価格や必要なクレドも高いため,序盤での導入は難しく,ある程度ゲームを進めないと利用できないが,それだけに武器と防具では調節できないステータスや能力を強化できる。サイバーパンク作品の定番である要素なので,こちらもこだわって進めていきたいところだ。
戦闘はFPSよりもRPG寄り。しっかり育成し,さまざまなスキルを活かして強敵たちに挑め
一人称視点でゲームが進む本作の戦闘は,基本的にシンプルなものとなっている。
同時に3つまで装備できる武器を好きなタイミングで切り替えながら,距離のある相手にはアサルトライフルやショットガンなどの銃器で戦い,近距離戦では鈍器のバットや刃物のカタナなどを用いて敵を倒していく。
障害物の端に近づくと少し武器を傾けるといったカバー要素はあるが,レベル制が採用されているため射撃のプレイヤースキルはそこまで必要とされず,主に武器やV自身の特性を生かして戦っていくことになる。
格上の敵はヘッドショットを決めても一撃で倒れないし,背後からステルスキルを狙っても簡単に振りほどかれてしまう。強敵を倒すには,Vのレベルアップやスキルの強化,そして強い武器が必要となり,FPSよりはかなりRPG寄りのスタイルとなっている。いくら射撃のテクニックがあってもそれだけで進めるのは難しいし,逆にシューターが苦手でも,しっかりVを育てていけば物語を進められるというわけだ。
戦闘に活用するとグッと楽になるのが,Vのハッキング能力。Vは「サーチモード」を発動すると,視界内のNPCやオブジェクトに対して,時間をスローにしながら分析作業ができるのだが,これが戦闘中でも使用できるのだ。
サーチした対象は,オブジェクトならそれ自体をハッキングで乗っ取り,誤作動などを起こさせて敵を釣るといった戦術に活用できる。街の人たちのほとんどがサイバーウェアを利用して身体を改造しているので,人間自体をリアルタイムでハックすることも可能だ。
これらは「クイックハック」と呼ばれるもので,致死性のダメージを与える「シナプス焼却」,一定の間だけ相手の視界を奪う「オプティクス再起動」,機械相手に強い「回線ショート」など多種多様な攻撃方法がある。強力なものはそれだけ使用条件が厳しいが,これらの攻撃を受けた敵は直接ダメージを受けたり,大幅にスキが生まれたりするので,うまく使いこなして強敵を倒そう。
武器を撃ちまくりながら同時にハックでもダメージを与えたり,あるいは無傷の敵へのあいさつ代わりにデバフを食らわせたりと戦術の幅も広がるので,うまく使えるようになると,有利に戦えるだけではなく戦闘自体がさらに楽しくなるはずだ。
クイックハックで注意しなければならないのが,敵も使用できるという点だ。しかも視界外から繰り返し使われることもあり,こちらが食らうとかなり厳しい。それらに対処できるパーク(スキル)などを活用しながら,まずは敵の位置を確かめ,優先的に倒すなどの工夫が必要となるだろう。
ときに慎重に,ときに大胆に……Vの個性と選択により展開が変わる会話とミッション
アラサカタワーを中心とした巨大なビル群。怪しげな連中がたむろする,ネオンが輝く下町。日本人街(ジャパンタウン),港湾地区,砂漠の風景が広がる“街の外”のバッドランズ……ナイトシティとその周辺は特色豊かで,その土地によって雰囲気も大きく変わる。“外回り営業”を行い,各地にある仕事や依頼を引き受けよう。
武器を片手に裏路地を回ってチンピラどもを片付ければ,警察に感謝され報酬がもらえる。倒したチンピラたちからアイテムも押収(?)できて一石二鳥だ。
スキルや装備によって選択肢が変わるのは,非戦闘時……つまり通常の探索時やイベント,会話でも同じだ。例えば,なかなか開かない扉は,肉体を鍛えていれば無理矢理こじ開けられるし,技術の値が高ければピッキングで開錠できる。意志の値が高ければ,会話や交渉などのシーンで強気に押し切れる選択肢が出てくるので,同一のイベントでもVのスキルやパラメータ,そしてプレイヤーの選択次第で展開が大きく変わっていく。
これらの選択や駆け引きでも物語の展開は変わる。前半にある「AUTOMATIC LOVE / 機械仕掛けの愛」というジョブを2度,それぞれ異なる手段で進めてみたので,これを例に紹介したい。
このジョブの目的は,行方不明となったとある女性の消息をつかむこと。事前の調査により,ジャパンタウンにある店に手がかりがありそうなことが分かったが,そこはギャングが経営する怪しい店である。入店時に武器を預ける必要があり,また正面の扉は固く閉ざされ内部には武装したギャングが警備員代わりに多数詰めているとあって,真正面からの武力で脅して話を聞く……という手段は取れそうにない雰囲気だ。
いかにも「ステルスで進め!」な空気を感じた筆者は,まずは正面から客として入店。情報収集を進めながら,あるときは機器を誤作動させて注意を引き,またあるときはVIP用エリアに入るアクセスコードを持つ敵をステルスで片付けて先へ進み,なんとかオーナーらしき人物と対面する。ここまでは,自分でもなかなか上出来の進め方だったと思う。
このオーナーはギャングの元締めにしては話ができるほうで,こちらを発見してもすぐに襲いかかってくることはなかった。だが立場が立場なので舐められないように,最初から会話で強気の交渉を進めたところ,脅しも説得もきかず最終的には敵対。武装したオーナーを素手で殴り倒すハメになったあげく,一気に武装した手下が襲いかかってくる事態になってしまった。
敵の武器を拾って何とか切り抜けたものの,ギャングとの壮絶な銃撃戦で店中は血まみれで破壊され,ジョニーから皮肉たっぷりに「奴ら(ギャング)の恨みを買ったな」と言われる始末。詳しい話は聞き出せず,情報は別の手段で探す羽目となり,想定とはだいぶ違う,散々な結果となってしまった。
2回目の挑戦は,より慎重かつ冷静に進めることにした。店内に入る前に武器を預けるところまでは共通であるものの,内部をさらにいろいろと探してみると,最初は気がつかなかった可動式の窓が廊下にあることがサーチで判明した。
これによって,より安全かつ簡単にVIP用エリアに進むができ,そのまま進むと店のバックヤードにたどり着いた。見張りは1人だったため簡単に片付けられたし,さらにレア度高めのアイテムや金も手に入るというおまけつき。気がつけば何でもないところなのだが,「こんなルートが隠れていたのか」とちょっと驚いてしまった。
オーナーとの会話は前回の教訓を生かし,最初からシンプルに取引を持ちかけると,あっさりと応じてくれた。ここでは強化していたVの能力が役立ち,事前に店舗で集めていた情報を元に,「高い知力で店舗のセキュリティアドバイスおこない,その引き替えに情報を得る」という非常に穏健な方法で目的を達成できたのだ。もちろんこれなら最後に,ジョニーから嫌みを言われることもない。
このイベントに限らず,本作は会話時の選択肢の選び方がかなり重要で,思った以上にシビアな変化が生まれることがある。なかには時間制限があって焦ってしまうものもあるが,あまり考えず選んでしまうと結果的に危険な状況を招くことが多い。相手の性格や思考を見極め,可能な限り慎重に会話を進めよう。
圧倒的な世界描写とグラフィックス。広大で魅力的なナイトシティでの生活を楽しもう
冒頭で触れたように,今回はGeForce RTX 3070搭載のグラフィックスカードを使ってレイトレーシングをONにしてプレイしたのだが,このグラフィックスには本当に驚かされた。
「これぞサイバーパンクの世界」という光り輝くネオンの描写,鏡面や水たまりなどの反射表現が非常に素晴らしく,レイトレOFFの状態と見比べると非常に物足りなくなってしまうほど圧倒的なものだった。以下にレイトレをONとOFFにした状態のスクリーンショットを並べてみたので,ぜひチェックして欲しい。
なお,PS4版とXbox One版もそれぞれPS5とXbox Series Xへの将来的な対応も公表されているので,コンシューマ版をプレイする人も今後のアップデート情報を楽しみに待とう。
世界観の作り込みも,非常に素晴らしい出来だ。超巨大企業が君臨し,街中は体を改造した人々で溢れ,空にはビーグルが飛び交い,路地では怪しい日本語のネオンがきらめき,ひとたび裏路地に回れば廃退的な雰囲気に満ちている……といった空気感の再現は本当に素晴らしい。
筆者はTRPGの「Cyberpunk」を遊んだことがないが,「ブレードランナー」や「攻殻機動隊」などで親しんだ世界が現実のようにゲーム内で再現され,その中を自由に活動できたことは感慨深かった。そんな街を歩けるだけでも,小説を読んで世界を想像し,映画やアニメ,漫画などでビジュアル化されたものを楽しんできたというサイバーパンク作品好きの人たちにはたまらないものがあるだろう。
世界観を象徴する演出として,「ブレインダンス」も印象的だった。これは記録したデータを三次元のリプレイデータとして端末で再現するもので,それを本人目線で体験するだけではなく,第三者として自由に分析や編集ができるという機能だ。
ゲーム全体から見ると決してメインの存在ではないが,ボリュームが多いゲーム作品の中では,どうしても会話だけで物語を進めるのは単調になってしまうこともある。だがブレインダンスは単に見るだけでなく,自分で操作するという形で干渉できることもあり,イベントなどの良いスパイスになってくれている印象だ。
今回はソフト発売前のためプレイ時間が限られており,またフレームレートや最適化の方面で不安定なところがあったため,プレイしにくい部分は多かった。しかし,メインのストーリー進行やゲームシステムには大きな不具合はなく,刺激的かつ魅力的なナイトシティでの生活と歯ごたえあるメインストーリーをささやかな時間ながらたっぷり体験できた。
山のように溜まっていくジョブ。悩みながら楽しめるVの成長と強化要素……やり込み要素もかなりのものを感じさせてくれる。
ローカライズと吹き替え音声の品質はかなり高く,物語に集中できたのはとくに嬉しいポイントだった。細かいところだと,少しひねくれたアイテムのフレーバーテキストがなかなか面白い。絶妙にズレた感覚がある和風の部屋の内装や街中にあるおかしな日本語の看板,ラジオで流れる2077年の少し(かなり?)変わった日本語ボーカルの楽曲といったものの“なにがどうおかしいか”を探すのも,日本語ネイティブな我々ならではの楽しみ方の一つだろう。
開発期間が長く発売延期もあったことから,待ちに待ったという人も多いであろう本作だが,筆者の印象としては「待った甲斐はあった」と十分に思える出来だった。不具合は目立ったものの,「もっと物語を進めたい」「たくさん登場するレトロな未来感あるデザインの自動車やバイクで,ナイトシティ中を走り回りたい」など,まだまだ遊びたかったという思いが湧いたのだ。
試遊期間の間にもソフト側とドライバ側両方でのアップデートが随時適用され,プレイ環境も少しずつだが安定していった。大規模な作品なだけに主に前述したフレームレートや最適化についてはまだ課題はありそうだが,ゲームシステムとストーリー,ゲームのやり応えといった部分についての完成度は期待できそうだ。
RPG要素が強いあたりは,純粋なアクションゲームを望む人とそうでない人で好みが分かれるかも知れないし,過激な表現もなかなかに多く,これを苦手に思う人もいるかもしれない。だが,大きな話題を生んだ分,それに応えてくれるだけの作品となっているのは間違いなく,オープンワールドやSF作品が好きな人だけではなく,多くのゲームファンにプレイしてほしいと思える,2020年を締めくくるにふさわしい一本だ。
「サイバーパンク2077」公式サイト
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Cyberpunk 2077 is a trademark of CD Projekt RED S. A. Cyberpunk 2077 CD Projekt RED S. A. All rights reserved. Cyberpunk 2077 is based on a Pen & Paper Cyberpunk system created by Mike Pondsmith. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.
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