インタビュー
「デーモントライヴ」はスマートフォンでの“新しい遊び”を目指した協力対戦型のアクションRPG――プロデューサーの脇 康平氏とディレクターの山田理一郎氏にインタビュー【前編】
本作は,プレイヤーが秘密結社“オメガ・サベイランス”の総督となり,デーモンに変身する能力を備えたエージェント達を率いて,世界を脅かすデーモン軍団の侵攻を防ぐという内容のタイトル。「League of Legends」や「Dota 2」など,DoTA系とも呼ばれるMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)タイトルが持つ戦略/戦術の要素を盛り込んでいるが,単なる対戦型のゲームにはとどまらず,一人でも楽しめるストーリーモードや育成要素などもしっかりと用意されている。
また,「こちら」のニュースで紹介しているように,“日本一有名な悪魔”である「デーモン閣下」をモデルにした限定レアデーモンが入手できる,事前登録キャンペーンを実施中だ。
今回4Gamerでは,「デーモントライヴ」のプロデューサーである脇 康平氏と,同ディレクターである山田理一郎氏に,本作の開発経緯や,なぜスマートフォン向けタイトルに“本気”で取り組むのかなど,いろいろと話を聞いていた。
インタビューの模様は,前編と後編(2月中旬掲載予定)の2回に分けてお届けする。前編では,ゲームの内容に踏み込んだ話題が中心となるので,本作が気になっていたという人は,ぜひ最後まで読み進めてほしい。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,「デーモントライヴ」を開発することになった経緯から教えてください。
話そのものは,「Kingdom Conquest」までさかのぼります。「Kingdom Conquest」は2010年11月に配信がスタートして,今や全世界で累計350万ダウンロードを突破するほどのヒット作品となり,続編となる「Kingdom Conquest II」をリリースできるほどになりました。
それと並行して,セガとしては,モバイル/オンラインコンテンツを本気で提供する準備を進めてきました。2011年末にオンラインエンタテインメント研究開発部を立ちあげ,2012年7月にはセガネットワークスという会社組織を設立しています。
「デーモントライヴ」は,セガネットワークスが打つ“次の手”の中で,「新しいオリジナルの遊びを生み出そう」というコンセプトから生まれてきたタイトルなんです。
4Gamer:
そのコンセプトは,どのようなものだったのでしょう。
まず,プレイヤーに「長く遊ばせる」「ディープに遊ばせる」という二つの目的が根底にありました。これらを達成するためにどうすればいいかを試行錯誤していく中で,「成長要素」とプレイヤー同士を競わせる「対戦要素」が絶対に必要だろう,という結論に至って,今の形になっています。
脇氏:
成長と対戦というところで注目したのが,当時流行のきざしを見せていた,「League of Legends」に代表されるMOBAのスタイルです。
4Gamer:
DotA系とも呼ばれている,RTSをベースにRPG的なエッセンスを加えた,チーム対戦型のゲームですよね。ただ,そのジャンルが海外ではやったからといって,日本でも受けるとは限りません。MOBAタイプのゲームが日本で受け入れられる,と考えた理由を教えてください。
山田氏:
確かに,海外で「League of Legends」が面白くてはやっているとは言っても,日本では大部分のユーザーには知られていないというのが現実ですし,格闘ジャンル以外の対戦ゲームは,市民権を得るほどにまでは浸透していません。
ただ,僕がセガに入社して,ドリームキャストで「ハンドレッドソード」というRTSを作っていた頃から考えていたのですが,ストラテジーと対戦という組み合わせは,日本市場においてずっとブルー・オーシャン――今はまだ,競争すら存在しない未知の市場――であったとも言えます。ですから,そこに面白いものを投入すれば,かなり大きなシェアを獲得できる可能性はあるのではないかと。
脇氏:
日本ではRTSがあまり受け入れられていない状況ですから,そのままでは日本市場にはマッチしない可能性が高いです。ただ,MOBAはRTSを非常に分かりやすくシンプルにしたシステムで,RTSの面白さも残しているので,うまく落とし込めば,子供でも楽しめるような間口の広いものにできるんじゃないかと考えたんです。
山田氏:
対戦の部分はRTSやMOBAからヒントを得るにしても,どうやって日本人にマッチしたゲームデザインにするか,という部分をきちんとフォローできれば,日本市場でヒットするゲームにできるんじゃないかと考えていました。
4Gamer:
セガは著名なIPを多く持っているわけですし,コンシューマ市場で培ってきたブランドを活用するという選択肢もあったと思います。そういった手法ではなく,オリジナルタイトルで挑戦することにしたのはなぜでしょうか。
山田氏:
もともと,オリジナルの作品で勝負したいという気持ちがあったからです。
ただ,コンシューマで完全オリジナルのゲームを作ろうと思っても,今はなかなか企画が通りにくいんです。一方で,スマートフォンのゲームなら,モバイル/オンラインコンテンツにタイトルを投入する段階にあったことで,オリジナルタイトルの企画が通りやすい状況だった点が大きいですね。
4Gamer:
とはいえ,ぱっと見ただけでも,かなりコストがかかっているように見えますが。
脇氏:
具体的な数字は言えませんが,スマートフォン向けのタイトルとしては,破格のコストをかけていると思います。
ものすごく大きな賭けではあるのですが,私達としても,ここで先を見据えたものをきちんと作り,コンシューマもスマートフォンもひっくるめて,ゲーム業界の可能性をもっと広げていきたい,という思いがあったからこそ挑戦をしています。
これは業界の老舗であり,常にチャレンジの姿勢を貫いて来たセガだからこそできることだと思っていますし,ある意味,宿命だとも考えています。
山田氏:
フリーミアムの世界では,何かがはやると追従するものがすぐに生まれます。ですが,それでいいのかと問われたら「そうじゃないだろう」と答えを返すのが,これまでコンシューマゲームを作ってきたゲーム会社である,セガのやることだと思うんです。
たとえば,ゲームに大量に登場するデーモンも,カードのイラストではなく,すべてボーンがあって,モーションを付けたCGモデルを使っています。ここまでこだわれたのも,これまでコンシューマゲームを作ってきたセガだからこそだと言えます。
4Gamer:
ではあらためて,「デーモントライヴ」がどのようなゲームなのか教えてください。
脇氏:
“悪魔に変身して悪魔と戦う”のが「デーモントライヴ」のウリで,秘密結社に所属するエージェント達が,デーモンに変身する特殊能力を駆使して,異世界から侵攻してくるデーモン達と戦っていくという内容です。
プレイヤーは秘密結社の総督となって,デーモンを収集して育てたり,デッキを組んで戦いに備えたりします。戦闘時にはエージェントを操作して,状況に応じてそのデッキの中から変身したいデーモンを選びながら戦っていくという内容です。
デッキを組むとはいってもカードバトルではなく,3Dポリゴンで作られたデーモンをリアルタイムで操作するという点は,この作品ならではの要素だと思います。
4Gamer:
先ほどMOBAタイプとおっしゃっていましたが,対戦メインのゲームということですか?
脇氏:
「デーモントライヴ」は,バトルパートと育成パートの2つが大きな柱になっていて,バトルパートでは,物語を楽しみながらじっくり遊べるシングルプレイモードと,最大3人対3人でリアルタイム対戦が行えるマルチプレイモードを楽しめます。育成パートでは,秘密結社のアジトを拡大しながらエージェントの武器や彼らが変身するデーモンを強化していく遊びを用意しています。
バトルパートでは,プレイヤーはエージェント1人を操作して敵のデーモンを倒しながら,敵の本拠地を破壊すべく進んでいきます。変身できるデーモンは100体以上いて,その中から5体をエージェントにセットしてバトルに挑戦します。
それぞれのデーモンには最大3種類のスキルをセットできるので,デッキにグレードの高いデーモンを入れて一発勝負をかけるか,それともグレードの低いデーモンを多く入れてスキル重視で攻めるかというように,編成の部分に戦略を考える楽しみを入れています。
また,エージェントがデーモンに変身できる時間は限られているので,バトル中のどのタイミングで,どんなスキルを持ったどのデーモンに変身するか,という駆け引きの面白さもあります。
4Gamer:
それだと,グレードの高いデーモンだけの構成に偏ったりしませんか?
山田氏:
バトル中,条件を満たすとエージェントのグレードが上がっていくのですが,グレードには5段階あって,変身できるデーモンの種類は,エージェントのグレードより下のものに限られています。
基本的にはグレードの高いデーモンのほうが強いのですが,変身できる時間の制限やデッキ構築の要素もありますから,高いグレードのデーモンのみで編成していると序盤で押し負けてしまい,不利になってしまうでしょうね。
4Gamer:
操作方法はどのように行い,どの程度のアクション性が入るのでしょうか。
仮想コントローラでの操作とタッチ操作の両方に対応しています。仮想コントローラは基本的に移動に使って,敵のターゲティングやコマンド入力はタッチ操作で行います。
バトル中は,スキルを使うときに少しアクションが入りますが,基本的には,移動して攻撃する相手を選ぶだけというシンプルなものです。リアルタイム性を損ねず,疲れない程度の忙しさという感じです。
脇氏:
スマートフォンのようなタブレット端末ではタッチ操作が前提になるので,あまり複雑な操作方法は採用できません。また,現在主流のソーシャルゲームの延長線上にあるようなインタフェースでなければ,そもそもユーザーには受け入れてもらえないと思います。
山田氏:
ストラテジーゲームをPC以外のプラットフォームに落とし込むのは,操作デバイスが異なるのはもちろん,内容のどこを省略して何をプラスするかを考えないといけないので,けっこう大変でしたが,操作方法にはこだわりました。「デーモントライヴ」はかなり操作方法を最適化できて,スマートフォンを縦に持って片手でも遊べるくらい,操作しやすいと思います。
4Gamer:
では次に,育成要素について教えてください。エージェントとデーモンには,どのような成長要素が用意されているのでしょうか。
エージェントは,素材を集めることで,使用する武器やアクセサリーを強化できます。
デーモンは,レベルを上げて成長させるのはもちろん,スキルをレベルアップさせたり,ほかのデーモンが持つスキルを継承させたりといったことを,合成で行えます。また,バトルで入手した宝石を使うと,新しいデーモンを入手することができます。
4Gamer:
基本的には,バトルで宝石や素材を集めて,それでエージェントの装備を強化したり,デーモンを集めて強化していくわけですね。
山田氏:
そうです。デーモンはさまざまなデザインのものが100種類以上いますし,それぞれに種族と属性が設定されています。
種族は6種類あって,たとえば「アンデッドタイプのデーモンには,対アンデッドのスキルが有効」といったような,カードゲームっぽい戦術面の強化要素もあります。
属性は4種類で,こちらはアンチ属性の概念があったり,同じ属性のスキルを持っているとコンボがつながる効果があるといった,ファンタジーではおなじみのものになっています。
4Gamer:
バトルに絡む要素が2つあると,育成が複雑になりそうですね……。
山田氏:
育成は基本的にスキルベースで考えることになるので,「水は火に強い」とか,属性をある程度意識していただければ大丈夫です。
種族に関しては,デーモンのバックボーンを生かす設定として入れているものです。たとえば,「ヴァンパイアには血を吸うスキルが似合う」「悪魔の王だったら異世界から下僕を召喚するスキルがいい」とか,そういった“なりきり感”の要素が好きな人に向けた部分が大きいので。こだわり始めると,やっぱりコンセプトデッキを組みたくなってくるじゃないですか(笑)。
ちなみに,僕自身がクトゥルフ神話のおどろおどろしさが好きなこともあって,デーモンにはクトゥルフ系のものも入っています。そういった系統が好きな人は,楽しみにしていてください。
4Gamer:
デーモンにはスキルをセットできるという話ですが,具体的にはどのような仕組みになるのでしょうか。
セットできるスキルは最大3つで,そのうち一つはデーモンの固有スキルとなりますが,残りの2つは,わりと自由に付け替えできるようになっています。先ほどお話ししたように,ほかのデーモンから継承することもできますから。
スキルには,攻撃系や回復系といった基本的なものから,足止め効果や状態異常といった補助系のものまで,多種多様なものを用意しています。もちろん,このゲームのシステムを生かしたものも入れていて,各種族における親玉格のデーモンを召喚するようなこともできます。
最初は,分かりやすいスキルを持ったデーモンからプレイを始めて慣れてもらいたいので,トリッキーなスキルを持つデーモンは,あとから登場することになります。あまり難しく考えなくても大丈夫なので,安心してください。
脇氏:
「デーモントライヴ」では,複雑な要素は極力排除して,バトルを通じてキャラクターを成長させるシステムもシンプルにしているんですよ。実際にプレイすれば,システムが思った以上に簡単であることを理解してもらえるはずです。
山田氏:
バトルの重要な要素をデーモンに凝縮して,チャンスを見計らって変身するという,分かりやすい形で表現することをポイントにしています。
4Gamer:
なるほど。それと,秘密結社自体を育成する要素もあるんですよね。施設を強化すると,どのようなことができるようになるのでしょうか?
ストーリーはまず,壊滅状態になってボロボロの秘密結社を立て直すところから始まります。そして,ゲームを進めていく中で,先ほどお話しした,デーモンの合成や武器/アクセサリーの錬金を行う施設を作ることで,強化が行えるようになります。
それと,秘密結社の建物自体の外見をガラッと変えて,秘密結社とは思えないような外見にすることもできます。「霊的なエネルギー」としてゲームにフィードバックされる部分もあるのですが,どちらかと言えば遊びの要素のほうが強いですね。
これもこだわったポイントなのですが,やはりオンラインゲームでは,システムでもいろいろ遊べたほうが,プレイヤーにとっても,運営開発にとってもいいと思うんです。
4Gamer:
施設を変更できるパーツのバリエーションは多いんですか?
山田氏:
置物のオブジェクトだけでも100から200はありますし,壁のパターンも多いです。ファンシーなタイプとかもありますね。追加で続々と配信する予定もあります。
ゲームシステムにも関わる部分なので,それほど融通は利かないんですけれども,多少はレイアウトを変えることもできます。ぜひサービスインしたときは,実際にプレイして確かめてください。正統派のオブジェクトはもちろん,「なんでこんなものがあるんだろう?」と思うくらい変なオブジェクトまで,たくさん取り揃えていますので(笑)。
4Gamer:
基本的にはオンラインゲームとなるわけですが,ソロプレイは可能ですか?
もちろん,一人でプレイする要素も充実させています。MOBAタイプのゲームでは一般的に,いかに早くレベルアップしていくかが勝負の鍵となります。「デーモントライヴ」では,その部分をデーモン育成に置き換えて,プレイヤー各自が日々の一人遊びで育て上げたデーモンを使って,対戦をするという流れにしています。
山田氏:
たとえて言うなら,「ポケットモンスター」のような流れですよね(笑)。
対戦のバランスがどんなに良くても,ゲームは一人遊びの部分が面白くないと,なかなかプレイしてもらえません。ですから,ストーリーモードや,一人で遊んでもレベルアップできる「討伐戦」というデーモンを倒していく遊びを用意して,RPGっぽい楽しさを重視したゲームデザインにしています。
それと,「皆で集まって遊ぼうぜ」という雰囲気が作りやすいよう,コミュニティとして「クラン」システムも導入しています。
4Gamer:
コミュニティは,どの程度ゲームプレイに影響を与えますか?
山田氏:
クランに所属しなくても,ゲームの進行に影響はありません。
ただ,ゲーム開始時に選ぶことになる「セクト」は,いわば国家のような概念で,対戦のオートマッチング時に同セクトのプレイヤーが同じチームになる仕組みです。通常はセクトが異なると一緒のチームになれないのですが,クランに入っていれば,セクトが違ってもチームを組めるようになります。
クランでは,メッセージを送ったり,掲示板があったり,あるいはほかのプレイヤーの秘密結社に行って何かをしてあげたりとか,今どきのコミュニティ要素はひと通り揃えています。比較的緩い感じのつながりをきっかけに,プレイヤー同士でコミュニケーションを深めてもらえばいいんじゃないかと。
4Gamer:
対戦は,どのくらいの時間を目処に一区切りをつけているのでしょう。
山田氏:
電車に乗っているときに1駅2駅の間でもちょっと遊べるよう,バトルパートは1回10分程度,育成パートは3分くらいで一区切りが付くようにしています。
4Gamer:
たとえば,対戦中に同じチームの誰かが,回線切断でオフラインになってしまった場合はどうなるのでしょうか。
山田氏:
リタイア扱いになって,代わりにAIプレイヤーが参加することになります。
ちなみに,リタイアを繰り返しても有利にはならないですし,スマートフォンの場合,電車の中でプレイしているときなどには,急に通信環境が悪くなることも十分考えられます。ですので,リタイアのペナルティなど,あまりヘビーなものは考えていません。
というわけで,インタビュー前編はここまで。2月中旬に掲載予定のインタビュー後編では,世界観に対するこだわりやサービス形態/ビジネスモデルなどについて,脇氏と山田氏に語ってもらったので,お楽しみに。冒頭でも触れたように,現在公式サイトでは,「デーモン閣下」をモデルにした限定レアデーモンが入手できる事前登録キャンペーンを実施中だ(関連記事)。インタビューを読んで本作に興味を持った人は,ぜひ公式サイトにアクセスして事前登録を行ってほしい。
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