インタビュー
MMORPG「黒い砂漠」で目指す,これまでとまったく異なるゲームとは。韓国開発元Pearl AbyssのCEO キム・デイル氏にインタビューしてみた
コンテンツの豊富さという面でも,情報として分かっている範囲だけで,数々の“知識”を得てクエストを進めたり,見知らぬ土地を目指して旅してみたりといった「冒険コンテンツ」。生産や釣り,馬の育成と配合,貿易,ハウジングといった「生活系コンテンツ」。そして大規模な攻城戦が楽しめる「PvPコンテンツ」と,MMORPGファンなら欲しいと思える要素が,幅広く,しっかりと用意された作品となっている。
昨日(2015年2月16日)に,ついに日本でもティザーサイトが公開され,サービス開始に向けて動き始めた本作だが,実際のところ現地のプレイヤーからは,どのような反応が開発元に寄せられているのだろうか。今回4Gamerでは,日本における本作の始動を前に,韓国の開発元Pearl Abyssを訪れ,同社CEOのキム・デイル氏に,本作の内容や韓国での反応についてインタビューしてみた。また,そのインタビューの前に軽く本作をプレイさせてもらったので,新たに気が付いた点なども紹介しよう。
「黒い砂漠」公式ティザーサイト
ゲームの操作方法や基礎知識については,以前に「こちら」の記事でお伝えしたが,今回のプレイで気が付いたのは,マップ画面に大量の“?”マークが追加されていること,壁をよじ登るときはスペースキーを長押しするだけになったこと,そして屈んだり,伏せたりといったアクションが追加されたことが挙げられるだろう。
“?”マークについては後述のインタビューでも取り上げているが,ここでクエストを受けるというものではなく,本作のキモである「知識」が得られる場所になるようだ。それにしても,大量すぎてどこに行けばいいのか悩んでしまう。
続く,壁のよじ登りは,以前はスペースキーのジャンプと,シフトキーを併用して壁をよじ登るという流れだったが,現在はスペースキーを押しっぱなしにすることで,そのままよじ登れるようになった。そのため助走や距離の調整が必要な場所はあるものの,以前よりも格段に操作の難度は下がっている。
最後の「屈む」「伏せる」というアクションは,ただのエモーションではなく,その状態のままで移動でき,しかも自分のネームプレートが非表示になるという機能を持っている。つまり,文字どおりキャラクターが隠れているわけだ。その使い方を考えてみると,たとえば草むらで伏せていれば,ほかのプレイヤーが存在に気づかず,横を通り抜ける可能性があるわけで,これが対人戦だったら? といったシチュエーションを想像してみると,結構楽しそうだ。
もう一つ,本作にはスクリーンショット機能が用意されている――というのは当然として,その機能がかなり充実している点に注目したい。
本作の持つスクリーンショット機能を利用すると,画面上のユーザーインタフェースの消去はもちろん,カメラの上下左右移動,回転,フォーカスの調整,白黒/セピア/ノイズといったエフェクト処理などを,プレイヤー自身がゲーム中,その場で行えるのだ。もともとがスクリーンショット映えするグラフィックスだと思うので,絶景や面白い画像をいろいろ撮影してみたくなるのではないだろうか。
「黒い砂漠」は遊びたいと思う方向に自由にプレイできるゲーム
4Gamer:
よろしくお願いします。先ほど「黒い砂漠」を実際にプレイしましたが,これまでも言われていたように,たしかにほかのMMORPGとは異なった作品だという印象を受けました。最初に教えてほしいのですが,キムさんは,本作をどのような作品にしようと考えて制作したのでしょうか。
いきなり難しい質問ですね(笑)。一言で答えるなら,「プレイヤーさんが,遊びたいと思う方向に,自由にプレイできるゲーム」になると思います。
4Gamer:
なるほど。MMORPGと一口に言っても,コンテンツ攻略がメインになる作品やPvPに重点が置かれた作品など,作品ごとに明確に打ち出す方向性はさまざまだと思いますが,本作では,サンドボックス的な方向性を目指した感じなんですね。
キム氏:
それが正確な表現だと思います。このゲームにはとても多くの選択肢がありますから。それこそ,「名の知れた冒険者になりたい」「馬の調教師になりたい」「クラフター職人になりたい」「知識を誰よりも蓄えたい」「一番うまく貿易をしたい」などと,あらゆる要望に合わせて遊べる作品になっています。もちろん攻略要素やPvPも含まれていますよ(笑)。
4Gamer:
マップ画面に表示される情報量がとにかく多くて,最初に何から始めればいいのか迷ってしまいますよね。そこもなんとなくサンドボックス的だなと感じました。あとマップに降雨状況や気温が表示されるというのも,ここまでやるのかと驚きました。
キム氏:
あの情報は,単にこのマップで雨が降っているというだけではなく,ちゃんとゲーム内での影響を示しています。
4Gamer:
と言いますと?
キム氏:
たとえば雨が降ることで,強くなるモンスターがいたり,畑に良い影響を与えたり,また気温が高くなると,畑の状態が悪くなったりというように,天候などの変化がゲーム世界に影響を与えるところまで作り込んでいるんですよ。
4Gamer:
そんな要素もあるんですか。あのマップを見ていると,なんというかワールドシミュレーターのような気分になります。
キム氏:
そこまで複雑ではなく,プレイヤーさんに楽しんでいただけるように開発していますよ(笑)。ただ,そうした情報をプレイヤーさんが理解していただくことで,これまでのゲームとは違った楽しみ方ができようになるでしょう。
4Gamer:
マップ情報というと,ほかにも自動で往復している馬車や船の位置状況が分かって,最初から好きなところへどうぞという雰囲気ですよね。それならばと,いきなり船に乗り込んだところ,マップの未探索地域だった島に到着したのですが,とくに移動が制限されるようなこともありませんでした。
黒い砂漠は,先ほどお話したように,プレイヤーさん自身が進みたい方向を決められるものとして作ってきました。ですからそれは当然です。これからもそのように開発を進めたいと思っています。
4Gamer:
一方で,ここ最近のMMORPG界のトレンドは,プレイヤーをクエストを通して誘導し,どんどん成長させていくタイプだと思います。そんな中で,あえてプレイヤーの自主性を重んじる作品にした理由はなんだったのでしょうか。
キム氏:
自主性を重んじたというよりも,私や開発スタッフは,これまでとは違った作品を作りたいとずっと熱望していたんですよ。そうした,構成するメンバー一人一人の内に秘めた思いを形にしたものが,この黒い砂漠だったということです。
4Gamer:
たしかに本作のそこかしこで新しさ,ほかにはないものが感じられます。クエストにしても,“知識”という要素やNPCとの関係性など,いろいろな要素が複雑に絡んでいますし。
キム氏:
クエストが持つ意味自体もほかのゲームとは異なっていますからね。たとえば多くの作品において,クエストはキャラクターの成長のためだけに役立つものという考え方です。一方,本作のクエストは,キャラクターの成長に加えて,知識の取得や,周辺地域への評判を上げて活動領域を広げていくといった,いろいろな目的があります。
4Gamer:
ちなみに,マップ上に“?”マークが大量に表示されていましたが,あれはクエストが受けられる場所でしょうか。
キム氏:
いえ,あれは知識が得られる場所ですね。
4Gamer:
以前はマップ上になかったと思うのですが,これは得られる知識がすべて表示されているんですか?
キム氏:
いえ,本当に価値ある情報――知識は,プレイヤーさんご自身で探し出さなければいけません。本作では,人物や料理などさまざまな知識を手に入れ,それがクエストや次なる知識の入手へとつながっていきます。そうした知識集めも本作の楽しみの一つなんですよ。
ただ,実際に韓国サーバーでは隠された知識を獲得していくプレイヤーさんもいれば,知識集めにあまり関心がない方もいます。ですから,自主性に任せた多様なプレイスタイルを許容するということで,最低限の知識を表示しています。
高い自由度から生まれる想定外の遊び
4Gamer:
ところで,韓国では2014年12月24日に正式サービスがスタートしていますが,プレイヤーからは,どういった反応がありましたか。
「新しいゲームだ」「挑戦し甲斐がある」「やれることがいろいろある」という良い反応を多くいただきました。
4Gamer:
韓国のプレイヤーさんは,どのようにして黒い砂漠を楽しんでいるのでしょうか。
キム氏:
ゲームの自由度が高いですし,プレイヤーさんのスタイルもそれぞれなので,一概には言いづらいですね。それこそ戦闘を楽しんだり,攻城戦の準備を進めたり,アイテムを製作したり……。釣りだけしている方もいますし,知識集めを競い合ったり,お金儲けや馬の生産,競売に集中している方もいます。
4Gamer:
現在はどういったエンドコンテンツが用意されているんでしょうか。
キム氏:
攻城戦のような戦闘面はもちろん,生産に関してもエンドコンテンツを用意しています。たとえば,馬という要素を一つ取っても「より速い馬を生産するために,血統をどのように交配させればいいか」という深いところまで追求できますし,釣りにしても「船を買ってより遠い海域へ出かけ,クジラと対峙する」といった楽しみ方もできます。
4Gamer:
多方面に楽しみが用意されているわけですね。
キム氏:
ええ。ですが,大事なのは「深みのあるコンテンツを作ること」。そして「コンテンツごとに接点を作り,複数を連動させることでよりやりがいが感じられるようにすること」です。
4Gamer:
その一つが先ほどおっしゃっていた,知識のつながりになるわけですね。ちなみに,これだけ数多くのコンテンツがある本作で,初めて触れるときにどういったところを注意すればいいでしょうか?
キム氏:
まずは操作に慣れていただくことが大事です。そしてNPC一人一人の話をしっかり聞けば,自分なりのプレイの道筋が見えると思います。
4Gamer:
MMORPGを遊んでいると,ついついNPCのセリフを飛ばしがちになりますが,そうしない方がいいわけですか。
キム氏:
もちろんです。たとえば,ある魚が棲息している場所に関するヒントがNPCの会話に含まれているのですが,プレイヤーさんが会話をスキップしてしまうので,誰もそこへ行かずにスルーされてしまう……といったことが実際にあります。
4Gamer:
なるほど。システム的につながっているものだけではなく,そのつながりをプレイヤー自身が見つけることも本作の楽しみになっていると。
キム氏:
ええ,おっしゃるとおりです。
4Gamer:
思った以上に“つながり”を意識して遊んだほうが良さそうですね。ところで,韓国サーバーでは,想定外の遊び方をしているプレイヤーがいたりするのでしょうか。
すべてが想定外といっても良いくらいです(笑)。たとえば,釣りについてなのですが,プレイヤーさんが自分で作った船に乗り,一人で出かけるというスタイルを想定していました。しかし,実際にフタを開けてみると,一隻の船に多くのプレイヤーさんが乗り合わせ,いろいろな魚を釣りながらマップの隅々まで探検するようなケースが見られましたね。
4Gamer:
一度に同じ場所で釣って,その場で釣れる魚のデータをかき集めるといったところでしょうか。
キム氏:
そうだと思います。ただ,想定外だったのはその釣り方ではなく,当分の間は見つからないだろうと想定していた遠くの島が,早々に発見されてしまったことなんですよ(笑)。
4Gamer:
ああ,ローラー作戦で一気に移動されてしまうから……(笑)。
キム氏:
そうなんです……。あとアクション面に関しても想定外のことがありましたね。コマンド入力を駆使して,我々が想像していなかったアクションでプレイする方が出てきたんです。想定外だったので,その操作を認めるべきか否かで開発チーム内で議論になったのですが,最終的に「開発者も予想していなかった創造的なプレイである」ということで,プレイヤーさんの判断に任せることにしました。具体的にどういったものかは言えませんが(笑)。
4Gamer:
自由に遊べるようにとシステムの制限を緩くすると,いろいろな想定外のプレイが出てくるんでしょうね。ちなみに,本作はアクション性の高いバトルも特徴だと思うのですが,ノンターゲティング制のバトルにしたのはなぜでしょうか?
キム氏:
それは,開発者がアクション性の強い映画や漫画を好んでいたというのが理由ですね(笑)。
4Gamer:
意外とシンプルですね(笑)。
一方で,キャラクターが血まみれになるなどの,強すぎるゴア表現は避けました。刺激の強いものを作るのは簡単ですが,残酷すぎてプレイヤーさんに嫌悪感を持たれないようにしなければなりません。その中で,バトルの迫力を出すというのに,かなり気を使いましたね。
貿易についても,プレイヤー自身でルートを最適化し,我々の予想を越える金額を稼ぎ出すプレイヤーさんも現れました。
4Gamer:
伺っている感じだと,プレイヤーさんは自分の好きなようにいろいろと楽しんでいるみたいですが,不満などの意見,要望はありますか?
キム氏:
「面白いけど,何をやればいいのか分からない」「難度調整に失敗しているのではないか」というご意見がありました。こういった声には,アップデートや修正などで応えています。
4Gamer:
そうした意見は,サンドボックス的な作品だからこそなのでしょうか。
キム氏:
多くは「一から十まで教えてくれない」という,チュートリアルに関する不満ですね。開発スタッフがテストプレイ中にゲームに慣れてしまったこともあり,「手取り足取りプレイ方法を教えるチュートリアルでは,プレイヤーが面白いと思わないのではないか」と感じたのですが,いまとなってはそれが内部的な錯覚だったと感じています。
4Gamer:
たしかに,ゲーム中に放り出された感はありましたね。あと,やはり最初に与えられる情報が多すぎて,難しく感じることもあるのでは。
キム氏:
そうですね。多くの情報を一気に出してしまうと,それを負担に感じるというのはあると思います。これらの点に関しては認識していて,現在,調整を行っている最中で,現状でもかなり改善されています。日本でサービスできるころには,プレイしやすい理想的な状態でお届けできると思いますよ。
4Gamer:
お,それは楽しみです。“いつ”なのかは,ゲームオンさんの正式発表を楽しみに待ちます(笑)。ところで,本作は韓国での正式サービス開始が昨年の12月24日ですよね。それから1か月と少し経過したくらいですから,改善に向けての対応が結構早いように感じます。
キム氏:
黒い砂漠は弊社として初の作品になりますが,私を含めた開発スタッフは,これまでにいろいろなオンラインゲームのサービスに携わってきた経験を持っています。すでに,問題を解決するためのスタッフも最適化されているので,今後もプレイヤーさんの要望やプレイ状況を把握して,すぐに対応できると考えています。
4Gamer:
日本のプレイヤーからの要望に対しても,それを期待していいのでしょうか。
キム氏:
もちろんです。これまでも日本サービスに向けていろいろな準備をしてきましたから,いまは日本のプレイヤーさんがどんなことを望まれているかを知りたいですね。
4Gamer:
ちなみに,日本のMMORPGを遊ぶゲーマーに対して,どのような印象を持っていますか。
キム氏:
日本のプレイヤーさんはゲームをしっかりと分析し,深みのあるコンテンツを楽しむと感じています。また,アクションゲームへの愛情があり,関心が高いという印象がありますね。
4Gamer:
黒い砂漠の特徴は,深みのあるコンテンツとアクション性の高いバトルということですから,その両方を提供できる……というわけですか。
キム氏:
ええ,まさにそのとおりです(笑)。
4Gamer:
分かりました。日本でのサービスに期待しています。では,最後に日本の読者に向けてメッセージをお願いします。
キム氏:
黒い砂漠をプレイすると,きっと新しいと感じると思います。そして,プレイし続けていただければ,楽しくなってくるでしょう。本当に,面白いゲームだと言うことをお伝えしたいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「黒い砂漠」公式ティザーサイト
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