プレイレポート
なぜこんなものが動く……「黒い砂漠(仮)」韓国CBTバージョン体験レポート。あらゆる点で現状を超越した超弩級MMORPGだった
※仮称。国内での正式名称は未定
4Gamerでは「黒い砂漠」について,日本サービスの調印式でインタビューとムービーを紹介して以来,散発的な情報しか取り上げていなかったが,CBTという形でようやくゲームがお披露目になり,ゲームの概要も明らかになってきた。今回,韓国ソウル郊外にある同社を訪問して韓国CBTとほぼ同じバージョンをテストプレイし,Pearl AbyssのスタッフとCEOのキム・デイル氏にもいろいろと話を聞いてきた。次世代MMORPGの概要をお伝えしてみたい。
さて,黒い砂漠を開発しているPearl Abyssは,キム・デイル氏ほか「C9 (Continent of the Ninth)」を制作したスタッフを中心として結成された会社だ。キム・デイル氏は33歳と,経営者としては若手だが,以前のインタビューでゲームオンのイ社長も手放しで信頼していたように,非常に実力のある開発者でもある。実際,調印式で公開されたムービーには,にわかには信じがたいようなシーンが続々と出てきており,インタビューで確認したゲーム仕様も「これってMMORPGでできるの?」と思わせるものだった。
どんなゲームだったか覚えていない人のために,プレイムービーをもう一度掲載しておこう。
グラフィックスは,PCゲームとして最高峰とまではいかなくても,昨今のトレンドを入れた十分に高品質なものである。個々の戦闘部分を見れば,スタンドアロンのアクションRPGかMOタイプのオンラインゲームといった雰囲気なのだが,このレベルの戦闘がMMO空間のフィールド上で展開されるのだ。最後にある攻城戦は(負荷テスト的なものとは思うが),そういった戦闘を400人対400人の規模で行い,さらに攻城兵器などを駆使して戦っているシーンとなる。
MMORPGで数百人が集まる露店エリアを横切ったことがある人ならお分かりだろうが,これだけの人数が密集すると,描画負荷やネットワーク負荷はとんでもないことになる。大規模戦闘でコマ送り状態になった経験をした人も少なくないだろう。まして,このゲームが採用しているのは,多少のラグがあっても成立するターゲット式ではなく,リアルタイムのフリーターゲット式戦闘システムである。
これまでのアクション系MMORPGでも多くはインスタンスダンジョンが中心で,とくにアクションにこだわる場合はMO形式になっているものがほとんどだ。また,大人数戦闘をウリにするゲームでは遠くの敵が表示されなかったりする。つまり,これまではどこかで妥協をしつつ,ネットワーク帯域やCPU/GPUリソースをやりくりしてゲームを成立させていたわけだ。しかし,そういった妥協がこの映像からはほとんど窺えない。
常識的にいって,「こんなものができれば苦労はしない」と思っていたような映像が平気で展開されているのが,この黒い砂漠なわけである。
2009年に発表されたC9はMOタイプのゲームだった。それからわずかの間にこれだけ大規模なMMORPGが登場してきたわけだが,いったいどういった経緯でこのゲームができたのだろうか。
もともとアクションゲームが好きで,「ストリートファイター2」や「サムライスピリッツ」などを遊んでいましたので,オンラインゲームで自分の納得できるアクションゲームを作りたいと思ったのです。
最初はC9よりもはるかに単純なゲームだったのですが,開発中にだんだんできることが増えていった感じです」(キム・デイル氏)
ムービーで動きを少し見るだけでも,ほぼC9並じゃないかというくらいの本格的なアクションゲームとして作り込まれていることが分かる。本作はMMORPGの多くの要素も含んでいるのだが,キム・デイル氏としては,なによりもアクションゲームとしての側面を最重視しているようだった。
本作の開発は2010年8月から開始され,ゲームエンジンを含めて開発期間は3年ほどだという。2年後の2012年9月に日本サービスの調印式が行われ,前掲のムービーも公開されていたわけだが,それで,なんでこんなものができてしまうのだろう。
「一生懸命仕事をしただけです。新しい概念を盛り込んだ作品ですので,まず開発スタッフにどういうものを作りたいのかを説明するのが大変でした。また,実際に実装してみて初めて分かる問題点などもあって,苦労しました」(キム・デイル氏)
とはいうものの,頑張ったからといって結果につながるとは限らないのだが,CBTでのトラブルもほとんど出ていないという。黒い砂漠では,ゲームエンジンから新たに作るという選択をしているのだが,その理由についても聞いてみた。
「MMORPGに最適なエンジンがほしかったのです。いろいろと細かい調整が必要になることは分かっていましたし,多くのキャラクターを扱うにもエンジンから新たに自分達で作るほうがいいと判断しました。とくにグラフィックスリソースを効率的に扱えることが重要で,デザイナーにとっても作業しやすい環境を構築しています」(キム・デイル氏)
ゲームの基本操作とクラスの特徴
ではゲームの内容を紹介していこう。
韓国CBTの時点で実装されていたクラスは4種類。すなわち,ウォリアー,レンジャー,ジャイアント,ソーサラーだ。登場が予告されているテイマーは実装されていない。
現在はそれぞれ性別が固定となっており,今後は異なる性別のものも拡充される予定とのことだが,例えば女ウォリアーが追加されることがあっても,基本部分は男ウォリアーと共通になるものの,特徴的な部分を持ったクラスとして作られるとのこと。クラスの拡充というよりは,使用できるキャラクターの追加と考えたほうがいいのかもしれない。
操作は,W/A/S/Dキーで移動し,数字キーに割り当てられたショートカットスキルを使用するという,オンラインアクションゲームとしては比較的オーソドックスなスタイルだ。スキルを使用するにはMPが必要で,これは通常攻撃を行うか,ポーションを使うことで回復する。
通常攻撃のほかに回避動作やキックなども用意されている。また,シフトキーを併用したダッシュ動作で,高速移動も可能だが,これは別途気力値を消費するので長時間の使用はできない。
短時間ではあるが,用意されたキャラクターでのテストプレイができたので,各クラスの紹介をしてみよう。
●ウォリアー
剣による攻撃は単発で出すこともできるが,いわゆる3段攻撃風で連続動作も可能だ。左ボタンを押しっぱなしでもOK。バッシュは2段階になっており,マウスボタンの右クリックで,一度盾をぶつけて腕を引き戻し,ボタンが押しっぱなしだと,さらにもう一回盾を叩きつけて停止する感じになっている。
なんといっても,ウォリアーは盾による防御ができるというのが最大の特徴だろう。
●ジャイアント
基本的にインファイターだが,やや離れた位置から一気に飛び込んでいく強力なスキルも持っている。間合いをよく計らないと外してしまうのが難点か。
●レンジャー
右クリックでナイフも使うのだが,試用キャラの装備のせいか,近くにきた敵をナイフで攻めるより,間合いはかまわず弓で攻撃したほうがダメージははるかに大きかった。本来は武器を切り替えて近接戦闘に対応するものと思われる。
●ソーサラー
ちょっと試用したものの,韓国語版クライアントであったためスキルの詳細が分からず,適当に発動していただけなので,スキルのバリエーションは不明。ほとんどが攻撃スキルで,一部が自己Buffのような感じだった。
なお,このキャラのみデフォルトのキーショートカットで,他キャラでHPポーションの位置にMPポーションが置かれていた。燃費はかなり悪そうである。
ショートカットキーとは別に,スキルをコマンドで出すこともでき,例えばSキー(後退動作)を押しながら攻撃することで全クラス共通で攻撃スキルが発動するといった具合だ。押しっぱなしだと,スキルでも連続技動作が自動的に発動するものもある。
隠しコマンドもあるそうで,慣れてきたらショートカットよりもコマンド入力が主体となるようだ。開発スタッフのプレイを見ていると,POT以外ではほぼショートカットは使っていなかった。
また,基本操作は戦闘エリアと非戦闘エリアで少し変わる。戦闘時にはFPSのようなマウスルックになり,マウスの左右ボタンは攻撃用のショートカットとなる。非戦闘時には,一般的な3D MMORPGのような視点切り替えが可能で,矢印キーの上下で視点位置を変えたりもできる。
取材中,「レンジャーを作った人」によるレンジャーの模範プレイを見る機会に恵まれたのだが,アクション性が高すぎてMMORPGとは思えないような動きをしていた。
まず,高難度エリアに移動し,山の上にある盗賊の本拠地みたいなところにソロで乗り込んだ。レンジャーだから端から殲滅していくのかなと思いきや,リンクする敵にかまわずどんどん砦の中に走っていく。敵本拠地の中にある広場のようなところで,引き連れた敵陣に矢をお見舞いしつつ,バク転2回で間合いを取って攻撃,さらに敵の攻撃を避けながら移動して攻撃と,ぐるぐるとカイト(ダメージを受けないように敵を引き回すこと)しながら敵を削っていた。どんどんリンクする敵の数に押されて,最後はさすがにやられていたのだが,絶対ソロで回すような場所ではないと思われる。それでもプレイヤーに腕があれば,敵の攻撃を避けて大軍団を捌くことも不可能ではないのかもしれないと思わせるプレイだった。
今回はCBT後の,誰もいないサーバーでのテストプレイだったので,このアクション性のままMMO戦闘をして問題がないのかなどは確認できなかったが,韓国CBTでは85%の人が「ゲーム内容に満足」という回答をしていたとのこと。
ちなみに,このようにアクション性の高いキャラクターが入り乱れて戦うことになる攻城戦は,本作のエンドコンテンツとして位置づけられている。冒頭のムービーのとおり,非常に激しい闘いになることが予想されるが,これは,攻城戦用のエリアではなく,一般フィールド上で行われるので,(多少危険かもしれないが)見物に行くこともできなくはないとのこと。
ストーリーの背景を見る。そもそも「黒い砂漠」とは
ゲームの背景世界についても紹介しておこう。
この世界にある強大な力を秘めた石「ブラックストーン」。ゲームのオープニングでは,はるかな過去に,その欠片を集めて一つの大きな塊に「修復」している魔導師達が描かれている。しかし,修復が不完全だったためブラックストーンの力が暴走し,各地に恐ろしい災害をもたらしてしまう。時が経ち,そういった災害すら忘れ去られた時代がゲームの舞台となる。
ブラックストーンの欠片は砂漠地帯を中心に広く分布しており,合成素材などとしてゲーム中にも登場することになるが,オープニングで述べられていたような大きな力を示すことはないという。
さて,この世界には,ヨーロッパ風の文明を持つ「カルフェオン」とアジア的な文明を持つ「バレンシア」の2大陣営が存在する。両勢力の境界部分に横たわるのが広大な砂漠である。タイトルの黒い砂漠とは,この砂漠を意味している。2勢力の緩衝地域でもあるが,それだけに紛争が耐えない地域でもある。
なお,「黒い砂漠」というのは,同地域に対するカルフェオン側の呼称であって,バレンシアでは血塗られた「赤い砂漠」と称されているとのこと。当面のところ,ゲームはカルフェオン側のみで進行するので,ゲーム内の様子も西洋風ファンタジーっぽい雰囲気になっている。
「本作では,二つの文化がぶつかる紛争地帯を描くことでストーリーに広がりが出てくることを期待して砂漠を舞台に選びました」(キム・デイル氏)
現在のところ,マップで記された西側の地域のみが実装されていて,東側は未実装だ。日本サービスが行われる頃には東側も実装されているはずとのこと。なお,南部にも大陸が広がっているが,そのあたりは特定の国家があるわけではなく,未開拓の荒地となっている。今後,高レベルエリアとして徐々に開放されていくものだそうだ。
それと結構な広さの海エリアが広がっているが,それについては「ノーコメント」だった。今後,船を使った貿易が実装されることについては明言されていたので,マップの北西部にある島などとの交易もできるようになるのだろう。
ゲーム内には,街の中だけを見ても,人間,ジャイアント,エルフ,さまざまな種類の獣人など,多彩な種族が確認できた。まさにファンタジーな世界だ。
文明レベルとしては,攻城戦でも出てきた大砲や銃が登場しはじめた時期のようだ。銃器についてはプレイヤーの武器にならないのかと聞いてみたところ,現状の製品は単発式なので,メイン武器にできるレベルではないという設定とのこと。
確かに,このあたりのムービーでは,先込め式で1発ずつ撃つ様子も確認できる。連射性能ゼロでは戦闘用にはまったく向いてなさそうだ。無限にマスケット銃を出して使い捨てにするようなキャラクターでもない限り,実戦は不可能だろう。
今回のテストプレイでは,大きなストーリー的な部分はよく分からなかった。なにぶん,まだまだ最初のCBTが終わったばかりで,ゲームの基本部分が提示された段階にすぎない。オープニングに出てきた巨大ブラックストーン関連の話も,当面はストーリーに絡んでくることはないそうである。ゲーム世界の大きな布石である東側の国,バレンシアが登場するようになると,ゲーム内もダイナミックに変わるのかもしれない。
見えるところにはすべて行ける。そしてあちこち登れる
「見えるところにはすべて行けます」(キム・デイル氏)
とのこと。局所的に見ると,尖塔の屋根とか,どうしても登れそうにないところもあるのだが,街中や山の上など,結構なところが登れるようになっている。操作としては,スペースキーでジャンプし,シフトキーを併用するとよじ登る動作になるといった具合だ。場合によってはダッシュ動作を使うことで,通常では登れない角度の斜面を登れることもある。
多くは,「高いところに登った猫を助ける」といったミニクエストになっているようで,実際,あちこちに猫がいる。
こんな急斜面でも…… |
登れた! |
向こうの屋根って飛び移れそうじゃないか? |
手すり上で助走をつけて…… |
どういう部分が登れるのかについては,斜面の角度やよじ登れる手がかりの有無が問題となりそうだ。慣れると,「登れる場所が見えてくる」とのこと。ただ,同じ角度なのに,屋根の片側からは登れず,逆側からは登れたところもあったので,恣意的に調整して登れるようにしてあるところもあるようだ。一見,無理そうでも試してみる価値はある。
さて,こういったところに登るメリットはあるのだろうか(登る人は放っておいても登るだろうが)。もちろん,ある。クエストの一環になっていることもあるが,隠れた「知識」などを得られる場合があるのだ。
例えば,山の斜面にひっそりと洞窟の入り口がある。中に入ってみると,最奥部に宝箱が置いてあるといった感じだ。特殊な方法で入り口が開く隠しダンジョンなど,マップ担当スタッフでないと把握していないくらいそういったものが各地にあり,しかもどんどん追加されているという。これらを踏破することで,その地域の知識を増やしていける。このように冒険ノードでの知識を増やすことでアンロックされるコンテンツもあるらしい。とにかく,冒険要素にはこと欠かないようだ。
それでは生活系コンテンツはどうなのか?
アクション性の高い戦闘や攻城戦がウリになりそうなゲームだというのはお分かりいただけたと思うが,それ以外の部分はどうなのだろうか。ここで,以前4Gamerに掲載された生活コンテンツ系のムービーを振り返ってみよう。ぱっと見てもよく分からなかったムービーなのだが,今回の取材で「ああ,こういうことなのか」と理解できた部分があったので紹介してみたい。本作では生活系コンテンツについても,なかなか意欲的な要素が実装されているのだ。
まず,下の画像を見てほしい。
これらはほかのゲームでいう「図鑑」に相当するものだそうだ。さまざまな「知識」が立体的なネットワークグラフで表示されるようになっている。
また,街中を歩いていると,プレイヤーキャラクターとNPCの間が線で結ばれることがある。そういったNPCにはインタラクションを取って関係を築くことが可能だ。NPCとのやり取りを繰り返して関係を深めていくことも重要になってくる。
生活系コンテンツで最初に紹介されたのが「馬」だった。本作のマップは広く,キャラクターの移動速度はさほど速くない。馬などの乗り物は重要な位置を占めることになりそうだ。
馬は,街にある馬小屋の管理人(以下,馬屋)から購入できるのだが,馬屋に行って馬を買う……それだけでは従来のゲームとなんら変わるところはない。「それが生活系コンテンツ?」と疑問に思う人もいるだろう。
さて,馬屋を見ると,売っているのは馬1頭だけだ。最初は鞍もない裸馬なのだが,移動に使うにはこれでも十分かもしれない。しかし,鞍や頭飾りなどの装備を付けると,馬の性能や操作性が向上する。鐙(あぶみ)を付けると騎乗戦闘も可能になるという。なるほど,鐙がなければ踏ん張れないので,武器を振り回すのは危険だ。理にはかなっている。
では,それらの装備はどこで入手するのか? 馬屋である。馬屋と親しくなればいろいろな装備や上等な馬を売ってくれるようになるのだ。
となると,どうやって親しくなるのかが問題だ。そこは,NPCがほしがっている情報を提供することで評価を上げていく方式になっている。例えば,「○○の街の商人に関する情報を5つ」求めているNPCがいたとしよう。クエストなどで入手した知識を提供すればいいわけだ。しかし,その街の商人に対する情報は数多く,そのどれでもいいというわけではない。そのNPCが求める情報は限られている。そこで,手持ちの知識から,対象NPCがほしがっていそうなものを,NPCがほしがっている数だけ選び,順番に並べて判定してもらう必要がある。
このとき,相手のほしがっていた情報と一致しているかどうかで評価がされるのだが,情報の順番も重要になる。例えば,
○→○→○→×→○
のような感じになった場合,これは「3Hit Combo+1Hit」として評価される。当然,Comboが続くと評価は高くなる仕組みだ。
このようなミニゲームを繰り返して少しずつ相手の評価を上げていき,例えば,評価値が10%に達すると,店の品揃えが少し増えるといった感じで便宜が図られるようになる。一見さんには売れないものもあるというわけだ。このような仕組みが,本作の対NPCでのコミュニケーションの基本となっている。
話を馬に戻すと,こうして装備を揃えて馬を鍛えていくことで,乗りやすい馬が育つ。
馬の動きがまた非常によくできていて,急制動で踏ん張って止まったり,前足を上げて嘶いたりと動作も多彩で,なにより乗っているだけで楽しい。
馬には調教度のようなものがあって,馬側のスキルや扱いやすさという概念が導入されている。鍛えれば,馬によるドリフト走行も可能になるとのこと。これがまた高速機動で威力を発揮するらしいのだが,かなり高難度なワザではあるようだ。こういったものが,乗り手側の能力ではなく,馬側の問題とされている点が重要だ。つまり,よく仕込んだ「誰でもドリフトできる馬」などは非常に高値で売れることが期待できるわけだ。
本作の生活系コンテンツの深みの一端が理解いただけただろうか。以前のインタビューでは駱駝や象なども使えるようになるとのことだったので,乗り物だけでもかなり楽しめそうだ。
そのほか,マップのあちこちに採集できそうなものがあったので,道具ないしスキルがあれば一般的なMMORPGと同様の採集もできるものと思われる。
ただ,取材時に紹介された採集はちょっと違ったものだった。それは鉱石の採集で,雇ったNPCに指示を出すと,鉱山で鉱石を採取してくれるといった感じのものだ。街から鉱山までは実際に道を歩いていくので,やろうと思えば,あとを追って仕事ぶりを眺めることもできる。生産活動ではなにかと面倒な材料調達だが,本作ではゲーム内のNPCを雇って代行させることができるのだ。
今回の取材では生産についての詳細には触れられなかったのだが,料理関係のインタフェースをちらっと見ることはできた。そこには「混ぜる」「加熱する」などといったプリミティブな処理のボタンが並んでおり,「材料とレシピを揃えて合成」といった一般的なゲームの料理とはちょっと違った雰囲気が漂っていた。もしかして,オリジナルな料理も作れるのだろうか? 今後の情報に期待したいところだ。
驚くことに,これらの家はすべて中身のある家として作られているのだという。これら一軒一軒がプレイヤーの家になるのだそうだ。自分の家には,生産設備を配置することも可能だ。家の玄関には住所が書かれており,家のプロパティを見ればどういった生産設備が揃っているのかも分かるようになっているとのこと。
また,一軒家以外にアパートのような貸し部屋も用意されている。どちらも家具の配置などが自由にできるのは言うまでもないだろう。
街中に自分の家を持つのもよいが,自分の家を一から作ることはできないのかと確認してみたが,現状ではその予定はないようだ。しかし,この部分は今後どうするか悩んでいる部分でもあるという。
今回の取材では生活系コンテンツのほんの触りの部分しか見せてもらえなかったのだが,どの程度の奥行きがあるのか,今後の情報に期待したいところだ。
知は力なり。小さな「知識」を集めることで広がるゲーム性
さて,前述のように,本作では「知識」というものが重要な位置を占めている。NPCの情報であったり,地域の情報であったりと,その種類は多彩なようだ。ある種,ゲーム内でのAchievmentのような役割もしている。NPC一人一人に対しての好感度を上げることで,コンテンツがアンロックされていくのは先ほど示したとおりだ。それと同じような仕組みが,地域単位でも存在する。
ゲーム内でマップを開くと,画面がズームアウトするような演出で3D俯瞰図が表示される。全体にもやもやしているが,行ったことのある地域が増えるにしたがって見通しがよくなっていく仕組みだ。
そして,街と街の間にも関連性が付けられている。これが関連してくるのが交易だ。本作に出てくる街には多くのNPC商人が存在し,いろいろなものを販売している。そしていろいろなものを買い取ってくれる。売買相場は刻々と変化し,地域によっても変わってくる。つまり,NPC相手の交易で大もうけできる可能性もあるわけだ。
安く売られている地域から仕入れて,相場の高い地域に持っていって売ればいいわけだが,そう簡単に交易ができるわけではない。双方の地域のノードで一定以上に親密度を上げておく必要があるのだ。
ちょっと分かりにくいシステムかもしれない。韓国CBTでは,こういった情報はまったく開示されないままテストが行われたのだが,都市間のノードや交易の仕組みを見つけた人もいて,莫大な財産を築いていたらしい。
貿易を扱ったゲームとなると「シルクロードオンライン」や「ArcheAge」のように盗賊の警戒をする必要があるのだろうか。
「現在実装されているのは,政府に公認された安全な交易のみですので途中で襲われる心配はありません。ただし,今後追加される非合法な取引では,道中の安全は保障されません」(キム・デイル氏)
海賊やら盗賊に怯えることなく安心して貿易が行えるのだが,ハイリスク・ハイリターンな取引も別途用意されるわけだ。ちなみに,各地の物産の価格にはプレイヤーの市場活動がある程度影響するものの,具体的なアルゴリズムは「秘密」とのこと。
とにかく,冒険に明け暮れるもよし,人生一発逆転のヤバい橋を渡るもよし,相場の専門家になって大商人を相手に壮絶な仕手戦を繰り広げるもよし,ゲームの目的も広がっていきそうだ。
肝心の街での評判は,クエストなどで上げることができるらしいのだが,本作ではクエスト自体もちょっと凝った趣向になっているものが多いようだ。取材時には,いくつかミニゲーム仕立てになっているものを見せてもらった。
例えば,港でカモメを撃ち落すクエストは,前述の単発銃を使うのだが,戦闘時の遠隔武器のインタフェースとはちょっと異なり,FPSぽい操作を要求される。ターゲットの自動補正は行われないので,確実に照準を定めて撃たなければならないのだ。
また,街のネズミを退治するクエストでは,笛を使って「ハーメルンの笛吹き」のようにネズミをおびき出す必要がある。これは,画面の真ん中に小さなゲームUIが出てきて,上から落ちてくるネズミを避けながら進むミニゲーム仕立てになっている。失敗せずに進んでいくと,笛を吹いて進むキャラクターの後ろにネズミが集まってくる。そのまま歩き続け,川の中まで到達したら,溺れたネズミの屍骸を持って帰って報酬を得るといった具合だ。
以上,紹介してきたように,本作はいくつかの点で新しい世代のMMORPGだと述べていいだろう。まず,MMORPGとしては新次元のアクション性,オープンワールド要素を含む冒険志向のワールド設計,ゲームプレイで蓄積される知識ネットワークとそれを使ったコンテンツ展開などだ。とくにキーになる概念の一つが「ネットワーク」だろう。いろいろなものがネットワークを持って相互に関連して,ゲーム内の社会システムを作っている感じだ。
韓国CBTでは,かなり人数を絞った募集だったようで,参加できなかった人から「どうしてもやってみたい」という声が多く上がっていたという。参加者の感想の多くが「これは新しいゲームだ」というもので,評価はかなり高いものとなっていたようだ。
実際,今回のテストプレイでも,まだまだ全貌は把握できないものの,短時間ながら「なんか違うぞ」と感じさせられた。
今後は,マップをさらに拡大し,探検要素などコンテンツの拡大を図っていくという。また,単にコンテンツを追加するだけでなく,より多くの楽しみ方のできるものにして深みを増していきたいとキム・デイル氏は語っていた。
今後の追加要素としては,新クラスとして,すでに実装予定が明らかにされているテイマー,武士の男性(バレンシア実装後か?),女性のウォリアー,老人の魔法使い,そして日本向けのキャラクターを追加したいという。
ちょっと気になる日本向けのキャラクターについては,雑談ベースでは,忍者とか相撲取りとか巫女さんとかいろいろ出ていたのだが,日本人に好まれるキャラクターというのが手探り状態らしく,まだ具体的な構想はないようだった。個人的には,「ロリキャラかネコ耳」とアドバイスしておいたのだが……。
個人的には,今後追加されるというキャラクターエディット機能に期待している。今後の情報公開が楽しみだ。
最後にキム・デイル氏から4Gamer読者に向けたメッセージを掲載しておこう。
「黒い砂漠は,既存のオンラインゲームとは違った,まったく新しい体験を提供できるタイトルに仕上げたいと思っています。とはいえ,わけの分からないものではなく,一見,普通のMMORPGのように見えますが,触ってみると独自の楽しさが分かるものとして日本のユーザーの方にお届けしたいと考えています。期待してください」(キム・デイル氏)
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