プレイレポート
PC版から戦略的にも,戦術的にも変化したPS3/Wii U版「三國志12」をプレイ。新要素の登場でシンプルながらも奥深さが増したゲームバランスに注目
そんな「三國志」シリーズのナンバリング最新作「三國志12」(PlayStation 3 / Wii U)が,本日(2012年12月13日)発売される。本作では,2012年4月に発売されたPC版のゲームシステムを踏襲しながらも,プレイヤーから寄せられた意見を吸収して,いくつかの新規要素が追加されている。
※PC版では発売後にバランス調整などのアップデートが行われ,2012年12月12日時点ではVer1.0.0.7が公開されている
この新要素の登場で,「三國志12」はどう変わったのか。今回,コーエーテクモゲームスで,マスター相当の開発版ROMで本作をプレイしてきたので,確認できた新要素やPC版との違いを紹介していきたい。また,短時間ながらWii U版にも触れられたので,そちらにも触れていこう。
「三國志12」公式サイト
PS3/Wii Uともに“初”となる三國志。Wii U版はもちろんWii U GamePadにも対応
パッケージ版と同時にダウンロード版も発売されるPS3/Wii U版の三國志12。Wii U本体は12月8日に発売されたばかりで,三國志12はWii Uで初のシミュレーションゲーム作品となる。PlayStation 3においても初めてプレイできる三國志シリーズとなるわけで,PS3/Wii U版のどちらも“初”が付く作品となるわけだ。
ここで,三國志12についての概要を説明しておこう。
三國志シリーズは,後漢末期から三国時代を舞台に,君主または武将の1人として中国統一を目指すシミュレーションゲームだ。本作では1か月を1ターンとして,内政や外交で自国を豊かにし,敵国よりも優位な立場に導く「戦略パート」と,敵国に攻め入り,もしくは攻めこんでくる敵を迎撃するため,戦闘フィールド上で武将に命令を出して,リアルタイムでぶつかり合う「戦闘パート」を繰り返して,三国の統一を目指す。
本作の特徴となるのは,戦略/戦闘のどちらでも重要になる要素である「秘策」だ。開発するために人材/金/時間が必要なうえ,1度使うとなくなってしまうが,それだけに絶大な効果を持つ戦術である。
そして,もう一つの大きな特徴が,初心者でも遊びやすいシンプルなゲーム性だろう。こうしたシリーズ作品の多くは,続編が出るたびに新要素や難度の調整が行われ,ゲームシステムも複雑になっていくものだ。三國志シリーズもその例に漏れず,複雑化したゲームシステムによって,初心者には手が出しづらいゲームになっていた。
三國志12では,シンプルで簡略化されたシステムを導入し,原点回帰ともいうべき変化を遂げている。さらにコンシューマ版では,キーボードとマウスがない環境でも不自由なく遊べるように,戦闘中のショートカットが充実し,ゲームに没頭できるよう,工夫がなされている。
なお,PS3版とWii U版の違いは,プレイするコントローラの差異のみで,ゲーム内容や追加要素に違いはないとのこと。三國志12の特徴の一つである「無料のオンライン対戦機能」はどちらのハードでも楽しめるので安心しよう。ただし,対戦サーバーは,PC/PS3/Wii Uそれぞれ独立していて,例えばPS3版とWii U版のプレイヤーで対戦は行えない。
Wii U版は当然,Wii U GamePadにも対応する。画面が小さいため,人名に使われている画数の多い漢字などはつぶれて読みづらいこともあるが,ゲームの進行自体に支障はない。むしろ,携帯機感覚で手元を眺めながらプレイして,気がつくとしばらくテレビ画面を見ていなかったこともあった。
また,タッチスクリーンが使えるので,戦争時にはマップをスクロールさせて隅々の戦況を確認するといったことが簡単にできて便利だ。
一方,せっかくリアルタイムで動く武将を選択したいと思った時に,タッチ操作では行えなかったりして,その点はちょっと残念というか,もったいなかったように感じる。同じようにタッチスクリーンを持ち,2013年2月に発売を予定しているPlayStaion Vita版でどうなるのかは,今から気になるところだ。
追加要素「兵法陣」「強化陣」により戦闘場面に変化あり
三國志12の戦闘では,「秘策」「技法」「一騎討ち」といった要素をうまく使って勝利を目指すわけだが,PC版ではフィールド上での野戦はそこそこに,最終的に城門を隔てた攻防で雌雄を決するということが多かった。この際,「城門前」でお互いのつぶし合いとなり,戦術に関係なく多勢に無勢となって,勝敗が数で決まってしまう部分は,プレイヤー側からも改善を求められた部分だったと思われる。
コンシューマ版では,そういった局面での戦略性を高めるため,戦闘時に使える「兵法陣」と「強化陣」という2種類の新しい要素が追加されている。これらはその陣の周辺にいる部隊や城門を強化できるというもの。
兵法陣は守備部隊の能力や城門を強化させる効果があり,この陣を先に陥落させないと,城門を突破するのは難しい。一方の強化陣は,槍兵強化陣/騎兵強化陣/弓兵強化陣の3種類あり,陣の視界内にいる対応兵科の特殊攻撃力を上昇させる効果がある。
兵法/強化陣は防御値がゼロになるまで攻撃すれば破壊でき,効果を消すことができるのだが,どちらも近づく敵を自動で攻撃する能力があり,簡単に落とすことはできない。
このように,兵法/強化陣の登場で,ただ闇雲に城門に突撃すればいいというわけではなくなり,敵の守りを突破するために,戦闘フィールド内のいたるところで戦いを展開することになる。陣を攻めているあいだに本陣が強襲されるかもしれないし,背後から別動隊に襲われるかもしれない。こうした駆け引き,戦いが城門に達するまでにより多く起こることで,最終的なお互いの兵力にも変化が出てくるだろう。うまくすれば,少数が大勢を打ち破れるかもしれない。城門へ一直線ではなく,陣によって部隊を動かす機会が増えたことで,考えられる戦術の幅も広がり,より的確に戦況を把握する必要が出てきたわけだ。
新規武将を“自然な形”で配下にできる「武将抜擢システム」
戦略パートにおいては,「武将抜擢システム」が追加された。これは,君主が城下町に赴いて,優秀な人材を発掘するというシステムで,発掘した武将には,プレイヤー自らが名前を付けられ,オリジナル武将として配下にできる。
もともと,プレイヤーが作成した武将を自勢力に入れるシステムがあったが,武将抜擢システムは,“自然な流れ”で配下にできることがポイントだ。
三國志12は,初期資源や人材に乏しい弱小国で統一をするのはかなり難しい。新規武将作成で作った武将を大量に投入すれば戦えなくはないが,なんだかインチキ臭くて嫌だ……なんて思っているシリーズ経験者でも,ゲームの流れで人材発掘ができるのなら,と受け入れられそうなシステムだ。もちろん,あえて“武将抜擢を行わない”という漢らしい(?)選択もアリだろう。
では,具体的な武将抜擢の流れを説明しよう。まず数か月に一度,配下の武将から人材の噂が聞けるので,領内の施設を選択して視察を行う。そのとき選択する施設によって,武勇に優れるのか,政略に才があるのかといった大まかな人物像が決められる。このとき読める紹介文は重要で,武将の初期能力がある程度推測できるため,熟読することをオススメする。
人材を発掘して名前や声を決めたら,基礎能力を高める 「訓練」 を実施することになる。訓練方法は6種類あり,それぞれ上昇する能力とその成功値が表示される。手堅く能力を上げていくか,特技を多く獲得するのか,自分なりの育成方針を決めて決定しよう。
訓練を3回行ったあとは,「修行」の旅へ出すことになる。6種類の旅先から,自分の思い描く武将像に合ったものを選ぼう。なお,この修行により能力は飛躍的に向上し,戦法や特技を習得した状態で帰ってくる。
実際に何度か武将を作ってみたが,全能力70オーバーの即戦力武将が作れることもあった。内政を効率的に行うために,武将の数は多いほど有利なので,ぜひとも活用したいシステムだ。
PC版のシナリオに加えて新規シナリオが登場
新しい層に挑戦してほしくなる「三國志」
最後にコンシューマ版で追加された新規シナリオにも触れておこう。コンシューマ版では,「黄巾の乱」「益州平定」など,PC版に収録されていたシナリオに加えて,史実シナリオに「徐州変遷」「漢中王劉備」の2本,仮想シナリオに「戦国七雄」の1本。計3本の新規シナリオが追加され,合計13本のシナリオがプレイできる。
徐州変遷では,河北の袁紹と中原の曹操を中心に割拠する,群雄の行く末が語られる。拠点を持たない劉備は,陶謙を守ろうと徐州へ向かうことになる。
漢中王劉備では ,漢中王に即位した劉備の義弟,関羽の動向に注目。曹操と孫権が手を組み,大軍で関羽の守る荊州へと攻め入ってくるのだ。
仮想シナリオの戦国七雄は,古代中国の「秦」「楚」「斉」「趙」「燕」「魏」「韓」が覇権をめぐって争うという設定。秦王や嬴政(えいせい)といった名将と戦うことができる。
三國志12では各シナリオでのみ発生するイベントがあり,選択肢によって,歴史やプレイヤーの立場が変化することもある。これらの新規シナリオでは,どのような歴史が紡がれ,どんな結末へと導かれていくのだろうか。
さて,三國志12は最初に述べたように,原点回帰ともいうべきシンプルなシステムになっている。そのため,システムを覚えるための“学習”はそこそこに,すぐに中国統一を目指すという目的にまい進できるので,初心者が入りやすい作品だ。
やや蛇足となるが,筆者が初めてプレイした三國志シリーズは,PC-88版の初代「三國志」で,当時はまだ小学生だった。よく分からないながらも「諸葛亮曰く」の台詞に興奮し,何度もプレイして少しずつゲーム内容を覚えていったものだ。
これは,あくまで個人的な思いなのだが,もし初めて遊ぶ三國志が「三國志11」などの近年作だったとしたら。いまでこそ楽しいと思えるシステムの数々も,子供の自分には――いや,大人であっても――複雑すぎて,投げ出していたのではと感じることがある。
そういった意味では,システムがシンプルな三國志12は,とくにシリーズは未経験だという層におすすめしやすい作品なのではないだろうか。
もちろん,シンプルだから何もかもが簡単だというわけではなく,三國志ファンであればご存じのとおり,プレイ難度は選択する勢力によって,まったくと言っていいほど変化する。あえて弱小国でスタートする歯ごたえのあるプレイも,変わらず楽しめる。
また,武将抜擢システムや兵法陣/強化陣の登場で,戦略的にも戦術的にも,ゲームバランスが大きく変わっている。PC版をプレイ済みという人でも,また違った面白さが味わえることだろう。
「三國志12」公式サイト
※画像はPlayStation 3版のもの
(C)2012 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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