インタビュー
八代亜紀さん,「rain」に主題歌を提供するとしたら,どんな歌がいいと思いますか?
「rain」の少年が武器を持たないのは
見守ってあげたくなる存在として描くため
4Gamer:
そういえば八代さんは昨年,ジャズアルバム「夜のアルバム」をリリースされました。何となくジャズと演歌は,ずいぶん遠く離れたものというイメージがあったんですが,難しくはありませんでしたか?
私はジャズを聴いて歌手を目指したので,ある意味,原点なんですね。皆さんは「凄いね!」とおっしゃってくれるんですけど,私にとっては演歌もジャズも同じなんです。
4Gamer:
えっ,そういうものなんですか?
八代さん:
ええ。どちらもリズムが大事なんです。リズム感が悪いと全部同じ歌になってしまいますから。
4Gamer:
となると……例えば,最新のダンスミュージックを歌ってください! といったオファーはありませんか?
八代さん:
そういうオファーもたくさんいただいているんですよ!
ただ……若者の歌って,ちょっと難しいんです。
4Gamer:
演歌もジャズも歌いこなせるのに,ですか?
八代さん:
最近の若い人の歌って,歌詞が説明的で長いので,覚えるのがたいへんだなって(笑)。
4Gamer:
ああ,おっしゃることは分かります。
八代さん:
例えば私が歌ってきた「舟唄」なんかだと,短いフレーズの中でも,どんな状況でお酒を飲んでいるのか想像できるでしょう?
池田氏:
絵が浮かんできますね。
八代さん:
最近の歌だと,そういう絵が出て来ないんです。曲の作り方が違うんでしょうね。
でも,好きな曲もありますよ。「残酷な天使のテーゼ」みたいに。
4Gamer:
そういえば,八代さんはTVCMで「残酷な天使のテーゼ」を歌われていましたよね。そのときも何かの代弁者だったんでしょうか?
八代さん:
うーん,あの歌はいい歌なんですけど,内容はよく分からなくて(笑)。「少年よ神話になれ」という歌詞が気になったので,「新世紀エヴァンゲリオン」の映画版を見てみたんですけど……少年が神話にならないんですよね。いつまでもうじうじしてて。
池田氏:
もっと,しゃんとせい! と(笑)。
八代さん:
画面に向かって言いましたもん(笑)。
私はあの少年が神話になるところが見たかったんですよ。ハッピーエンドが好きなので。
池田氏:
rainはハッピーエンドですのでご安心ください。
八代さん:
それは素晴らしいですね。やっぱりハッピーエンドじゃないと,子供なんかがモヤモヤしたものを抱え続けたままじゃないですか。
これはゲームを作る方にお願いしたいんですけど,弱い人達を守るためにいろいろな人達と協力して悪者を倒して,みんなで幸せになるような物語にしてほしいんですよ。
そうするときっとね,子供達のいじめや暴力なんかもなくなる気がするんです。
4Gamer:
巨悪に立ち向かうためにみんなで力を合わせて頑張って,ハッピーエンドになるような。
池田氏:
このゲームでも10歳の少年が果敢に運命に挑むという設定なんです。
八代さん:
女の子を救いに行くっていうのが,素敵ですね。
ちょっと気になったんですけど,このゲームで,少年が殴ったり蹴ったりして戦わないのはどうしてなんですか?
池田氏:
少年らしさ,子供らしさを出したかったんですね。
僕は子供が武器を使うのは好きじゃないし,銃を持つなんてもってのほかだと思っています。そういう考えのうえで,ちょっと可哀想な,見守ってあげたくなる存在として描きたかったんです。
武器を持って戦えるようにすると,少年自身で勝手に道を切り拓けそうですよね。けれど,この作品の主人公はそういうことができなくて,隠れるしかない存在にしたかったんです。
八代さん:
きっとそれって珍しいことじゃないですか? 私はゲームはまったく知らないんですけども。
池田氏:
そうかも知れません。たいていのゲームでは,一時的に隠れることがあっても最終的には武器でどうにかすることになりがちですから。
4Gamer:
八代さんはゲームに対して,暴力的なイメージをお持ちだったんですか?
八代さん:
私がゲームを知らないからなんでしょうけど,そういう印象はありますね。
5歳の甥っ子がいるので,誕生日なんかにゲームを買ってあげることもあるんですけど,やっぱり「エイヤー!」って戦うようなものが欲しいみたいなんです。
4Gamer:
男の子は,そういうものに憧れますからねぇ……。
八代さん:
そうみたいですね。でも「戦ってばかりじゃ恥ずかしいよ!」って諭してます(笑)。
その点,rainはいいですね。絵も綺麗だし。
池田氏:
いやもう,本当に光栄です。
八代さんの持ち歌の中から,
rainに主題歌を提供するとしたら……?
4Gamer:
ちょっと唐突ですが,rainの主人公の少年が10歳ということで,お二人が10歳の頃にどんな子供だったのかを伺ってもよろしいでしょうか?
私はね,すごくお利口さんでした。親の言うこと,先生の言うことをちゃんと守っていて,それが当たり前だと思っていたんですね。お利口さんでいるのが,正しい子供だって信じていたんですよ。
……父が怖かったからね。叱られないように(笑)。
4Gamer:
お父さんが怖かった時代ですね。
八代さん:
親にわがままを言えるような時代ではなかったし,父も母も朝から晩まで働きづめだし,「あれを買って!」「これを買って!」なんて言ってはいけないって思っていました。
でもね,両親のことは大好きだったんです。父が母の料理を褒めると私も嬉しいし,逆に「これあんまり美味しくない」なんて言った父を母がたしなめるのを見るのも好きだったし……。
そうやって育っていたので,父の会社を手伝うために,早く大人にならなきゃ! って思ってました。
4Gamer:
真面目なお子さんだったんですね。
八代さん:
うーん。でもね,いい子ぶっているわけじゃなくて,本当にそうだったんですよ。不良になるなんて考えたこともありませんでしたし。
でも今だと,「あいつはいつもいい子ぶりやがって」なんて,いじめの対象になってしまうのかな? なんて思うこともありますね。でも,もしそんなことになったら,体当たりしてやりますけどね(笑)。
池田氏:
負けん気は強かったんですね。
熊本の女性には,そういうイメージがあります。
八代さん:
負けん気と,正義感は強かったかな。いじめられている子がいたら,いじめている子が男の子でも,助けに行きました。父がそういうタイプだったから,それに似たんでしょうね。そうやってぶつかっていったから,周囲でもあんまりいじめなんかはなかったんじゃないかな。
4Gamer:
正義の味方がいたからですね!
八代さん:
でもね,小学校の同窓会に初めて行ったときは,同級生達から「実は亜紀が一番怖かった」って言われました(笑)。
4Gamer:
ええっ?
八代さん:
番長みたいな子を突き飛ばしていたんですって。
その記憶はあるんですけどね。当時は兄弟の面倒を見なきゃいけなくて,勉強をする時間がないから成績も悪いというような子達がたくさんいたんですけど,そういう子達がちょっといじめの標的になっていたんです。
4Gamer:
ばかにされたりとか……。
八代さん:
その子が一人で掃除をさせられているときに,私は自分から手伝ったんですよ。そうしたら,ぞうきんを持っていた手を踏んづけられたんです。そのときにね……突き飛ばしました(笑)。
池田氏:
お前,ふざけるな! と。
八代さん:
その様子を番長の子分達は廊下で見ていたんですけど,ぱーっと逃げていってね。そのことが知れ渡って,違うクラスの子達からも怖がられていたみたいです。
4Gamer:
そして番長に……?
八代さん:
なりませんでしたよ(笑)。
4Gamer:
でも,同窓会でその話題が出るということは,周囲の人達にとってよっぽど強烈な出来事だったんでしょうね。
神話ですよ。神話になりましたよ。
4Gamer:
シンジ君に対して怒るのも納得ですね。
池田さんの10歳の頃は,いかがでしたか?
池田氏:
僕は小学3年生以前の記憶がなくて,4年生でもおぼろげなんです。ただ,4年生の頃は男女の区別もあんまりついてなくて,仲良く楽しく過ごしていた記憶はあります。
4Gamer:
どんなことをして遊んでいたんですか?
池田氏:
レゴですね。今でも変わらないんですけど(笑)。
あまりゲームでは遊んでなくて,レゴ以外だとミニ四駆やプラモデルで遊んでいました。
4Gamer:
組み立てるのがお好きだったんですか?
池田氏:
あれ? 本当だ。組み立ててばっかりですね。
言われてみて,初めて気付きました。
4Gamer:
きっとその経験が,ゲームを組み立てることに生きているんでしょう!
池田氏:
そ,そうかもしれないです。
4Gamer:
さて……そろそろお時間ということなので,最後に一つ,八代さんにお願いしたいことがあるんです。
八代さん:
何でしょう?
4Gamer:
八代さんの持ち歌の中から,rainに主題歌を提供するとしたら,何がピッタリ当てはまるか,教えていただけないでしょうか?
八代さん:
えっ,このゲームにですか?
今,私の持ち歌は,シングルのA面だけで120曲ぐらいあるんですけど,その中からだと……うーん,こういう感じの歌,いっぱいあるんですよ。「迷い」という歌なんかは合いそうかな。でも大人の歌ですからねぇ。この少年にはちょっと合わないかな。
そうすると……「五月雨の道」(2012年12月発売のシングル「追憶の面影橋」の両A面曲)が一番かも?
4Gamer:
(「雨の慕情」じゃなかった……)
池田氏:
ありがとうございます!
じゃあ,その歌をrainの動画にあててPVを作ってみます! 個人的に。
八代さん:
うふふ。ぜひ聴いてみてくださいね。
4Gamer:
お二人ともお忙しいところ,ありがとうございました。
「rain」公式サイト
でんぱ組.incの古川未鈴さん,
「rain」をクリアしてみて,実際のところどうでした?
「rain」みたいなちょっと風変わりなゲイム,何を思って作ったの?
池田佑基ディレクターに,男色ディーノが聞く
- 関連タイトル:
rain
- この記事のURL:
(C)Sony Computer Entertainment Inc.