プレイレポート
「セイクリッド3」はシリーズで一番洗練されたアクションゲームに。カジュアルに楽しめるシリーズ最新作のプレイレポートをお届け
その一方で,Sacred 2までを手掛けていたAscaronの倒産により,開発会社が変わったことから,シリーズ作品としての仕上がりに不安を覚えるファンも少なからずいると思われる。
本稿では,そういった理由から購入に一歩踏み込めないという人や,そもそもセイクリッドシリーズを知らないという人に向けて,本作のプレイレポートをお届けしよう。
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またまた争いの火蓋が切られる,聖地「アンカリア」
セイクリッドシリーズの舞台となる「アンカリア」は,雪に覆われた山岳から,乾ききった砂漠地帯まで,それぞれ環境の異なるエリアが密接する聖なる土地だ。ここではシリーズを通してさまざまな争いが行われてきたわけだが,本作では,強大な力を手にしたダークエルフの血族「ゼーン」の野望により,再び争いの火蓋が切られることに。聖なる土地であるはずなのに,治安はあまり良くないようだ。
もちろん,アンカリアに住む人々も,この危機を黙って見過ごすわけにはいかない。そこで立ち上がったのが,かつて「アンカリアのガーディアン・エンジェル」として活動していた「セラフィム」と呼ばれる種族の長であるシスター・テラリだ。彼女は,アンカリアに残された英雄達を招集し,ゼーンの野望を阻止するため,再び剣を取ることになる。
ゲーム内でプレイヤーが操作するのは,シスター・テラリではなく,招集された英雄達のほうだ。プレイアブルキャラクターとして用意されている英雄は4人いるので,ざっくりと紹介しておこう。
●サフィリのエリート戦士「マラク」
サフィリは,かつてアンカリアの南部で海賊をしていた民族だ。今では改心して,貿易商として生活しているものの,なかには海賊行為を続ける輩もいるため,そうした者を処刑する「オーダー・オブ・ザ・サン」という組織が存在する。
そんなサフィリの1人である「マラク」は,オーダー・オブ・ザ・サンのエリート戦士であり,両手持ちの武器を振り回す豪快な戦闘スタイルが特徴的だ。また,太陽の力を借りて自身を強化できるので,最前線に立って暴れまわりたいという人にピッタリのキャラクターといえる。
●クークリの射手「ヴァジラ」
クークリは,アンカリア北部に位置する,雪に覆われた山岳地帯で暮らす民族だ。過酷な環境のなか,危険な獣達と常に生きるか死ぬかの戦いを繰り広げているため,ハンターとしての素質はすでに備わっている。そんなクークリ族の中でも,とくに弓術に長けている「ヴァジラ」は,遠距離からの攻撃はもちろん,敵に接近されても,回避しながら罠を仕掛けるといったトリッキーな動きも可能だ。ほかのRPGで,レンジャーやローグといったクラスを好んで使う人にオススメ。
●セラフィムのパラディン「クレア」
セラフィムは,かつてアンカリアの庇護者として活動していた種族だ。天使のような翼と,瞳孔のない白目が特徴的で,シリーズを代表する種族でもある。その長であるシスター・テラリの右腕として活躍したパラディン「クレア」は,天の力を使った魔法や,剣術にも精通する万能キャラクターなので,どれを使おうか迷ったらクレアを選ぼう。
●アンカリアンのランサー「アリシア」
アンカリアンは,かつてアンカリア全土を支配していた民族だ。アンカリア王家の最後の王女であり,槍状武器のエキスパートでもある「アリシア」は,中距離からのヒット&アウェイ戦法を軸に,手数の多い攻撃で敵を圧倒することを得意とするキャラクターだ。攻撃範囲,ヒット数ともに優れているため,爽快感の高いプレイが楽しめる。
このほかにも,謎多き種族マラキムの暗殺者「カイソン」が,初回限定特典およびDLCキャラクターとして用意されている。彼の特徴は,2刀流のスタイルから繰り出される素早い攻撃と,血を触媒とする数々の魔法だ。右腕がうずいて仕方ないという人は,迷わず彼を選ぼう。
従来のシリーズとは一変。アーケードゲームを意識したゲーム性に
前作「Sacred 2: Fallen Angel」が,アンカリア全土をシームレスに移動できるオープンワールドタイプだったのに対して,本作は直線的にゲームを進めていく“ステージ選択式”となっており,その第一印象は“アーケードゲーム”に近い。
確かに前作では,ある程度ゲームに慣れてくると,テレポートポータルを使って目的地に移動した方が効率的だったため,筆者としては,広大なオープンワールドの世界に感動を覚えるのも序盤のうちだけだった。したがって,移動の手間をばっさりと省いたステージ選択式への変更は,個人的にはアリだと思う。
ステージは40以上用意されており,なかにはこれまでのシリーズで舞台となったロケーションも登場する。ステージは順番にクリアする必要がないので,いきなり終盤のステージに向かうことだって可能だ。ただし,それぞれ推奨レベルが設定されており,キャラクターのレベルがそれを大きく下回っていると,敵にダメージが通らないので,結果的には順番に進めていくのがよさそうだ。
また,ステージは大きく分けるとメインとサブの2種類が存在する。メインステージは,物語の進行に関わり,ワールドマップ上で見ると,そのステージを象徴する建造物などが描き込まれているのが分かる。
一方のサブステージは,限定されたエリア内でミッションをこなすなど,ミニゲーム色が強い。したがって,ストーリーを追うだけならばメインステージのみ進めればいいが,物語の進行にレベルが追いついていない場合や,本作の世界観を骨の髄までしゃぶり尽くしたいという場合は,サブステージも合わせて攻略してみよう。
このほかにも注目したい点は,カメラワークだ。ステージ攻略中は,さまざまなイベントに合わせてカメラが切り替わるので,これまで見下ろした状態でしか確認できなかったアンカリアの景観が,本作ではダイナミックな視点で楽しめるようになっている。
アクションに関しては,シリーズで一番洗練されている印象だ。装備している武器を使った通常技や,「コンバットアーツ」と呼ばれる強力な特殊技に加えて,敵を掴んで投げつけたり,瀕死状態の敵に飛びかかって処刑したり,ほかのプレイヤーと協力してダメージを与えたりなど,アクションのバリエーションが豊富なので,動かしていて純粋に面白い。
さらに,ほとんどの攻撃が範囲攻撃となっており,群がる敵を強力なコンバットアーツで蹴散らしていく爽快感を満喫できるのは,本作における最大の魅力といえるだろう。
また,すべてのキャラクターが使用できる共通アクションに「バッシュ」と呼ばれるものが存在する。これを使うことで,敵の盾を弾き飛ばしたり,モーションの大きい技を中断させたりといったことが可能だ。バッシュを使うシーンは多いので,攻撃ばかりで単調になりやすい戦闘に対する,いいアクセントとなっている。
ボスの大技をすべて完封したときの達成感はなかなかのものなので,バッシュは早めに使いこなせるようになりたい。
ディフェンスアクションは,回避と防御の2つが用意されているが,キャラクターにセットできるのはどちらか1つだ。いずれも,使いこなせれば被ダメージを最小限に抑えられるので,こちらは好みで選ぶといいだろう。
えっ! トレハンがない!?
さて,前述したとおり本作のアクション性は,シリーズで一番洗練されているということは間違いない。ただ,ゲームプレイの比重をアクションに寄せすぎたためか,RPGとしての要素はかなり薄まっている印象を受けた。
セイクリッドといえば,近代的なテクノロジーが混じったハイファンタジーな世界観も,もちろん魅力の1つなのだが,やはり最大のお楽しみといえば,拾った装備の性能を吟味しながらキャラクターを強化していく,いわゆるトレジャーハント(以下,トレハン)だろう。
レア装備を求めて同じエリアに通い続け,敵がドロップする装備に一喜一憂するという,前作まではあったハック&スラッシュRPGの醍醐味が,シリーズ最新作である本作には“ない”のだ。
キャラクターが装備する武器は,ストーリーの進行に応じて決まったものが手に入るので,同じステージを繰り返し攻略しても,より強力な武器が見つかることはない。したがって,いきなりダメージインフレが起きるようなこともないため,ゲーム全体を通してハック&スラッシュRPGとしての刺激が足りないように感じる。
同様に,防具もレベルに応じて性能とビジュアルが強化されていく仕組みになっており,いくら敵を倒しても新たにドロップされるといったことはない。そもそも本作には,SACREDシリーズのプレイヤーが想像しているようなインベントリが存在しないので,前作のようなトレハンに重点をおいたゲーム性に期待していると肩透かしを食うことになるだろう。
とはいえ,前作にあった魅力がまるっきり失われたわけでもなく,武器とスキルのシナジーを考えながらビルド――いわゆる育成方針――を考える楽しさは,しっかりと残されている。
本作には,それぞれのキャラクターが持つ固有のコンバットアーツがあり,その性能は,別途用意されたツリーの進め方次第で変わってくる。このツリーは,武器や防具のほか,回避や防御といったアクションにも用意されているので,これらをカスマイズすることで,自分のプレイスタイルにあったキャラクターに仕上げることが可能だ。
また,前作にはない要素として,本作には「ウェポンスピリット」というものが存在する。これは,古代の英雄の力を武器に宿すことで,さまざまな恩恵が得られるというもの。攻撃がヒットした際に周囲の敵に連鎖する雷が発生したり,斬りつけた敵を炎上させたりなど,常時発動している効果が得られ,なかなか強力だ。誰を武器に宿すかでプレイスタイルも変わってくるだろう。
協力プレイに関しては,コントローラを2つ用いたローカルプレイに対応しており,ゲームをパブリックで公開しておけば,ドロップイン方式で,オンライン上のプレイヤーが参加してくる仕組みだ。本作は協力プレイを重視した作りになっているので,1人でじっくりと遊び倒すのもいいが,ほかのプレイヤーと協力すれば,違った楽しさが見えてくるはずだ。
アクションゲーム寄りに大きく舵を切った本作「セイクリッド3」。「Diablo3」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)を中心に数多くのハック&スラッシュRPGがリリースされるなか,これらと差別化を図るために,この方向性を選んだのであれば,それは間違っていないと思う。しかし,シリーズの醍醐味であったトレハン要素が削られたことは,これまで遊んできたファンにとっては大きなマイナスポイントだろう。
ただし,本作における変化がすべて悪いというわけではない。これまでのシリーズと同じようなものを期待すると,確かに不満点は目立つ。一方で,セイクリッドの世界観を共有したアーケードタイプのアクションゲームとしてみれば,十分楽しめる作品に仕上がっていることは間違いない。
従来のシリーズとは違った味付けのセイクリッドが体験できるタイトルでもあるので,本シリーズの世界観が好きだという人はもちろん,アクションゲームが好きだという人も,ぜひ遊んでみてほしい。
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