インタビュー
最新作「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA」で,アークシステムワークスは何を目指すのか。稼働初日の秋葉原で森Pに聞いてみた
本作は,これまで4作品が制作され,いずれも高い人気を博してきた「BLAZBLUE」シリーズの最新作だ。前作「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT II」(コンシューマ版は「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT EXTEND」)から,新キャラクターの追加はもちろんのこと,各種ゲームシステムにまで手を入れるなど,シリーズを通して最大の変化が見られる本作が,いったいどんなゲームになっているのか,気になっているプレイヤーも多いはず。
今回4Gamerでは,稼働初日である11月21日,多くのプレイヤーが集う秋葉原のゲームセンターにて,プロデューサーである森 利道氏にじっくりと話を聞いてみた。最新作であるBLAZBLUE CHRONOPHANTASMAは何を目指し,何が変わったのか。ちょっとした脱線なども含みつつ,お届けしていこう。
「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA」公式サイト
さらなる遊びやすさを追求したCHRONOPHANTASMA。大胆に見直されたシステムの数々
4Gamer:
いよいよ稼働初日を迎えた「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA」(以下,BBCP)ですが,実際にアーケードで遊ばれている様子を見て,いかがでしたか。
森 利道氏(以下,森氏):
いやあ,さっきまで秋葉原のゲーセンを見て回ってきたんですけど,良いですね。すでにコンボを開発している人がたくさんいましたよ。やっぱりガチの対戦が見られるのは嬉しいものです。ロケテストだと,プレイヤーはどうしても対戦より調べる方に集中しちゃいますからね。
4Gamer:
今回の目玉である新キャラの3人,「アマネ」「バレット」「アズラエル」の人気はどうですか。
森氏:
午前中にちょっと覗いただけなので,正確なデータではないですけど,新キャラではバレット,次いでアマネを使っている人が多かったみたいですね。従来からのキャラではジンと,あとテイガーが多かったかなあ。
4Gamer:
えっ,テイガーですか?
森氏:
稼働当初はすごく強いんだよね,テイガー(笑)。そのあと対策を取られて落ち着いてくるんだろうだけど。よく「初心者キラー」なんて呼ばれるのは,そういう理由なんですよ。
4Gamer:
ああ,なるほど。投げキャラの宿命みたいのものですね(笑)。ジン使いの様子はいかがでしたか?
森氏:
ジンは,基本的な技のモーションは変わらずに,コンボパーツが変わっているんですけど,さすがは歴戦のプレイヤー達だけあって,みんなすぐにコンボを見つけていましたね。対応が早い。従来キャラの中でも,かなりやり込みが面白いキャラになっているので,今後が楽しみです。
4Gamer:
分かりました。個々のキャラクターの話は追々お聞きするとして,まずは本作の制作に至る経緯について,改めてお聞かせください。前作「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT II」(以下,CS2)から数えると,約2年ぶりの新作となりますが,どんなコンセプトで制作されたタイトルなのでしょうか。
森氏:
一つは,いまおっしゃられたように,前作から2年が経過しているというのが,本作を制作した理由です。CS2とその前の「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT」(以下,CS)は,第1作である「BLAZBLUE CALAMITY TRIGGER」(以下,CT)を,全体的に見直すことで生まれたタイトルだったので,いわゆるバージョンアップ版に近い立ち位置だったんですよ。そこから先に進むためにはここらで変化が必要で,「どうせだったら大きく変えよう」と考えました。なのでCPでは,CSとCS2を踏まえたうえで,思い切ってさまざまな部分をいじりました。
4Gamer:
けっこう大胆な決断ですよね。
森氏:
今回は「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」(AC / PS3 / Xbox 360,以下P4U)を制作していた期間に,その辺りをゆっくり考えたんです。
4Gamer:
P4Uは,BLAZBLUEとほぼ同じチームの手による開発だったとお聞きしています。
森氏:
そうです。やはり同じ意思を持った人達が作っているわけですから,そこで得た知見というのは,別タイトルを作るにあたっても参考になります。P4Uでは,原作にあたる「ペルソナ4」がRPGだったので,とくに格ゲー慣れしていないRPGファンの方々でも遊びやすいタイトルを目指したんですよ。その開発に参加しつつ,スタッフ達とは「次に『BLAZBLUE』をやる時も,同じ姿勢で臨もう」という話をしていました。
4Gamer:
なるほど,さらに遊びやすいタイトルになっていると。具体的には,どんな点が遊びやすくなりましたか。
森氏:
まず,僕が前作で思ったのは「コンボが長い」ということですね。だから,できる限りコンボを短くしたいと考えました。でも短くなりすぎてしまうと,今度はゲームに発展性がなくなりかねない……それは嫌ですよね? なので,キャラクター全員のコンボパワーを見直して,手を入れているんです。
4Gamer:
と,言うと?
森氏:
その影響が如実に現れているのが,さっきも話題に上ったジンですね。基本的な技は変わってないと言いましたが,触って見るとまったく違うキャラになっているのが分かると思います。彼はCS時代にほぼ完成してしまったキャラだったので,あそこから調整を加えようにも,やりようがない。だったら,そもそもの性能から見直すしかないじゃないですか。
4Gamer:
すべてのキャラが,そのレベルで変化していると考えて良いのでしょうか。
森氏:
そうですね。ただ主人公のラグナに関してだけは,入門用という側面もあって,大きな変更は見送っています。それ以外のキャラは,新技がかなり増えていますし,使い道のない技――いわゆる「死に技」がないように調整を加えています。
4Gamer:
BLAZBLUEシリーズはただでさえ技が多いですし,死に技をなくすのはすごく大変な気がしますね。そういえば,ロケテストに参加したプレイヤーからは,全体的に「軽くなった」というような声も聞きますが,そこはどうなんでしょうか。
森氏:
たぶんヒットストップ(攻撃ヒット時などに,キャラクターが一瞬停止する演出)がちょっと短くなっているので,「軽く」感じるんだと思います。これまでは,少しもっさりした部分があったので,よりスピーディーなゲームになるよう調整しています。
4Gamer:
確かにスピード感が増したというのも,ロケテストの感想としてあるようです。
森氏:
今回のCPでは,「初心に戻ろう」というのがコンセプトの一つなんですよ。BLAZBLUEの根底にあるシステムを,もう一度見直そうと。
4Gamer:
根底にあるシステムとは?
森氏:
例えばBLAZBLUEには「受け身」がありますよね。あれが何のためにあるのかというと,「寝っぱなし(ダウンしっぱなし)だと死ぬよ?」という状況を作るためなんです。本作では,相手が食らいモーション中でも,投げで掴むことができますし。なぜそんなシステムにしたかというと,つまり攻守の切り替えをスピーディーにしたかったからなんです。
4Gamer:
ダウン後も駆け引きが続くので,確かにそのほうがゲームの展開がスピーディになりますね。でも,そうやって駆け引きのスピードが上がると,逆に初心者は入りづらくなるのでは?
森氏:
そのために用意したのが,今回の操作タイプ「スタイリッシュ」です。ぶっちゃけこれ,強いと思いますよ。P4Uのシステムを参考にして,かなり力を入れて作りましたから。前作までのスタイリッシュは,いわゆる初心者モード的な立ち位置でしたが,今作では対戦でもバリバリ使っていけるように調整しています。
4Gamer:
TGS 2012でも触らせてもらいましたが,スタイリッシュはガチャプレイでもかなりそれっぽく見えるようになっていて,すごく進化していると感じました。本作では,ほかにも「オーバードライブ」というシステムが追加されていますよね。こちらはどんな経緯で追加されたのでしょうか。
■CHRONOPHANTASMAの新システム:操作タイプ「スタイリッシュ」
キャラクター選択時に,「テクニカル」と「スタイリッシュ」の二つから操作タイプを選べるBLAZBLUEシリーズ。従来どおりの操作となるテクニカルに対し,スタイリッシュでは,より簡単な操作で基本的な連続技などが繰り出せるなど,初心者向けの操作方法という意味合いが強かった。
しかしCPでは,この操作タイプ「スタイリッシュ」が大幅に強化され,これまでは難しかった空中コンボなども,ボタン連打で繰り出せるようになっている。本文中でも触れているとおり,初心者だけでなく,中級者以上がキャラクターの動きを把握するのにも使っていけそうだ。
空中で引っかけた通常技からも……
ボタン連打で必殺技やディストーションドライブまでつなげられる
森氏:
BLAZBLUEシリーズにはバーストというシステムがあるんですけど,これは元々「GUILTY GEAR XX(ギルティギア イグゼクス)」(以下,GGXX)から登場したシステムなんですよ。
4Gamer:
相手のコンボを食らっている最中に発動することで,コンボから脱出して大ダメージを回避できるというシステムですね。アークシステムワークスのタイトルでは,今や定番となっている要素の一つです。
森氏:
そうそう。あれって,俺や石渡(ギルティギアシリーズ プロデューサー 石渡太輔氏)がギルティギアを作っていた当時に,「ブラッディロア3」ってゲームがはやっていて,そこから思いついたシステムなんですよ。ブラッディロアには,「獣化」っていうキャラクターがパワーアップする仕組みがあったんだけど,これが発動した瞬間は,キャラクターが無敵状態になって,相手を吹き飛ばせるんです。
4Gamer:
ブラッディロア! 懐かしいですね。確かにそんなシステムでした。
獣化は敵の攻撃を食らっている最中でも発動できて,コンボ中の切り返しや,防御手段としても使えたわけです。今のバーストとかなり近いでしょう? 本来のバーストは,そんなふうに「コンボ中に1度だけ切り返しの手段を与えよう」っていう,防御的なシステムとして用意したものだったんです。だけど,ゲームシステムが進化していくにつれ,攻撃的に使うバースト――いわゆる「金バースト」を活用した戦術が,より重みを増すようになっていって。
4Gamer:
ああ,確かに。
森氏:
防御手段として搭載したシステムが,攻撃にも使えてしまうのはおかしいだろうということで,バーストとは別に,攻撃に特化した別のシステムを作ろうと考えたわけです。……本当のことをいうと,CSのボスラグナに搭載してやろうと思ってたんだけどね。
4Gamer:
オーバードライブをですか? ということは,CSの頃から構想はあったわけですか。
森氏:
うん(笑)。ストーリー上でハザマを倒す時に,ラグナがオーバードライブを使うというシナリオを考えていたんです。ラムダのイデア機関を取り込んだことで,オーバードライブが使えるようになった,という設定だったんだけど。
でも,それだとラグナにしか使えないシステムになっちゃうでしょう?
4Gamer:
そうですね。
森氏:
ただシステム的には面白いから,その構想をCP制作時のスタッフに話したんですよ。そうしたら,どうやらスタッフ達にも「バーストの位置付けがおかしい」という感覚があったみたいで,それが今回のオーバードライブシステムにつながったんです。パチくん(本作のバトルプランナー 関根一利氏)をはじめ,スタッフ達が総出で頑張ってくれました。
4Gamer:
BLAZBLUEシリーズは,元々キャラクターの個性がかなり強いゲームですし,確かにピッタリのシステムかもしれません。どうでしょう,開発側からみて,「オーバードライブはこう使え!」みたいなポイントとかありますか。
森氏:
うーん,やっぱり攻めるために作ったシステムなんで,「ここで決めたい!」と思ったときにはガンガン使ってほしいですね。単なる一発逆転の要素というより,戦いの流れを作るために。
4Gamer:
相手に逆転のチャンスを与えないためにも,ここで倒しきってしまいたい,とか。
森氏:
「攻撃は最大の防御」だからね。ただ先にも言ったように,キャラクター毎の個性がすごく強いシステムなので,キャラクターによって活用の仕方は変わってきます。まあ,オーバードライブに関しても,ラグナが一番オーソドックスなキャラクターなので,まずはそこから触ってみてほしいですね。
■CHRONOPHANTASMAの新システム:オーバードライブ
CPでは,従来の「バーストアイコン」が「オーバードライブゲージ」に変更され,これが溜まった状態で[A][B][C][D]同時押し(行動可能中)をすると,各キャラ固有の能力を一定時間強化する「オーバードライブ」が発動できるようになった。
これにともない,従来の攻撃的ブレイクバースト――いわゆる金バーストは,ゲームシステムから削除されている。
例えばジンのオーバードライブ「絶刀(フロストエンド)」の場合……
[D]ボタンで出せる凍結効果技の数が増加。コンボがよりつなげやすくなる
一方で従来の切り返しに使うバースト――いわゆる緑バーストは本作でも健在。操作方法は「被ガード・ダメージ中に[A][B][C][D]同時押し」と変わらないが,発動条件が「オーバードライブゲージが満タンのとき」へと変更となっている。
オーバードライブ中はタイムカウントが停止するため,タイムオーバーによる決着を回避する場合にも活用できる。また体力が少ない状態で発動したほうが持続時間が長くなるという特徴も
- 関連タイトル:
BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA
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