プレイレポート
やればやるほど味が出る。日本一ソフトウェアの最新作「神様と運命革命のパラドクス」は入口が広く奥の深いダンジョン探索RPG
同社の看板タイトル「魔界戦記ディスガイア」を手がけたチームが開発を担う本作は,キャラクターデザインにイラストレーターのいとうのいぢ氏,楽曲にアニメの主題歌などで活躍する音楽ユニット「妖精帝國」を起用して,幅広い層へのアプローチを試みる作品だ。
ゲーム内に登場する主要女性キャラクターのボイスを,電撃G'sマガジン,ランティス,サンライズの3社合同プロジェクトによって生まれたアイドル「ラブライブ!」のキャストが演じるのもプレイヤー層を広げるための施策の1つで,メディアミックス戦略の目立つゲーム・アニメ界隈の流れにのって煌びやかな面々が本作で共演を果たすことになる。
ゲームのジャンルは2010年3月に発売されたPSP用ソフト「絶対ヒーロー改造計画」の血筋を感じさせるダンジョン探索型のRPG。日本一ソフトウェアらしいやりこみ要素はあるものの,プレイ序盤のハードルは低めに設定されているという。
今回は発売直前ということで,そんな本作の物語やシステムを,実際にプレイして得た印象を交え,あらためて紹介していこう。
物語は軽い調子で進んでいくが,考えさせられる場面も
本作の物語は,絶望的にくじ運の悪い主人公・神楽坂レンヤが,商店街の福引きで1等を当て神様になるところから始まる。実は,オープニングムービーを飛ばすとレンヤが神様になるまでおよそ3分ほどの急展開で,その間説明はほとんどなく,気づいたら天界に降り立ってメイドっぽい天使や執事っぽい天使とあいさつを交わしていました,というのが本作の怒濤の幕開けだったりする。
ダンジョンRPGのフィールドになるのは,願いを持つ根源的存在にとっての現実世界をコピーした“コピー世界”。シンデレラでいえば,いじわるな姉達や魔法使いのおばあさん,そして王子様がいるあの世界をコピーした場所ということになる。この世界では,運命を変えようとする神に“運命”そのものが対抗して“異形”という存在を生み出してくる。それと戦いながらダンジョン最深部にたどりつき,待ち受けるボスを倒すというのがレンヤの目的だ。
ところで願いごとを叶える行為を,なぜ“運命革命”と呼ぶのか。実はこれ,意外と深い設定があるようだ。例えばシンデレラのコピー世界では,もしシンデレラがあの(健気な)性格でなかったらとか,もしシンデレラが魔法で美しくなる前に道ばたで王子様と出会っていたらとか,そういった展開についての疑問がシンデレラその人の口から語られる。
シンデレラは物語に求められたからこそあの性格なのであり,だからこそあのタイミングで王子様と出会って結婚した,というちょっとメタっぽい解釈が取り入れられていて,基本的に軽い調子で進んでいく物語の中,少し考えさせられる展開に出くわすことがある。彼女にまつわるエピソードは有名だが,シンデレラというのが彼女の本名ではないと知っている人は意外と少ないかもしれない。
ともあれシンデレラの場合は,物語に望まれるだけの自分を変えるという意味で,願いごとが“運命の革命”へとつながっているというわけだ。
ハードルは低いが奥深いシステム
ダンジョンRPGである「神様と運命のパラドクス」では,主人公が1度行動するごとに敵キャラクターも1アクションを起こす。もしダンジョン内でHPが0になると,所持品を没収されるだけでなく所持金も半分にされ,スタート地点へと戻されてしまう。ボス戦以外でお供として一緒に戦ってくれる天使は,途中で会話を交わしたり,“そこから動くな”といった作戦を命令したりできる嬉しい戦力だ。
体の6か所に装備できる装備品はそれぞれ特殊技を持っており,戦闘中にSPを消費することで発動できる。SPとHPはターンが経過するごとに回復するので,特殊技を出し惜しみする必要はない。特殊技をメインに戦えばそれほど戦闘に苦労しないことは,リリエルが最初の説明で教えてくれる。ちなみに,特殊技には属性があり,敵の弱点属性で攻撃すれば大ダメージを与えられる。
ダンジョンの中で上がったレベルは,クリアするか戦闘不能となってダンジョンを出ると1に戻されるが,その際に行動に応じたボーナスが入り,主人公のステータスが底上げされていく。ダンジョン攻略時は毎回レベル1からのスタートとなるが,徐々に成長はしていくのだ。
また,何度か戦いを繰り返すと,装備品(天装)のゲージが溜まっていく。これがMAXになると“天装バースト”状態となり,鍛冶屋でその装備品を強化できるようになる。ただし,その際には装備品の強さに応じた料金がかかるため,強くすればするほど出費がかさむ。しかも,バースト状態になると装備品の能力は一時的に低下してしまう。ゲームが進行していくと,バーストした装備品を素材としていろいろな装備品を合成できるようになるので,バースト状態の装備品をストックしておくのも,戦術の1つだ。
なお,装備品をバースト状態にすると,“聖魂の素”と呼ばれるアイテムも入手できる。これを,メニューから選べる“神体改造”で使えば,さらにキャラクターのステータスを上昇させることができる。神体改造は奥が深い,日本一ソフトウェアらしい成長システムなのでゲームプレイ時には意識しておこう。
日本一ソフトウェアらしいといえば,おなじみの“持ち上げ&投げ”システムも用意されている。うまく使いこなせれば,敵に囲まれた場所からの脱出や背後を取っての攻撃,さらにはユニットの上をスーパーボールのように飛び跳ねつつダメージを与える,といった奇抜なこともできてしまう。もちろん,フィールドに置かれている障害物を持ち上げて敵に投げつけて攻撃したり,遠くから手持ちのアイテムをぶつけて効果を発揮させたりもできる。
メディアミックスなど派手な面もあるが,根っこはやはり日本一
冒頭でも述べたとおり,いとうのいぢ氏や妖精帝國の起用,「ラブライブ!」のキャスティングといったメディアミックス展開が目立つ「神様と運命革命のパラドクス」。これらはライトノベルを意識したような会話中心のテンポの良い物語と相性が良く,サクサクと進めていけるだろう。
一方でシステム面はやはり日本一ソフトウェアらしさがにじみ出るものとなっている。プレイの際のハードルは高くないものの,やりこみ要素は多い。どれも日本一ソフトウェアらしいシステムなので,同社の作品をプレイしている人ならば問題ないが,初プレイの場合はリリエルのチュートリアルで覚えることが少し多いと感じるかもしれない。その場合は,一度にすべてのシステムを覚えようとせず,プレイしながら必要に応じて振り返るようにしたい。
さまざまなメディアミックスやキャッチーなビジュアルと,いろいろと裏のある物語や奥深いシステムが共存している本作は,コアな日本一ソフトウェア作品らしさを残しつつも入口を広げた作品となっている。
「神様と運命革命のパラドクス」公式サイト
- 関連タイトル:
神様と運命革命のパラドクス
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