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「スカルガールズ」のリードアニメーターが語る,2Dアーティストのキャリア形成や3Dアートとの関連性
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印刷2023/07/22 11:00

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「スカルガールズ」のリードアニメーターが語る,2Dアーティストのキャリア形成や3Dアートとの関連性

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 アメリカのインディーデベロッパのReverge Labsが制作し,格闘ゲームファンの高い評価を得た2D対戦格闘ゲーム「スカルガールズ」。格闘ゲームとしての完成度はもちろん,ダークデコな世界観とビジュアル,凛々しくもかわいらしいキャラクターたちといった魅力で,発売から10年が経った今もなお多くのファンに愛され続ける作品だ。

※※2023年7月現在のデベロッパはHidden Variable Studios,パブリッシャはAutumn Games

 2010年から現在まで,同作のリードアニメーターを務めているのが,2DアーティストのMariel Kinuko Cartwright氏。ゲームデベロッパのFuture Clubのクリエイティブ・ディレクターを務める傍ら,Lab Zero Gamesの「インディヴィジブル 闇を祓う魂たち」のディレクターや,SEGAの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズ作品である「テイルスチューブ」の制作を行うなど,幅広く,そして精力的にさまざまなゲームの開発に携わっているクリエイターだ。

Cartwright氏は,本文で名前を挙げた作品以外にも,Ubisoftの「Scott Pilgrim vs. The World: The Game」,Wayforward作品のビジュアルなども手掛けており,同人活動も行っている
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 その経歴もあり,Cartwright氏はゲーム開発者会議「Game Developers Conference」(GDC)の常連スピーカーとして,主にアート系のセッションで登壇している。北米時間2023年6月27日から29日まで開催されたGDCのデジタルイベント「GDC Showcase 2023」でも,ゲーム開発者向け情報サイト「Game Developer」(リンク)の編集者でジャーナリストのBryant Francis(ブライアント・フランシス)氏を聞き手にしたインタビューが行われた。
 Cartwright氏の経験をとおし,ゲームアーティストとしてのキャリア形成やノウハウについて語られたセッション「Game Art Career Fireside with Mariel Kinuko Cartwright and Bryant Francis」のレポートをお届けしよう。

インタビュアーのFrancis氏。編集者やジャーナリスト以外にも,「Endless Space 2」(Amplitude Studio),「Zephon」(Proxy Studio)といった4xストラテジーゲームの制作にも携わるゲームデザイナーとしての顔も持っている
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 現在は2Dアニメーターをメインにゲーム制作に携わるCartwright氏だが,カリフォルニア芸術大学でデジタルアートの勉強を始めたときは,3Dアートが主流であるゲーム業界で働きたいという理由で,3Dアートコースを専攻したという。これは,ディズニーやピクサーなどのアニメスタジオへの就職を希望して2Dアートコースを選んだ同級生の多くとは対照的な進路あった。
 だが,結果としてCartwright氏が3Dアートを専門にすることはなかった。というのも,キャリアの最初期に関わった(たまたま大学の近くにオフィスがあった)Wayforwardの作品で,2Dアート,ピクセルアニメーション,2Dアニメーションなどの制作を任されたからだ。これをきっかけに,同氏は2Dアートの世界の魅力に目覚め,その後は2Dアートを専門にしていくことになる。

画像はスカルガールズ
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 Cartwright氏の進路変更に対し,Francis氏は「2Dアートよりも3Dアートの方が目立ちがちなゲーム業界の中で,2Dアーティストとして生き残るための秘訣を知りたい」と質問した。
 その答えは「なんでも屋になる」こと。そして,なんでも屋としての心構えとして,「チームを助けたいという気持ちや,あらゆる分野において少しでも知識を持っておきたいという意欲が大事」とも回答した。仕事(および同人活動)を通じて2D十分な知識と技術を得られたことで2Dアーティストとしてのキャリアを重ねることができたCartwright氏だが,大学時代に3Dアートを学んだことで3Dの知識や技術,専用ソフトウェアへの理解があったことが大きな強みになったという。「何か一点についてベストの能力を持っていないかもしれないが,あらゆることに首を突っ込めることも自分の長所」とも語っていた。

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 インタビューは,視聴者からの質問もピックアップされた。その中で活発に質疑応答が行われたテーマが,2Dアートや3Dアートに関するものだ。
 そのひとつが,「2Dアーティストが将来的に3Dアートを制作するうえで,気をつけるべき点」について。2Dアートでは輪郭が重要になるが,それに加えて対象物を立体的に考えながら描くこと,すなわち2Dアートを3D空間の中で捉えるイメージトレーニングを行うことが大事だと,Cartwright氏は答えた。

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 また,2Dアートにも3Dアートにも共通する大事な点として,「個々のツールを使用するうえで,自分自身の基礎となるスキルをしっかり磨いておくこと」を挙げた。世の中に出回る(そして,日々進化し続ける)さまざまなツールを使いこなすことは大変ではあるが,自分自身が関わる制作作業の基礎となる部分を覚えられれば,より便利で新しいソフトが登場したときでも自らを適応させられるという。
 さらに,「自分が現在どのようなソフトを使っているか,そしてそのソフトについてどのような感想を持ったかを開発チームのメンバーと共有することも,開発をスムーズに行うためには重要」と,Cartwright氏は付け加えた。

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 こうしたチームワークの大切さも,このセッション中でCartwright氏が繰り返し強調していた点だ。
 開発コンセプトがしっかりしていること,途中参加メンバーを暖かく迎え入れてくれる雰囲気や,どんな質問も歓迎するムードが予め存在していることは,開発の途中からチームに入ることが多いゲームアーティストにとって大きな助けになるという。
 そして,素晴らしい仲間たちと一緒にゲームを制作できるという充実感こそが,現在複数のプロジェクトに関わっており多忙を極めているCartwright氏にとっては,仕事をするうえでの活力源になっているとのことだ。

画像はインディヴィジブル 闇を祓う魂たち
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 視聴者からは,新たにキャラクターを生み出す際のインスピレーションやアートスタイルはどこから来るのかなど,制作面の質問も数多く寄せられたが,どの質問に対しても同氏が(ときとして自分の弱みも包み隠さず)率直に答えていた。

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 それらの質問の中でとくに筆者が印象的だったのは,これからアーティストとしてゲーム業界で働こうとする人へのポートフォリオ作成のアドバイスだ。
 Cartwright氏は,自分自身が本当に好きなものをポートフォリオとして選ぶこと,そして同時に,その作例以外にも,自分が何を描けるかをアピールすることが大事だと述べた。例えば,ポートフォリオに人物画を選んだ場合には,そこで描いた体形,髪型,服装以外にも,その人物をさまざまなスタイルで描けるのだと示すことで,自分が幅広いスキルを持っていることを証明できるということだった。

Cartwright氏によれば,「スカルガールズ」のキャラクター造形にはホラー映画の影響が大きいとのこと。また自分自身の作風には,ピンナップアートの影響や物語性,そして女性の自己表現やセクシーさといった要素も強いという
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 Cartwright氏のセッションは30分という比較的短い時間ながらも,3Dアーティストから2Dアーティストへの転身や,開発チームにおけるゲームアーティストの立ち位置など,興味深いテーマに満ちた内容であった。なお,GDCのYouTubeチャンネルでは,2Dアーティストとしての立場から「スカルガールズ」や「インディヴィジブル 闇を祓う魂たち」の2Dアニメーション制作過程を紹介した2つのセッションなど(関連リンク1 / 2),同氏の過去の講演がいくつか公開されている。

 とくにGDC 2015で行なわれた,Photoshopを使用した2Dアニメーションのライブデモ「The GDC 2015 Live 2D Animation Demo」は,今回のセッションでFrancis氏が「これまでのGDCの中で,最も印象に残るセッションのひとつだった」と語ったほど素晴らしい講演なので,Cartwright氏の制作スタイルが気になった人はぜひ視聴してほしい。

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