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稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
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印刷2013/03/09 23:16

イベント

稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

画像集#001のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は,2013年3月9日,試遊体験イベント「『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』共闘サミット」を東京都内のベルサール秋葉原で開催した。このイベントでは,3月7日に発売されたばかりのPS Vita用ソフト「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」(以下,ソウル・サクリファイス)の共闘マルチプレイを体験できたほか,スペシャルグッズ抽選会,そしてステージイベントが行われた。
 ここでは,ソウル・サクリファイスのコンセプターを務めるcomceptのCEO稲船敬二氏らが登壇したステージイベント,「クリエイタートークセッション」の模様をお伝えしよう。

会場には,ケルベロスとハーピーの共闘マルチプレイ用試遊台が,それぞれ3台ずつ用意された
画像集#002のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート 画像集#003のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

ステージイベントの司会を務めたSCE 宣伝担当 北尾泰大氏とタレントの椿姫彩菜さん。二人が着ているのと同じ「生贄」と「救済」パーカーは,会場近くの対象店舗でソウル・サクリファイスを購入した人に,抽選でプレゼントされた
画像集#007のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート 画像集#008のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」公式サイト



開発現場の難局を何度も救った稲船氏の言葉


comcept CEO 稲船敬二氏
画像集#009のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
 まず,ソウル・サクリファイスが目指したことについて問われた稲船氏は,あらためて「みんなで楽しく遊んでもらうこと」を挙げた。とは言え,それはみんなが集まって和気藹々ということだけではなく,真剣に取り組む駆け引きの楽しさも含んでのことだという。

 また稲船氏は,王道であることを目指したとも語り,「(王道ではない)自分の趣味を入れ過ぎてしまうと,そっぽを向かれる」と説明。開発中,氏はスタッフに何度も「王道を作るんだ」と繰り返したそうだが,実は自分自身に言い聞かせるためだったと話した。

 しかし王道を掲げる一方,ある意味で相反する「新しいもの」をも目指そうとしてきた。その両立は,成功するかどうか分からない挑戦だったが,広告宣伝担当やクオリティコントロール担当まで含め,スタッフが全力で取り組んだことにより,こうしていいゲームに仕上がったとした。

 ディレクターを務めたcomceptの下川輝宏氏は,稲船氏の掲げた王道と新しさの間に生ずる矛盾をどう解決するかに四苦八苦したと話し,その最初の糸口となったのが,音楽分野で言うところのリミックスの手法だったことを明かした。つまり,原曲の象徴となる部分を切り出し,楽曲全体を再編成するようなイメージで,王道ゲームの世界観を再構築していったというわけだ。とくにゲームのキーとなる「欲望」「代償」については,ゲームではよく取り扱われるテーマだからこそ,あえて中心に据えたという。

 また,最も制作に苦労したモンスターは,最初に作った「ケルベロス」だったと下川氏は続ける。設定からデザインまで,逐一,稲船氏とやり取りしながら決めていったそうで,一つの雛形が完成して以降,スタッフから次々に設定やデザインのアイデアが出てきたそうだ。

画像集#010のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
comcept ディレクター 下川輝宏氏
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マーベラスAQL デベロップメントディレクター 鈴木一徹氏

 そのようにして決まった設定やデザインをゲームに落とし込んでいったのが,マーベラスAQLのスタッフだ。デベロップメントディレクターを務めたマーベラスAQLの鈴木一徹氏は,仕様書から着手する通常の開発手順と異なり,ソウル・サクリファイスは,「まず世界観ありき」で制作が始まったため,非常に苦労したと話す。最初にケルベロスを動かして,「これが『ソウル・サクリファイス』のアクションだ」というものを掴むまでが大変だったが,それ以降は比較的スムーズに開発が進行したとのことだ。

試遊後の感想やメッセージを記すノートも用意されていた
画像集#006のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
 注目してほしいポイントとして鈴木氏は,何をするにしても代償が必要な部分を挙げた。プレイ開始直後は面倒だと思うかもしれないが,やがてそれがクセになり,ゲームの世界観を把握できるようになるという。
 この代償について稲船氏は,自分がゲームを作るとき,映画やアニメなどのワンシーンがヒントになっている,というところから説明を始めた。キャラクターデザイン出身の稲船氏ならではの発想かもしれないが,ゲームの企画を作る際にも,まず「描きたい絵」が先に浮かぶとのこと。
 ソウル・サクリファイスの場合,絶体絶命の危機に陥ったとき「ここは俺に任せて,先に行け」と死を覚悟しながら仲間を逃がすといったシーンを思い浮かべたそうだ。ゲームでは,カットシーンでそういったシチュエーションが描かれることはあるが,実際のプレイで再現されることが少ないことに気づき,代償という本作のテーマに思い至ったという。

SCE クオリティマネージャー 菅野有造氏
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 ゲームバランスの調整を担当した,SCE クオリティマネージャーの菅野有造氏は,共闘マルチプレイを最大限に機能させるため,「一人ぼっちにさせない」「役割分担を前提にした育成」といったテーマを掲げたと話した。SCEのチューニング専門チームが何度もテストプレイを繰り返し,グラフィックスからユーザーインタフェースに至るまで,プレイヤーの共闘意識を阻害するような要素を徹底的に洗い出し,開発チームに改善ポイントとして示したそうだ。

 また,ゲームバランスについては,アクションゲームということもあって,難しすぎても簡単すぎてもダメだと下川氏は言う。鈴木氏らが,初見では絶対倒せないという方針で作ったモンスターを絶妙な難度に落とし込むまで,下川氏と菅野氏とで時間をかけて詰めていったという。


プロデューサー/マネージャー陣から見た開発現場の裏側


 ここでトークは,開発現場をまとめたプロデューサーやマネージャーの話に移った。
 comceptのプロデューサー,伊藤亜紀子氏は,稲船氏の言葉が開発現場の迷いを要所で打破したエピソードを明かす。例えば,最初に作った戦闘場面が地味でどうすべきか困ったとき,稲船氏の「スーパーヒーローの戦いにしたい」という一言が,現場をまとめる大きな指針になったという。そうした局面は,開発中に何度もあったとのことで,伊藤氏は,「まさしく稲船氏が開発の要だった」と話した。

comceptのプロデューサー,伊藤亜紀子氏。ゲーム中に登場するハーピーのモデルは,伊藤氏本人だそうだ
画像集#013のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
 また伊藤氏は,開発中,稲船氏がことあるごとに下川氏に「つけあがるなよ」と語っていたことを思い出す。これについて稲船氏は,「ディレクターは,自分が手がけるゲームがヒットすると信じて開発しています。そして仮にヒットした場合,ダメな人間はつけあがり,そこでクリエイターとして終わってしまうんです」と語った。下川氏がこの先長く,優れたクリエイターとして活躍できるよう,あえてそう言い続けていたそうだ。
 ちなみに,このイベント会場では,下川氏にサインを求める女性ファンがいたが,それを聞いた稲船氏は,下川氏にやはり「つけあがるなよ」と言ったそうだ。

 伊藤氏は,プロデューサーとして女性プレイヤーに注目し,ソウル・サクリファイスのグロテスクな面だけが一人歩きしないよう,情報露出に配慮したという。そして,女性プレイヤーの力を借りて今後も同タイトルを盛り上げていきたいと意気込みを語った。

 マーベラスAQL デベロップメントマネージャー岡村 光氏は,正反対の方向に行ってしまいがちな下川氏と鈴木氏の調整に苦労したそうだ。また岡村氏はマネージャーという立場でありながら,クリエイターとしてもゲームの演出面に関わっており,下川氏からアドバイスを請われる場面も多かったという。

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マーベラスAQL デベロップメントマネージャー 岡村 光氏
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SCE プロデューサー 本村健太郎氏

 SCEのプロデューサー,本村健太郎氏は,「comcept/マーベラスAQL/SCEが作り出す世界観やゲームの根幹に,ほかの会社が関係する部分がきちんと合致するよう,細心の注意を払っていた」という。さらに本村氏は,開発スタッフのメンタル面にも気を配っており,それについては鈴木氏と下川氏のテンションを指標にしていたという。本村氏によれば,鈴木氏のテンションが低いときはスタッフにシュークリームを差し入れ,いよいよダメだと感じたら,焼肉に誘うなどして気分転換を促したそうだ。
 また下川氏は普段,水を大量に飲むが,何か問題が生ずると水の量が減るといった傾向を把握し,ケアしていたともいう。


2013年4月のアップデートで登場する
「デュラハン」の実機デモプレイが公開に


 登壇者全員が認める,ソウル・サクリファイスのターニングポイントといえば,東京ゲームショウ 2012(TGS 2012)におけるプレイアブルバージョン出展だ(関連記事)。稲船氏は,それまでユーザーがどんな反応を示すか見当がつかない状態だったが,TGS 2012で多くの人が試遊のために行列を作り,プレイ後に「面白い」と言ってくれたことが大きな自信につながったと話した。その後,発売がいったん延期されたが,TGS 2012での自信が延期期間を最低限にとどめつつ,ベストの内容にしようというモチベーションを高めてくれたという。

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開場前から30人以上が行列を作り,開場直後には全試遊台が45分待ちになったとのこと。以降,待ち時間60分以上が続いていた
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共闘マルチプレイの参加者には,抽選でスペシャルグッズがプレゼントされた

 さらに菅野氏は,TGS 2012に出展したプレイアブルバージョンのセーブデータを分析し,得られたプレイの傾向が,2012年12月に配信された体験版に反映されていると明かした。
 体験版配信時には香港にいたという稲船氏はプレイヤーの反応を知るため,仕事のかたわら,頻繁にネットをチェックしていたそうだ。そして,その反響の高さに開発スタッフの士気が上がり,体験版で指摘された多数の改善要望についても,まったく苦にせず改善作業を進められたという。

SCE アソシエイトプロデューサー 鳥山晃之氏
画像集#016のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
 ソウル・サクリファイスでは,音楽を光田康典氏鋒山 亘氏が担当しているが,SCEのアソシエイトプロデューサーである鳥山晃之氏は,両名を起用した理由について,本作がプレイヤーの感情移入を重視するゲームであり,そのため音楽には生のオーケストラが最適だろうと考えたからと説明した。その結果,演奏は世界でもトップクラスとされるスカイウォーカー・シンフォニー・オーケストラが担当し,収録にはオーケストラ100名,コーラス20名が参加する,大規模な編成となったという。

 音楽について稲船氏は「初めてゲーム画面に音楽を乗せたとき,鳥肌が立った。こういう経験はなかなかない」と絶賛。その一方,本村氏は,下川氏が光田氏に何度もリテイクを出したことを明かした。それを受けた下川氏は「設定やデザイン,アクションと同じで,最初の一曲がすごく大事。以降の曲は,続々と仕上がった」と語る。なお,リテイクの理由は,光田氏の特徴の一つであるメロディアスで優しい曲調が,荒涼としたソウル・サクリファイスのゲーム画面になかなかマッチしなかったためだそうだ。

画像集#017のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

 ステージの終盤では,2013年4月上旬予定のアップデート第1弾の内容(の一部)が,実機デモプレイによって初めて公開された(関連記事)。
 新モンスター「デュラハン」の正体は,攻撃を受けることに快感を覚える騎士という設定だそうだ。あるとき,自分の性癖の根本が「死への欲求」だと,気づいたその騎士は,自ら首を切り落として魔物化したのだ。ゲームでは,体力が一定以下になると,デュラハンが自分自身を攻撃して快感を得,パワーアップする様子が見られた。
 また舞台となる新マップ「ゴリアテ」は,巨大化した兵士の体内という設定で,消化液がプレイヤーの体力を奪ったりなど,体内ならではのギミックが仕掛けられている。

会場で公開された「デュラハン」の画像
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 鈴木氏によれば,マーベラスAQLの中でもトップクラスの腕を誇る4人のスタッフが集まっても,きちんと作戦を立てないとデュラハン討伐は難しいそうだ。稲船氏は冒頭の発言に立ち返り,デュラハンのような強大な敵が出てきたときにこそ,4人で力を合わせて,命をかけて戦ってほしいとした。「へたな人がいるときはもちろん,たとえうまい人が揃っていても,しっかり作戦を立てて向かっていく。それが共闘。皆さんもちゃんと準備して,4月の配信を楽しみにしてください」とのことだ。

会場では,下川氏,鈴木氏,本村氏,鳥山氏の4名が,デュラハン討伐に挑戦。役職的には上の立場の本村氏と鳥山氏が生贄となり,鈴木氏と下川氏が健闘したのだが,残念ながらデュラハン討伐はできず
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会場では,登壇したクリエイター陣と来場者が共闘マルチプレイを楽しめるステージも設けられた。これは,参加者全員にプレゼントされた,登壇者のサイン入りポスター
画像集#023のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
 ステージのエンディングでは,稲船氏が来場者に感謝の意を示し,今後一層ソウル・サクリファイスの世界観に浸ってほしいと話した。また,来場者の女性比率が予想に反して高いことにも言及し,同作がより多くの層に受け入れられ,理解されてほしいという希望を述べた。さらに稲船氏は,ソウル・サクリファイスは未完成であり,多くの人がプレイし,共闘することで完成に近づくと語り,ぜひ友人知人を誘ってプレイしてほしいとステージを締めくくった。

 なお,この試遊体験イベント「共闘サミット」は,東京・新宿ステーションスクエアにて,2013年3月24日11:00〜19:00にも開催される予定だ。興味のある人は,ぜひ足を運んでみよう。

画像集#024のサムネイル/稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート

「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」公式サイト

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