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稲船敬二氏らが「ソウル・サクリファイス」開発現場の裏側を赤裸々に語る。イベント「『ソウル・サクリファイス』共闘サミット」のトークセッションをレポート
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は,2013年3月9日,試遊体験イベント「『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』共闘サミット」を東京都内のベルサール秋葉原で開催した。このイベントでは,3月7日に発売されたばかりのPS Vita用ソフト「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」(以下,ソウル・サクリファイス)の共闘マルチプレイを体験できたほか,スペシャルグッズ抽選会,そしてステージイベントが行われた。
ここでは,ソウル・サクリファイスのコンセプターを務めるcomceptのCEO稲船敬二氏らが登壇したステージイベント,「クリエイタートークセッション」の模様をお伝えしよう。
「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」公式サイト
開発現場の難局を何度も救った稲船氏の言葉
また稲船氏は,王道であることを目指したとも語り,「(王道ではない)自分の趣味を入れ過ぎてしまうと,そっぽを向かれる」と説明。開発中,氏はスタッフに何度も「王道を作るんだ」と繰り返したそうだが,実は自分自身に言い聞かせるためだったと話した。
しかし王道を掲げる一方,ある意味で相反する「新しいもの」をも目指そうとしてきた。その両立は,成功するかどうか分からない挑戦だったが,広告宣伝担当やクオリティコントロール担当まで含め,スタッフが全力で取り組んだことにより,こうしていいゲームに仕上がったとした。
ディレクターを務めたcomceptの下川輝宏氏は,稲船氏の掲げた王道と新しさの間に生ずる矛盾をどう解決するかに四苦八苦したと話し,その最初の糸口となったのが,音楽分野で言うところのリミックスの手法だったことを明かした。つまり,原曲の象徴となる部分を切り出し,楽曲全体を再編成するようなイメージで,王道ゲームの世界観を再構築していったというわけだ。とくにゲームのキーとなる「欲望」と「代償」については,ゲームではよく取り扱われるテーマだからこそ,あえて中心に据えたという。
また,最も制作に苦労したモンスターは,最初に作った「ケルベロス」だったと下川氏は続ける。設定からデザインまで,逐一,稲船氏とやり取りしながら決めていったそうで,一つの雛形が完成して以降,スタッフから次々に設定やデザインのアイデアが出てきたそうだ。
comcept ディレクター 下川輝宏氏 |
マーベラスAQL デベロップメントディレクター 鈴木一徹氏 |
そのようにして決まった設定やデザインをゲームに落とし込んでいったのが,マーベラスAQLのスタッフだ。デベロップメントディレクターを務めたマーベラスAQLの鈴木一徹氏は,仕様書から着手する通常の開発手順と異なり,ソウル・サクリファイスは,「まず世界観ありき」で制作が始まったため,非常に苦労したと話す。最初にケルベロスを動かして,「これが『ソウル・サクリファイス』のアクションだ」というものを掴むまでが大変だったが,それ以降は比較的スムーズに開発が進行したとのことだ。
この代償について稲船氏は,自分がゲームを作るとき,映画やアニメなどのワンシーンがヒントになっている,というところから説明を始めた。キャラクターデザイン出身の稲船氏ならではの発想かもしれないが,ゲームの企画を作る際にも,まず「描きたい絵」が先に浮かぶとのこと。
ソウル・サクリファイスの場合,絶体絶命の危機に陥ったとき「ここは俺に任せて,先に行け」と死を覚悟しながら仲間を逃がすといったシーンを思い浮かべたそうだ。ゲームでは,カットシーンでそういったシチュエーションが描かれることはあるが,実際のプレイで再現されることが少ないことに気づき,代償という本作のテーマに思い至ったという。
また,ゲームバランスについては,アクションゲームということもあって,難しすぎても簡単すぎてもダメだと下川氏は言う。鈴木氏らが,初見では絶対倒せないという方針で作ったモンスターを絶妙な難度に落とし込むまで,下川氏と菅野氏とで時間をかけて詰めていったという。
プロデューサー/マネージャー陣から見た開発現場の裏側
ここでトークは,開発現場をまとめたプロデューサーやマネージャーの話に移った。
comceptのプロデューサー,伊藤亜紀子氏は,稲船氏の言葉が開発現場の迷いを要所で打破したエピソードを明かす。例えば,最初に作った戦闘場面が地味でどうすべきか困ったとき,稲船氏の「スーパーヒーローの戦いにしたい」という一言が,現場をまとめる大きな指針になったという。そうした局面は,開発中に何度もあったとのことで,伊藤氏は,「まさしく稲船氏が開発の要だった」と話した。
ちなみに,このイベント会場では,下川氏にサインを求める女性ファンがいたが,それを聞いた稲船氏は,下川氏にやはり「つけあがるなよ」と言ったそうだ。
伊藤氏は,プロデューサーとして女性プレイヤーに注目し,ソウル・サクリファイスのグロテスクな面だけが一人歩きしないよう,情報露出に配慮したという。そして,女性プレイヤーの力を借りて今後も同タイトルを盛り上げていきたいと意気込みを語った。
マーベラスAQL デベロップメントマネージャー岡村 光氏は,正反対の方向に行ってしまいがちな下川氏と鈴木氏の調整に苦労したそうだ。また岡村氏はマネージャーという立場でありながら,クリエイターとしてもゲームの演出面に関わっており,下川氏からアドバイスを請われる場面も多かったという。
マーベラスAQL デベロップメントマネージャー 岡村 光氏 |
SCE プロデューサー 本村健太郎氏 |
SCEのプロデューサー,本村健太郎氏は,「comcept/マーベラスAQL/SCEが作り出す世界観やゲームの根幹に,ほかの会社が関係する部分がきちんと合致するよう,細心の注意を払っていた」という。さらに本村氏は,開発スタッフのメンタル面にも気を配っており,それについては鈴木氏と下川氏のテンションを指標にしていたという。本村氏によれば,鈴木氏のテンションが低いときはスタッフにシュークリームを差し入れ,いよいよダメだと感じたら,焼肉に誘うなどして気分転換を促したそうだ。
また下川氏は普段,水を大量に飲むが,何か問題が生ずると水の量が減るといった傾向を把握し,ケアしていたともいう。
2013年4月のアップデートで登場する
「デュラハン」の実機デモプレイが公開に
登壇者全員が認める,ソウル・サクリファイスのターニングポイントといえば,東京ゲームショウ 2012(TGS 2012)におけるプレイアブルバージョン出展だ(関連記事)。稲船氏は,それまでユーザーがどんな反応を示すか見当がつかない状態だったが,TGS 2012で多くの人が試遊のために行列を作り,プレイ後に「面白い」と言ってくれたことが大きな自信につながったと話した。その後,発売がいったん延期されたが,TGS 2012での自信が延期期間を最低限にとどめつつ,ベストの内容にしようというモチベーションを高めてくれたという。
開場前から30人以上が行列を作り,開場直後には全試遊台が45分待ちになったとのこと。以降,待ち時間60分以上が続いていた |
共闘マルチプレイの参加者には,抽選でスペシャルグッズがプレゼントされた |
さらに菅野氏は,TGS 2012に出展したプレイアブルバージョンのセーブデータを分析し,得られたプレイの傾向が,2012年12月に配信された体験版に反映されていると明かした。
体験版配信時には香港にいたという稲船氏はプレイヤーの反応を知るため,仕事のかたわら,頻繁にネットをチェックしていたそうだ。そして,その反響の高さに開発スタッフの士気が上がり,体験版で指摘された多数の改善要望についても,まったく苦にせず改善作業を進められたという。
音楽について稲船氏は「初めてゲーム画面に音楽を乗せたとき,鳥肌が立った。こういう経験はなかなかない」と絶賛。その一方,本村氏は,下川氏が光田氏に何度もリテイクを出したことを明かした。それを受けた下川氏は「設定やデザイン,アクションと同じで,最初の一曲がすごく大事。以降の曲は,続々と仕上がった」と語る。なお,リテイクの理由は,光田氏の特徴の一つであるメロディアスで優しい曲調が,荒涼としたソウル・サクリファイスのゲーム画面になかなかマッチしなかったためだそうだ。
ステージの終盤では,2013年4月上旬予定のアップデート第1弾の内容(の一部)が,実機デモプレイによって初めて公開された(関連記事)。
新モンスター「デュラハン」の正体は,攻撃を受けることに快感を覚える騎士という設定だそうだ。あるとき,自分の性癖の根本が「死への欲求」だと,気づいたその騎士は,自ら首を切り落として魔物化したのだ。ゲームでは,体力が一定以下になると,デュラハンが自分自身を攻撃して快感を得,パワーアップする様子が見られた。
また舞台となる新マップ「ゴリアテ」は,巨大化した兵士の体内という設定で,消化液がプレイヤーの体力を奪ったりなど,体内ならではのギミックが仕掛けられている。
なお,この試遊体験イベント「共闘サミット」は,東京・新宿ステーションスクエアにて,2013年3月24日11:00〜19:00にも開催される予定だ。興味のある人は,ぜひ足を運んでみよう。
「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」公式サイト
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SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)
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(C)2013 Sony Computer Entertainment Inc.
- SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス) PlayStation Vita the Best
- ビデオゲーム
- 発売日:2013/10/10
- 価格:¥1,780円(Amazon) / 1922円(Yahoo)