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突然ですが,超弩級ストラテジー「太平洋戦記3 最終決戦」を新規プレイヤーが楽しむところまで到達するための“7つのコツ”を桂 令夫氏が伝授
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印刷2012/07/28 00:00

攻略

突然ですが,超弩級ストラテジー「太平洋戦記3 最終決戦」を新規プレイヤーが楽しむところまで到達するための“7つのコツ”を桂 令夫氏が伝授

画像集#001のサムネイル/突然ですが,超弩級ストラテジー「太平洋戦記3 最終決戦」を新規プレイヤーが楽しむところまで到達するための“7つのコツ”を桂 令夫氏が伝授

■桂 令夫(ライター,翻訳家)
東京大学文学部イスラム学科卒。歴史や戦史といった専門書籍の執筆,翻訳を多数手がけている人物。「日独最終戦争1948」「空中軍艦大和1944」という架空戦記小説シリーズの著者でもある(共著作もあり)。また,「ルーンクエスト」「ダンジョンズ&ドラゴンズ」といった有名TRPGの翻訳も手がけている。

 ジェネラル・サポートの,太平洋戦争全体を再現するターン制ウォーストラテジーシミュレーションゲーム「太平洋戦記」シリーズ。16年の歴史を誇る本シリーズに,第3作「太平洋戦記3 最終決戦」が登場しました。

「太平洋戦記3 最終決戦」公式サイト


 最初にたいへん当たり前なことを言いますが,このゲームが面白いかどうか,買うべきかどうかは人によって異なります。とくに「太平洋戦記3」は,誰でもお手軽に楽しめるゲームでは決してありません。非常に人を選ぶゲームであるといえます。

 「俺は1も2もやったし,どちらも気に入っていた。3はどこが変わっているのかをだいたい聞けば,マニュアルを読む必要もない。最近,柳田邦男とか前間孝則とか読んでるので,航空機と発動機を別に開発するというのは『そうであらねばならぬ』と思う。グラフィックス? おれは家具屋で野菜は買わねえ。大事なのは,この電子の作り出す幻影の戦場にどんな『もしも』を投入するかだ。そしてそれは,すでに考えてある。どこまで行くかと聞かれたら,どこまで行くのか分からないと答えるのが皇軍だ(保田與重郎)。俺は行くぜ」という,ヘビーな太平洋戦記プレイヤーは,当然買うべきです。というか,もう買っていると思います。

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 逆に「大戦機がいっぱい出てきて,どかーんばりばりなやつはないか。できれば2Dで」という,ストラテジー経験自体がライト寄りな人は,この注文を字義どおりに受け取るなら「太平洋戦記3」を買っても問題ないのですが,もう少しライトなゲームを先にプレイするほうが,よりオススメです。

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 問題は両者の間に属する“太平洋戦記1・2をやったことのない人”にとって,このゲームが面白いかどうかです。幸い筆者は両者の間に属し,かつ1と2をやったことがない。従って筆者の有するバイアス(偏り)は,シリーズ未経験なウォーストラテジーファンにとって,本作が面白いかどうかを判断するのに,適した立場にあると考えられます。

 筆者個人の結論から申しますと,面白いか面白くないかと言えば,最終的には面白いと思いました。問題は面白さが分かるまでに時間がかかったことです。
 そしてこの時間は,ちょっとのコツで軽減できるはずです。そこで本稿では,この「コツ」を列挙していきたいと思います。購入したけど挫折した人,購入しようか迷っている人の参考になれば幸いです。


コツ1:マニュアルは読む。できればプリントアウトして読む


 当ゲームには紙のマニュアルが付属して「いません」(PDFのマニュアルが付属している)。本作をプレイするほとんどの人は,それを必要としないだろうということでしょう。
 が,1と2をやっていない少数のプレイヤーにとって,紙のマニュアルは有益です。プリントアウトして通勤通学の友としましょう。PCの前にいないときに行う,事前の夢想や当て推量や計画もシミュレーションゲームの大きな楽しみの一つです。兵器図鑑をプリントアウトするかどうかはお好みで。充実した付録マップ群のうち,1枚以上をプリントアウトしておくことも有益です。

充実したマニュアルと兵器図鑑
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コツ2:計画は立案する。そしてメモる


 フルスクリーン仕様でなくウィンドウ仕様のゲームの良いところは,ゲーム中に別ウィンドウを開けることです。もしもあなたのPCの画面横幅が1024ドットを超えているなら,積極的にテキストエディタを立ち上げ,計画立案と実行状況のメモを残しましょう。

最も基本的なマップ。この戦場の広大さを見よ
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 あとで計画と実際の食い違いを振り返ると,感興ひとしおです。さらに言えば計画,とくに輸送計画は記録しておかないと高確率で忘れます。
 なお,このとき付録マップのうち適切なものを1枚以上プリントアウト,コピーして脇に置いておくべきです。地図に書き込みをする際にはウィンドウ上でカーソルを動かすよりも,紙と赤ペンのほうがずっと速いからです。

 もちろん画面下で音楽ソフトを立ち上げて,当時の軍歌や流行歌を流すのも有益です。


コツ3:シナリオは選ぶ


 このゲームには複数のシナリオが収録されており,一部のシナリオは入門編と銘打たれて日本軍の物資が潤沢な仮想設定になっています。このうち,どれを選ぶかが重要です。

選択すべき多くのシナリオ
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 まず,最初から「大東亜戦争」キャンペーン(※1)や「大東亜戦争(入門編)」キャンペーンを「やらないこと」。理由は複数あります。
 まず“長い”。
 次に“開戦劈頭の戦略奇襲ルールが存在する”。これはつまり「最初から特殊ルールが入る」わけで,覚えることが一つ多くなるわけです。
 最後に,“やらねばならぬことが多すぎる”。大東亜戦争=アジア・太平洋戦争の戦場はアジアと太平洋です。日本軍は開戦早々から太平洋上の米軍,東南アジアの英軍,中国大陸の中国軍のうち最低でも1つ,恐らくは2つに対して攻撃を行う必要があります。そして東南アジアでの戦闘は上陸作戦,つまり陸海軍の共同作戦を伴います。これは不慣れなプレイヤーの思考容量を容易に凌駕します。

(※1)キャンペーン……本来は英語で「戦役」「相互に関連した一連の戦い」ほどの意。ここでは長期にわたるシナリオを指している。


コツ4:海戦は捨てる。あるいは,陸戦は捨てる


 太平洋戦争全体を扱うこのゲームにおいて,プレイヤーは「複数戦線を視野に入れた思考」を要求されます。というと聞こえがいいですが,初心者プレイヤーにとって,この問題はしばしば“きわめて低いレベル”で生起するのです。

 例えば「ガダルカナル攻防戦」シナリオ。夜間,戦艦隊を海峡へ突入させ所期の戦果をあげて「よし」と思う。すると国府(中国国民政府)軍や英軍が攻勢を掛けてきたことが分かり,プレイヤーの思考は一瞬オーバーフローする。ちょっと待て,ガダルカナルと寧夏,両方の事態に対処しなければならん俺は誰なんだ。ミスター大本営か。

陸戦:落伍が生じるたびにイヤな気持ちに
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 まじめな話をすると,このゲームにおけるプレイヤーの立場というのは,おそらく特定個人では“ない”のです。史実において必ずしも統一と一貫のなかった戦争指導に,統一され一貫した意思を持ち込もう,そしてその意志があなたです。というのが,このゲームの最も大きな「もしも」なのです。たぶん。

海戦:長年かけて作った船が一瞬で
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 で,まあ話を戻して。

 このような状況が生起することを最も効果的に(というか力づくで)防ぐ方法が,一つあります。「帝国国防方針」キャンペーン(1939年〜1947年)序盤をプレイすることです。

 このシナリオ開始段階において,日本帝国は中国と“しか”戦争をしていない。そして国府軍に海軍兵力はない。従ってプレイヤーはポイント・トゥ・ポイント方式(※2) の陸戦だけに集中できます。一度このゲームを「1939〜41年の日中戦争ゲーム」と割り切ってプレイしてみるのも有益でしょう。そして(きわめて多くのゲームでそうであるように)このゲームにおいて国府軍を攻略することは史実に比すれば容易であり,その点でも入門に適します。

(※2)ポイント・トゥ・ポイント方式……部隊の存在できる地点と地点の間を線でつなぐ方式。事実上地図を複数のエリアに分割する「エリア方式」と同じなのだが,エリアとエリアがつながっているかどうかを間違えにくく,また「重要拠点の取りあい」という雰囲気を出すことができる。

空戦:機能的なグラフィック
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 なに,「待て。俺はまず海戦がやりたい。だいたいこのゲームの箱絵は徐州の麦畑を進む皇軍将兵じゃなくて軍艦だ」と?
 ごもっともです。その場合は大東亜戦争開戦後の,比較的期間の短いシナリオを選択し,ルール的な勝敗は度外視して自分なりの勝利条件(敵正規空母・戦艦に味方正規空母・戦艦よりも大きな被害を与えるとか)を設定したうえで,“陸戦を完全に捨てて”プレイするのが良いでしょう。例としては……,

・「第1段階作戦(入門編)」を戦略奇襲なしで攻勢主軸を対米戦に絞ってプレイする

・「マリアナ防衛戦(架空戦)」(日本軍が定数どおりの航空部隊を有する,作戦計画書が米軍の手に渡っていない等の状況下でのマリアナ防衛戦)で海空の防衛戦を行う

・「ライジングサン」(八八艦隊ものといえばお分かりいただけるでしょうか。戦艦隊vs.戦艦隊の激突を描く架空戦ものです)でシナリオ冒頭の示唆どおりに艦隊決戦をプレイする

などがオススメです。「架空度の低いほうがいい」という方には「第2段階作戦」(要するにミッドウェー前後)や「ガダルカナル攻防戦」も良いでしょう。戦争後半の3本のシナリオは,最初のプレイには原則としておすすめできません。
 あとは2,3回索敵で失敗すれば,もう大丈夫でしょう。

艦砲射撃:冗談ではない敵戦力
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コツ5:貿易と開発は捨てる


 「ハーツ オブ アイアンII」などにも言えることですが,本格開戦までに時間があるゲームの場合,貿易や兵器開発によって“本格開戦までに勝てる体勢を作れるかどうか”が最も大事なところであり,楽しいところでもあります。本作の「帝国国防体制」キャンペーンでは,とくにこれが重要です。

 しかしボーキサイトや油の売り買いを始めるのは“一度まずは短めのシナリオをやって,何がどれだけ足りなくなるかの見当をつけてから”でも遅くはありません。
 一方の「開発」は,この手のゲームで最も夢広がる箇所……ではあるのですが,短期のシナリオでは開発した新兵器を充分な数だけ配備している時間はありません。完全に捨てるか,あくまでも開発システムを理解するためと割り切って使うとよいでしょう。

開発:これらのなに一つとして間に合いはすまい
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 余談ながら,このゲームにおいて兵器の性能は原則として「実戦における性能」に基づいて緻密に評価されています。従って明確に優秀な兵器とそうでない兵器は,厳然として存在します。
 もちろん,開発に「兵器の性能にランダム性を加える(つまり当初の予想以上に使える兵器や,当初の予想以上に使えない兵器が出てくる可能性がある)」「兵器の性能を抽象化する」といった要素を加える方向性のゲームデザインは,それはそれでアリだろうと筆者は思います。思いますが,それは太平洋戦記3の方向性ではない。従って開発ラインは「優秀な兵器か,ひいきの兵器」のみに絞るのが良いです。

烈風:日本機マニアの見果てぬ夢
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 なお「帝国国防体制」を対中戦に限ってプレイする場合……
 (1)開発は一切ナシでも割といけます。
 (2)もしまじめに開発を行うならば,容易に予想できると思いますが,陸軍兵器に限って開発することが効率的にも労力的にも最適です。現実世界の米内海相がそんな予算案を見たら,即刻職を辞して「次の海相は出すな」と言うだろうと思いますが。

大和:一部の艦には架空のバリアントも
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コツ6:民政は捨てるが兵站は捨てない


 すごい字面ですね。この節にはすごい字面がいろいろ出てきますが,すべて“あくまでゲームだけの話である”こととしてご了解ください。

騎兵:実は案外役に立つ
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 「太平洋戦記3」において親日傀儡政権の樹立や占領地行政は,長期的に見れば重要です。占領地に限らず,ゲームに登場する根拠地にはそれぞれ「治安度」と「民度」があり,これらの数字を一定以上に保つことは重要です。「治安度」が低いと,まずいイベントが起きやすい。一方,「民度」というのは労働意欲のことで,鉱工業生産力に直結します(親日とか民度とか今日あまりに軽々しく使われている表現が,別の意味で軽々しく使われるのには独特の感慨深さがあります)。

民生:根拠地ごとに治安度と民度が
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 しかし短期シナリオでは,この2つは無視してよいです(「帝国国防体制」を対中戦に限ってプレイする場合は治安度のほうを重視するとよいでしょう)。

 一方,「兵站」は短期シナリオにおいても決して無視できません。国家備蓄の兵力や物資の前線配備は,とくに海上作戦において,死活的に重要です。これも2,3回ほど失敗して身体に叩き込んでおきましょう。

洋上補給:兵站は常に重要
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コツ7:アップデートは必ずかける


 このコツは順番こそ最後ですが,重要度は最低ではありません。「太平洋戦記3」はこまめに重要なアップデートがなされており,しかもアップデートの内容には操作性の向上につながるものが複数含まれています。最初のプレイの前に必ずバージョンをチェックし,アップデートをかけましょう

 しかるのち,「太平洋戦記3」をどうぞお楽しみください。

潜水艦:夢ひろがる特殊任務
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「太平洋戦記3 最終決戦」公式サイト

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    太平洋戦記3 最終決戦

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