インタビュー
二丁拳銃・ウメハラ・賞金制全国大会――トピックス満載の話題作「ガンスリンガー ストラトス」はいかにして生まれたのか。誕生秘話をキーマンの2人に聞いた
稼働後の反響と,コミュニティのこれから
4Gamer:
さて,本作が稼働して2週間が経っていますが※,実際のプレイヤーの反響はいかがでしょうか。
※インタビューの収録は2012年7月25日。
門井氏:
良いですね。都市部に比べたら地方がまだ弱いというのはありますが,コミュニティの輪が広がっていくのは,まさにこれからだと思っています。
4Gamer:
プレイヤーのボリュームゾーンは,どんな層なんですか?
門井氏:
18〜22歳という,比較的若い層に向けて作ったつもりのタイトルですが,実際そのとおりになっていると感じます。既存タイトルの続編では,なかなかこうは行きません。
4Gamer:
オリジナルにチャレンジした甲斐があったということですね。
門井氏:
ええ。スクウェア・エニックスのゲームは,アーケードにせよコンシューマにせよ,どちらもファンの年齢層が若干上がってきているんです。その中で,若いファン層を掴めたのは,非常にありがたいことだと思っています。
尾畑氏:
実際,ゲームセンターを覗いてみると,若い人ばっかりなんですよ。
門井氏:
若年層というのは,爆発的にファンが増える可能性を秘めているんです。そうなるためにも,徐々にコミュニティの輪を広げるような展開を,我々としても打っていかなければならない。
4Gamer:
メーカー主導でコミュニティを育てていく,と。
尾畑氏:
そうですね。とくに地方はゲームセンターの数も少ないですし,その中で4人のチームを組んでもらうには,どうしても時間がかかってしまいます。その分,運営側が工夫しないといけません。大ヒットしたバンダイナムコゲームスさんの「機動戦士ガンダム 戦場の絆」も,その面ではかなり工夫されたと聞いたことがあります。
門井氏:
その点は,スクウェア・エニックスはLoVでの実績がありますから,安心していただければと。オペレーターさんからの評価も高くて「スクエニさんならなんとかしてくれる」と信頼をいただいているのは,非常にありがたく思っています。
4Gamer:
年齢層もですが,ほかのゲームタイトルとの親和性はどうなんでしょうか。
門井氏:
格闘ゲームプレイヤーもですが,「ガンダムVS.」シリーズのプレイヤーや,LoVや三国志大戦などのカードゲーム好きのプレイヤーが,けっこう遊んでくれてるみたいです。
4Gamer:
ああ,「ガンダムVS.」シリーズのプレイヤーは,本作でも活躍が期待できそうですね。
尾畑氏:
さっきも言ったとおり,ほかのゲームのテクニックがそのまま使えるわけではないので,一概にはいえませんが,彼らは「複数人対戦における勝負勘」みたいなものを養えていると思います。「いのちをだいじに」じゃないですけど,「ここで無理をしたら,仲間に迷惑がかかる」といった判断が素速いですね。
門井氏:
ガンダムVS.勢の若い子達って,若いだけあって資金力は乏しいですけど,その分ものすごく研究するんですよ。仲間内でずっと作戦会議をしていて,1プレイの重みが全然違う印象です。あと,彼らは声を掛け合うのに抵抗がないので,チームワークもすごく良いです。
4Gamer:
プレイ中に声を掛け合うというのは,マルチプレイでは非常に重要ですね。
門井氏:
プロゲーマー勢も,ウメハラ君以外はよく喋ります。
4Gamer:
逆にウメハラさんが声を張り上げているところは,確かに想像できないかもしれない(笑)。
尾畑氏:
彼はゴルゴ13のようなオーラがありますからね(笑)。
4Gamer:
確かに(笑)。もう一つ,これはぜひ聞いておきたかったのですが,プレイ時間と料金設定のバランスについては,どうお考えでしょうか。自分の周りからは,「プレイ時間が若干短いのではないか」という声も聞こえてくるのですが。
門井氏:
うーん。むしろ,どうすべきだと思います?
4Gamer:
素人考えですが,勢力ごとの総コストを上げて,試合時間を長くするというのはどうでしょうか。
門井氏:
実は,プレイヤーからも,「1コイン3戦設定にしてほしい」とか,「1試合の時間を長くしてほしい」といった要望は,すでに上がってきていて,我々としても検討しているところです。
4Gamer:
その辺りは,プレイスタイルによっても差が出てくるでしょうね。固定メンバーの4人でプレイする場合は良くても,1人で入ってマッチングされた初対面のチームでプレイするとなると,息の合った連係がやはり難しいですし。すぐに負けてしまうことになりかねない。そうするとプレイ時間がすごく短くなってしまって,それが不満につながるのだと思います。
門井氏:
ある意味,嬉しい悩みではあるんですけどね。これって「長く遊びたいんだけど,お金がないからできない」,という話じゃないですか。
尾畑氏:
逆よりは全然いいですよね。「安いけどやりたくねえ」みたいな(笑)。
門井氏:
我々としても,適正なプレイ時間や価格のラインというのは,今後も見直しを図りつつ,見定めていきたいと思っています。本作が今後大きく盛り上がるためには,避けては通れないポイントです。
尾畑氏:
一方で,本作がアーケードゲームである以上,プレイの回転率というのは,どうしても考えなければならない問題です。仮に試合時間を半分にして,その分,2クレジット分遊べるようにしたとしても,ロードやリザルト表示の時間を考えると,実際の総プレイ時間は同じになりません。なんとかオペレーターさんの負担を増やさずに,プレイヤーの満足度を向上できないかと考え出すと,今も夜眠れないほどです。
門井氏:
オペレーターさんからは,「この回転率は凄くありがたいけど,もうちょっと長く遊べるようにしてもいいんじゃない?」なんて言われたりもするんですけど。
4Gamer:
プレイヤーの年齢層が低めなので,オペレーターさんもその辺りに気を使っているのかもしれませんね。
門井氏:
それもありますし,普段ゲームセンターに来ないような人がお店に来てくれているということで,そういうお客さんを大事にしたいと考えているようです。
尾畑氏:
僕らとしても,出して終わりというつもりは毛頭ないので,プレイ時間の問題を含めて,色々と展開を広げていきたいですね。
4Gamer:
分かりました。ではその今後の展開についてもお聞きしたいんですが……現時点でお話しいただけることはあるでしょうか。
門井氏:
実は現時点で言えることは,もうかなり言ってしまってたり(笑)。
4Gamer:
個人的には,Co-op(協力プレイ)モードが充実したりするとと,いいんじゃないかと思うんですが。せっかくニトロプラスの虚淵 玄さんが世界設定を担当していることですし,Co-opモードでストーリー的な広がりが見られたらいいなあ,なんて。
門井氏:
ストーリーモードなどを入れる案も最初はあったんですよ。でもやっぱり対戦がメインのタイトルですし,そこを作り込む時間があるなら,その分1体でも使えるキャラが増えた方が良いですよね?
4Gamer:
確かに。やっぱりアーケードゲームで,ストーリーをしっかり語るのは,難しいですか。
門井氏:
中途半端にストーリーを入れても,逆に分かりづらいですからね。ただ,ストーリーが
欲しいという声は,僕等の方にも伝わっていますし,そこにはやっぱり葛藤があります。だからそういった部分は,グッズなんかの「ゲーム外での展開」で見せるしかないかな,と思っているんですが……。
尾畑氏:
オリジナル作品だからこそ,やるからには中途半端にはしたくないですし。
門井氏:
実はおもてには出てきていませんが,資料としては虚淵さんが作った膨大な量のテキストがあるんですよ。年表だけで原稿用紙30〜40枚くらいの量で,もう見ただけでげんなりすると思います(笑)。
尾畑氏:
いやあ,あれを使って「Co-opモードを作れ」って言われたら,気が遠くなります(笑)。
門井氏:
軽く300ミッションくらい作れるんじゃないですかねえ。
4Gamer:
おおお,それはぜひプレイしてみたいです!
門井氏:
ありがたいお言葉ですが,今はまだゲームとしての面白さを追求していくターンだと思っています。「もう何も問題ないぞ」という段階に入ったら,ストーリーや世界観なども補完したい……でもその頃には,きっと新キャラを追加しようって話になってるんだろうなあ。
4Gamer:
キャラクターといえば,本作はキャラクターデザインにも島崎麻里氏やワダアルコ氏,コヤマシゲト氏といった豪華なメンバーが揃っていますよね。しかし皆さんアニメ調のキャラクターデザインなのに,ゲーム内では割とリアル寄りのモデリングが採用されているのが,少し不思議だったんです。これは何か理由があるんでしょうか?
尾畑氏:
ああ,それは背景グラフィックスとの兼ね合いが大きいです。本作は実在の都市がステージとして登場していますよね。そしてそれらのほとんどが,破壊可能なオブジェクトです。
4Gamer:
見知ったビルなんかを砲撃でなぎ倒せるのは,ちょっと気持ちいいですよね。
尾畑氏:
そう。あの気持ちよさって,ステージがリアルに描写されているからなんですが,そのリアルな背景の中に,アニメ調のトゥーンレンダリングキャラを立たせると,ちょっと違和感を感じてしまうんですよ。だからそれに合わせて,若干リアル寄りのモデリングになってます。
門井氏:
もっとフォトリアリスティックな方向も考えはしましたが,日本人にとっては,このくらいのほうがまだ感情移入しやすいと思うんです。その辺りも含めて,見た目に派手なゲームになったと思います。
4Gamer:
なるほど。リアルな背景だからこそ,壊すときに気持ちよさが出るわけですね。では最後に,ガンスリンガー ストラトスファンの読者に向けて,メッセージをいただければと。
尾畑氏:
はい。これまでは少しでも多くのプレイヤーに喜んでもらうべく,開発に専念してきましたが,ようやく皆さんの前にお届けすることができました。まさに今この瞬間が,「ガンスリンガー ストラトス,はじめました」という気分です(笑)。
これからは運営に力を注いで,スクウェア・エニックスさんと共に盛り上げて,プレイヤーとオペレーターの双方が笑顔になるタイトルに育てていきます。どうかご期待ください。
門井氏:
僕は結構な頻度で池袋のアドアーズサンシャイン店に顔を出すんですが,いつも30人ぐらいのプレイヤーが遊んでくれていて,すごくありがたく思っています。それだけでも,このゲームを作って良かったと思えるほどに。
人と直接触れ合う機会が減った今,リアルなコミュニティを育てていけるアミューズメント施設は,すごく貴重な場じゃないですか。だからもし1人でプレイを躊躇してる人がいたら,ぜひもう一歩,足を踏み出してほしいですね。
4Gamer:
そこで新しい友達が作れるということですね。
門井氏:
ええ。きっと皆,暖かく迎え入れてくれるはずですし,僕等もそんなコミュニティ作りを,全力で応援していくつもりです。
あとは,「GUNSLINGER’S BATTLE ARENA」でプレイヤーの皆さんと会えるのを楽しみにしていますので,ぜひ参加してください。参加するだけで楽しめるものにしますので。詳しいことはまだ言えませんが,巨大なオフ会だと思っていただければ。開催もそう遠くないハズ(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。ガンスリガー ストラトスの今後の展開にも注目させていただきます。本日はありがとうございました。
一見するとバラバラに思えるそれらの仕掛けは,すべて門井,尾畑の両氏が掲げる本作のコンセプト――「今までにないアーケードゲーム」「原作のないオリジナルタイトル」「対戦ゲームの歴史をリセットする」「答えが出にくいゲーム」――に通じている。ガンスリンガー ストラトスは,そんな1本芯の通ったタイトルであるということを,強く認識させられるインタビューだった。
また本作は,”メーカー主導によるコミュニティ形成の誘導”という面から見ても,今後の試金石の一つになりえるのではないか。ゲームの消費スピードがどんどん速まっている昨今,コミュニティを根付かせる=固定ファンを作り出すことは,どのメーカーにおいても急務であるはずだ。
果たして賞金制全国大会という施策が,そこにどれほど寄与するのか,筆者個人としても見守っていきたいタイトルだ。その結果いかんによっては,アーケードゲームや対戦ゲームにおけるプロモーションの方向性が,ガラリと変わる可能性も秘めているような気がするのだ。
続編ものではない,完全新規タイトルでアーケードシーンを盛り上げんとする,ガンスリンガー ストラトス。今後の展開にも,ぜひ期待しよう。
■■ハメコ。(ライター)■■
1981生まれ。ゲーム攻略ライター。「鉄拳」シリーズや「バーチャファイター5 FINAL SHOWDOWN」,「スーパーストリートファイターIV アーケードエディション」などの対戦格闘ゲームから,「Halo」シリーズや「COD」シリーズなどのFPS,果ては「電脳戦機バーチャロン フォース」など,多ジャンルに渡って攻略記事や攻略本を執筆。また,「鉄拳」シリーズでの大会解説から,「ソウルキャリバーV」のイベントである「STRIKE.1」では「SC DREAM Team vs.Team 他ゲー連合 10on10」の企画を務めるなど,イベントシーンでもたまに活動中。好きなプリキュアはキュアマリン。
――2012年7月25日収録
- 関連タイトル:
ガンスリンガー ストラトス
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