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[GDC 2016]「The Last of Us」の心に残る楽曲は,作曲家とサウンドデザイナーの信頼関係から生まれた。ギターの旋律を聞きながらのセッションをレポート
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印刷2016/03/19 00:00

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[GDC 2016]「The Last of Us」の心に残る楽曲は,作曲家とサウンドデザイナーの信頼関係から生まれた。ギターの旋律を聞きながらのセッションをレポート

SCEAのミュージックマネージャー,ジョナサン・メイヤー氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [GDC 2016]「The Last of Us」の心に残る楽曲は,作曲家とサウンドデザイナーの信頼関係から生まれた。ギターの旋律を聞きながらのセッションをレポート
 Sony Computer Entertainment America(SCEA)のミュージックマネージャーとして,10年以上にわたってファーストパーティタイトルの開発に深く関わってきたジョナサン・メイヤー(Jonathan Mayer)氏。GDC 2016では,氏が「The Last of Us」のサウンドデザインを中心に解説するセッション「Music Design of The Last of Us and More」(The Last of Usなどの作品から学ぶミュージックデザイン)が行われた。

 2013年に発売され,200以上ものゲーム賞を受賞するなど,今も我々の心に深く刻まれている「The Last of Us」。ストーリーやグラフィックス,ゲームデザインについて申し分ない出来であることは多くの人が認めるところだと思うが,そうしたゲームの雰囲気を最大限に活かしきる“目に見えない”立役者が,BGMであるのは間違いない。

「The Last of Us Remastered」公式サイト


 「The Last of Us」のメインコンポーザーとして選ばれたのが,映画「ブロークバック・マウンテン」(2005年)と「バベル」(2006年)で,2年連続でアカデミー作曲賞を受賞しているアルゼンチン人作曲家のグスターボ・サンタオラヤ氏である。10歳から独学で音楽を学び続けてきたという経歴の持ち主だが,それまでにゲーム音楽を作曲したことはなかったそうだ。

 メイヤー氏によると,SCEAのファーストパーティタイトルでは,サウンドスタイルを4つの“トーン”にグループ分けすることで,ゲームの雰囲気を壊さずにゲームデザインと融合させるという。メイヤー氏自身が深く関わったというSucker Punch Productionsの「inFamous 2」では,ゲームの舞台となるシアトルを中心に広まった“グランジ”と呼ばれるロック音楽のアレンジをメインに,「自由と抑圧」「兄弟と家族」「新たなるパワー」,そして「責任感の重さ」という4つのトーンにグループ分けするという手法が採られていた。

 この手法は「The Last of Us」にも引き継がれ,「ジョエルとエリーの人間関係」「世界の美しさと懐かしさ」「残忍さ」,そして「ホラー」という4つのグループに分けられた。“残忍さ”と“ホラー”が2つの異なるカテゴリーになっているのが興味深いが,目に見える形での暴力と,得体の知れない敵が迫る恐怖を明確に分けて規定しているのは,ゲームデザインや世界設定に起因するものであろう。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [GDC 2016]「The Last of Us」の心に残る楽曲は,作曲家とサウンドデザイナーの信頼関係から生まれた。ギターの旋律を聞きながらのセッションをレポート

 サンタオラヤ氏は,Naughty Dogのスタジオでゲームの詳しい説明を受けたり,プロトタイプとなるゲームや映像を見たりしたのち,自宅に戻って作曲を開始。そして,メイヤー氏らのもとに送られてきたのが,ソロのギターで奏でられた,シンプルでノスタルジックな音楽だったという。
 メイヤー氏はこれを「種が植え付けられた」と表現していたが,そのサウンドからゲーム世界のイメージがさらにふくらみ,「The Last of Us」が持つ寂しさが充満しているような世界観が完成していった。「一般的には,最初のデモから音楽もずいぶんと変わっていくが,The Last of Usでは基礎がほぼできた状態からスタートした」とメイヤー氏は追想する。


 Naughty Dogのサウンドデザイナーが歴戦のプロ集団であることは言うまでもないが,サンタオラヤ氏もまた,妥協を許さないプロのアーティストである。それが相乗効果を生み,ゲームが出来上がるにつれて,サンタオラヤ氏自らが率先して曲を聞き直し,細かい修正を加えていくことを怠らなかったらしい。その職人気質は,プロモーションビデオのBGMにもおよび,自分で手を加えて修正していたというから凄い。そうしたイタレーション(何度もやり取りしながら良いものを作るという意味のIT業界用語)を繰り返した結果が,「The Last of Us」の,あの記憶にしっかりと刻み付けられる旋律だったのだ。


 メイヤー氏はセッションでサウンドクリップを流しては,ときおり感情が高ぶって言葉を詰まらせるような素振りを見せるほど,その制作過程に深い思い入れを見せていた。そんな彼らの偉業を思い起こしながらもう1度ゲームを遊び直してみると,我々ゲーマーにもまた異なる感情が起こるかもしれない。ゲームをただ普通に遊ぶだけでなく,しっかりと“聴く”べきだと再認識させられたセッションだった。

これだけの楽器を集められるゲーム開発スタジオもそうないだろうが,それでもサウンドデザイナー達はパイプに息を吹きかけて独特の音を作り出し,サンタオラヤ氏の作曲にアレンジを加えることも怠らなかった。「双方のコラボがなければ完成しないプロジェクトだった」とはメイヤー氏
画像集 No.003のサムネイル画像 / [GDC 2016]「The Last of Us」の心に残る楽曲は,作曲家とサウンドデザイナーの信頼関係から生まれた。ギターの旋律を聞きながらのセッションをレポート
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