プレイレポート
3月15日発売の「迷宮塔路レガシスタ」はかわいいだけじゃない? 魅力は意外にも重厚な物語とシビアなバランス,そして“おえかき”だ
まったく疑いもなしに女性がパフェを,男性がコーヒーを頼んだと思っていたので,思わずその光景に見入ってしまった。なるほど人間というのは,気づかないうちに物事を自分の見たことのある型にはめて考えるものだと再認識したものだが,こういう教訓を与えてくれるのは何も現実世界に限ったことではない。
「迷宮塔路レガシスタ」公式サイト
日本一ソフトウェアより3月15日に発売されるPlayStation 3用サバイバルアクションRPG「迷宮塔路レガシスタ」をパッと見た印象は,「あら,かわいくて簡単そうね。楽勝だわ」くらいなものであったが,実際にプレイしてから考えてみると,かわいいから簡単という印象もまた,はめる型に合っていなかったようだ。
2Dで描かれるチビキャラのかわいさが印象に強い作品だが,実際にはどのような作品なのか。今回は発売前に少しだけ触れることができたので,その感想を交えつつ紹介していこう。
かわいい見た目とは裏腹に,描かれるのは重厚な物語
迷宮塔路レガシスタの舞台は,科学が過去の遺物となったファンタジー世界だ。旧時代の科学は人々に魔法や呪いと呼ばれて恐れられており,その事実を見る限り,この世界には科学を越える技術は生まれていないようである。冒険の主軸となる“ツタの塔”からも,発展しすぎた科学によって人類は衰退しちゃった,という雰囲気が漂っている。
主人公は,“呪い”によって石となった妹を元の姿に戻すために旅を続けるアルト・ストレイター。彼は「求める力がある」という情報を頼りにツタの塔へと辿り着いた若き探検家である。
ツタの塔の根元に広がる“レイルヤード”には,線路や廃車両,街灯など,なんとなく見たことのあるような文明の名残が見られる。アルトはこの場所でツタの塔の管理人“ダンジョンさん”と出会い,以降はここを拠点に塔を攻略していく。
ダンジョンさんと出会ったあとはしばしチュートリアルとなり,実戦を交えてツタの塔の攻略の基礎をたたき込まれることになる。
アルトとメリーゼの出会いから始まる迷宮塔路レガシスタの物語は,画面写真から受けるかわいらしい印象とは裏腹に,重厚だ。はっきり言ってそのギャップにはちょっと驚かされる。道中で出てくるトレジャーハンター・レイナを演じた根谷美智子さんの「見方によって、同じ事でも違うように見えるってとこを楽しんじゃって下さい」というコメントは実に的を射ている。
まぁ,初対面のメリーゼにいきなり「ピー……,ガガー,オマエー,コロスー」(うろ覚え)とか言われたときには,違う意味で度肝を抜かれてコントローラを床に落としたが,それはそれ。
主にストーリーが語られるアドベンチャー風の会話シーンでは,こまやかなアニメーションによって感情豊かに動くキャラクターの立ち絵に目が行きがちだが,ところどころに科学の名残を感じられる背景イラストも見どころだ。画面の端に描かれているちょっとしたものに目を向けることで,この世界の時代感がじわじわと見えてくるだろう。
まったくの余談だが,実はこの世界,科学は衰退しているものの,なぜかモヤシだけは異様に進化を遂げていて,見た目も食感も肉そっくりのモヤシ(味はモヤシ)とか,まったく別の野菜っぽく見えるモヤシ(でもやっぱりモヤシ)といった食用に加え,しゃべるモヤシまで存在する。
しかも,そんなモヤシが冒険のサポートをしてくれるし,ダンジョン内では回復アイテムとしても大活躍。「なんと財布に優しい世界なのか」と感動するけれども,モヤシの地位向上はどうやらダンジョンさんの仕業らしく,ツタの塔の内部に限った話のようである。ちょっと残念。
多彩なシステムはまず肝を押さえて広げていく
迷宮塔路レガシスタの戦闘は2Dのリアルタイムアクション。威力や射程,攻撃速度などの異なる武器から自分の好みのものを選び,ぶんぶん振り回して戦っていく。戦闘画面のインタフェースは後述する「エナジーフレーム」を中心としたシンプルなもので,初めて触れた際にも,小難しさを感じることはない。
アルトは初期状態で剣か弓を,メリーゼは剣か槍を装備できる。剣は振りの速さもダメージもそこそこというオーソドックスな近接武器で,弓は直線上に攻撃する遠距離武器。そして槍は剣よりも射程が長く連続でダメージが入るが,振るのが遅いという中距離武器。個人的には槍が好きだ。
また戦闘時,アイテムや特技の切り替えにメニュー画面を開く必要がないのは非常に嬉しい。特技はL2ボタンで選択してL1ボタンで発動。アイテムはR2ボタンで選択してR1ボタンで使用といった具合で,たとえば移動しながらリアルタイムに使用することもできる。ちなみに,消費アイテムはダンジョン外から持ち込めず,持ち帰ることもできないため,現地調達となる。
パーティメンバーは最大3人。戦闘は1人ずつで行うが,右スティックを上下どちらかに倒せばいつでも操作キャラクターをチェンジできる |
キャラクターは個性豊か。たとえばドラゴンの血を引くミミリーは最初から炎のブレスを吐けるという特性を持っている。古代兵器のメリーゼは毒を受けないず,一定時間ごとに体力が回復するという特性をもつが,その代わりにアイテムでの回復ができない |
戦闘は理解しやすい一方で,成長や装備品に関連するシステムはかなり複雑だ。1つ1つ見ていくと正直,もう勘弁して! と言いたくなる人もいそうだが,実は肝となるシステムを1つか2つしっかりと押さえておけば,ゲームの内容が把握しやすくなるうえに,プレイの際にも役立つ。
確実に覚えておきたいのはエナジーフレームの扱い方について。
エナジーフレームは,キャラクターの生命力,武器の耐久度,技の攻撃力のほか,ステータスの上昇効果といった各種パラメータをまるっと1つの「フレーム」に詰め込んだものだ。職業ごとに異なるエナジーフレームが用意されていて,さらに新たなもの習得したり,フレームそのものが成長したりする。システムが複雑なので,画像と一緒に説明していこう。
ツタの塔で手に入る装備品は,たとえ同じものであっても,それぞれ異なる能力と消費マナが付与されている。能力が高く,消費マナの少ない装備を探すことが重要なのはもちろんだが,キャラクターのエナジーフレームに合った装備を見つけられるかも大切だ。
次にツタの塔のあらゆるところに仕掛けられている罠についても紹介しておこう。爆発したり,矢が飛んできたり,モンスターが現れたりと罠によって現れる効果はさまざま。中には回復するものもあるので,必ずしも危険というわけではないが,ほとんどは避けるべき障害物である。
序盤は罠も少なく,敵も大したことはないので,ダッシュやジャンプを使ってテンポ良く進んでいけるのだが,ゲームが進むにつれてエグくなる。鼻歌まじりにるんるん気分でジャンプをして罠を避けたと思ったら,避けた先に“周りの罠を誘発させる罠”が置いてあって大ダメージをくらうとか,地雷原を慎重に進もうと思ってじりじり移動していたら,後ろから突っ込んできたモンスターに背中を押されて大爆発するとか,どうにも一筋縄ではいかない。
また,敵が手強くなってくると考えなしに戦闘していてはMPや装備がもたず,ジリ貧になることが多い。終盤になればダンジョン内のギミックも複雑になって滞在時間が長くなり,それだけ敵と遭遇する回数も増えるので,HPやMPの残量にも注意を払わなければならなくなる。終盤にいくにつれて,罠そのものの威力も,罠がパーティに与える危険も増加していくのである。
罠だらけの中,敵を無視して先を急ぐのか,それともあらかじめ敵を倒してから安全に罠を回避していくのか……といった選択は,本作の醍醐味だ。
こういった若干シビアなバランスや,ダンジョン内で迫られるリアルタイムでの選択といったあたりは,見た目のかわいらしさから受ける印象とは異なる点と言えるだろう。
ともあれ,エナジーフレームも罠も,ツタの塔を攻略の基礎となる部分なので,その特徴はなんとなく掴んでおくといい。もちろんゲーム内でも,チュートリアルでモヤシから教わることになるので,実戦を交えながら軽い気持ちで覚えていける。その点はご安心を。
見た目どおりかわいいところもあるよ!
意外と重厚だとか,結構シビアだとか,ここまで何かと脅かしてきているものの,パッと見たかわいらしさをそのまま魅力にしているシステムも存在する。それが「キャラクターエディット」だ。
ゲームがある程度進んでくると,見た目や性格,職業,個性といった項目を細かく設定して,オリジナルキャラクターを作成できるようになる。とくに見た目に関する自由度は高く,ゲーム内でドット絵やイラストを直接描けるだけでなく,PCで専用フォーマットに当てはめたイラストや写真などを,PlayStation 3に取り込んで使えるようになっている。
今回は,4Gamerの連載「Weekly 4Gamer」でkawamuraに好き放題もて遊ばれている悲運の女の子「くぬぎちゃん」を,実際にキャラクターエディットでゲーム内に登場させたみた。
実を言うと,くぬぎちゃんはかなり長い間4Gamerに登場しているのだが,そのキャラクター設定は未だ謎に包まれている,というか決まっていない。産みの親であるくらうでぃへう゛ん氏によれば,「くぬぎちゃんは酒キャラ」とのことなので,今回,武器に酒瓶と魚肉ソーセージを持たせてみた。ただし,メインウェポンは濡れたジーパンだ。
はっきり言って物語とは微塵も関係ないキャラクターエディットだが,やりこみ要素満載の迷宮塔路レガシスタとの相性は良い。レイルヤードからそれこそ無限に挑めるランダムダンジョン「ランジョン」の攻略の際などには,ぜひオリジナルキャラクターを使ってみてほしい。
すでに,「魔界戦記ディスガイア」シリーズの歴代キャラクターや,「英雄伝説 碧の軌跡」「剣と魔法と学園モノ。 Final 〜新入生はお姫様!〜」とのコラボキャラクターが,日本一ソフトウェアより配信されている。
ここで紹介したくぬぎちゃんについても,4Gamerオリジナルキャラクターだが,迷宮塔路レガシスタの中でなら好きに使ってもらって結構である。
ラハール |
フロン |
ティオ |
フェルパー |
やっぱり日本一ソフトウェアらしい
非常に覚えることの多い作品だが,ポイントさえ押さえてしまえばあとのシステムはゲームを楽しむ中でつかんでいける。むしろ,ゲームを進めていく中で新たなシステムに出会い,長い時間をかけて体に覚えさせていくその過程は,1タイトルをずっとやり込める日本一ソフトウェアの作品らしい。
かわいらしいグラフィックスとは裏腹に,重厚な物語とちょっとシビアなゲームバランスを持った迷宮塔路レガシスタは意外性に溢れているが,また,日本一ソフトウェアファンが望んでいる通りの楽しみを与えてくれる作品になっている。
PC上で描いたイラストを「迷宮塔路レガシスタ」で使う手順
1.「おえかきデータ」を規定のフォーマットに描く
ゲーム内で読み込めるのは,規定のフォーマットに沿った1024×1024pxのPNGファイルのみ。描くときは背景を透明に設定しておかないと,ゲームに取り込んだ際に真っ白の背景まで読み込んでしまうので注意。
くぬぎちゃんのおえかきデータは「こちら」からダウンロード
2.「おえかきデータ」をUSBメモリなどを用いてPlayStation 3にコピー
USBメモリ内に「PICTURE」フォルダを作成し,その中に画像を入れておくと,PlayStation 3の画像という覧に表示される。できない場合は,クロスメディアバーから画像の入っているUSBメモリを選択して△ボタンを押し,「すべて表示」を選んで,任意の画像をPlayStation 3にコピーしよう。
3.ゲーム内でキャラクターの素体を作る
ゲーム内のキャンプ画面からエディット−キャラメイクを選択し,「作成」を押して名前や職業,個性といった項目を自由に選んで素体を作ろう。戦闘中のボイスなどもここで決められる。
4.キャラクターの素体におえかきデータを反映する
同じくキャンプ画面からエディット−おえかきを選択し,△のメニューを開いて「おえかきインポート」を選ぼう。PlayStation 3上の画像が表示されるので,「2」で取り込んだ画像を選べばオリジナルキャラクターの完成だ。
なお,「こちら」の記事では「キャラクター作成キット」も配布している。キャラクターの全身を1から作るのはなかなか大変だが,たとえば武器だけ描いて取り込むといった使い方も可能なので,気軽に試してみよう。
「迷宮塔路レガシスタ」公式サイト
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迷宮塔路レガシスタ
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