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[GDC 2015]Imaginationがレイトレ対応GPU「PowerVR Wizard」の特徴や性能を明らかに。PowerVRのVulkan対応も宣言
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印刷2015/03/05 11:53

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[GDC 2015]Imaginationがレイトレ対応GPU「PowerVR Wizard」の特徴や性能を明らかに。PowerVRのVulkan対応も宣言

Bryce Johnstone氏(Senior Manager,Ecosystems,Strategic Marketing,Imagination Technologies)
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 Game Developers Conference 2015(以下,GDC 2015)の2日目に当たる北米時間3月3日は,「Imagination Day」と銘打たれたセッション群が用意されていた。英Imagination Technologies(以下,Imagination)が,同社のモバイル向けGPU IPコア「PowerVR Graphics」(以下,PowerVR)に関するセッションをまとめて実施する枠だ。
 時間的に,そのすべてをお伝えすることはできないので,本稿では3日午前に行われた基調講演「Latest Developments and Future Plans」(最新の開発状況と将来のプランについて)の概要をレポートしよう。講演を担当したのは,マーケティング戦略担当のシニアマネージャーであるBryce Johnstone氏だ。


Rogue世代PowerVRの新情報はとくになし


 最初に,PowerVRシリーズのGPU IPコアラインナップを整理しておこう。現在,Imaginationでは,PowerVR Series6」(以下,Series6)をSoCメーカーに提供中だ(関連記事)。また,2014年11月には,次世代GPU IPコアである「PowerVR Series7」(以下,Series7)も発表しており(関連記事),2015年中には採用製品が登場する予定となっている。

 これらSeries6とSeries7は同じアーキテクチャに基づいているため,Imaginationでは両シリーズをまとめて,開発コードネームである「Rogue」と呼んでいる。基調講演では,そのRogue世代GPUの概要と機能,ソフトウェア面の特徴が説明されており,PowerVRの現状をざっくりと把握するには良い内容となっていた。
 ただ,セッションの案内に書かれていたハードウェアとソフトウェアのロードマップに関する話題はなし。Series7以降の新情報が出るのではと期待していた筆者からすると,いきなり肩すかしを食った感じである。

 それはさておき,Johnstone氏は,Rogue世代GPUのアーキテクチャ概要から説明を始めた。氏によれば,前世代に当たる「PowerVR Series5」とRogueで最も大きく異なる点は,シェーダプロセッサにあたる「Unified Shading Cluster」(以下,USC)がスカラーベースの演算ユニットに変えられたことと,USCを増量することでシェーダの規模を柔軟に変えられるようになったことだという。
 Series6とSeries7の各製品は,このUSCをいくつか搭載した「Unified Shading Cluster Array」(以下,USC Array)で構成されているわけだ。

現行のハイエンドGPU IPコアである「PowerVR Series 6XT」のシェーダ部分を抜き出したブロック図。スカラーベースの演算器が6基(うち2基がFP32)とスペシャルファンクションユニット1基でパイプラインが構成され,そのパイプラインを16基束ねたものがUSCとなる。USCの搭載数を変えることで,柔軟に規模を変更できるのがRogueの特徴だ
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Series6とSeries7の違い。Series7では,FP64対応ALUや,Tessellation Co-Processorといった性能向上策が導入されている
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 同じアーキテクチャとはいえ,Series6とSeries7では,当然ながらいくつもの違いがある。とくに大きな違いは,Series7だと,FP64対応の演算器(以下ALU)をサポートしたことだろう。
 Series6までは,FP16〜FP32対応ALUしか搭載していなかったRogueだが,Series7でFP64対応ALUを追加したことで,HPC分野で使われるGPGPU用途にも対応する能力を備えたといえる。

 もう1つ,ハードウェアベースのテッセレーションユニット「Tessellation Co-Processor」を搭載したことで,Series7がテッセレーションをサポートできるようになったことも押さえておきたい。

 ただし,Series7の全製品がこれらを標準搭載するわけではない。FP64対応ALUとTessellation Co-Processorを標準搭載しているのは,上位モデルに当たる「PowerVR Series7XT」で,下位モデルの「PowerVR Series7XE」では,どちらもオプション機能扱いとされている。

2014年11月に公開された,Series7におけるUSC Arrayのブロック図。左下に追加されたFP64対応ALUがある
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PowerVRの切り札となるか

RTUの概要と性能が明らかに


 基調講演でJohnstone氏が,PowerVRにおける非常に大きな特徴として挙げていたのが,ハードウェアによるレイトレーシングエンジン「Ray Tracing Unit」(以下,RTU)だ。RTUについては,2014年3月に掲載された西川善司氏によるGDC 2014レポート記事に詳しくあるので,細かい説明は割愛し,本稿では要点だけ説明しよう。
 Imaginationは,RTUを開発していたCaustic Graphicsを2010年12月に買収しており,その後,基礎設計から最適化したバージョンのRTUをSeries6と組み合わせた。それが,GPU IPコアの「PowerVR Wizard」である。製品としては「PowerVR GR6500」がリリース済みだ。

PowerVR GR6500のブロック図
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PowerVR WizardのRTUが備える3つの機能
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 さて,ここまではGDC 2014のレポートにもある話だが,今回は,このRTUに組み込まれているという3つの機能「Fixed-function Ray-Box and Ray-Triangle testers」「Coherence-Driven Task-Forming and Scheduling」「Streaming Scene Hierarchy Generator」に関する解説があった。

 順に説明していこう。1つめのFixed-function Ray-Box and Ray-Triangle testersとは,CG空間にレイ(ray,光)を投げて,ボックステストやトライアングルテストを行う固定機能ハードウェアのこと。レイが何かに衝突したかといった計算を固定機能ハードウェアで行うわけだ。これにより,USCで同じ処理を行う場合と比べて,44倍もの高速化が可能になっているという。

ボックステストやトライアングルテストは,USCで行うよりも,RTUでやるほうが44倍速い。なので,44基のUSCを1基のRTUで置き換えられるというスライド
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 2つめのCoherence-Driven Task-Forming and Schedulingとは,コヒーレント光をもとにタスクの生成やスケジューリングを行う機能だ。……と説明しても何のことだかよく分からないと思うが,おおざっぱにいえば,「同じレイなら同時に処理できる」,といった感じだ。これもまたレンダリング時間の短縮につながる機能といえる。

Coherence-Driven Task-Forming and Schedulingの例。物体に写り込んでいる同じ人物の鏡像を同時に処理できるという
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 最後のStreaming Scene Hierarchy Generatorは,シーンを構成するオブジェクトの階層を生成してくれるハードウェア機能である。

 これらの機能を備えたPowerVR GR6500のRTUは,3億レイ/sのスループットを実現できるという。数字だけ見るとすごそうだが,「ただ,『1080pで60fps』という,ゲームを想定したシーンをレイトレーシングだけで描画するには,これでもまだ性能が不足している」(Johnstone氏)。氏によると,フルHD解像度で描画するゲームをレイトレーシングだけで描くには,現在の10倍にあたる30億レイ/sの性能が必要となるそうだ。

何かを描画するのに必要なレイトレーシングの処理性能を比較したグラフ。1080p/60fpsのゲームを想定したのが一番右側のグラフで,これをレイトレーシングだけで描くには,30億レイ/sの性能が必要だという
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 そこでImaginationが提案しているのが,ラスタベースのレンダリングとレイトレーシングを併用したハイブリッドレンダリングである。
 基調講演ではいくつか簡単に実例が挙げられた程度だったが,Imaginationはハイブリッドレンダリングの解説で独立したセッションを用意するなど,レイトレーシングをゲーム開発者に活用してもらおうと非常に力を入れている様子が窺えた。

ハイブリッドレンダリングによるソフトシャドウ(左)や大域照明(グローバルイルミネーション,右)の実装例を示したスライド。ハイブリッドレンダリングは専門のセッションまで用意されている
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新API「Vulkan」にPowerVRが早くも対応


 基調講演の後半ではPowerVRのソフトウェア技術がテーマとなったが,その中でも注目すべきトピックは,Khronos Groupが策定した新世代グラフィックスAPIである「Vulkan」(ヴァルカン)に,PowerVRシリーズが早くも対応するという話題だ(関連する公式Blogのポスト)。

PowerVR用のVulkan対応ドライバは,すでに初期α版が完成。展示会場でデモを披露するそうだ
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 Johnstone氏によると,Imaginationでは,Vulkan対応ドライバソフトウェアの初期α版が完成済み。北米時間3月4日に開かれる展示会場「Expo」では,その技術デモを披露するとのことだ。残念ながら,基調講演でそれ以上の情報が明かされることはなかったが,今後のExpo会場レポートでお伝えできればと思う。

Imaginationの公式Blogで公開されていた,Vulkan対応ドライバによるデモ画像。デモのアセット自体は以前から使われているものを流用している
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 基調講演の概要は以上となる。今後のロードマップといった派手な新情報はなかったものの,PowerVR Wizardによるレイトレーシングエンジンの性能や活用法といった具体的な情報が出てきたことは,注目すべきポイントといえそうだ。また,新世代APIであるVulkanにも着々と取り組んでいることが明かされたことなどからも,Imaginationが先端的な製品開発に積極的な取り組みを見せているのが分かる。
 ImaginationとPowerVRの動きは,今後も要チェックという印象を受けた講演であった。

Imagination Technologies 公式Webサイト

GDC公式Webサイト

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