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3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中
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印刷2020/01/14 17:46

インタビュー

3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中

画像集#002のサムネイル/3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中
 CES 2020の会期中,「3DMark」「PCMark」といった業界標準ベンチマークソフトの開発を手がけるULのベンチマーク部門,UL Benchmarksの開発ディレクターを務めるRyan McCall(ライアン・マコール)氏に単独インタビューを行ったので,その内容をお伝えしたい。


3DMarkでMesh Shader用新Feature Testテストを鋭意開発中


 2019年後半,UL Benchmarksは新しい3Dグラフィックスの要素テスト(Feature Testとして「Variable Rate Shading(VRS) Test」を公開した。2020年,UL Benchmarksはこの3Dグラフィックスベンチマークシリーズにどのようなアップデートをいっていく予定なのかをMcCall氏に聞いてみた。

McCall氏:
 まず,開発を急いでいるのは,新しいDirectX Featureテストです。仮称ですが,「Mesh Shader Test」となる予定で,早ければ今年の9月あたりに正式なアナウンスができるかもしれません。

 Mesh Shaderとは,NVIDIAが,GeForce RTXシリーズで実装した新シェーダステージだ。詳細は筆者のGeForce RTXシリーズ解説記事に譲るが,ここでも簡単に解説しておこう。

 Mesh Shaderは,結論から言ってしまえば,複雑になりすぎてしまった頂点(ジオメトリ)パイプラインを,美しく再構築するものである。最初に,最もベーシックな頂点シェーダがあり,DirectX 10登場時にポリゴン増減を行うジオメトリシェーダが追加され,DirectX 11登場時にはポリゴンを分割して変移させるテッセレーションステージが追加されて,ハルシェーダ,テッセレータ,ドメインシェーダが増設された。

画像集#006のサムネイル/3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中

 その結果,ジオメトリシェーダとテッセレータ,そして頂点シェーダとドメインシェーダが機能的に相似であるなど,頂点パイプラインに冗長性が増大しており,実際,使いにくく,パフォーマンスも出にくいことが指摘されてきた。無計画に増築してきた頂点パイプラインを,一度壊してスマートな形態に新築しようというのがMesh Shaderになる。

 実は,Radeonを擁するAMDは,Mesh Shaderに先駆けて,Vega世代の「Radeon RX Vega」シリーズ投入時に,「Primitive Shader」を発表していた。実装形態は違うがコンセプトはNVIDIAのMesh Shaderとよく似たものであった。

画像集#005のサムネイル/3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中

 しかし,2018年初頭に,AMDはPrimitive Shaderを「事実上のお蔵入り」とする旨のアナウンスを行っている。AMDのPrimitive SHader対NVIDIAのMesh Shaderの対決は後者に軍配が上がった模様で,Microsoftは2019年11月に2020年前半までにリリース予定の新しいDirectXに含まれるDirect3D 12に対し,Mesh ShaderとAmplification Shaderの2つを搭載すると発表したのだ。
 なお,目新しい名前のAmplification Shaderは,NVIDIAではTask Shaderと呼ばれていたもので,Mesh Shaderの実行を司るものに相当する。いうなれば,Mesh Shaderが実際の実行部隊で,Amplification ShaderはMesh Shaderで行う処理内容をプログラムする司令官的なシェーダというイメージだ。これはハルシェーダとテッセレータの関係性によく似ている。
 UL Benchmarksでは,このMesh Shader(+Amplification Shader)に負荷を掛ける要素テストを開発中だというわけである。

 念のためにMcCall氏に,開発中のMesh Shaderテストが,AMDのPrimitive Shaderに対応できるかどうかについて聞いてみたが,回答はシンプルであった。

McCall氏:
 Mesh ShaderのFeature Testを開発中という以上の情報は持ち合わせていません。


Time Spyに代わる新テストモードが開発開始


 さて,現在,UL Benchmarksが提供するゲームライクなベンチマークテストモードで,最も新しく,負荷の高いものは「Time Spy」という名のテストシーンだ。
 これが公開されたのは2016年のことで,「3DMarkシリーズ初のDirectX 12対応のテストモード」としてもてはやされた。これが登場して早4年が経とうとしている今,望まれているのが,よりモダンなゲームグラフィックスを想定したゲームライクなベンチマークテストモードである。
 Time Spyは,当時,最高位のDirectX 12 Feature Level 12_1には対応せず,当時,最も普及していたGPUのDirectX Feature Level 11_0対応レベルに留まっていた。
 あれから4年が経った今,活用するFeature Levelの「底上げ」があってもよさそうなものである。

McCall氏:
 そうした要望を受けて,我々は,Time Spyに変わる新しいゲームライクなベンチマークテストモードの開発に着手しています。これは,早ければ今年末,遅くとも2021年の第一四半期には何らかの情報を出すことができると考えています。
 開発進行中ということもあって詳しく話せませんが,Time Spy後にリリースされたさまざまなFeature Testの要素を取り込んだグラフィックスアーキテクチャになる予定です。たとえば,Variable Rate Shading,Mesh Shaderといった要素は組み込まれることになると思ってもらっていいでしょう。

画像集#004のサムネイル/3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中


スマホ/タブレットなど全プラットフォームでスコアを比較可能な3DMarkを年内公開予定


 これまで,グラフィックス表現に凝ったゲームタイトルといえば,PCとゲーム機に提供されるのが相場だった。しかし,最近では,スマートフォンやタブレットに組み込まれるSOC(内のGPU)の性能が向上したことから,そうしたモバイルデバイス群にも,かなり先進的なグラフィックス表現を採用したゲームが提供されるようになってきた。Fortnite,PUBGなどはAndroid機器やiOS機器にも提供されてPC版と比較しても遜色のないゲーム体験を楽しめる。世界的に人気の「League of Legends」もそうした端末へのリリースが予告されるなど,プラットフォームごとのグラフィックス表現力はゲームによっては大差ないものになってきている。
 そうした中で興味が湧いてくるのが,自分の手持ちの機器のグラフィックスパフォーマンスが,ほかのプラットフォームと比較してどのようなレベルにあるのかという点だ。もちろん,同一タイトルであっても,PC,ゲーム機,モバイル機器,それぞれに対して最適化やグラフィックス品質の増減は行っているだろうが,たとえば,手持ちのノートPCが,手持ちのスマートフォンよりもグラフィックス性能が劣るなんていう事態を目の当たりにしたら,「買い替えようかな」という気にもなってくるかもしれない。

McCall氏:
画像集#003のサムネイル/3DMarkでTime Spyに代わる新高負荷テストやMesh Shaderテストを開発中
 昔ほどプラットフォームごとにグラフィックス性能の優劣差がない昨今,ゲーム開発でグラフィックス設計を行う際に「プラットフォーム種別によらない,絶対的なグラフィックス性能を推し量る手段」は必要なのではないかと考え,Android,iOS,PCなどで,同一品質の同一シーンのグラフィックスパフォーマンスを計測する目的の「クロスプラットフォーム版3DMark」(仮称)の開発を進めています。
 このテストによって,各プラットフォームで算出された3DMarkスコアは互いに比較が可能です。ただし,スマートフォン/タブレットではかなりハイエンドモデルでないと動作させることすらできないかもしれません。
 このクロスプラットフォーム版3DMark(仮称)は2020年内のリリースを予定しています。

 クロスプラットフォーム版3DMark(仮称)では,当然,各プラットフォームでプログラミングAPIが異なってくる。McCall氏によると,PCはDirectX(Direct3D)で,AndroidはVulkanで,iOSはMetalでグラフィックスは構築されることになるという。グラフィックスパイプラインやシェーダの実装形態は異なるかもしれないが,できるだけ,同一品質を実現するようにプログラムを設計しており,画面に出力されるグラフィックスは各プラットフォームでほぼ同一になるようだ。
 もしかすると,場合によっては,DirectX,Vulkan,MetalといったAPIごとの得意/不得意などがパフォーマンスに影響することもあるかもしれない。
 登場が楽しみだ。


PCMarkで予告されていたAI/推論ベンチマークが年内リリースか


 このほか,McCall氏は,PCMarkの新テストモードや,以前予告していたAIベンチマークのロードマップについも語ってくれた。

McCall氏:
 まだ構想段階で名前も決まっていませんが,PCMarkにクリエイターズテストモードを追加することを検討しています。というのも,昨今,NVIDIAの「RTX Studio」など,クリエイター向けPC製品をリリースする風潮が出てきており,写真加工,ビデオ編集,レイトレーシングといった,コンテンツ制作を想定したベンチマークモードにニーズが高まっていると思われるからです。これはリリース時期もまだ確定していません。
 それと,以前,予告したことがある,AI/推論のベンチマークテストを今年後半にリリースする計画があります。名前は未定ですが,「画像(オブジェクト)認識」「画像の相似性判定」「文字認識」といった推論テストが含まれます。
 Windows版とモバイル版を並行して開発中で,今年後半に登場予定なのがモバイル版です。Windows版の提供は遅れる予定で,おそらく来年以降になるでしょう。

 AI/推論のアクセラレーション機構の標準化は,確かにモバイルプラットフォームのほうがスピード感がある。Androidは「Neural Networks API」(NNAPI)をAndroid 8.1から提供しており,AppleもiOS11から「Core ML」を提供している。
 一方,Windowsでは,Windows MLがAI/推論の標準的なアクセラレーション用プラットフォームとなることが提唱されているが,実際に実動レベルになるのは2020年内に提供されるWindows10向けの大幅アップデート以降になるといわれている。
 こうした事情からモバイル版のほうが先行リリースされるのだと思われる。

 今年登場するとされている各種新型ベンチマークテストに期待したい。

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