インタビュー
サービス10年目を迎えて業績が向上した「怪盗ロワイヤル」運営インタビュー。キーマンは入社3年目の新人プロデューサー
今回,4Gamerは「怪盗ロワイヤル」のプロデューサーを務める下島 海氏と,DGT代表の川口 俊氏にインタビューを行い,サービス開始から10周年を迎えての感想を始め,業績を引き上げた組織改革,県や学校といったユニークな対象とのコラボなど,本作にまつわるさまざまな話を聞くことができた。本稿では,そのときのインタビューの内容をまとめてお届けする。
「怪盗ロワイヤル」公式サイト
DeNA Games Tokyoとは
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはDGT設立の経緯と,DeNAとの関係性を教えてください。
DGTは,社名のとおりDeNAグループの子会社で,今期で5期目を迎えます。DGTが設立された2015年までは,DeNA単体でモバイルゲームの新規開発と運営を行っていました。そのなかで,新規タイトルの開発と既存タイトルの運営では要求されるスキルセット,ゲームにかける想い,モチベーションなどが異なるという課題が浮かび上がってきました。
とくに課題となっていたのが,運営に回っているメンバーのなかに,新規開発を行いたいという想いを持つ者が多かったことですね。そうすると,組織としてバランスが崩れてきてしまうんです。
4Gamer:
その状態ですと,開発や運営に対するモチベーションの維持が難しくなってきますよね。
川口氏:
会社自体を分けて,DGTという“運営に特化した会社”ができました。
いま,DeNAが継続して運営しているタイトルもありますが,現時点で複数の運営がDGTに移管されています。DGTは長期運営を目標に質の高い運営を行いつつ,DeNAはアプリの新規開発を行っていく。このように,DeNAグループとして,新規開発と運営をそれぞれが全力で取り組めるようにする,というのがいまのDGTとDeNAとの関係ですね。
4Gamer:
開発は開発,運営は運営にそれぞれ集中するために会社ごと分けられた,と。
川口氏:
そういうことです。
10周年を迎えた「怪盗ロワイヤル」
フィーチャーフォンプレイヤーも健在
4Gamer:
「怪盗ロワイヤル」が2019年10月でサービス開始から10周年を迎えますが,率直なご感想を聞かせてください。
率直に言うと,「すごい」の一言です(笑)。
4Gamer:
10周年は本当に限られたタイトルだけがたどり着ける境地ですよね。
川口氏:
僕は7年前に転職してDeNAに入ったのですが,最初に携わったタイトルが「怪盗ロワイヤル」だったんです。最初はプランナーとして参加して,DGTへの移管などがいろいろあるうちに7年という月日が経ち,いまこうして10周年を迎えているというのは,非常に感慨深いものがあります。
全盛期に比べればプレイヤーさんの数は多少減ってしまっているのですが,続けて遊んでくださっているプレイヤーさんはものすごい熱量で,10年という長い期間,熱狂し続けてくださり,怪盗ロワイヤルを「日常の一部」としてプレイしてくださっている,そういったプレイヤーさんがいらっしゃるというのは,本当にありがたいですね。
4Gamer:
下島さんはいかがですか。
下島海氏(以下,下島氏):
僕もまったく同じで,「すごい」のひと言に尽きますね。ゲームに限らず,10年間続くサービスはあまりないですし,10周年という節目に関われているのは,単純にワクワクします。
サービスが10年間続いてきたなかで,さまざまな変化があったと思いますが。
下島氏:
「あ,また盗まれてる」というフレーズのCMを聞いたことがある人もいると思うんですが,かつてはお宝を盗み盗まれの,いわゆる“お宝バトル”がメインでした。ただ,2013年頃に時代の変化に合わせて,カードを使って敵と戦い,そこで獲得したポイントの高さを競い合うカードバトルをメインとしたものに変わりました。
「怪盗ロワイヤル」の10年間を振り返ると,2013年以前のお宝バトル時代から2013年以降のカードバトル時代への移り変わりが,もっとも大きな変化だったと思いますね。
4Gamer:
システム面以外で印象的だったこと,あるいは苦労したことなど,思い出に残っていることはありますか。
川口氏:
いまも実施している「アンダーワールド」というイベントを,2013年に「UNDER TOKYO」という名前でリリースしたことですね。リアルタイムのPvPイベントという,当時で考えるとかなり攻めた内容になっていたので,とても印象に残っています。
4Gamer:
2013年というと,まだまだフィーチャーフォンが活躍していた頃ですよね。
川口氏:
まさに当時は,スマートフォンとフィーチャーフォンで通信速度の違いがあり,大きな課題となった部分ですね。フィーチャーフォンだと,ページを更新しないと画面が変化しないんですが,バトルはリアルタイムに進むため,必然的に,頻繁に更新をかけながらカードを選んでいくことになるのです。
その点に関しては,プレイヤーさんからもお叱りのお声をたくさんいただいて,いったんイベント自体を止めようか,という話も出ました。そこからさまざまなアップデートを重ねていって,いまではゲーム内で相対的な序列を決めるような機能まで実装され,プレイヤーさんが日頃の成果を披露する場となっています。
4Gamer:
プレイヤーからの声を真摯に受け入れた結果,イベントだけを見ても6年以上続いていると。
そうですね。そのことは嬉しく思います。当時は本当に大変でしたが(笑)。「怪盗ロワイヤル」は新しいイベントを作るたびにチャレンジングなことをするので,その都度苦労をしています。新しい見せ方,遊び方を提供しようとしているので,やはりどれも最初は大変ですね。
ただ,新しいイベントなどに対しても多くのご意見をいただけるのは,プレイヤーさんの熱量が高い証ですので,とても感謝しています。
4Gamer:
プレイヤーとしてもゲームをいいものにしていきたい,と思っているからこそ意見が出てくるわけですもんね。
川口氏:
なので,その声を受けて僕らがアップデートをかけていき,プレイヤーさんが楽しく遊んでくれる状況を作っていく,というサイクルが定番になりました。新しさを届けるために挑戦を続けてきた結果,プレイヤーさんに10年間も楽しく遊んでいただけることにつながったのかなと。
9年目で業績を向上させた攻めと守りの切り分け
4Gamer:
サービス9年目にして売上と収益が向上した,というのはかなり珍しいケースだと思いますが,こちらはどのようにして得られた結果なのでしょうか。
下島氏:
少し話が長くなりますが,事業面と組織面でいろいろな施策を行いました。事業面では,攻めと守りを明確に分けました。
攻めるところは,弊社の行動指針,事業・組織などあらゆるものの前提を根本から見直し,より高い価値を創造する“REBULD”と呼ばれる考えがあり,ここ1年間くらいはその部分を重視してやってきました。
4Gamer:
施策の見直しなどを行ったという感じでしょうか。
下島氏:
そうですね。具体的には,高知県とのコラボや,初めてのゲーム間コラボである「探検ドリランド」さんとの施策など,前例にとらわれない新しいチャレンジを積極的に行っていきました。
4Gamer:
新しいことにチャレンジする攻めの姿勢ですね。
これに対して,守りとして意識したのは,施策の仕組み化です。長くサービスを続けていると,どうしても人員を削減することになったり,タイミングによっては大きな資金を投入できなかったりと,さまざまな事情が出てきます。
人員は最適化したいけど,プレイヤーさんにはずっと楽しんでもらいたい。なので,低工数でありながらも,新しい体験を提供し続けるために,“持ち球施策”の開発とアップデートを行いました。
4Gamer:
持ち球施策というのは?
下島氏:
イベント毎に持ちネタを作りましょう,というものです。「怪盗ロワイヤル」は1週間ごとにイベントがあるのですが,「これを出せばウケる」という持ちネタを6つ作れた場合,そのネタを2か月に1回使うことで,低工数でありながら毎月違った体験を提供する土台ができます。
また,こうした土台をただ繰り返し実施するのではなく,イベントに使うモチーフを変えたり,手に入るアイテム,その入手方法を変えたりと,少しずつアップデートを行います。
持ち球の数を増やしつつ,都度アップデートを繰り返した結果,低工数でありながら,毎月違った体験が提供できるようになりました。これが守りの部分,施策の仕組み化ですね。
4Gamer:
守りの部分は,つまり運営の効率化みたいなことでしょうか。
下島氏:
そのとおりです。一般的に,仕事をしていくうえでの効率化は,当たり前のように考え,取り入れられていると思いますが,施策を打つときの効率化はまだまだ足りていないところが多いと思います。
毎回おもしろいことを考えてやっていくのはもちろん大事なのですが,限られたリソースのなかでは,それが難しくなってくると思います。それを解決すべく,低工数で毎月違った体験を提供できないかと考えた結果が,施策の打ち方を仕組み化する持ち球施策だったわけです。
4Gamer:
持ち球施策は,イベントの遊び方が根本から変わらなさそうなので,プレイヤー的にも遊びやすそうですね。
下島氏:
SNSや掲示板などでも,「今回はこのイベントか」みたいな話が出ているので,プレイヤーさんたちにも浸透してきていると思います。
責任感を持たせてモチベアップ
そこで生まれた“怪盗大学”とは?
4Gamer:
組織面ではどのようなことを変えていったのでしょうか。
下島氏:
組織面でメインにやっていたのは“自走化”ですね。タイトルが目指すゴールや戦略を伝えて,自分には何ができるかを各人が考えて動くようにしていきました。
具体的に取り組んだのは2つです。まずは“スクラム施策”。これまでは,企画,クリエイティブ,エンジニア,ざっくり3つの職種があって,企画が提案し,クリエイティブが絵を描き,エンジニアがプログラミングをして動かしていく,というのが動きのイメージでした。
4Gamer:
ゲームを始めとした一般的なデジタルコンテンツの制作フローですね。
ただ,それだと企画はともかくクリエイティブやエンジニアは,言われたことをただやっている感じになってしまうんです。“やらされている”と“やっている”では大きくモチベーションが変わってくるので,企画を考える段階からみんなで考えていき,それぞれに関わっている意識を持ってもらうようにしました。
4Gamer:
企画の考案から全員で参加するようにしたんですね。
下島氏:
企画を考えるだけでなく,ゲームプレイもですね。正直,それまでは「怪盗ロワイヤル」をやりこんでいないメンバーもいたのですが,みんなでちゃんと遊ぶようにして,施策の振り返りも全員でやっていくようにしました。最初から最後まで,他人ごとではなく自分ごととして考えるようにしていったんです。
そうすると,自分の考えたことが実装されてモチベーションが上がりますし,施策を打ったあとの振り返りも「こういう風にしようと思ったけど実際にやってみたら微妙だった」「次はそこを直すようなアップデートにしよう」みたいに,生産的な話ができるようになりました。
4Gamer:
全員で考えていくことで,各人の責任感を高めていったんですね。
下島氏:
そうですね。そして,自走化を進めるためのもう1つの取り組みが“プロジェクトオーナー化”です。これもよくある話なのですが,何か取り組むべきおもしろそうなことが見つかったら,それをプロジェクト化してそのやり方も含めて完全にオーナーへ任せる,というものです。
たとえば,今期は本作をもっとチームメンバーに浸透させるため,できるだけみんなに遊んでもらうことを目的とした“「怪盗ロワイヤル」をもっと遊ぼうプロジェクト”を実施したのですが,さまざまな企画が実施されているなかで,とくにおもしろかったのが「怪盗大学の設立」ですね。
4Gamer:
怪盗大学……?
下島氏:
言葉だけだとよくわからないですよね(笑)。これは,週に1回チームで行われる定例会議にて,怪盗大学と称して「怪盗ロワイヤル」の仕様に関わる問題を出すんですよ。毎回3問用意されていて,クイズ形式で「怪盗ロワイヤル」に詳しくなっていこう,というものでした。
4Gamer:
おお,聞いただけでもおもしろそうです。
下島氏:
さらに,半年ぐらい続けたあとには期末テストまで行われました。しかも,普段と違って記述式なんですよ。「試験当日は筆記用具をお持ち込みください」というアナウンスがあったり,テスト用紙を配ったりして,意外と本格的でおもしろかったこともあったので,みんな乗っかっていったんですよね。
4Gamer:
まさに学校。
下島氏:
おもしろいからちゃんと勉強するし,「怪盗ロワイヤル」にも詳しくなる。詳しくなれば「怪盗ロワイヤル」がもっとおもしろくなる……といった具合にいい流れができました。完全に任せられた状態で自分達が考えたことなので,積極的に取り組んでくれますし,自走化にうまくつながったと思います。
ただ,ゲームの中でも外でも,「怪盗ロワイヤル」として目指すべきゴールから逸れてしまうのは本末転倒なので,方向性はこちらから適宜アドバイスしています。プレイヤーさんから反感を受けず,現場としても好きなことをする,双方にとっていい形で新しいことにチャレンジできる環境が整ってきているかなと思います。
「怪盗ロワイヤル」が抱えていた課題
明文化されていなかったゴールと戦略
4Gamer:
下島さんは今年で入社3年目と聞きましたが,「怪盗ロワイヤル」に携わることになったタイミングで見えた課題と,そこに対してどのような対応をしたのかを教えてください。
我々の目指すゴールやそこに至るために取るべき戦略がメンバーに共有されていないと感じていました。なので,まずは目標と道筋を明確にすることから取り組みました。
我々はゲーム運営において,半期に1回,UX(※)ビジョンというゴールと,そのための戦略を立てるのですが,基本的に部長陣とのすり合わせがメインで,そこが明文化されていたかと言われると,正直できていませんでしたし,実際,メンバーに戦略について聞いたときに,答えられる人はほとんどいませんでした。
なので,ゴールであるUXビジョンと,そのためには何をする必要があるのかという戦略をきちんと明文化し,毎週の定例会議でしつこいぐらい言い続けました。
※UX:ユーザー・エクスペリエンスの略。ゲームをプレイするうえで重視するユーザーの体験,プレイヤーに感じさせたいもの。
4Gamer:
明文化されていなかったゴールと戦略を徹底的に浸透させていった。
下島氏:
もちろん,それですぐに何かが変わったわけではありませんが,時間とともに少しずつ変化が起きていきました。たとえば先ほどの持ち球施策についても,最初は「持ち球って何ですか」ぐらいだったのが,半年,1年と時間が経つにつれて,「新しい持ち球としてこんなことをやろうと思っています」「今回は持ち球のアップデートでこんなのをやってみるのはどうでしょうか」など,みんなが自分の言葉として使ってくれるようになりました。
まだまだ足りない部分は多いですが,当初課題だと感じた部分,ゴールなどの明文化や共有については,ある程度ポジティブな変化を与えられたかなと思います。
4Gamer:
現時点でまだ課題が残っている部分はどういったところでしょうか。
下島氏:
自走化については,まだまだできることがあると思います。いま,メンバーが20人ほどいるのですが,全員がすごく高いモチベーションを持っているかと言えばそうではないのが現状です。
人の入れ替わりなどがあっても,別の人が代われるから問題ない,そんな風に“みんなが自走できる構造的な強みを持った組織”にしていきたいですね。
サービス向上を目指した結果の業績アップ
ルーツとなったのは大学の部活
4Gamer:
「怪盗ロワイヤル」は9年目にして売上などが向上したとのことですが,それまでの数字はいかがだったのでしょうか。
川口氏:
1年目と比較すると維持率などはかなりいいので,事業的には非常に優秀なタイトルです。
4Gamer:
失礼ながら,てっきりV字回復的な動きだったのかと思いましたが,サービスが安定している中でさらに数字を伸ばしたということだったんですね。
川口氏:
そうですね。僕らとしても「今年は業績を向上させるぞ!」と狙ったわけではなくて,下島が言った持ち球施策や,珍しいコラボなど,去年ごろから攻めていった結果が実を結んだのだと思います。
4Gamer:
ちなみにですが,下島さんはDGTに入る以前から,何か組織の運営に関する経験を積まれていたのでしょうか。入社3年目には思えないというか,話している内容がベテランのそれなのですが……。
下島氏:
雰囲気だけは出すタイプなんですよ(笑)。僕は大学院を出てからすぐDGTに入ったため,2年半前に社会人になったばかりです。とくに特別なことはしていませんが,大学時代の部活動が活きていると思いますね。
4Gamer:
どんな部活をされていたのでしょうか。
下島氏:
あまりメジャーではないんですが,柔道と空手を合体させたような総合格闘技「日本拳法」をやっていました。
4Gamer:
日本拳法は団体競技ではないですよね。
下島氏:
おっしゃるとおり,日本拳法は個人競技がメインで,僕も最初は「自分が勝てればいい」と思っていたのですが,僕の属していたチームは団体に重きを置き,団体での全国優勝が目標だったんですよ。そこで,チームとしてどう動いていくべきか,どうすれば団体で勝てるのか,といったこと追求していきました。
4Gamer:
格闘技の世界は縦社会というイメージも強いですが,そういった面での学びもあったのでしょうか。
下島氏:
そこまで縦社会というわけではないんですよ。むしろ,みんなでフラットに意見を言い合うことでチームとしての結束力を高めていました。こうした組織において重要なことを部活動で学び,社会人となった今でも活かせていると思います。
今後の運営は攻守の切り分けを重視
ゲーム性とソーシャル性の両立を目指す
4Gamer:
今後の「怪盗ロワイヤル」の運営は,何を大切にし,どういった方針で進めていくのでしょうか。
下島氏:
攻めるところは攻めて,守るところは守る,そして,「怪盗ロワイヤル」のUXに沿ったコアUX,“プレイヤー間のストレス連鎖から抜け出して勝利を確信したときの快感”は,ブラさないようにしたいと考えています。
4Gamer:
具体的には……?
下島氏:
端的に言えば,“ストレス連鎖から抜け出して勝利を確信したときの快感”というゲーム性と,“プレイヤー間の”というソーシャル性の2つを大事にするということです。
ゲーム性については,お宝をコンプリートすると勝利になるお宝バトルを例にすると,コンプリートする前に盗まれたり,盗もうとしたら罠が張られていたりして,コンプリートできないストレスがあり,そこから抜け出してコンプリートできたときがすごく気持ちいいというものです。
カードバトル時代に入ってもそれは同じで,自分の得点を相手が超えてきて,もっと高い点数を出してもまた超えられて,それを繰り返して最終的に勝利を掴めるととても気持ちがいい。これはサービスの開始から10年間,「怪盗ロワイヤル」で不変の部分です。
4Gamer:
フラストレーションが溜まった分だけ達成感を得られるというのは,「怪盗ロワイヤル」に限らず,ゲーム全般に言えることかもしれませんね。
下島氏:
そしてこのゲーム性は,ソーシャル性があることでより増幅されるんです。たとえば,以前負けた相手にリベンジできたら,ただの勝利よりも喜びは大きくなりますし,やられた側の悔しさは同じくらい大きくなると考えています。つまり,ソーシャル性は感情の起伏を増やすものなんですよ。
なので,企画を作るときはソーシャル性とゲーム性の2つを重視しよう,とメンバーにはずっと言っています。ここを大事にして持ち球の施策やアップデートを考えてやってきたので,引き続き継続していきたいですね。
高知県の特産品でネギが登場
珍しいコラボはいかにして始まったか
4Gamer:
ここからはコラボに関してのお話をうかがいたいのですが,「怪盗ロワイヤル」では高知県コラボなど,行政との取り組みを行っていますよね。こちらはどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
川口氏:
広報チームにいるメンバーで,広報もやりつつマーケティングやプロモーション,人材開発など,多岐にわたって動いている人間がいるのですが,彼が県の方と知り合いだったのがきっかけですね。そこで,たまたま行政側から「ゲームを使ったプロモーションをしたい」というお話をいただいたんです。
4Gamer:
向こうからのオファーだったんですね。行政とのコラボは普通のコラボよりも労力がかかりそうなイメージですが。
川口氏:
これまでにやってきた他社さんのIPなどとのコラボは,そのIPをカードとして登場させてお互いに認知度を上げるのがメインなのですが,行政さんの場合は,観光客を増やしたい,特産品を周知したいなど,コラボに期待するものが違ってくるんですよ。
なので,僕らは高知県の特産品の1つであるネギを出したり,高知県を舞台にしたスゴロクをやったりしました。
4Gamer:
ネギが出るってすごいですよね(笑)。
ただ,こういうことを僕らのエゴでやるとおもしろくなくなってしまうので,プレイヤーさんが自然と受け入れられるものにするようには気をつけています。
具体的には,行政の要望に応えるために高知駅近くの観光情報発信館「とさてらす」にブースを出して,プレイヤーさんがそこに行ったらゲーム内で使用できる特典をもらえるようにしたり,プレイヤーさんが現地まで行きやすくなるように旅行会社さんと協力してクーポンを配布するキャンペーンを実施したりするなど,積極的にリアルを絡めていきました。
4Gamer:
行政コラボに対するプレイヤーからの反響はいかがでしたか。
下島氏:
かなり好評でしたね。これまであまり実施したことがなかったコラボなので驚きが多かった印象です。また,去年8月に高知県,今年8月に和歌山県とコラボしたので,持ち球とは少し違いますが,来年はどこになるのかな,といった話も出ていますね。「今年もこの季節か」という感覚が出てきたのはよかったかな,と思います。
4Gamer:
今後も行政コラボを続けていくということでしょうか。
川口氏:
行政コラボにこだわっているわけではないですね。行政や教育,あるいはスポーツなど,ほかの業界との掛け算でおもしろいものを生み出せるのであれば,1つの業界にこだわらずどんどん挑戦していきたいです。
4Gamer:
ユニークなコラボを行っている「怪盗ロワイヤル」ですが,プレイヤーはどういった層が多いのでしょうか。
下島氏:
プレイヤー層は30代〜50代くらいの男性がメインで,女性プレイヤーもいますが,いまは6:4くらいで男性の割合が多くなっています。ただ,いろいろとチャレンジした結果,「怪盗ロワイヤル」では,男性向け作品以外とのコラボもウケることが分かりました。
これまでは,男性が好みそうなIPとのコラボを行ってきたのですが,去年の6月にゆるふわ系の女性向けキャラクター作品とのコラボをしたんですよ。
4Gamer:
ギャップがすごいですね。
下島氏:
僕も初めはどうなるか不安だったのですが,やってみるとかなり好調だったんです。男性向け作品とのコラボしか刺さらないと思っていたのは,どうやら我々だけでした。そこからコラボの幅も広がっていきましたね。
4Gamer:
それはコラボで得られるものが強力だった,というわけではなく?
下島氏:
コラボをするときにはカードを出すことが多いんですが,このときはカードを出していないんです。スマートフォン向けの壁紙を配布するなど,シンプルな内容でした。
4Gamer:
興味深い結果ですね。ちなみに,今後予定しているコラボなどはありますか。
下島氏:
今後もおもしろいものを複数仕込んでいるので期待してください。僕自身もけっこうチャレンジしたな,と思っているので(笑)。
10周年イベントは復帰に最適
スムーズな復帰を促す「怪盗酒場」
4Gamer:
現在,10周年を記念したイベントが開催中ですが。
下島氏:
10周年イベントの前提として,タイトルの10周年を祝うのはもちろんですが,かつて「怪盗ロワイヤル」をプレイしていたけど離れてしまったという,離脱プレイヤーに帰ってきてほしいと考えています。
なので,この10周年イベントは昔の仲間に会えて,もう一度一緒に遊べて,これからもずっと遊び続けようと思える,そんなイベントになるように設計しています。
4Gamer:
10周年記念ということで,かなりいろいろな要素がありますよね。
下島氏:
そうですね。まずは10周年を記念した動画を作成しました。手前味噌ながら,この動画を見て「懐かしい」「また遊ぼうかな」と思っていただけるような,仕上がりになっていると思います。
下島氏:
もう1つは,昔の仲間と会える,ゆるくコミュニケーションが取れる交流の場「怪盗酒場」を作りました。イメージとしてはTwitterのような感じで,「○○がイベント上位にランクインしました」「○○が久しぶりにゲームに帰ってきました」など,仲間の行動がタイムラインに出てくるんですよ。
その流れてくる情報に対して,いいねをしたり,シェアしたりできるので,いきなりチャットをするのは気後れしてしまう人も,気軽にコミュニケーションが取れるようになっています。そこから「この人が帰ってきたのか」「ちょっと連絡してみようかな」と,コミュニケーションのきっかけになってくれたら嬉しいですね。
4Gamer:
怪盗酒場はコミュニケーション以外の機能もあるのですか?
下島氏:
コミュニケーション以外にも,2つの機能を用意しています。1つは,昔のアイテムをいまのアイテムに交換できる「アイテム交換所」ですね。復帰したはいいけど,昔のアイテムがいまは全然強くない,と困っている人をサポートする役割を担っています。
また,イベントの内容を忘れてしまった人のために,イベントの情報をまとめたページを用意し,攻略情報も確認できるようにしています。復帰した方は,まず酒場を覗いて交流したり,アイテムを交換したり,攻略情報をチェックしたりしてもらえれば,スムーズに復帰できるかと思います。
4Gamer:
怪盗酒場をリアルでも出店した,というお話をうかがいました。
下島氏:
ゲーム内で「怪盗酒場」をリリースした際に,もっとおもしろいことはできないかと考えました。そこでリアル怪盗酒場と称して,1か月限定で秋葉原のビストログラッソというお店でコラボカフェを開いています。
下島氏:
店内には「怪盗ロワイヤル」の絵が展示してあったり,メインイラストを描いていただいているワカマツカオリさん直筆の黒板メニューが出ていたりします。あとは,来店した人にコメントを書いてもらうノートの表紙にも,ワカマツさんのサイン入りイラストがありますよ。
4Gamer:
昔遊んでいた人でも懐かしさが味わえそうですね。
下島氏:
ぜひ足を運んでほしいです。
4Gamer:
ログインボーナスも豪華なものが用意されているとか。
下島氏:
復帰したあとに毎日ログインする動機が必要だと思い,毎日楽しくログインしてもらうために,2つのログインボーナスを用意しました。
1つは,スーパースタースクラッチ,略して“超S”です。全然略していないんですけど(笑)。これはスクラッチ型のログインボーナスで,毎日もらえるスクラッチカードの好きなところを削って,当たりが出ればゲーム内アイテムがもらえるというものです。もし外れても“外れ券”を集めれば,ワカマツさんのサイン入り色紙やTシャツなどが当たる再抽選のチャンスもあるので,ぜひ挑戦してほしいですね。
下島氏:
もう1つはガチャのログインボーナスで,題して“10億人手下ガチャ”です。
4Gamer:
10億人とはまたすごいですね。
下島氏:
本当は,いわゆる100億円ばらまきキャンペーンみたいなことをやりたかったんですけど,冷静に考えて費用の確保が難しいなと(笑)。数字でインパクトを出したいと思ったので,割りと自由に動かせる手下というリソースを利用することにしました。
5年なら5枚,10年なら10枚と,「怪盗ロワイヤル」のプレイ歴に応じてメダルを獲得でき,そのメダルを使ってガチャが引けます。ジャックポットが出ると大量の手下がもらえるので,超Sと併せて毎日のログインの動機にしてほしいです。
4Gamer:
ログインボーナスがあると単純にお得ですからね。
下島氏:
あとはSNSキャンペーンですね。いまお話ししたような施策も,離脱プレイヤーのみなさんに知っていただかないと意味がないので,熱量の高いプレイヤーさんを介して拡散されていくような施策として,TwitterとLINEの2つでキャンペーンを走らせました。
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下島氏:
LINEでのキャンペーンは,公式アカウントを友だち登録をするか,友だちを招待して相手が承諾してくれると引けるくじで,最大10万LINEポイントがもらえます。友だちの招待などを通じて,現役プレイヤーが昔のプレイヤーを招待して,またプレイヤーの輪が広まってくれることを願っています。
まだまだ成長を続ける「怪盗ロワイヤル」
目指すは15周年,そして20周年
4Gamer:
まだ「怪盗ロワイヤル」をプレイしたことがない人や,離脱プレイヤーにアピールするとしたら,どのような点を推しますか。
下島氏:
10周年はイベント目白押しなので,始めたり復帰したりするタイミングとしてはとてもいい,という点は推したいですね。また,作品としてアピールするのであれば,「怪盗ロワイヤル」のシックな世界観と,クールなキャラクターは魅力的だと思います。
ゲーム内にはストーリーを楽しめるパートもあるので,初めて遊ぶ方でもストーリーを読んでもらえれば,「怪盗ロワイヤル」の世界を堪能できます。また,先ほどもお伝えしたように,毎月何かしらの新しい体験,おもしろい体験を提供していますし,どのタイミングで遊んでも楽しめるコンテンツをバッチリ用意しています。
各イベントの遊び方は違っても,提供しようと思っているものは共通しているので,新規の方でも復帰される方でも,同じように楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
最後に,いま「怪盗ロワイヤル」をプレイしているプレイヤーにメッセージをお願いします。
下島氏:
いま「怪盗ロワイヤル」をプレイしている方は,9年,10年と長く遊んでくださっている方が多く,みなさんのおかげでここまでタイトルを継続することができました。本当にありがとうございます。
最初に川口も言っていましたが,「生活の一部になっている」と感じてくださっているプレイヤーさんのためにも,多彩な体験を提供していきつつ,今後も15年,20年と長く続けていくことが,我々がやるべきことだと考えています。前例にとらわれずいろいろなチャレンジをしつつも,軸がブレないように今後も運営を続けていこうと思っていますので,ご期待いただければと思います。
川口氏:
10年間,新しいことをやってはプレイヤーさんからご意見をいただいて,ゲームに反映してはまた新しい声をいただいて……ということを繰り返し,いまの「怪盗ロワイヤル」があります。引き続きいただいた意見を真摯に受け止めつつ,我々がそれに応えておもしろいものを作っていくサイクルを維持しつつ,下島が言ったように15年,20年と続けていく所存です。今後ともよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
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