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[TGS 2012]「うまい人」と「そうでもない人」の溝を埋めるには? 「DEAD OR ALIVE 5」発売直前インタビュー。TGS 2012で早矢仕Pに手応えを聞いた
前回のインタビューではまだ未公開であった新キャラクターについてや,知られざる開発秘話,格闘ゲームシーンについてなどを聞いた本インタビュー。本作の発売を心待ちにしている人は,ぜひチェックしておこう。
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ミラとリグ,そしてパイ。新たに参戦したキャラクター達
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくお話をお聞きしていきたいところなのですが……実は前回のインタビューで,かなりいろいろお話いただいているんですよね。
早矢仕洋介氏(以下,早矢仕氏):
そうですね。相当ツッコまれた気がします(笑)。
4Gamer:
しかしあの時はまだ言えなかったこともあるでしょうし,今回はそのあたりを中心にお聞きしたい思います。まずはインタビュー後に発表になった2名の新キャラクター,ミラとリグについてお聞かせください。
早矢仕氏:
DOAシリーズでは,キャラクターの国籍と性別,それから格闘スタイルの3つを大事にしています。中でも一番最初に決めるべきは格闘スタイルです。そこに架空の格闘スタイルは持ってきたくなかったんですね。
4Gamer:
実在の格闘技に即したスタイルを選びたかったと。
早矢仕氏:
はい。それにDOA5は前作から7年振りのタイトルですので,その間に格闘技としてメジャーになったもの,最近の人なら知っているものはなんだろうと考えたときに,選択肢として出てきたのが,テコンドーと総合格闘技だったんです。
4Gamer:
ああ,なるほど。
早矢仕氏:
性別は,やっぱり男女で一人ずつ欲しかったですし,国籍でいえば,今までのDOAシリーズのキャラクターには居なかった国で,かつゲームとしてDOAが盛んな地域ということで,カナダとスペインを選ばせてもらいました。でも,普通テコンドーと総合格闘技っていうと,どちらかというと前者が女性的で,総合格闘技は男性のイメージがあるじゃないですか。
4Gamer:
まあ,そうかもしれません。テコンドーは動きが軽やかなので,女性が使っても違和感がないというか。
早矢仕氏:
だけど,いままでにないものをと考えたときに,がむしゃらに敵を打ちのめす,言ってしまえば美しくない総合格闘技を女性が使ったら,むしろカッコイイんじゃないかと思ったんです。それとは逆に,マッチョな男性が力強い足技を使う,というのもいいですよね。
4Gamer:
なるほど。そうして総合格闘技を使う女性キャラクターのミラ,テコンドーを使う男性キャラクターのリグが生まれたわけですね。
早矢仕氏:
そうです。あと,リグであれば,はだけた胸に汗が垂れる,男臭いカッコ良さであったり,ミラなら汗など気にとめずストイックに格闘技にのめり込む女性の美しさであったり,DOA5で追加された,汗の表現が映えるキャラクターデザインというのも狙っています。
4Gamer:
ほかの対戦格闘ゲームにも,テコンドーを使う男性キャラクターは結構いますけど,リグはその中でもかなり骨太ですよね。
早矢仕氏:
マッスルなテコンドーがあってもいいんじゃないかと。男が憧れる男,というデザインを目指したつもりです。
4Gamer:
分かりました。ちなみに前回のインタビューで「パイはいないんですか?」と質問しましたが……やっぱりいましたね(笑)。
早矢仕氏:
はい,いましたね(笑)。
4Gamer:
……でも,エル・ブレイズはいませんでした。
早矢仕氏:
ええ,いませんでした(笑)。
4Gamer:
そこで,「バーチャファイター」からの3人目のゲストとしてパイを選ばれた理由をうかがいたいなと。
早矢仕氏:
前回のインタビューでもお答えしたとおり,何よりも初代「バーチャファイター」からいるキャラクターであることが第一条件だったんです。その中で,皆さんがDOA5上で動いてほしいと考えるだろうキャラクター,また我々にとっても動かしてみたいキャラクターを考えたときに,パイは欠かせなかった。
それに,ちょうどDOAシリーズにもレイ・ファンという中華系の女の子がいて,共演の楽しみもありましたしね。
4Gamer:
6月に行ったインタビュー時点で,サラの場合に髪の毛の一本にまでこだわったというお話がありましたが,パイの場合はいかがでしょうか。
早矢仕氏:
表情ですね。DOA5では,目がすごく活き活きとするような表現を頑張っていることもありますし,もちろんモデリング自体にもいろいろ手を入れて,ものすごく可愛いパイに仕上がっています。
4Gamer:
それは楽しみですね。「可愛い」で思い出したのですが,ほかの3D格闘ゲームでは,キャラクターの外見をプレイヤー側でカスタマイズできる機能がありますよね。DOA5でもコスチュームは選べますが,あまり自由度は高くありません。何故なのでしょうか。
うーん,格闘ゲームって,それぞれに強みがあると思うんですよ。DOAシリーズでいえば,それは女性の表現であったり,ステージを絡めたエンターテイメント性であったり……。
4Gamer:
ホールドの概念による3すくみの構造であるとか。
早矢仕氏:
そうですね。だからもしカスタマイズ要素を入れるのであれば,キャラクターをより可愛く,より魅力的に見せる手段としてあるべきだ,というのが我々の考えです。なので,元のキャラクターのイメージが失われてしまうような過度なカスタマイズ要素は,今のところ入れる予定はないですね。
4Gamer:
うーん,なるほど。そういえば,前回のインタビューで「7年経った今なら,DOA5が作れると思った」とおっしゃっていましたよね。そのときはステージギミックの進化が突破口になったというお話でしたが,キャラクターのビジュアルについても同じ事が言えそうです。
早矢仕氏:
いや,まったくそのとおりです。
4Gamer:
1〜2年前にはできなかったのは,なぜなんでしょうか。技術的な問題とか?
早矢仕氏:
ハードや技術的な問題もありますが,正直に言えば,スタッフがもっと成長する必要があったんです。例えば2011年5月に「DEAD OR ALIVE Dimensions」をリリースしましたが……。
4Gamer:
ニンテンドー3DSのタイトルですね。
早矢仕氏:
シリーズがずっとお休みしていたので,プレイヤーに対しては,改めて入口となるものを用意しておこうという位置づけのタイトルです。ですが内部的には,開発チームを鍛え直すという目的もあったんですよ。そのステップを踏んだおかげで,こうしてDOA5を作ることができたという。
4Gamer:
キャラクター以外の部分についてはどうでしょうか。これまであまり情報が出てこなかった要素では,オンライン対戦がどうなっているかが気になっている人も多いのではないかと思うのですが。
早矢仕氏:
オンライン対戦については,これまで実際に体験していただく機会がなかったので,心配させてしまったかもしれませんね。ただ,我々はDOA4からオンライン対戦に取り組んでいますし,今回もしっかり戦えるものになってますよ。
4Gamer:
なるほど。実は対戦時の遅延の問題などはあまり心配していないのですが,マッチングのインタフェースの部分が気になっているんです。ルームとかチャットとか。
早矢仕氏:
今回はその辺りの快適性も強く意識しているので,安心していただいていいと思いますよ。例えばルームに入ると,各プレイヤーの情報やランク,通信状況が一目見て分かるような状態になっていますし,さらにテキストチャットも用意しています。そこはぜひ,発売後に確かめていただけたらと。
コミュニティの溝を埋めるタイトルを作りたい
4Gamer:
では,いよいよ発売日が間近に迫ったDOA5ですが,発売後の展開について,今の時点でお話しいただけることが,何かあるでしょうか。例えば……大会の予定ですとか。
早矢仕氏:
そういうご要望もいただいているので,ぜひ実現したいですね。システムをかけ算で用意したこともあって,対戦ツールとしてはかなり深いものが用意できたと思っていますし,同時に“観る”エンターテイメントとして,十分に成り立つものを作ったつもりです。大会を見たり参加したりする中で,プレイヤー人口が増えていく,という流れを作っていきたいです。
4Gamer:
プレイヤーに注目が集まる場があると,ほかの対戦格闘ゲームをプレイしている人も興味を持ちやすいですからね。他社さんのタイトルですが,例えば「ソウルキャリバーV」(PS3 / Xbox 360,以下SCV)なんかでは,その流れがうまく回っている気がします。
早矢仕氏:
そうそう。SCVはスゴいですよね。3D格闘ゲームって,体力ゲージ以外のゲージは作らないっていうのが,一つの美学になっているところがあるじゃないですか。だからSCVのソウルゲージ(いわゆるスーパーコンボゲージ)を見たときには,本当に驚きました。
4Gamer:
ああ,分かる気がします。事実,同作の発売前には,プレイヤーの間でもかなり賛否両論あったようですし。
早矢仕氏:
もう,3D格闘ゲームでこれをやっていいんだ! って(笑)。でもそれがあるからこそ,2D格闘ゲームのプレイヤーからも支持されているのかもしれないわけです。
4Gamer:
ああ,それはあるでしょうね。自分も2D格闘ゲームのプレイヤーをSCVに誘うときは,「ゲージ管理は2D格闘のプレイヤーの方がうまいから,そこで勝てるよ」って言いますし(笑)。
早矢仕氏:
我々としても,新たなプレイヤー層を開拓していきたい想いは,強くあるんですよ。ただ,ほかのゲームからの流入ももちろんですが,やっぱりより広いプレイヤー層に遊んでもらいたい。
例えばサッカーをやっている人が,みんな日本代表になりたくてやっているわけではないですよね。単に体を動かすのが好きだとか,みんなでワイワイやるのが好きだとか,そういったスタンスの人をもっと取り込みたいんです。
4Gamer:
それ,カプコンの小野さん(ストリートファイターシリーズプロデューサー 小野義徳氏)と,バンダイナムコゲームスの原田さん(鉄拳シリーズプロデューサー 原田勝弘氏)も,同様のことをおっしゃっていましたね。
早矢仕氏:
実は僕も,原田さんに「早矢仕くんはどれだけ格闘ゲームがうまいの?」って聞かれたんですよ(笑)。「いや,そこまでうまくないんです」って答えたら,「そこ大事だよ」って言われて。
4Gamer:
「そこまでうまくない人」が,どうやって遊んでいるかが何より大事だと。
早矢仕氏:
ええ。それと合わせて,「格闘ゲームがうまい人」と「そこまでうまくない人」の溝をどうやって埋めるのかというのを,ずっと考えています。
DOA5では,その僕達からの答えとして,色々な入口を用意したつもりなんです。例えば「この技を出してみたい」とか「ステージをぶっ壊してみたい」とか。もっといえば「可愛い女の子を動かしたい」とかね。
4Gamer:
個人的な意見ですが,格闘ゲームのシーンを変えてきたタイトルって,常にビジュアルの面で飛び抜けていたように思うんですよ。「ヴァンパイア」しかり,「バーチャファイター2」しかり,「THE KING OF FIGHTERS」しかり,あの見た目のインパクトが,多くのプレイヤーを対戦の舞台に向かわせてきた。「このゲームで,このキャラで強くなりたい」って。
早矢仕氏:
「ストリートファイターIV」もそうでしたよね。あのリュウがこうなったんだ,という素直な驚きがあった。
4Gamer:
だからこそ,DOAシリーズには可能性があると思うんです。元々どちらかといえばコア寄りではないプレイヤーが支えてきたタイトルですし,そこを入口にして格闘ゲームの面白さに気付く人もいるのではないかと。
早矢仕氏:
そうですね。……正直にいうと,DOAシリーズって対戦格闘ゲームの中では,比較的弱いIPじゃないですか。
4Gamer:
ストリートファイターや鉄拳などと比べてしまうと,そうかもしれません。
早矢仕氏:
でも,その上でなお,僕らはDOA5に手応えを感じている。その根拠の一つは,その掴みの部分であるビジュアルを,ちゃんと伸ばせたことにあると思ってます。
4Gamer:
「俺のかすみは,あいつのかすみよりもずっと強くて可愛いんだ」ってプレイヤーに思わせたら,もう勝ちですよね(笑)。では最後に,発売を間近に控えたDOA5について,プレイヤーにメッセージをお願いします。
早矢仕氏:
はい。DOA5は,ファンの皆さんからの意見を反映し,調整を重ねたうえで,発売という大舞台を迎えるところまでやってきました。
格闘ゲームって,もちろん対戦がメインのゲームですけど,それってつまりコミュニケーションのゲームでもあるわけです。つまり発売後は,より皆さんと直接的にコミュニケーションを取れる機会が増えるわけで,それが今からすごく楽しみです。
4Gamer:
ということは,発売後はオンラインで早矢仕さんとも対戦できるかも?
早矢仕氏:
そうですね。我々Team NINJAのスタッフも,オンライン対戦に参戦する予定ですので,ぜひ一緒に戦って,皆で一緒にDOA5を育てていきましょう!
4Gamer:
はい。9月27日の発売を楽しみにしたいと思います。本日はありがとうございました!
ちなみにこのインタビューは,TGS 2012会場のコーエーテクモゲームスブース前にて,立ち話状態で収録したものなのだが,そのロケーションのおかげか早矢仕氏もかなりリラックスして話してくれたのが印象深い。開発者の生の声が伝わってくるようで,筆者としても実に楽しいインタビューだったことを付け加えておきたい。
Team NINJAの7年越しのナンバリングタイトル,遂に発売を迎える「DEAD OR ALIVE 5」のこれからに期待しよう。
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Akira, Sarah, Pai characters (C)SEGA.
Virtua Fighter is either a registered trademark or trademark of SEGA Corporation.
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