インタビュー
「ネットとリアルの和解」がニコニコ超会議の役割――ニコニコ超会議2の総括をする「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第11回
あべちゃんのことがまったく信用できなかった
川上氏:
オペレーションって話でいうと,超パーティーIIは,僕はかなり心配してたんだよね。
あべちゃん:
ええっ?
なぜかというとね。僕はあべちゃんのことがまったく信用できなかったから!
あべちゃん:
ちょ,なんで!
川上氏:
いや,だってさ。確かに去年の超パーティーは成功したんだけど,超パーティーが終わったあと,あべちゃんがなんて言ったか覚えてる?
あべちゃん:
ん〜。「もう,来年はやれないっすよ」みたいな?
川上氏:
そう。「もうやりきったから,次にやれることはなにもない」みたいなこと言ってたんだよね。
あべちゃん:
誤解です誤解です。そういう意味じゃないんですって!
川上氏:
いやいや。あの時のあべちゃんは,本気の目をしてた。本気で「やりきった!」って言ってたのね。
あべちゃん:
まぁ,あの時点で「やりきった」のは確かですけど!
川上氏:
なんというか,まるでニコ動のエンディングを見たような空気感というか,そういう感じで。ニコニコ超会議自体は,これからもっと面白いことが始まる,ニコニコの新しい時代が来るって予兆みたいなものを感じさせる内容だったと思うんだけど,超パーティーの方は,むしろ,ここでニコニコの時代が見事な最終回を迎えたみたいな。そういう感じがしたんだよね。
横澤氏:
ほうほう。
川上氏:
でね。僕はこれ,あべちゃんだけじゃないなと思ったんですよ。見てたユーザーもそう感じたんじゃないかって思って,ちょっと危機感を抱いたんですよね。
あべちゃん:
去年はあれですからね,ニコ動の5年間の歴史を振り返るというか,その総決算みたいなのがテーマだったんで。たしかにそういう風に見られた人は多かったような気はします。
川上氏:
そうでしょう。そんななかで,あべちゃんが「なんとかがんばって作ってみます」とかいって,ノリ気じゃない感じで超パーティーIIを作り始めたからさ,ホントに心配で。「これはひどいものができるに決まっている!」と,ずっと思ってたんだよね(苦笑)。
あべちゃん:
ひ,ひどい!
川上氏:
まぁ結果的にはね。今回の超会議2も,超会議3に期待を持たせられる締め方できたし,超パーティーIIも,ちゃんと次に期待を持たせられるような結果になったとは思うんだけど。
4Gamer:
今年の超パーティーIIのコンセプトやテーマってなんだったんですか?
あべちゃん:
今年のコンセプトは「次はあなたのステージ」みたいな方向性ですね。要は,ここはいつでもあなたのステージになるっていうのを全面的に押し出してた。
川上氏:
そうだよね。そこらへんは最初に僕とあべちゃんで話してた。
はい。で,テーマって意味では,今年はカーニバルとかサーカスをモチーフにしてやってたんですけどね。カーニバルとかサーカスって,結構お客さんが上にあがって,一緒にやろうよ,作ろうよみたいなノリがあるじゃないですか。そこが今回のテーマにピッタリだなーと思って。
だから今回は,お客さんに向けて「歌いたいやついるか!?」と呼びかけて,舞台に上がってもらって歌ってもらうみたいなのもやったんですよね。
川上氏:
ニコニコの有名人を上から順に呼ぶようなやり方はやめようという話をしてたんだよね。だから,今回は有名な人たちでもお声がけをさせて頂かなかった人がたくさんいたんです。ニコニコが「みんなのものだ」っていう原点回帰をするために,今回はそういう方針を貫いたんだよね。
あべちゃん:
そうですね。有名な人もそうですけど,無名な人も,お客さんも,関係なく一体になれるっていうのが,ニコニコ動画の良さだと思います〜。
川上氏:
みんなが一体となる,一丸になる。これは,毎年やれるし,未来につながる方向性だと思うんだよね。
4Gamer:
その意味でいうと,ニコニコ動画自体もそうだと思うんですが,参加者/コンテンツの高度化(※)って問題があるじゃないですか。
※CGMサイトが発展する過程でコンテンツのクオリティが上がることを指す
あべちゃん:
それは各ブースの中に置いてある,ユーザーコンテンツの高度化って意味ですか?
4Gamer:
はい。コンテンツが高度になり過ぎちゃうと,それが新規参加者の参入障壁になって,コミュニティが廃れてしまうってよくある話ですよね。
川上氏:
僕はそれ,超会議に限って言えば,ならないと思うんだけどね。超会議全体としても,高度化っていう方向には向かわないだろうと思うし。
横澤氏:
そうですね。それに,高度だから受け入れられるのかっていったら,そこはまた違う話じゃないですか。
4Gamer:
ええ。
横澤氏:
とくにニコニコ動画ってコミュニティは,高度なのが見たいんじゃなくて,頑張ってる姿が見たいって場所だと思うんですよね。だから,いきなり高度なものだけ見せつけられても,僕は響かないと思っていて。仮にプロがやっても,「なんでこっち来たの?」みたいなことが結構ありますよね。
あべちゃん:
頑張った結果として,それが凄くなるっていうのがいいんですよね。あるいは,くだらないことで頑張ってるっていうのが面白いというか。
横澤氏:
そうそう。だから,確かに高度なものを作ろうとする人ってどんどん増えているとは思うんですけど,それがなぜ受けているのかといったら,それが単純に高度だからってことじゃなくて,その間の一生懸命さをしっかりユーザーさんに伝えられているからだと思うんですよね。
凄い人が一所懸命にやれば,それは当然凄いものになるだろうし,ヘタクソだったとしても,頑張りが伝われば,それはそれで素敵なものになるんです。
川上氏:
いやぁ,その意味で言うとさ。今回の超会議は,スタッフの親御さんがいっぱい見に来てたんだよね。僕の親も来てたけど(笑)。
横澤氏:
ああ,ウチの親も来てましたよ(笑)。
あべちゃん:
僕も僕も。
川上氏:
なんだか「息子の晴れ舞台を見に行かなきゃ」みたいな状態で。これはまさに文化祭っぽいよね。
4Gamer:
文化祭っていうか,小学校のお遊戯会みたいな話ですね……。
「ニコニコ超会議3」が失敗するパターン
川上氏:
あーでも,高度化って話で思い出したけどさ。もし今後,例えば「ニコニコ超会議3」が失敗するときのパターンって,大体予想がつくんだよね。
横澤氏:
僕もだいたい分かりますよ(笑)。
4Gamer:
お,それはちょっとお聞きしたいですね。
ニコニコ超会議2は,おかげさまで大成功だったと思うんですよ。とくに今回は,安倍総理が来たり,任天堂が特別協賛をしてくれたりと,イベントとしての社会的な認知というか,“格”がずいぶんと上がったと思うんです。
4Gamer:
そうですね。
川上氏:
そうするとね。やっぱり「やりたがる人」が増えるんですよ。そして,この人たちがどういうことをやろうとするかっていうと,有名人を呼んだり,大きな企業とのコラボとかしようとするんです。
横澤氏:
そうそうそう。
川上氏:
有名人をもっと呼んで,でっかい企業を呼んで。「俺はこんな有名人を呼べるんだ,すげー」みたいな企画をする人が増えると,一気に超会議って終わると思う。
横澤氏:
絶対そうですよね。だから僕は,超会議3はそれを禁止しようと思っているんですよね。
川上氏:
そこは本当に注意が必要なところだよね。
横澤氏:
うん。だから,超会議2の最後にやった終礼の場でも言ったんですよ。「僕らは別にすごいことをやりたいわけじゃない。一所懸命なものが見たいんだと。一所懸命なものが集まるのが超会議であって,すごい人を呼ぶことが本質ではない。超会議は,あくまでもユーザーのものなんだ」って。
川上氏:
超会議の本質って何かと言ったらさ。ネットの盛り上がりがリアルを突き動かす,それを見せつけることだと思うんですよ。その意味でいえば,安部総理の件にしても,ネットの盛り上がりが総理大臣すらも呼び寄せたという,ネットがリアルを動かした象徴的な出来事としてワクワクするのであって。安倍総理自身が超会議に人を呼ぶためのコンテンツってわけではないんだよね。
4Gamer:
うーん,なるほど。
ほかの芸能人や著名人とかもそうですよね。GACKTやナインティナインの岡村隆史さんが来たっていうのも,あくまで「ネットが盛り上がった結果」として,彼らもやってきたという話であって,そこを逆転させちゃ絶対にダメなんです。
4Gamer:
去年の座談会の時にも,横澤さんは「ニコニコの良さは,細分化されたそれぞれのクラスタの中で,それぞれ100点の面白さがあるところだ」みたいなことをおっしゃっていましたよね。
横澤氏:
ええ,ええ。
4Gamer:
その意味でいうと,有名人を呼ぶっていうのは,ある種の最大公約数的な面白さというんですかね。“小さい100点”の面白さが100個あるんじゃなくて,“大きい70点”の面白さが1個あるみたいな話ですよね。で,それは普通だし面白くない,という。
川上氏:
そこは実は,単なる点数の問題ってわけでもないんだよね。
4Gamer:
ん?
川上氏:
つまり,例えば,GACKTが会場を普通に歩いているっていうのは,点数でいったら100点だと思うんですよ。でね,100点の驚きっていうのは,ある種のセンス・オブ・ワンダーを生み出すんだよね。これは凄い!だったり,なんじゃこりゃ!だったり,なんでも良いんだけど,とにかくセンス・オブ・ワンダーを感じられるわけ。
4Gamer:
なんか分かります。
川上氏:
だけど,さっきの有名人を呼びたがる人っていうのは,70点の芸能人を10人連れて来ました!みたいなことをやるのよ。それじゃ,どんなにやってもセンス・オブ・ワンダーはゼロなんだよね。70点じゃなくてゼロになる。
横澤氏:
そうそう。あと付け加えるなら,仮に芸能人を呼ぶんだとしても,そこにニコ動とのストーリーというか,絡みもないと,単なる一過性のものになってしまうんですよね。
川上氏:
それが何の意味を持つのかってことをちゃんと考えないといけないんだよね。でも,単純に偉さとか知名度だけで判断しちゃう人が多いんだよね。
横澤氏:
僕的には,超会議が目指す一番のものって,「空き地」だと思ってるんですよ。空き地で遊ぶ人って,遊ぶ人達が独自のルールを作って,自分達で遊ぶわけじゃないですか。それって,ある意味で最強のC to Cだと思ってるんですね。
4Gamer:
確かに。
横澤氏:
超会議2では,世の中にコンセプトが伝わりきれてないって判断もあって,まだこちらからの提案が多めというか,運営側もいろいろな企画をやっていたわけですけど,超会議3では,もっと空き地化を目指すような方針を考えたいんですよね。
川上氏:
超会議の本質は,やっぱり“そっち”だよねぇ。
超会議の役割はネットとリアルの和解
4Gamer:
お話を聞いていて,改めて感じるんですけど,ニコニコ超会議って個人的にはすごく“違和感があるイベント”なんですよね。
川上氏:
ん?
4Gamer:
いや,普通はこういうイベントって,もっと同好の志の寄り合い的な方に向くというか,もっと「内にこもる」イベントになっているように思うんです。もちろん,超会議にもそういう性質はあると思うし,実際同好の志が集まるイベントだとも思うんですけど。そんななかで,川上さんが「ネットとリアルの戦いの場だ」みたいなことを言ったりして煽っているのがとても不思議で。
川上氏:
なんで戦わせる必要があるのか,というより,そもそもニコニコ動画自体がそういう戦いの場になっているんですよね(笑)。ネットだけだとまだ見えにくい戦いが,リアルに持ってくることによって可視化されているだけです。そうなったら,当然ながら衝突は起こりますよね。敵が見えるから。実はそれがニコニコ超会議の目的でもあるんです。
4Gamer:
んん? どういうことですか?
川上氏:
つまりね。なぜネット民とリアル民の間で衝突が起こるかといったら,そこに誤解があるからだと思うんですよ。例えば,ニコニコ超会議を最初にやるって発表したとき,ネット民側の多くのニコ動ユーザー達は「ニコニコ超会議に来るユーザーなんていない」って言っていたわけですよ。ニコニコ動画ってサービスは,あくまでネット民向けのサービスであって,そんなリアルイベントで盛り上がるようなものじゃないんだと。
4Gamer:
ああ,確かにそういう反応はありましたね。
でも,実際に蓋を開けてみたら,超会議に来るユーザーっていうのがめちゃくちゃいたわけですよね。その時に,ネットのコアな人達,つまり“ネット原住民”の人達っていうのは,とても大きなショックを受けただろうと思うんです。ネットのイベントはネットでやればよくて,リアルに持ち込む必要はない――そう思っていたのに,そうじゃない人たちがたくさんいる現実を目の当たりにしたわけですから。
4Gamer:
なるほど。
川上氏:
で,冒頭の話に戻るんだけど,ニコニコ動画,そしてニコニコ超会議にどういう社会的役割があるのかっていうとね。僕はそれは「ネットとリアルの和解」だと思っているんですよ。
4Gamer:
“戦い”じゃなくて,“和解”ですか。
川上氏:
うん。そしてこれは,今後の日本にとっても,とても大きなテーマなんじゃないかと感じていて。
4Gamer:
ふーむ。
川上氏:
なんかさ。海外では「アラブの春(※)」が起こった原動力の一つとして,FacebookやTwitterの存在があるみたいに言われているじゃないですか。そして,なぜ日本ではそういったネットを使った政治運動が起こらないのかっていうのを,去年とか一昨年ぐらいにみんなが議論していまたよね。最近は日本でも,Twitter革命とか,ネットで選挙が変わるとか言われるようになってきたけど。
※2010年から2012年にかけてアラブ世界で発生した,前例のない大規模反政府(民主化要求)デモや抗議活動を主とした騒乱の総称。2010年12月18日にチュニジアで起こった「ジャスミン革命」を皮切りに,アラブ諸国に波及していった。
4Gamer:
「日本は遅れている」みたいな文脈として,それが語られていましたよね。
川上氏:
そうそうそう。だけど一方で,実際にそれで革命が起こった国々がどうなっているのかっていったらさ。今,とても酷い混乱状態にあるわけじゃないですか。扇動的な流れに乗っかった一つの結果として,国が混乱している。
4Gamer:
それこそ「ジャスミン革命」や「エジプト革命」は,ネットが大きな影響をもたらした革命として,今後の教科書に載りそうな事例だと思うんですけど,後世ではどういう位置づけになるんでしょうね。
川上氏:
今の日本でもさ。停滞感や鬱屈した空気が社会に溢れていて,それを打破するために,ある種の“革命を求める機運”ってあると思うんですよ。そして,その原動力の一つとして「ネットの力」ってものが期待されているように感じるんです。
4Gamer:
それはあるかもしれませんね。
川上氏:
だけど,今の状態のまま「ネットの力がリアルを突き動かす」ようになるっていうのは,果たして良いことなんだろうか? という問題意識が,僕のなかにはある。だいたい,ネットで炎上している案件とかを見ていてもさ,「そんなのどうでもいいじゃん」ってところで騒ぎ立てて,みんなで寄ってたかってボコボコにしているっていう事例が少なくないじゃないですか。
4Gamer:
そうですねぇ。
川上氏:
それってどうなの?ってやっぱり思うわけ。
あべちゃん:
割り込んで申し訳ないんですけど……。それって要するに,下手に大義とか正義を掲げて始めると,本末転倒な方向に向かう危険性があるよねって話なんですか?
川上氏:
いや,それもそうなんだけどね。うーん,どう説明すればいいのかな……。
4Gamer:
たぶんですけど,もともとネットって,社会的少数派(マイノリティ)が使うツールだったというか,そういう人達が集まる場所だったじゃないですか。だからネットの文化には,そういうマイノリティ――つまり虐げられた少数派――の意見が強い。ネガティブな意見が活発になりやすい場所として発展してきた歴史があると思うんです。
あべちゃん:
ああ,2ちゃんねるとかもそういう。
4Gamer:
ええ。で,近年では,テクノロジーやデバイスの進化で,そこにライトな新しい人達がどんどん入ってきているわけだけど,彼らはネット上の“そういう空気“に影響されやすいというのかな。安直な,目立つ意見に感化されやすいって流れがある――という話ですよね。
川上氏:
あ,そうそう。そういう話。ポイントは,ネットの世界とリアルの世界が分断されている状況でそうなっているということですよ。
4Gamer:
で,このまま状況が推移していく(ネットの力が大きくなっていく)と,そういう安直な言説に多くの人が簡単に扇動される世の中になってしまう恐れがあるし,実際にそうなりつつある。川上さん的には,そこに大きな危機感を抱いている――ってことで合ってますか?
川上氏:
合ってます(笑)。要するにさ,ニコニコ超会議が証明したように,もうネットの側がリアルを動かすって時代になって来ているわけですよね。ところが,ネットとリアルが別々の世界になっている状態でネットが世の中を動かすというのは,リアルを誤解したままネットが暴走する危険が高いと思うんですよ。
あべちゃん:
なるほどぉ。
4Gamer:
Twitterでデマが拡散しやすいだとか,悪質なサイトがはびこるのも,そういう側面の表れですからねぇ。川上さんの前では言いづらいけど,ニコニコ動画もそういうネガティブな側面は持ってますよね。
川上氏:
だから,誤解や思い込みを増幅させる拡声器としてネットの力を使ってちゃいけないと思うんだよね。本来は,もっとプラスの方向に持って行く,ポジティブな意見を増幅させるためのツールとしてネットを活用すべきなんだから。それだったら,ネットにももっと明るい未来が待っていると思うんですよね。
横澤氏:
そうですねぇ。
4Gamer:
そのためには,ネットとリアルとが和解する必要あるってことなんですか?
川上氏:
うん,ネットとリアルの世界はお互いもっと分かり合う必要があるのです。で,和解するにはね,やっぱり,ちゃんと戦っておくべきだと(笑)。戦うことでわかり合えることって多いと思うんですよね。
あべちゃん:
拳で語り合う的な……(笑)。
川上氏:
そうそう(笑)。これはさっきの話にも通じるんだけど,僕は,“誤解に基づくエネルギーの噴出”っていうのはよくないなっていつも思うんですよ。エネルギーが噴出すること自体はいいと思うんだけど,それが誤解を基に起こるのは,やっぱりよくないって感じるんですね。
で,その誤解を無くすためには,まずみんなが現状を正しく認識するってところから始めないといけないだろうと思っているんです。つまり,ネット(ニコニコ動画)は今やネット民だけのものではなくなっていて,リア充を含めたいろいろな人が共存している場所になっている。それをね,もっとちゃんと理解しなきゃ。
一同:
ふーむ。
その話でいうと,超会議が終わって一段落したあと,2ちゃんねるのVIPスレを覗いてみたんですけど,超会議については,結構いいじゃん的なコメントが多かったんですよ。だけど,同時に「お前ら,ここでニコニコを受け入れるのか? ここが最終防衛ラインだぞ!」みたいな書き込みもあって。ああ,彼らはそういう感覚なんだなってちょっと思いましたよ。
横澤氏:
ネット側の人間としてのある種の意地みたいなものもあるよね,きっと。
川上氏:
いやでも,そういう話でいうとさ。僕だって“ネット側の人間”なんだよね。ネット側だけど,リアルとの融和を唱えている“修正主義者”なんですよ。
4Gamer:
だからネット原住民みたいな人達からすると,裏切りに見えると。
川上氏:
でも,僕は信じているんです。ネットの人達にとっても,リアルと融和していくことが,結局は一番の最善策だって。確かに今はまだ,ネットとリアルの間で大きな亀裂があるかもしれない。だけど,ネットとリアルを和解させて,ちゃんと融合させていくことが,みんなの,日本の未来にとっては良いことだと,僕は思っているんです。
一同:
なるほどぉ。
川上氏:
そして,その意味でニコニコ動画にはね。その(和解)ための努力をしなきゃいけないっていう社会的責任があると,僕は思っているんですね。利益を度外視してでもやらなきゃいけない,ニコニコ動画の使命だと,本気で思っているんですよ。これは本当に。
4Gamer:
ネットとリアルの関係かぁ……。
川上氏:
たぶん,ネットとリアルの関わり方っていろいろあると思うんです。そして,その中の可能性の一つである「ネット側からリアルを浸食する」っていうのを実践してみせているのが,ニコニコ超会議の魅力だと思うんだよね。革命してリアルの世界を転覆させる必要なんてないんです。浸食して乗っ取っちゃえばいい。一緒になっちゃえばいいんです。