インタビュー
「モンスターハンター4」は,今までどおりの手触りですべてがステップアップした作品に。プロデューサー 辻本良三氏とディレクター 藤岡 要氏へのインタビューを掲載
本作は,高低差のある立体的なフィールドと,それを生かしたさまざまなアクションが導入され,プレイの幅が大きく広がっているのが最大の特徴だ。ボリュームも,操虫棍とチャージアックスを加えた全14種類の武器種,多数の新モンスター,そしてさらに充実したストーリーモードなど,シリーズ最大となっている。
また,インターネットマルチプレイに対応したり,すれちがい通信を使った「ギルドクエスト」という新要素が導入されたりと,通信要素もさらに拡充されている。
今回4Gamerでは,「モンスターハンター4」のプロデューサー辻本良三氏とディレクター藤岡 要氏にインタビューする機会を得た。シリーズ最新作に導入されたさまざまな新要素についてたっぷりと話を聞いてきたので,ぜひ最後まで目を通してほしい。
「モンスターハンター4」公式サイト
4Gamer:
「モンスターハンター4」が発表されたのは,2011年9月に開催された「Nintendo 3DS Conference 2011」でしたよね。実際に制作がスタートしたのはいつ頃だったのでしょうか。
辻本氏:
2009年の夏に「モンスターハンター3(トライ)」の開発が終わってからで,「モンスターハンター3(トライ)G」よりは前でしたね。「次,どうしましょうかね」という話からでしたから,当時は構想レベルでしたけど。
藤岡氏:
本当に「MH3(トライ)」が終わってからずっとですね。「MH3(トライ)G」も並行して進めていたので,夢話とかしている構想時期を入れると,トータルでだいたい2年半から3年の間くらいですかね。
4Gamer:
これまでのシリーズ作品では,「ドス」とか「トライ」とか,日本人にはあまり馴染みのない数字の呼び方でしたが,今回は「フォー」というストレートな呼び方になりましたよね。その理由を教えてください。
呼び方が「フォー」になった理由には,タイミング的に良かったというのがあります。
今回も,恒例の「どう呼びましょうか」という議論から始まったんですけど,藤岡はいつも,「ナンバリングは付けたくない」みたいな,ちょっと違うことを言い出すので,考えるのが本当に大変なんですよ(笑)。でも,ナンバーを付けるのは最初から決めていたので,「ダメです,ちゃんと付けましょう」と。
ただ,いろいろと考えてはみたんですけど,しっくりくるものがなかったんです。
実は,ロゴのデザインにも表れているんですけど,「MH4」には,モンスターハンターがステップアップするという意気込みを強く込めているんです。なので,いつもどおりの呼び方を考えるよりも,ストレートな呼び方にしてもいいんじゃないかなと。そう思ったのが,最終的に「フォー」で行こうとなった結論ですね。
藤岡氏:
呼び方を毎回変えたいというのは,タイトルに何かしらのメッセージを込めようという思いがあるからなんですけど,いろいろと探っても,なんかしっくり来るものがなかったんです。
今回は,1つの区切りでもあるというイメージもあったので,ここは素直に読ませることが,このタイトルにとっては一番いいのかなって思うようになって,ストレートに「フォー」にしました。
4Gamer:
モンスターハンターシリーズでは,タイトルごとにイメージカラーがあるそうですが,「MH4」のイメージカラーは何色なのでしょうか。
辻本氏:
「遺跡平原」フィールドのイメージでもある,黄色というか金色ですね。
藤岡氏:
ナンバリングの出発点のカラーは,だいたい暖色にしているんですよ。
4Gamer:
ちなみに,ロゴのバックにある紋章には竜の頭が描かれていますよね。これは,ナンバリングの数字に合わせた数になっているんですか?
藤岡氏:
そうですね。「MH3(トライ)」の時は三つ首でしたし。ちなみに,よく見ると中央にマークがありますよね。これは,キャラバンのトレードマークなんです。
辻本氏:
団長の背中にあるマークと同じものですね。
藤岡氏:
そのほかにも,いろいろな意味が含まれているんですよ。そのあたりは,ストーリーを進めてもらえれば分かる……かもしれませんし,分からないかもしれません(笑)。
右下が「MH4」のロゴ |
キャラバンの団長 |
今までのモンスターハンターの操作を踏襲しつつ,高低差のある地形を意識できるように
4Gamer:
モンスターハンターシリーズでは,作品ごとに毎回新しいチャレンジに取り組む,という話を以前のインタビューでお聞きしたことがあります。「MH4」で最初に取り組もうと思ったチャレンジは何だったのでしょう。
辻本氏:
ナンバリングタイトルなので,コミュニケーションやシングルでの遊びなど,伸ばすべき要素は当然あるんですけど,「MH4」では少し時間をかけてでも,アクションとしてのステップアップを目指そうということから始めました。
4Gamer:
コミュニケーション要素やシングルプレイの拡充よりも,アクションのステップアップを第一に考えたのはなぜですか。
辻本氏:
当時はまず,シリーズ作品をプレイしてくれてきた人達が,「MH4」が出るタイミングで,モンスターハンターをどう受け止めているのかな,と考えたんですね。プレイし続けていれば,若干マンネリ化もしてくるでしょうし,刺激が薄れるところも出てくるんじゃないかと考えると,やはりステップアップをしていかないといけません。
じゃあ何をステップアップするかというと,やはりいつもモンスターハンターでこだわっているアクションしかないだろうと。
そして,アクションのステップアップって何だろう? となったときに,平面だけじゃない高低差の導入をしようというのが,コンセプトとして決まっていったんです。
4Gamer:
方向性が見えてきたのは,いつ頃だったんですか?
任天堂さんのカンファレンスで公開したコンセプト映像が完成したときですね。
「平面でのアクション」という作り方では,モンスターハンターというか,アクションゲームとしては限界かなと思っていたんです。アクションゲームとして映える,もっと新鮮なものにできないかなということで,今回は,高低差にチャレンジさせてもらいました。
最初は,「モンスターハンター3(トライ)」のときに水中でモンスターを上や下から見られるのが,今までとちょっと目線が変わるのがいいなと思って,それを陸上でもナチュラルに生かせないかなという,ざっくりしたイメージだったんです。
カンファレンスで公開した映像を発表した頃は,段差とか壁とかをストレスなしで移動できて,モンスターもそれに対応してくるという方向性自体が見えてきた程度で,まだジャンプとかジャンプ攻撃みたいなものは影も形もなかったんですけど。
辻本氏:
コンセプト映像のままだったら,完全にモンスターが有利でしたよね。ハンターはスイスイ逃げられるけど,壁につかまっているときに攻撃できるくらいでしたし(笑)。
4Gamer:
その後,段差や崖を利用したさまざまなジャンプアクションが導入されたわけですが,単純に「ハンターがジャンプする」という形にしなかった理由を教えてもらえますか?
藤岡氏:
段差を作ることや地形に対して新しいアプローチを取ることが,遊ぶ人のストレスになってはダメなんです。
あくまでも,今までのモンスターハンターの操作を踏襲した形でのアプローチで,地形を意識できるようにするというのが,絶対条件としてスタートからありました。ジャンプがしたいから高低差を導入しよう,という話ではなかったんですね。
4Gamer:
なるほど。
まずは地形に対してストレスフリーで走り回れて,それだけで楽しいという状態に持っていこうと。そうすると,ダッシュで段差に飛び込んだときに,ポトッと落ちるよりもジャンプしたほうが気持ち良かったんですね。
そのときは,モンスターも当然そこにいるので,「ジャンプ攻撃がしたくなるよね。じゃあ入れようか」と。ジャンプ攻撃が当てられるようになってくると,当てた嬉しさが跳ね返ってきてほしくなりますから,そこで「乗り状態」に移行できるようにしようかと,生理的に気持ちいいこと,やりたくなることを入れ込んでいったんです。
ボタン操作も増やしたくなかったというか,むしろ減らす方向に向かいたかったので,ジャンプボタンを入れるという考えはまったくなかったですね。
4Gamer:
確かに,実際にプレイしてみると,段差を乗り越えたりジャンプしたりするのが,すごく「自然」な感じでした。
藤岡氏:
結果的には,どこでもジャンプを狙える操虫棍などの武器も作りましたが,モンスターハンターではナチュラルさのほうが相性が良い気がするんですよね。
4Gamer:
ちなみに,「乗り状態」のアクションを最後まで成功させるとモンスターをダウン状態にできる,というのが最大のポイントなのでしょうか。
藤岡氏:
設計としては,絶対にやらないといけない要素にはしていないので,クエストをクリアするだけだったら,今までのスタイルでも十分通用します。
ただ,モンスターを拘束できるのはすごく大きなメリットだと思います。とくにマルチでは,ダウンしている間に回復しようとか,砥石で斬れ味を回復しようとか,狩りの流れの中で皆に影響を与えて,いろんなシーンを作っていけるので,バンバン狙ってもらえればと。
4Gamer:
イベントバージョンでプレイしたときは,一緒にプレイしていた人が乗り状態のときに,モンスターを攻撃してダウンさせたら乗り状態が解除されてしまったのですが,そういう仕様なんですか?
藤岡氏:
そうですね。乗り状態のときにほかのハンターの干渉を受けない形も考えたのですが,それはあまり自然じゃないなと思ったんです。
クエスト中に「いま乗り状態だからそっとしておいて」といった新しいコミュニケーションも生まれたので,乗り状態中でもモンスターが倒れることがあるという形にしました。
辻本氏:
乗り状態でチャンスタイムになり過ぎると,アクションとして面白くなくなってしまう部分もあるんですよ。
藤岡氏:
選択肢があまりなくなってしまうのも,なんか違うかなと思うんですよね。
過去作でいうと,爆弾が爆発して皆がバタバタっと力尽きてしまうこともよくある話ですよね。普通に考えたら「なんで?」と思うかもしれませんけど,それも楽しそうだし残してもいいか,みたいな(笑)。
ほかの人が乗り状態のときに,「これくらいならいいかな?」って攻撃してもいいですから。「あ! ダウンしちゃった,ごめん」みたいなことにもなりますけど(笑)。
4Gamer:
なるほど。ほかの人のチャンスタイムを潰す,みたいな遊び方もできると。
藤岡氏:
気が許せる仲間同士なら,そういう遊び方もいいのではないかと(笑)。タイムアタックを突き詰めていくなら,乗り状態の間に倒れない程度に攻撃するということもできますし。それが一つのポイントになるなら,今までのモンスターハンターにあった形を残しておくべきかなと。
4Gamer:
壁を上っている間も,攻撃したりアイテムを使ったりと,いろいろなことができるようになりましたよね。
フルフルとか,壁や天井に張り付くようなモンスターもいますから,「MH4」では壁も狩りのフィールドの一部になります。先ほどのストレスの話につながるのですが,攻撃ができたり,上下だけじゃなく横にも動けたり,アイテムが使えたりしたほうがいいだろうと。
今までだとガンナー頼みで,剣士は待っているだけじゃないですか。それを,壁を上ってジャンプ攻撃をしたり,壁に張り付いたまま攻撃したりとかが自然にやれるようになると,いろいろなドラマが生まれるんです。
乗り状態もそうなんですけど,見せ場になりそうなシチュエーションだとジャンプ攻撃とかを狙いたくなるんですよ。
辻本氏:
うまいスタッフだと,モンスターの落下位置を狙って壁からジャンプ攻撃するとか,自然にやりますからね。
藤岡氏:
難しい操作を要求されるものではなく,ある程度は感覚でできるものになっていると思うので,いろいろなアプローチを試してみてほしいですね。
シリーズでは見たことのない武器を目指した操虫棍
「変型の次は合体だ」で決まったチャージアックス
「MH4」で追加された新武器種についてお聞きします。操虫棍のあとに,さらにチャージアックスが増えると発表されたときは,予想外のところもあったのですが,最初から武器を2つ追加すると決めていたんですか?
藤岡氏:
最低でも1つ追加するというのは決めていたのですが,いけそうなら2つ増やしたいねと話していたんです。考え始めたのは「操虫棍」が先ですね。
操虫棍は,モンスターハンターシリーズでは見たことのない武器を一個考えてみようということで,自由な発想から考えていきました。
その中で,猟虫を使うアイデアが面白そうだったし,過去作のイメージボードでも蟲使いのようなものはあったので,そのあたりも生かしつつ決めていきました。
棍棒のようなアイデアもあったのですが,それだけだとモンスターハンターらしいクセが出てきません。そこで,猟虫と組み合わせることで,とっかかりはすごくライトですが,突き詰めるとすごくテクニカルな武器になるという形が見えてきました。
辻本氏:
武器種を2つ増やそうという話はしていたんですけど,虫を操ることが果たしてカッコよくなるのか,真剣に心配していました。ただ,棒術がカッコよくなって,モーションとか連携を見たら,いけるなと感じましたね。
でも,絵だけだと「なんだこの虫」と思われるので,発表したらすぐにでも動いている姿を見せようとも思いましたけど(笑)。
藤岡氏:
先にもお話ししたように,「MH4」はジャンプアクションありきでは考えていませんでしたが,際立った要素ではあります。なので,ジャンプ攻撃を一番体感できて能動的に行える武器があっても面白いかなと思って,操虫棍に「跳躍」という自分でジャンプできる行動を入れました。
チャージアックスはどうだったのでしょう。
藤岡氏:
チャージアックスはストレートに決まりましたね。「MH3(トライ)」の頃から,変型の次は合体だと話していたのですが,スラッシュアックスとの違いを出して,剣と盾の合体というギミックの面白さも出せそうだったので。
辻本氏:
チャージアックスは,ちゃんと差別化できるかどうかがポイントで,操虫棍と比べると,どちらかと言えば心配していなかったですね。なにしろ操虫棍のときは,「どんな武器なの?」って聞いても,「虫を操る」という答えしか返ってこなかったので(笑)。
藤岡氏:
武器種を増やすときは,個性を失わせないというのが絶対条件だったので,うまく差別化してくれたことで,それを守れてよかったです。
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