インタビュー
MMORPGの面白さってなんだ?――オンラインゲーム開発のあれこれを語り尽くす「DQX」「FFXI」「FFXIV」プロデューサー座談会
黎明期の「ファイナルファンタジーXI」から積極的にオンラインゲーム開発に取り組み,最近では「ドラゴンクエストX」と「ファイナルファンタジーXIV」という,国内最大級となる3つのMMORPGを擁するスクウェア・エニックス。それら看板タイトルを任されている3方が集まるのであれば,もっと深い話を聞いてみたいと思うのがメディアの性。4Gamerでは,これ幸いとばかりに,普段あまり聞けないような話題をいろいろと振ってみようと考えた。
同じ会社で,「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」という2つのシリーズのオンラインゲームをサービスする理由は何か。それらを作っている齊藤氏や吉田氏,松井氏らは,どんなことを考えながら日々の仕事に取り組んでいるのか。MMORPGの面白さ,あるいは課題はなんだと思っているのか。そもそも,MMORPGを運営していて楽しいのか? 辛くないのか?などなど,普段から気になっていることをストレートに聞いてみた。
彼らのオンラインゲームの原体験となった「Diablo」「Ultima Online」「EverQuest」の昔話から,スクウェア・エニックスの舞台裏が垣間見える最近の開発秘話まで。居酒屋トーク全開のぶっちゃけ話をさっそくお届けしたい。
「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」公式サイト
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」公式サイト
「ファイナルファンタジーXI アドゥリンの魔境」公式サイト
「ドラクエXとFFXIVの棲み分け」はまったく議論されてない
4Gamer:
今回は,国内最大級のMMORPGを作られている方々に参加して頂き,「MMORPG」というものについていろいろなお話をうかがえればと思いますが,その前にまず,それぞれが担当されているタイトルの現状を教えてください。
まず僕(FFXIV)から言うと,現状のプレイヤー数(アカウント数)で言うと180万を超えたところですね。総キャラクター数でいうと675万キャラクター,プレイヤ−さんの累計プレイ時間が4億時間を超えたところまでは来ました。
4Gamer:
もう180万ですか。ちなみにデイリーのアクティブユーザー数でいうとどのくらいなんですか?
吉田氏:
えーと,デイリーアクティブというのは,誤解を受けやすい数字なんですよね……ピークタイムも日本と海外で違うので。毎日ログインしている人数で言うと,ワールドワイドで50万人くらいですね。2日に1回ログインの人などもいるので,そういう人をカウントすればもっと多くなります。国別の数値は……(同席している広報に目をやりながら)ごめんなさい。そこはちょっと勘弁してください。まぁそもそも,グローバル運営MMORPGタイトルのプロデューサーなら,大抵は中国展開してから数値を言うもんだとは思いますが(苦笑)
齊藤氏:
文字通り,桁が一つ変わるからねぇ(笑)
4Gamer:
「ドラゴンクエストX」の方は現状どのくらいなんですか?
こっちは日本でしか展開してないから,純粋に日本だけの数値ですけれど,1日で30万人くらいのお客さんがアクティブに遊んでくれていますね。昨年末にバージョン2を出させて頂いて,おかげさまで,そこからまたアクティブユーザーが増えてきています。当初は,バージョン2で逆にお客さんが減ってしまうんじゃないかって怖さもあったんですけど。
4Gamer:
ああ,「区切りを付ける」みたいな。
齊藤氏:
ええ。でも,そうした傾向はまったくなくて安心しました。まぁ,バージョン2は買ったのにレンダーシアには行ってないって人が多かったのだけは予想外でしたけどね。
4Gamer:
そうなんですか? みんな何をしているんだろう。
齊藤氏:
カジノに入り浸ってたり……ですかね。皆さん,自分のペースで遊ばれてる感じでした。
4Gamer:
FFXIはどんな感じですか?
先の2つのタイトルと比べられてしまうと,ちょっとこの場では言いづらいですね。昨年には「アドゥリンの魔境」を出させて頂いて,結構プレイヤーさんが戻ったりはしているんですけども。やはりFFXIVの影響で,そちらへ移行された方がかなりいらっしゃいますから。
吉田氏:
いやでも,そんなこと言ってたら,他のオンラインゲームを運営されている会社さんから怒られますよ。僕は実際に数字を知っていますけれど,まだまだかなりのプレイヤーさんで賑わってますから。ドラクエXやFFXIVやら,これだけ大きなタイトルがひしめき合っているなかで,こんなにも遊んでもらえてるのはすごいことだなって思います。
松井氏:
そうですね。
4Gamer:
これは,一度正面からお聞きしてみたかったんですが,スクウェア・エニックス社内で,例えば「ドラクエXとFFXIVの棲み分け」ってちゃんと議論されたりはしたんですか?
齊藤氏:
まったくないですね。
吉田氏:
言い切りましたね(苦笑)
齊藤氏:
だって,それを気にしてたら面白いものができないですから。そもそも,それぞれのタイトルでやりたいことも違うし,お客さんの求めるものも違うと思いますよ。
吉田氏:
話し合いをしたわけじゃないですけど,結果的に棲み分けられていますよね。
4Gamer:
お互い競争意識みたいなものはあったりするんですか?
吉田氏:
競争意識は特にないですが,どうしてです?
4Gamer:
いや。以前,齊藤さんが「FFXIVには絶対負けない!」とおっしゃっていた記憶があったので。
齊藤氏:
それは私じゃなくて,藤澤(※)の方じゃないですか(笑)
※藤澤 仁(ふじさわじん):スクウェア・エニックス 開発部 ディレクター。1998年より堀井雄二氏のアシスタントとして「ドラゴンクエスト」シリーズのシナリオ制作に参加。「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」ではディレクターを務めた。「ドラゴンクエストX」でもディレクター&シナリオを担当し,ゲームの運営と開発を統括していた。「ドラゴンクエストX」ではバージョン1の開発終了に伴い,ディレクター職を退いている。
4Gamer:
すごく印象に残っているんですよね。
吉田氏:
この後に藤澤と飲みに行く予定なんですが,「余計なこと言うな!」って言っておきます(笑)
かつては「夢のゲーム」だったMMORPGというジャンル
4Gamer:
さて。どこからお聞きしようか悩ましいですが,それこそMMORPGというジャンルが初めて世の中に出てきたときって,ある種「これは夢のゲームだ」って感覚があったじゃないですか。
松井氏:
夢のゲームっていうか,電話代が夢のような額になってた記憶が……。
吉田氏:
数字を見ると夢から覚めるよね。
齊藤氏:
これはMMORPGじゃないけど,私も「Diablo」にハマった時は数万円って請求が家に来て。「これはやばい!」と思って会社でやるようにしましたし。
一同:
(爆笑)
4Gamer:
当時はまだ,インターネット接続が定額制ではなかったですからね。「テレホーダイ」とかはありましたけど。
吉田氏:
「Diablo」の時は,僕はハドソンに勤めていたんですけど,あれはLANでもマルチプレイを遊べるから,僕はBattle.netにはつながずに,会社のLAN環境メインで遊んでいたんですよ。だから,電話代はあまりかからなかった。でも,「Ultima Onile」は本当にヤバかったです。それこそ,月12万円くらい電話代の請求が来てて。あの頃は,ちょうどダイヤルQ2とかがはやっていた時代でもあったので,「何かそういうものにハマってるんじゃないか」って,母親にもの凄く心配されたりしてましたからね(苦笑)。
齊藤氏:
私は「Ultima Online」で,キーボードのキーにセロハンテープを貼って,ずっと自動でカカシ(※)を叩いてましたよ。会社のPCで(笑)
※戦闘スキルアップのためのトレーニング用の人形のこと。上昇幅は少ないが,ひたすら攻撃し続けることで,安全にスキルを上げられた
一同:
(爆笑)
齊藤氏:
帰宅する時にセロハンテープでアタックキーを押し込んだ状態に固定して。次の日の朝出社したら,そっとセロハンテープを剥がすっていうね。そういう生活をしてましたから。
吉田氏:
4Gamer:
4Gamer読者以外ではなかなか共感しづらい話題かもしれないですね(苦笑)
吉田氏:
松井さんはどうだったんですか?
松井氏:
僕は,FFXIのプロジェクトを立ち上げるってあたりの時期に「Ultima Online」や「EverQuest」,あと「Asheron's Call」とかやってました。確か「Ultima Online」は,ちょうど世界が「PKあり」と「PKなし」の2つに分かれたタイミングで。
※PK(Player Kill):他のプレイヤーを攻撃して殺せるシステムを指す
吉田氏:
「フェルッカ」と「トランメル」だね。
※「Ultima Online」の舞台である「ブリタニア」は,当初は一つの世界だったが,プレイヤーの要望を受け入れ,途中で「フェルッカ」「トランメル」と呼ばれる2つの平行世界に分かれる形となった。トランメルが「平和」,フェルッカは「戦乱」の世界を指す
松井氏:
ですです。ただ,僕は「Ultima Online」にはそれほどのめり込まないうちに,「EverQuest」の方にハマってしまって。「EverQuest」は,世界観やシステムのベースが「アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ」なので,僕的には馴染みやすかったんですよね。
4Gamer:
思い返せば「EverQuest」も,今じゃ考えられないくらい理不尽なゲームでしたよね。
吉田氏:
とにかく,よく死にましたしねぇ。
松井氏:
ゲームを始めたばかりの頃だと,街中の道端の溝にハマっておぼれ死ぬとかもありましたよね。
齊藤氏:
ウッドエルフで始めると,キャラを作って歩き始めた瞬間に木の上から落ちて死んだりね(笑)
4Gamer:
ウッドエルフで死ぬのは定番でした。
吉田氏:
ウッドエルフの最初の町って,なぜか死体がいっぱい転がってて。最初は「なんで死体が?」と思うんだけど,自分もその死体の仲間入りをして,その理由を理解するというね。日本のゲームだったら,木の上の道の手すりにコリジョン(当たり判定)を付けたりして,ちゃんと落ちないようにしたりすると思うんだけど(苦笑)
4Gamer:
「EverQuest」って,当時のスクウェア・エニックス社内ではやっていたんですか?
吉田氏:
はやっていたというか,「ファイナルファンタジーXI」開発直前の頃,「EverQuest」は全員やれって話になっていたと聞きましたが。
松井氏:
そうですね。開発に入る前に「とりあえずやってみろ」って話になって。だから,研究と称して会社でも存分に遊べたんです。まぁただ,それはそれで諸刃の剣だったというか……。
齊藤氏:
会社に来なくなった人が続出,みたいな。
吉田氏:
それこそ,「ドラゴンクエストX」でワールド班のリーダーをやってる青木さんなんかは,あまりに会社に来ないもんだからノーラス(※)で打ち合わせをしてたらしいですしね。
※「EverQuest」の冒険の舞台となっている大陸
松井氏:
それは本当です。電話やメールには反応がないけど,ゲーム中でTellをすれば捕まるっていう。
4Gamer:
やっぱりオンラインゲームの開発って,自分でも遊んで“独特の感覚”を掴まないと作れない,みたいなところはあるんですか?
齊藤氏:
どうなんでしょうね。パッケージもオンラインも,「楽しいモノ」を作ろうぜって心持ち自体に違いはないとは思いますけど。
吉田氏:
ただ,オンラインゲームの場合は,プレイヤーとしての経験があった方が「地雷」を避ける勘は鋭くなる気がするので,開発に有利かどうかでいえば,プレイヤーとしての経験はあった方が間違いなく有利なような気はします。
松井氏:
「何のためにあるんだろう」っていうルールとか,遊んだ経験がないと理解できなかったりしますしね。
吉田氏:
そうそう。それにプレイヤーさんからすると,「なんでこうしているんだろう?」って思える部分でも,大抵の場合は作り手側にちゃんとした理由が――当たり前ですけど――ありますからね。
4Gamer:
話をまとめると,皆さんのオンラインゲームの原体験は,やっぱり「Diablo」「Ultima Online」「EverQuest」あたりってことになるんですか?
齊藤氏:
そうですね。ただ,私自身は「ファイナルファンタジーXI」の影響もかなり受けていると思います。物事を判断するうえでのベースの一つになっている。
吉田氏:
齊藤さんは相当やってましたもんね。
うん,やってた(笑)。まあ,「World of Warcraft」もかなりやったけど,「ファイナルファンタジーXI」には敵わないですね。その前にも,皆さんがあまり知らないだろう国産のMMORPGなんかを結構遊んでいたんですけど。
4Gamer:
「LIFE STORM」(※)とかですか?
※国産初のMMORPG。サービスが開始された1998年当時は,まだインターネットの常時接続などといったインフラが整っておらず。ビジネス的には苦戦した。ちなみに開発元であった日本システムサプライのメンバーの多くは,後にドワンゴへ移籍している。
齊藤氏:
「LIFE STORM」もやってましたし,後は「Dark Eyes」(※)とかですね。
※オンラインゲーム黎明期の国産MMORPGの一つ。「LIFE STORM」同様,ビジネス的には苦戦を強いられ,2002年にサービスを終了した。
吉田氏:
「Dark Eyes」とは懐かしい。
4Gamer:
それはお仕事でやっていたんですか?
齊藤氏:
いや,単なる遊びで。
4Gamer:
なんで齊藤さんは,その当時からそんなにオンランゲームに傾倒していたんですか?
齊藤氏:
根が暗いからですね。
一同:
(笑)
齊藤氏:
いや本当に。だって当時,私が住んでいたアパートって,家具とかもない6畳1間の部屋で。そこに水槽とPCが床にそのまま置いてある,みたいな。そんな生活でしたからね。
4Gamer:
ええっ。ちなみに水槽では何を飼ってたんですか?
齊藤氏:
水槽ではクマノミを飼っていました。で,床にデスクトップPCを直に置いて,モニターも直に置いて。フローリングとは名ばかりの何も敷いてない冷たい板張りの床に寝転がりながら,いろんなオンラインゲームを遊んでいました。
4Gamer:
齊藤さんって,そういう方だったのか……。
吉田氏:
いや,そんなタイトロープ(※)な生き方をしてきて,よく今のポジションにあがってこられましたよね。
※綱渡りに使う張り綱。危険を冒すことや,危ない橋を渡ることのたとえに用いる。
齊藤氏:
そうだね。危なかったね。
4Gamer:
ちなみに齊藤さんは,今もご自身で「ドラゴンクエストX」をよく遊ばれてると聞きましたが,実際どのくらい遊んでるんですか。
齊藤氏:
平日なら,平均して3時間くらいかな。休日だと……10時間以上は遊んでるかも(苦笑)
4Gamer:
そ,それは相当ですね……。
吉田氏:
最近の齊藤さんを見てても思うんですけど,本当に“廃人寄り”ですよね。FFXIVは遊ばないんですか?
齊藤氏:
働いてなかったら,FFXIVも並行して遊べると思うんですけどね。さすがに仕事をしていると,2つ同時にMMOをやるのは厳しいです(笑)
それぞれがオンラインゲーム開発に乗り出した経緯
4Gamer:
そんな齊藤さんですが,日本のオンラインゲーム開発の歴史って意味では,それこそ最古参の開発者の一人に数えられますよね。齊藤さんがオンラインゲームの開発に携わるようになった経緯はどういったものだったんですか。
そうですね。私は,割と黎明期から「メールdeクエスト」だとか,「クロスゲート」などといったオンラインゲームを作ってきたんですけど,オンラインゲームというジャンルをそこまで意識していたかというと,実はそんなこともなかったんですよ。
今名前を出した2つの作品を作っていた頃も,並行して「ユーラシアエクスプレス殺人事件(※)」だとか「アストロノーカ(※)」みたいなゲームを作っていましたし。純粋にジャンルの一つとして捉えていたというか,楽しい遊びの一つくらいにしか考えていなかったですね。
※ユーラシアエクスプレス殺人事件:1998年にエニックスよりプレイステーション向けに発売された,実写映像を使ったアドベンチャーゲーム。
※アストロノーカ:宇宙一の農家を目指し,宇宙の果ての小惑星に入植してきた宇宙農家(アストロノーカ)を主人公とした,プレイステーション向けの育成シミュレーションゲーム。
4Gamer:
そうなんですか。オンラインゲームに何か特別な思いやこだわりがあるのかな……とも思っていたのですが。
齊藤氏:
もちろん,オンラインゲーム――というか,みんなで遊ぶって部分――には大きな魅力を感じていたし,そういう面白いモノを自分でも作りたいって気持ちはありました。ただ,当時のエニックスは,完全にパッケージゲームが主体の会社だったから,オンラインゲームを作るにあたっての“ビジネス的なスキーム”を整えるところが,とにかく大変で。
4Gamer:
とくに2000年以前は,PCゲーム自体もマイナーでしたし,ましてオンラインゲームなんて……というところはありましたよね。
齊藤氏:
はい。だからこそ,運営費がこれくらい掛かって,月額課金で売上がこのくらい立って――みたいなビジネスのフォーマットを会社に理解してもらうまでが大変でした。また,当時はサービスの規模も小さかったから,自分でいろいろやらなければいけなくて。自分でデータセンターに行って,手作業でサーバーを挿すみたいなことはよくやっていましたね。あの頃は,コミュニティーエンジンの中嶋くん(※)にも手伝ってもらったりして。懐かしいな。
※中嶋謙互(なかじまけんご):オンラインゲーム専門の開発会社としてコミュニティーエンジンを創業し,数々のオンラインゲーム開発に携わった人物。コミュニティーエンジンは業績不振で2010年に解散したが,中嶋氏は,現在「Airship Q(仮称)」の開発に参加。同タイトルは,クラウドファンディングで資金集めに成功している。
4Gamer:
そういう実績を買われて,「ドラゴンクエストX」のプロデューサーに?
齊藤氏:
ドラクエでMMOをやるってタイミングで,たまたま社内にいた都合のよい人間が私だったということもあるんでしょうけど……。でも,例えばこれがMMOじゃなくて,普通のドラゴンクエストのナンバリングだったら,たぶん,プロデューサーをやるって話は引き受けてなかったと思います。私よりも適任者がいたでしょうしね。
でも,ドラクエの世界観でMMOを作れる,ドラクエが好きな人達が集まれる場所を作れるって考えたら,それはやっぱりワクワクしたんです。だから,引き受けました。もちろん,大変なこともたくさんあったんですけど,作ってて本当に楽しいんですよね。
それにいちゲーム開発者としてって意味でいうと,今もそうなんですけど,堀井(※)さんと一緒に「あーじゃないこーじゃない」ってやれるのが,一番嬉しい。これは本当に楽しいです。この仕事を引き受けてよかったなって思っています(笑)
※堀井雄二(ほりいゆうじ):ご存じ,ドラゴンクエストの生みの親で,日本を代表するゲームデザイナーの一人。
4Gamer:
吉田さんも,FFXIVの開発に入る前は,齊藤さんの下でチーフプランナーとして「ドラゴンクエストX」の開発に参加されていたんですよね?
吉田氏:
はい。僕はその前は,エニックスにオンラインゲームの企画を持ち込んでいて,それを作っていたんですけれど,作っている間にエニックスとスクウェアが合併して。2転3転あって,結局その企画はお蔵入りになってしまったんです。そんな時に,齊藤さんから連絡があって。行ってみたら,齊藤さんが会議室のホワイトボードにおもむろに「ドラゴンクエスト オンライン」って書き始めたんですね。で,さらにその下に「吉田」って書いて,「こういうことだから!」みたいな。
4Gamer:
それは,吉田さんが北海道で家を買ったのを,齊藤さんが知らないふりをしてオファーしたってお話ですか?
吉田氏:
そうですね。当時僕は北海道に住んでいたんですけど,「せっかくだから東京でリベンジしないか」って言われて。それで,「ドラゴンクエスト オンライン」――もとい「ドラゴンクエストX」の4番目の開発スタッフとしてチームに参加しました。で,堀井さんと「ドラゴンクエストX」のシナリオを詰めながら,「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」(※)のゲームデザインとかディレクターもやったりしてたんですけど,ある日,「ドラゴンクエストX」のアルファ版が出来たあたりの時期に,今度は会社から「なにか新しいプロジェクトを立ち上げろ」と言われて。
※ドラゴンクエストシリーズを題材にしたアーケード用のカードゲーム。シンプルなシステムながらも,ドラクエファンをニヤリとさせる演出の数々で人気を集めた
齊藤氏:
端から聞いてると,むちゃくちゃな会社だよね(笑)
吉田氏:
ホントに(笑)。藤澤さんが「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」の開発から戻ってきたタイミングで,「ディレクターは一人でいいだろう」みたいな話になったらしいんですけど,とにかく「吉田は新しいIPを立ち上げてくれ」ということになった。ただ僕は,プロジェクトを途中で抜けた経験はないし,嫌ですという話をしていて。それでも「社命だったら従いますけど」みたいな返答をしていたんですが,僕が出張している間に「ドラゴンクエストX」のチームには話があったようで。出張から戻ったら,新しいプロジェクトを立ち上げることになっていました。
4Gamer:
うーむ(笑)
吉田氏:
でも,それは齊藤さんの親心でもあって。その話は僕にとっても大きなチャンスだったから,その方がいいだろうという。「ここまで仕上がれば,後はなんとかするから」って。「吉田はそっちへいけ」と。
齊藤氏:
ただまぁ,FFXIVに出したつもりはなかったんですけどね。
吉田氏:
そうですねえ……新規の立ち上げに向けていろいろやっていたら,FFXIVがえらいことになっていて。今度はその話に巻き込まれるというか,飛びこむ形に。
齊藤氏:
その時も,いろいろ話し合ったんだよね。
吉田氏:
唯一,齊藤さんだけでしたよ。FFXIVの作り直しについて,「大丈夫。吉田ならなんとかできる」と言ってくれたのは。ほかの人は,みんな「なんでそんな話を受けるんだ!」って言ってましたからね。でも齊藤さんだけは,「吉田なら大丈夫。もしなにかあっても,チーム全員で駆けつけてなんとかするから」と言ってくれて。
4Gamer:
今だからこそ,結果オーライと言えなくもないですが,引き受ける仕事(キャリア)としてはおそろしくリスキーな案件ですよね。
吉田氏:
そうだったと思います。逆に藤澤さんは,「本当に何を考えてるんだ。男気見せるものいい加減にしろ!」みたいな感じで,完全に反対派でしたからね(苦笑)。あれはあれで藤澤さんの優しさなんです。最初の頃は,松井さんもFFXIVの開発に駆り出されたりして。本当に大変でしたよね。
松井氏:
そうでしたねぇ……。
4Gamer:
松井さんがオンラインゲームの開発に携わるようになったのはどういう経緯だったんですか。
僕は,FFXIに関わる前は,プレイステーションの「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」の開発に参加していました。ただ,聖剣伝説の開発が終わった頃,プレイステーション2に移行しますよってあたりの時代で,ゲーム開発がビジュアル面の制作に膨大なリソースを割かれるようになっていきましたよね。個人的には,そこに違和感を感じていて,自分自身の行く末にも行き詰まりを感じていたんです。だけど,オンラインゲーム(MMORPG)って,グラフィックス以外の部分で頑張らなきゃいけないことが多いジャンルじゃないですか。
齊藤氏:
そうだね。
松井氏:
だから,僕としては「これは,まだルールとかシステムが中心のジャンルだな」って感じて。自分としてはすんなりと開発に入っていくことができたんですよ。
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