レビュー
アニメ版ファン/コアなシリーズファンの両方を満足させる究極のリメイク作
ペルソナ4 ザ・ゴールデン
「ペルソナ」といえば「真・女神転生」と双璧をなすアトラスの看板RPGシリーズだが,中でも「ペルソナ4」は,昨年10月にTVアニメ化が実現しており,そのほかにもコミック,舞台など多岐にわたるメディアミックスでヒットを飛ばしている超人気タイトルだ。
さらに2012年3月には,アークシステムワークスと共同開発した2D対戦格闘ゲーム「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」(アーケード版)が稼働しており,そのコンシューマ版(PS3 / Xbox 360)も7月26日に発売予定となっている。なおコンシューマ版では,シンプルながら奥深い駆け引きが楽しめる格闘部分はそのままに,30時間以上楽しめるボリュームのストーリーモードを搭載。「ペルソナ4」で描かれなかった物語が展開されるということで,大きな注目を集めている。
このように,現在進行形でブームが継続していると言っても過言ではない「ペルソナ4」。「P4G」もリメイク作ながら,PS Vitaタイトルとしては異例の13万7000本(メディアクリエイト調べ)という初週販売本数を記録した(関連記事)。
さまざまな追加要素とシステムのブラッシュアップにより,“リメイク”の一言で片付けられないほどの進化を果たした「P4G」の魅力を,本稿では存分にお伝えしていこうと思う。
「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」公式サイト
日常と非日常が交錯する世界観
濃度の高い青春の日々を過ごそう
そして,心の力を具現化するという“ペルソナ”能力に覚醒した主人公は,やがて,同じくペルソナ能力に目覚めた仲間達と共に,連続殺人事件の真相へと迫っていくことになる。
勉強,部活,怪物,バイト,推理,迷宮,殺人,恋愛,心の闇……本作のストーリーは,日常と非日常が交錯した世界観の中で,人間的に成長していく少年少女達の姿を描いた青春群像劇だ。ゲームシステム的にも,日常生活パートとマヨナカテレビ探索パートを交互に進めていく流れとなっており,日常と非日常のギャップを楽しめるのが大きな特徴となっている。
日常パートでは,勉学や部活に励み,友人達と遊び,趣味に没頭し,アルバイトでお金を貯め……まさに,“青春”と呼ぶにふさわしい日常を謳歌することができる。やれることが非常に多く,日々「今日は何をしようか」と悩んでしまうほどだ。
ちなみに「P4G」では,オリジナル版にはなかったイベントやアニメシーンも多数新録されている。サブクエストでも行動の幅が広がっており,家庭菜園で野菜を育てたり,神社で虫取りをしたりおみくじをひいたり,夜の町へと繰り出したり,さらには原付免許を取得することで,隣町である“沖奈市”や“七里海岸”まで行けるようになったりする。
本作の良い所は,ストーリー序盤からこういった新たな楽しみに触れられるという点で,おかげでオリジナル版をクリア済みの筆者でも,完全新作を遊んでいるような気持ちでプレイできた。
本作では夜釣りができるようになったほか,さまざまな人物と交流を深めることができる。限られた時間をより有意義に過ごせるようになったわけだ |
PS Vita版ならではの新機能として,同じ場面でほかのプレイヤーがどんな行動をとったのかをチェックできる「みんなの声」が搭載。やれることが多すぎて悩んでいる人は,攻略の参考にしてみよう |
オマケ要素として,さまざまなコンテンツを鑑賞できる“番組表”が登場。ダンジョン以外の自由行動中ならばいつでもアクセス可能で,とくに“マヨナカ横断ミラクルクイズ”は一見の価値アリ |
コミュには,対応キャラクターごとに“魔術師”“隠者”“悪魔”などといった“アルカナ”が設定されており,対象となるキャラクターと楽しい時間を過ごしたり,悩みを聞いてあげたりすることでコミュイベントが進行し,ランクが上昇していく。
コミュイベントの内容は多種多様だが,どれもプレイヤーの心に響いてくる“青春濃度”の高いシナリオで,感情移入度の高さがハンパじゃない。コミュをメインストーリーと共に進め,各キャラクターとの絆を深めていくことで,RPGタイトルの中でも屈指の濃厚なゲーム体験が得られるのである。
「P4G」での要注目ポイントは,“永劫(マリー)”と“道化師(足立 透)”の追加で,マリーに至っては完全な新キャラクターだ。コミュイベントを通じて彼女のことを知れば知るほど,そのコケティッシュな魅力にメロメロになっていくだろう。一般的な性癖の持ち主である筆者がそうだったので間違いない。
一方の足立は,役割的にかなり意外なコミュキャラクターとなった。オリジナル版では描かれなかった彼の内面に迫るエピソードがふんだんに盛り込まれており,ある意味「ペルソナ4」ファン的には必見だ。
なおパーティメンバーに関しては,コミュランクを上昇させることで戦闘力が増強したり,(一部の女性キャラクターは)MAXランクに到達した時点で特別な関係になれたりもする。どれくらい特別かというと,運動後シャワーも浴びていないのに抱きしめられたり,主人公の部屋へ遊びに来たあと“なぜか”靴下を忘れていってくれたり……というくらいに特別な関係だクンカクンカスーハースーハー!
人格の鎧を纏い困難に立ち向かえ
大切な町と人々を守る“凄春”の戦い
ゲーム開始時に選択する難度次第ではあるが,本作の戦闘はかなり歯応えのあるバランスになっており,ノーマル以上だと,たとえザコ敵が相手でも一瞬で全滅する可能性があるほど。もはやアトラスのタイトルにおいては伝統とも言えるが,「敵の弱点を突き,自分の弱点は守る」という戦術が生死を分けるゲームバランスになっている。
これだけ聞くと,コアゲーマー向けのタイトルにありがちなツラい長期戦を連想してしまう人もいるかもしれないが,とんでもない。本作では,敵の弱点を突くことで発生するダウン効果と“1 MORE”チャンスによって連続行動が可能となっており,すべての敵をダウンさせれば“総攻撃”チャンスが発動。敵全体に万能属性のダメージを与えることができるのだ。
さらに,オリジナル版ではナビ役に徹していた“久慈川りせ”が,戦闘にも参加してくれる“チアーアップ”や,ダウンした敵に控えのメンバーがバイクで特攻してくれる“バイク追撃”,特定メンバーの組み合わせで発動する“同時攻撃”などが追加されており,戦闘面のシステムはさらにスリリングかつ爽快になっている。とくにオリジナル版をプレイ済みの人にとって,これらは特筆すべきポイントだろう。
ペルソナのステータスや所持しているスキルは多種多様で,仲間達のペルソナは各人の“心の力”として固定されているが,主人公は“ワイルド”の特殊能力によって,多種多様なペルソナを装備することができる。敵の弱点を見極め,状況ごとに主人公のペルソナを変更しながら戦えるのが本作のキモなのだ。
なお「P4G」では,“検索合体”で簡単に目的のペルソナが生み出せるようになっているなど,合体システムがブラッシュアップされている。日によってペルソナにさまざまなボーナス効果が発生する“合体予報”や,お目当てのスキルを合体なしで覚えさせられる“スキルカード”など,便利なシステムが追加されたことで,プレイアビリティが大幅にアップした。
従来の「ペルソナ」シリーズでは,アトラスのタイトルに不慣れなプレイヤーからすると,合体システムが少々難しかったかもしれないが,本作ではそれがずいぶんと改善されている。しかも,決してヌルくなったわけではなく,ちゃんとやりこみ要素の増強にもつながっている点が見事だ。携帯ゲーム機向けのタイトルではとくに重要視されるストレスフリーなシステムを,「P4G」は高水準で実現していると言えるだろう。
一度手に入れたペルソナは,お金を払うことで“ペルソナ全書”から再召喚できる。惜しまずどんどん合体していこう |
シャッフルタイムで入手したスキルカードは,ベルベットルームにいるマリーに渡すことで,以後何枚でも購入できるようになる。多少値は張るが,有用なペルソナをスムーズに生み出すためにどんどん利用していきたい |
“傑作”が“超傑作”に進化
コアなファンも納得のリメイクタイトル
思い返せば,同じくPS2タイトルから携帯ゲーム機に移植された「ペルソナ3ポータブル」は,PSPというハードのスペック的な限界から,さまざまな要素をスポイルしつつ,アレコレと工夫をこらして新要素を盛り込んでいた。しかし,「P4G」に関してはそのようなことが一切なく,PS2版よりもすべての面においてパワーアップしているのだから驚きだ。
個人的には,「PS Vitaを持っているならこれだけは必ずやっとけ!」と断言できるほどオススメの「P4G」。ちょうど主人公達と同年代の学生諸君には,ぜひとも腰を据えてプレイしてほしい。そして過ぎ去りし日々を懐かしく想う大人達も,ロマンと冒険に満ちた“2度目の青春”を,かけがえのない仲間達と共に過ごそうじゃないか。あの頃に置いてきた“もうひとりの自分”と再び向き合うことができるRPG,それが「P4G」なのだから。
「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」公式サイト
- 関連タイトル:
ペルソナ4 ザ・ゴールデン
- この記事のURL:
キーワード
(C)ATLUS(C)SEGA All rights reserved.