ムービー
最初はDS向けに開発されていたという「リズム怪盗R」。プロデューサーの中村 俊氏へのインタビューと,対戦モードのプレイムービーを掲載
一番気持ちいい“リズム”を形にした「リズム怪盗R」
もともとは“DS向け”で,世に出なかった可能性も?
ここからは,中村氏に「リズム怪盗R 皇帝ナポレオンの遺産」についての話を聞かせてもらったので,その模様をお伝えしよう。中村氏が本作で大切にしたコンセプトや,本作が世に出るまでのさまざまな裏話が聞けたので,ぜひ目をとおしてほしい。
4Gamer:
「リズム怪盗R」はオリジナルの新規タイトルとして発売されましたが,開発中はどのような苦労があったのでしょうか。
今は新しいタイトルを出すにはけっこう厳しい状況なので,作りたがる人も少ないですけど,チャレンジしないと業界的にしぼんでいくだけなので,やはり新規IPは必要です。また,海外が強くなっている中,日本人はどちらかというと,新しい楽しさを提供するとかのほうが得意なのかな,というところもあったんですよ。
4Gamer:
それで,中村さんが以前手がけた「サンバ DE アミーゴ」の続編のような形ではなく,同じリズムゲームでも,新しいアプローチで制作したと。
中村氏:
「サンバ DE アミーゴ」をやっていたときには,“曲だけを変える”というシステムでは面白くなく,限界を感じたので「止めましょう」ということになったんです。
それからは,アクションゲームやスポーツゲームを開発していたのですが,自分の中で,ゲームの一番気持ちいいところは,リズムだとあらためて思い至ったんですね。
たとえばソニックだったら,BGMに合わせてタイミング良くジャンプできる人には気持ち良くても,できなくて止まってしまう人には,つまらないんですよ。
リズムゲームだと,その部分は必ず「何かをしなきゃいけない」ものなので,気持ちが良くなる確率が高いんです。それをなんとか「モノにしたい」と思って,4年ほど企画を考えていたんです。なかなか機会がなかったのですが,チャンスをもらえて,ようやく「リズム怪盗R」で実現できました。チャンスをもらえたあとも,山あり谷ありでいろいろあったんですが(笑)。
4Gamer:
「リズム怪盗R」の開発中,どのような苦労があったんですか?
中村氏:
実はもともと,「リズム怪盗R」はニンテンドーDS向けに開発していたんです。でも,DSだとなかなか上手くいかなくて,企画が潰れる直前だったんです。
ただ,そのタイミングで3DSという新しいハードが出ることが分かって,会社として,3DS向けにどんなゲームを作ろうかという話が出たので,「やります」と立候補したんです。
4Gamer:
DSで上手くいかなくても,3DSならなんとかなるかもしれないと思ったわけですね。具体的にDSで上手くいかなかったというのは,どのような部分だったんでしょうか?
DSのときって,やはり2Dベースで作っていたので,動きとか,リズムゲームとしていまいちな部分を直すというのがなかなか難しかったんです。
DSで開発しているときはなかった要素なんですけど,3DSでは立体視があったので,まずはダンスシーンを作ってみたんです。実際のダンスシーンで活躍されている振付師の方にモーションキャプチャーをお願いして,“怪盗R”にダンスの動きを採り入れてみたら手応えが良いものになって,そこから開発にも,ようやく光が見えてきたんです。
4Gamer:
3DSの登場は,まさに渡りに船だったんですね。
ただ,今回のアニメは,3DSに開発をシフトする段階で,絵コンテとかはすべて描き終わっていたんです。立体視対応の3DSで出すのであれば,さすがに立体視対応にしないとダメだろうということで,もともと2Dで描いていたアニメを,3Dで見栄えがいいように,全部作り直しました。
4Gamer:
「リズム怪盗R」のリズムゲームは,難易度が比較的低めに感じられたのですが,どのようなコンセプトで調整したのでしょうか。
中村氏:
今回はストーリーがある分,やはり難易度にはとくに気を遣いました。
アニメを頑張ったというのもあったと思いますが,東京ゲームショウなどでプレイしていただいた方からは,「ストーリーの先が気になる」という意見を多くいただいていたんです。
アーケードの「サンバ DE アミーゴ」のときも,200円というお金を入れてもらっても,すぐに終わってしまうというジレンマがあったんです。ですから,自分の中では,ストーリーが「この先どうなるんだろう」というときに,リズムゲームが難しくてクリアできなかったら,そこで“終わってしまうぞ”という,強迫観念のようなものがありました。
4Gamer:
クリアできないと,そこでプレイを止めてしまう人が出てきてしまうというわけですね。
そうですね。
リズムゲームでは,「Aランクを取りたい」「パーフェクトを取りたい」といった,音ゲーならではのやり込み要素を期待されている方も多いと思います。ただ,音ゲーだけでなく格ゲーなどもそうだと思いますが,コアな人に向けて作っていくにつれて,それ以外の人が去っていってしまうという問題があります。
ですから,今回は“長尺”のリズムゲームということで,ストーリーの展開や難易度の調整でうまくカバーして,クリアして話を進めることについてはけっこう簡単にしているんです。
もちろん,その先の“深さ”も作っていますが,まずはストーリーを最後まで楽しんでもらって,そこから先に,難度が高いというか,リズムゲームをじっくりとやり込めるというゲームスタイルにしています。
4Gamer:
なるほど。アドベンチャーゲームだと1回クリアしたらおしまいで,製品寿命が短くなりがちですが,繰り返し遊べるリズムゲームであれば,ストーリークリア後も遊び続けられる,そこがうまく融合しているわけですね。
中村氏:
体験版もそうなんですけど,リズムゲームは熱中度が高いというか,ひたすらやり込んでいただける方が多いんですね。それも大事にしたいので,“深さ”についても気を遣っています。
4Gamer:
ちなみに,難易度の調整はどのように行っているんですか? 人を基準するとブレそうですし,絶対的な基準を作るのは難しそうに思えるのですが。
中村氏:
「開発者の意見を聞かない」というのが基本的なスタンスですね(笑)。 今回は,ちょうどいいタイミングで東京ゲームショウがあったので,皆さんがどのような感じでプレイしているのか見させていただきました。
あとは勘ですね。
4Gamer:
勘ですか?
中村氏:
「サンバ DE アミーゴ」のとき,ライトな方からコアな方まで幅広い層がいらっしゃったので,そのときの勘を活かしたというのはあります。「リズム怪盗R」には,セガで音ゲーをやっている人間が何人か関わっているのですが,その勘によるところが大きいですね。
あと,特徴的なのは,普通の音ゲーだとシステムが同じなので難易度というのはブレようがないんですけど,今回の「リズム怪盗R」ではそうじゃないんです。
4Gamer:
普通は,曲のテンポやボタンを押すタイミング,数で相対的に難易度が決まるからブレないということですよね。「リズム怪盗R」で難易度がブレるというのは,具体的にはどのようなことなんですか?
中村氏:
たとえば,ダンスであれば気持ちよさを優先して難易度を下げるというように,こちら側であえて差をつけているのもありますが,「リズム怪盗R」では,タッチペン,ボタン,ジャイロといった感じで,リズムゲームによって操作方法が異なるので,人によって得手不得手が出やすいんです。
全部のリズムゲームでパーフェクトを出そうとすると,簡単なものもあれば難しいものもあるというように,普通の音ゲーよりも寛容になっていると思います。
4Gamer:
「リズム怪盗R」には,「サンバ DE アミーゴ」や「スペースチャンネル5」といったように,複数のリズムゲームのシステム,異なる操作方法が入っているから,通常とは違った形で難易度の調整ができると。
中村氏:
今回,アクションの成功/ミスは,文字だけでなくプレイヤーキャラクターのアクションなどでも示すようにしているので,そのダメージって大きいんです。たとえば,100%のうち50%ミスすると,やっていること自体が楽しくなくなるんですよ。
そこは基本,気持ち良く楽しいようにしているんですけど,パーフェクトを狙おうとすると難しい所がある,というような調整ですね。
4Gamer:
「リズム怪盗R」はパリが舞台で,タイトル内に「皇帝ナポレオン」という名前が出てきますが,なぜナポレオンという人物を選んだのでしょうか?
中村氏:
もともと,パリを使った理由というのは,新しいキャラクターで新しいゲーム性のタイトルを作ろうというときに,何も頼りになるものがないと,ユーザー認知のハードルが高くなってしまうと思ったからです。全世界のユーザーにプレイしてもらうことも目標だったので,共通して知っているものが必要だろうと。
ただ,メインキャラクター自体が知っているものだと新しさがないですから,知っているもの,知っているからこそ気になるものを世界観に入れようということで,実在の場所に行ったり,そこで「ナポレオンの棺が盗まれる」事件が起きたりというスタイルにしました。
当然,フランスでも発売されますから,パリの人に「なんじゃこれは」と言われないように,パリの街に嘘がないよう,調べるのは苦労しました(笑)。
4Gamer:
「リズム怪盗R」では,ヒロインのマリア役に剛力彩芽さんを起用していますよね。
中村氏:
そうですね。ゲームでは,「新規タイトルでこれから盛り上げていくぞ」という新しさ,新鮮さを出したかったんです。そこで,フレッシュな方ということで,剛力彩芽さんを起用させてもらいました。
それにしても,剛力さんの最近の勢いはすごいですね(笑)。
4Gamer:
早くから注目していたのに,ゲームが出る頃にはもう,時の人になってしまっていたんですね(笑)。
4Gamer:
それから,CMでもタレントを起用していますが,どのような基準で選んだのでしょうか。
中村氏:
ゲームの宣伝では,自分で興味を持って買っていただける方以外に向けて,いかにして興味を持っていただけるかを考えないといけませんよね。「リズム怪盗R」の場合,まったく知られていない新規のゲームなので,まずは名前を知ってもらうことが必要だろうということで,どのタレントさんにご協力していただくのがいいかを考えました。
そこで,タイトル名「リズム怪盗R」の「R」という部分に着目し,名前に「R」の付くタレントさんを選ばせてもらいました。
4Gamer:
有吉弘行さん,上島竜兵さん,榮倉奈々さん,東国原英夫さんの4人というのは,意外な組み合わせですよね。
中村氏:
面白い組み合わせだとよく言われます(笑)。
今回は「感情を揺さぶるリズムゲーム」というキャッチコピーのとおり,お笑い,真面目,演技といったところで幅を出したかったので,いろいろな側面から検討して,喜怒哀楽をうまく表現するには,組み合わせをどうしたらいいか考えて,選ばせてもらいました。
中でも上島竜兵さんは,お笑い芸人さんというよりも,“泣き”の技がすごくて印象に残っていますね(笑)。
4Gamer:
オープニングテーマ曲のアーティストのmiwaさん,エンディングテーマのアーティストにAIさんを起用した理由を,それぞれ教えてください。
中村氏:
miwaさんについては,先にお話しした剛力彩芽さんもそうですが,勢いがあり,フレッシュで,若い方に非常に人気があります。新しいタイトルですので,「リズム怪盗R」もmiwaさんや剛力さんのように勢いのあるフレッシュな新しいゲームとして認知していただけるとうれしいなぁという意図からです。
エンディングのほうは,「リズム怪盗R」でとくに力を入れている「ストーリー」「ドラマ」といった部分をより一層盛り上げてくれる楽曲がいいなぁということで,AIさんの「Story」を使わせていただきたい,と思っていました。実際にエンディングでこの楽曲がかかると,本当に切なくなりますね。
miwaさんには,我々が持っているイメージを事前にお伝えしたので,かなりゲームのイメージに合ったものを作っていただけました。
4Gamer:
最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
中村氏:
体験版は,リズムゲームを強調した作りにしているので,リズムゲームだけと思われるかもしれませんが,実は,いろいろな要素がてんこ盛りの内容になっています。セガの新しいチャレンジに一緒に乗ってもらえると嬉しいので,ぜひダウンロードできる体験版や,Web体験版をプレイしてみてください。よろしくお願いいたします。
4Gamer:
ありがとうございました。
リズムゲーム自体の難易度はそれほど高くはないのだが,ハイスコアを目指して3回ミスするまでプレイし続けられるエンドレスゲームや,入力のタイミングがシビアになるハードモードなど,音ゲーの猛者に向けたやり込み要素も用意されているので,ひたすらリズムゲームをプレイしたいという人も安心だ。
本作の体験版は,ニンテンドーeショップで配信されているほか,Webブラウザ上でストーリーのさわりとリズムゲームをプレイできるので,ニンテンドー3DS本体を持っている人はニンテンドーeショップ,持っていない人は公式サイトにアクセスしてみてほしい。
「リズム怪盗R 皇帝ナポレオンの遺産」公式サイト
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リズム怪盗R 皇帝ナポレオンの遺産
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