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2020年最高の冒険はボードゲームにあった。超重量級の「グルームヘイヴン」をクリアしたので,その魅力を語らせてほしい
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印刷2020/12/29 00:40

レビュー

2020年最高の冒険はボードゲームにあった。超重量級の「グルームヘイヴン」をクリアしたので,その魅力を語らせてほしい

 2020年も終わりとなるが,4Gamer読者の皆さんは,今年も数々のゲームで数々の舞台を冒険したと思う。それが魔晄で発展した都市なのか,対馬なのか,治安の悪すぎるナイトシティなのかは人それぞれだろうが,とにかく心に残る冒険があったはずだ。

 筆者もそれらを楽しんだが,2020年最高の冒険はアナログゲームにあったのだと主張したい。大豊作だった2020年も,筆者に言わせれば「ボードゲーマー待望の『グルームヘイヴン』日本語版が発売された年」。これがもう楽しすぎた。

画像集#020のサムネイル/2020年最高の冒険はボードゲームにあった。超重量級の「グルームヘイヴン」をクリアしたので,その魅力を語らせてほしい

 グルームヘイヴンは,プレイするまでにあまりに高いハードルがそびえ立つゲームだ。「いやー,遊びきった,楽しかったー!」と言えるプレイヤーとなると,日本にどれだけいるのかというレベルではないか。
 ところが,筆者も狂っているので,その「楽しかったー!」プレイヤーの仲間入りを果たしてしまった。2020年の締めくくりとなれば,今年最高の冒険(筆者比)についてどうしても語りたい。この面白さを伝えずして,何がゲーマーか。
 そんなわけで,グルームヘイヴンの魅力をネタバレなしでお伝えしつつ,次回作の話も聞いてきたで合わせてお届けしよう。

画像集#028のサムネイル/2020年最高の冒険はボードゲームにあった。超重量級の「グルームヘイヴン」をクリアしたので,その魅力を語らせてほしい


重量級ゲーム(物理)


 グルームヘイヴンとはなんぞや,という話からしていくと,本作はアメリカのCephalofair Gamesが展開しているファンタジーボードゲームだ。2017年の発売以降,海外の有名ボードゲームサイトのランキングで1位に居座り続けるほど高い評価を得ている。2020年1月23日には,アークライトからついに日本語版が発売された(正確には,一部店舗では2019年末に購入できたが)。
 お値段は税抜きでなんと3万円。中に入っているカードは1600枚以上,フィギュアは35体,各種コマやトークンは数百個,ほかにもいろいろとあって,とにかく盛りだくさん。これだけの内容物を活用するプレイ内容はもちろん重いが,物理的な重さも約9キロという,いろんな意味で重量級なゲームである。頭がおかしい。

お値段3万円が詰まった巨大ボックス(サイズ感が伝わらないのでSwitchと並べてみた)。筆者の場合,コンポーネントをキレイに収納する海外製の木製ケースなど,オプションも買い足しているので,実はトータル5万円ぐらいかかっている。というか,筆者にこのフルオプションを勧めてきたのは編集部のYamaChanで,本人も購入しているので,4Gamerには狂ったやつが2人いる
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 本作において,プレイヤーはグルームヘイヴンという街を拠点とする冒険者であり,最大4人のプレイヤーでパーティを組んで,さまざまな場所に出かけていく。
 物語は分厚いシナリオブックに納められており,プレイヤーはキャンペーンとして何度もプレイして,キャラクターを成長させながらエンディングを目指す。要は協力型のRPGだ。

 シナリオの本数は約100本。物語の分岐によって行けなくなるシナリオや,行っても行かかなくてもいいサブシナリオもあるので,全部をプレイするわけではないにしても,ものすごいボリュームである。
 1本あたりのプレイ時間は,1.5〜3時間といったところ(プレイ人数が少なければ縮まるが)だ。ただし,これは“1回なら”という話で,クリアに失敗して再挑戦したりするとさらに伸びる。

左が分厚いシナリオブック(右はルールブック)。これボードゲームだよね……?
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 シナリオの本数とプレイ時間を考えるだけで,「じっくり遊べるゲーム」であることは分かってもらえると思うが,問題なのは本作が最大4人で遊ぶ協力型のボードゲームということだ。つまり,「最初から最後までみんなで遊んでエンディングを迎えたい!」と思ったら,定期的にボードゲーム会を企画し,毎回メンバーの予定を合わせて集まって,ひたすら本作をプレイする必要がある。
 企画するにしても,大量の内容物を広げられる場所が必要で,しかも何時間も騒げる部屋を確保しなければならない。遊ぶためのハードルが高すぎる。
 そのため,「話題作だから遊んでみようかな」と触ってみた,あるいは少人数でプレイを進めた人はいると思うが,「最大人数で冒険を続けてクリアした」となると,かなり限られるだろう。ノリノリで集まるバカな冒険者が4人必要なのだから。

 筆者のパーティは,クリアまでに120時間以上はかかっている。ただ,これは達成したシナリオの数から計算しただけで,攻略失敗によるリトライや町での冒険の準備など,ほかにも時間がかかっているので,正確な所要時間は分からない。
 集まった回数は,20回から30回といったところだろうか。高価なボードゲームとはいえ,十分に元を取ったと思う。だいたいボードゲーマーなんて,買っておいて詰みっぱなしにする人種なのだから,何十回も遊んでいる時点ですさまじいハマりようだ。


全体的にマゾくてカオス


 シナリオがどのように展開していくかを一言で説明すると「マゾいSRPGを協力プレイでどうにかこうにかクリアする」である。シナリオの舞台となるマップはマス目が描かれたタイルで区切られており,ここをキャラクターの移動力や射程を考慮しつつ探索していく。クリア条件は敵の全滅だったり,マップの特定地点への到達だったり,オブジェクトの破壊であったりとさまざまだ。

冒険の舞台は,シナリオの進行状況に応じてマップにシールを貼る形で行ける場所が増えていく。冒険の進み具合がマップの充実度によって一目で分かり,ワクワクする
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シナリオを進めていくと,やがてラスボス的な存在と戦うことになるが,それとは別のお話として,街の発展によって世界設定が分かる仕組みになっている。本作の物語は「シナリオ攻略」「街の発展」の2軸で進んでいくのだ。これは背景を語る冊子だが,条件を満たすまで先を読んではいけないルール(写真は使用済みなので封を切ってあるが,本来はシールで開かない)
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 どのシナリオも基本的に敵が強い。マップに配置されている数が多いだけでなく,攻撃力がやたら高いやつ,嫌らしい状態異常をかけてくるやつ,特殊能力で分裂して増えるやつなど,あの手この手でプレイヤーを殺しにかかってくる。扉を開けたら,先の部屋にいた敵から一斉にぶん殴られて即死する,みたいなことも平然と起きる。

戦闘は完全にSRPG。敵は基本的に近くの相手を攻撃するよう動くが,その行動は毎ターン引くカードによって決まるので,何をしてくるか分からない。移動して攻撃してくることもあれば,移動せず2回攻撃してくることもあるし,回復やデバフで邪魔してくることもある
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 しかも,本作のすべてのシナリオは時間制限つきだ。本作の戦闘システムは,プレイヤーごとに手札を毎ターン2枚出し,使い切ったら捨て札をシャッフルして再度使う形で進んでいく。しかし,シャッフル時に代償として1枚ゲームから除外しなければならない。カードは攻撃や回復だけでなく,移動にも使うので,戦闘せずに探索するだけでも手札は減る。
 つまり,ダンジョンの奥に進むにつれ,キャラクターは疲弊して手札が減る=取れる行動が狭まるわけだ。もし手札が尽きてしまうと,そのキャラクターは脱落してそのシナリオに登場できなくなる。全員脱落したら,もちろんゲームオーバーだ。どの手札をどこで使うかが,ものすごく悩ましい。

プレイヤーの行動を決めるカードは,上段と下段に分かれている。これを2枚出すことで,上段と下段のどちらかを組み合わせて使う。プレイヤーは毎ターン,全員カードを裏向きに出して一斉に表にするのだが,具体的に何のカードを出すかは言ってはいけない仕組みなので,誰が何をするか,誰から行動できるかは表にするまで分からない
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カードの真ん中に書いてあるのが行動の速さ。2枚のカードのうち,好きな方を選べる。「お前,速攻で敵を攻撃するって言ったのに行動最後じゃん!?」「これが俺の最速だが?」とか,「回復してほしいって言ったくせに,なんで先に動いて射程範囲外に行くんだよ!」とか,コミュニケーションエラーが多々発生する
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捨て札にしたカードは再利用できるが,使った時点でゲームから除外されてしまう強力なカードもある(×印の効果が除外)。使うと時間制限が早まることになるため,ダンジョンの奥まで温存するか,先に使って楽に進むか,リソース管理に頭を悩ますことになる
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 こうした条件のもとでクリアを狙うとなると,プレイヤー全員の協力が必須となる。ダンジョンを進むペースはどうするか,敵との戦闘でどのぐらいのリソースを投入するか,誰が次の部屋の扉を開けるか,お宝の回収を誰に任せるか……。どの敵から始末すればいい? 誰がこのターンで敵の攻撃を受ける? 今は誰を回復すべきだ?

 皆で強敵に挑むシチュエーションが山盛りで,これだけでとても楽しい体験なのは間違いない。これをさらに盛り上げてしてくれるのが,キャラクターごとにランダムで決められる「人生の目標」と「戦闘任務」だ。
 人生の目標は,キャラクターに設定を与えるもので,「特定の敵が許せないから○体倒したい」「特定の場所を守りたいから付近のシナリオをいくつかクリアしたい」など,冒険の動機や長期的な行動指針を示している。これを満たすとそのキャラクターは冒険者を「引退」する(詳細は後述)。

 一方,戦闘任務はシナリオ毎に決められるもので,「最初に敵を倒す」「宝箱を開ける」「シナリオクリア時のHPが一定値以上」といった短期的な目標だ。これを満たすとキャラクター育成のボーナスがもらえる。

 これらの目標があるとどうなるか。シナリオクリアを目指して協力しているはずなのに,どいつもこいつも勝手な行動をしだすのである。例えば

「HPがヤバいから,ここは先に進まず回復したい」
「俺も残りの手札がイマイチだから休憩したいな」
「こっちは手札に余裕があるし,時間使っていいよ」
「いや,俺は何があろうと扉開けるけど?」
「「「は???」」」


みたいなことになる。「扉を開けずに1ターン休んでしまうと,戦闘任務の条件が満たせなくなる」ため,仲間の状況を全力で無視して動きたいというわけだ。
 それぞれが冒険者をやっている理由は違うのだから,当然優先すべきものも違う。それがプレイに反映されることで,何が起こるか分からないから,本作の冒険は面白い。

余計な目標が与えられるせいで,カオスな展開になる。ただ,協力ゲームにありがちな「お前は次にこれをやって」といった人に指示を出しがちプレイヤーが発生しにくい利点もあり,それぞれが目標に向けて動くと楽しく遊べる
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 さらに,冒険中に拾える宝箱やお金はキャラクターごとに管理され,一切共有できない。つまり,冒険中は常に取り合いが発生するため,あまりにカオスである。お宝の回収が得意なキャラクターなどという,非情な存在がパーティにいるとなおさらだ。

「おい! 敵がいるんだから宝より敵優先しろよ!」
「だいたいお前,金拾いすぎなんだよ!」
「こっちは装備整える金すらないんだぞ!?」
「はー? 拾えないやつが悪いんだが?」


 ……カオスである。

シナリオの舞台に向かって野外を移動しているときや,街に滞在しているときはランダムのイベントが発生する。それぞれ2つの選択肢から行動を選ぶ形になっており,良いことも悪いことも起きる。とくに野外イベントは,シナリオ前にダメージを食らったりデバフを受けたりと,ロクでもないことが多くてマゾい
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必ず盛り上がれる「俺達だけの冒険」


 ゲームスタート時,プレイヤーキャラクターの職業は6種類だが,キャラクターが人生の目標を達成して引退するごとに新しいものが解禁されていく。新職業は封のされた個別の箱に納められており,その数は11個。条件を満たすまで開けてはいけないルールなので,これを開ける=職業解禁タイミングは,本作で最も心が躍る瞬間の1つだ。

新職業が納められた箱。開けるまでは名前すら分からず,アイコンが表記されているのみだ。だからこそ,開けるときが楽しみになり,開けるために皆が勝手な行動を取る。おい待て,今前に出たら死ぬって言ってんだろ,やめろー!
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 しかし,ここでも困った問題が発生する。キャラクターが引退すると,新しいキャラクターを作らなければならない。このとき,開放されている職業から自由に選んでいいのだが,プレイヤーの心情としては,当然新しい職業を使いたい。すると,これまでパーティの要だったタンクが突然後衛になったり,範囲攻撃や回復ができるキャラクターが不在になったりと,パーティ構成がめちゃくちゃになるのだ。

初期職業の1つ「スペルウィーバー」。分かりやすい範囲魔法キャラだが,手札が少なく,使うとゲームから除外されるカードも多いのでガス欠が早く,実に魔法使いらしい。初期職業の都合上,彼女が引退してしまうと,パーティの範囲攻撃担当が消える可能性が高い
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 所詮は自分勝手な冒険者の集まり。しょうがないので,そのメンバーでどうにかクリアできるよう頭をひねることになるのだが,これがまた,そのパーティならではの戦い方を皆で相談する形になって,たまらなく楽しい。筆者は

「タンク引退したんだけど」
「前出られるやついなくない?」
「お前のキャラ,HPちょっと高いじゃん」
「待て,支援キャラだぞ?」


と話し合った結果,両手に盾を持って無理やり前衛をしたことがある。もちろん集中攻撃を受けて戦闘不能になった。無茶言うな。

パーティ内の役割分担は,人数が多いほど楽しい。プレイのハードルは一気に高くなるが,できれば4人で遊んでほしい。もちろん,人数が増えるほど配置される敵は強くなる
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4人スタートの例。最初のクエストの,スタート直後の部屋だが,いきなり6体の敵に襲われる。台座が黄色い敵はより強力な上級モンスターだ。マゾい
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 プレイヤーキャラクターは,さまざまな手段で強化できる。シナリオをクリアすれば,経験値が手に入ってレベルが上がり,使えるカードが増えていく。お金を溜めれば装備やアイテムの購入,カードの強化(特定のカードの攻撃力や移動をアップさせるなど)が行える。
 どのような育成をして,どのような活躍をさせるかは,そのときに遊んでいるメンバーの性格とパーティ構成によって変わってくるため,「自分達だけのキャラクターによる自分達だけの冒険」が楽しめる。

レベルアップする度に新しいカードが2枚解禁されるが,そのうち1枚しか使えるようにならない。どのカードを解禁させてデッキを作るかによって,立ち回りが変わってくる
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本作にはダイスがない代わりに,攻撃時に修正値が書かれたカードを引く。このカードはキャラクターごとに分かれていて,マイナス修正を消したり,特殊な効果を追加したりといった強化も可能
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アイテムの種類は非常に多い。冒険中に新しいものが見つかるのはもちろん,街を発展させると購入できるものが増えていく

 グルームヘイヴンの最大の魅力は「冒険中に皆が盛り上がる瞬間」が必ずあることだと思う。先に述べたとおり,本作の敵は強く,シナリオの難度は高めだ。時間制限もキツい。プレイヤーは勝手な行動を取るし,パーティ編成もマトモとは限らない。数えきれないピンチが待ち受けることだろう。

 そんな状態でシナリオは約100本。これを同じメンバーで何度も遊んでいると,誰でもどこかしらで輝くタイミングがやってくる。仲間が次々に倒れて全滅寸前のところを,最後の1人が踏ん張ってギリギリで切り抜ける。全リソースを投入したボスへの攻撃でアタッカーがクリティカルを叩き出す。プレイの方向性から反目気味だったキャラクター同士が,危機を前に背中を預け合う。
 難しい協力ゲームだからこそ,劇的な展開でシナリオを達成したときの盛り上がりは尋常ではない。もっとも,そのせいで膨大なプレイ時間がかかるゲームでありながら,「じゃ,また来週な!」と集まり,徹夜で遊んで,クリアまで突き進んでしまったわけだが……。

 もう一度言うが,2020年最高の冒険はアナログゲームにあった。


“次”は発売日に買ってほしい


 さて,これまで散々「グルームヘイヴン最高!」という話をしておいて大変申し訳ないのだが,本作はもう入手できない。なにせ売り切れてしまっている。ボードゲームは,初版が出たきりで再販されず,後からは手に入らないことが往々にしてあるもので,こればかりはどうしようもない。
 シナリオの都合上,海外版を輸入して遊ぶのも大変なので,持っている人に遊ばせてもらうか,導入されているボードゲームカフェなどに人を集めて通うぐらいしかないだろう。

 そんな状況でなぜ本稿を掲載したのかというと,本当に面白かったので語りたかったというのはもちろんだが,もう1つ,グルームヘイヴンの“次”が準備中だからだ。筆者は本稿の執筆にあたり,アークライトに連絡を取ったところ,単独でプレイできる前日譚「Jaws of the Lion/獅子のあぎと」,本編の続きを描く拡張パック「Forgotten Circles/忘れられし輪」,そして新作「Frosthaven/フロストヘイヴン」の話をしてもらえたのである。
 グルームヘイヴンの冒険は,最高だった。きっと“次”となるフロストヘイヴンも面白いに違いない。だから,同作が出たら多くの人に手に取ってもらって,最高の冒険を楽しんでほしい。4Gamer読者の皆さんには,「ボドゲは発売日に買え!」と強くオススメしつつ,続いては“次”の展開の話をお届けしていこう。

準備中のタイトルを紹介してくれた,アークライトの健部伸明氏。グルームヘイヴンの翻訳の監修を担当している。Twitterで「グルームヘイヴンのこのルールの処理が分からん」などとつぶやくと,すごい勢いで飛んできて教えてくれる「え,この人,開発関係者?」という感じの親切なアカウントがあるが,それが健部氏である
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■Jaws of the Lion/獅子のあぎと

 獅子のあぎとは,グルームヘイヴンの物語の前日譚を描く,単独プレイが可能な作品だ。といっても,時系列が前になる程度で,グルームヘイヴンをプレイしていないと楽しめない内容ではない。
 また,少しずつ戦闘のルールを覚えられるチュートリアル的なシナリオから始まるので,初心者に持ってこいとなっている。もちろん,戦闘ルールはグルームヘイヴンに準拠したものだ。

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 また,獅子のあぎとでは4つの新職業が登場する。グルームヘイヴン本体と混ぜて遊ぶこともできるが,本作のシナリオやギミックは新職業に合わせたものになっているため,単体でのプレイが一番面白いとのこと。獅子のあぎとに混ぜるというよりは,獅子のあぎとを遊んだあとで,グルームヘイヴン用の追加職業として使うほうがいいだろう。

 グルームヘイヴンのマップは,タイルを組み合わせで作る方式だったが,獅子のあぎとではシナリオブックを開いて,その上にコマを直接置く形で進行する。手間を減らしてより遊びやすくしたパッケージだと考えていい。
 といっても,シナリオ数は25本もあり,1日で遊びきれるような物量ではない。キャラ育成の要素やランダムイベントなどもきっちり盛り込まれている。

 発売時期は2021年末,気になるお値段は8800円を予定しているという。グルームヘイヴンの面白さをコンパクトに楽しめるので,「プレイ時間的に終わる気がしない」「さすがに3万円は……」となかなか手が出せなった人も,獅子のあぎとから始めてみるといいだろう。

「グルームヘイヴン スタートセット 獅子のあぎと 完全日本語版」製品情報ページ



■Forgotten Circles/忘れられし輪

 忘れられし輪は,グルームヘイヴンの拡張だ。拡張といっても,プレイの幅を広げてくれるような優しいものではなく,本編のクリア後の物語を描くという,あまりにもニッチな需要の製品である。
 健部氏は「ずっとTwitterをチェックしている私の知る限り,クリア報告は10グループぐらいあります」と言っていたが,それ,拡張の対象者が最大でも40人しかいないじゃねーか! とツッコミを入れるしかない。もはや狂気の製品だが,日本でも発売予定であるのなら対象者の1人としてはとてもありがたい。

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 この拡張では,本編で残された伏線をすべて回収する,22本のシナリオが展開されるという。新職業が1つ追加されるが,この女性キャラクターを作らないと新しい冒険は始まらない。プレイヤーの1人はこのキャラクターで固定され,引退することもない。彼女は拡張のシナリオの狂言回しであり,シナリオ中で脱落するとその時点で攻略失敗になるという,特殊な立ち位置なのだ。

特殊な立ち位置でパーティに加入する新職業「ディヴァイナー」
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 忘れられし輪は,クリア済みのプレイヤー向けとあって,上級者でも平気で殺されてしまうほどの難度とのこと。健部氏は英語版でプレイしているが,シナリオを進めるたびに「これ,どうやって攻略するの?」と悩むそうだ。

 発売時期は2021年夏以降,価格は6200円を予定しているとのこと。現在グルームヘイヴンをプレイ中の人は,忘れられし輪に向けてクリアを目指すとよさそうだ。
 もうクリア済みの人なら,グルームヘイヴンの特設サイトに無料シナリオがたっぷり公開されているので,そちらを遊んで待つのもいいだろう。

「グルームヘイヴン 解明篇 忘れられし輪 完全日本語版」製品情報ページ



■Frosthaven/フロストヘイヴン

 フロストヘイヴンは,グルームヘイヴンと同じか,それ以上の規模で開発中の新作となる。獅子のあぎとや忘れられし輪と違い,まだ海外でも発売されていない。Kickstarterでクラウドファンディングが行われ,ボードゲーム史上最高額の約14億円を達成した,海外ボードゲーマーからも注目度の高い作品だ。
 グルームヘイヴンと混ぜて遊ぶことは可能だが,もちろん単独でプレイできる。

画像集#023のサムネイル/2020年最高の冒険はボードゲームにあった。超重量級の「グルームヘイヴン」をクリアしたので,その魅力を語らせてほしい

 タイトルから予想できるかもしれないが,グルームヘイヴンとは別の場所での物語が展開される。「フロストヘイヴン」は,グルームヘイヴンから遥か北の地にある港町だ。厳しい環境にあるこの町は,近隣の狂暴な種族との戦いにより,滅亡の危機に瀕している。そんな中でプレイヤー達は,町を防衛し,復興させていくのである。

 フロストヘイヴンでは新要素として,街の再建ができるようになる。具体的には,シナリオ中で敵を倒してドロップする素材を使って,壁を作ったり,建物を建てたり,建物をレベルアップしたりできるのだ。
 街の発展具合は,グルームヘイヴンの続編らしく,廃墟の街のボードにシールを貼る形で表される。自分達の冒険の結果が街づくりに反映されていくということで,話を聞いているだけで楽しみになる新要素だ。
 素材は街の発展だけでなく,組み合わせてアイテムを作るといった使い方もあるという。敵との戦闘に,素材を集める楽しさが加わるわけだ。

 また,フロストヘイヴンでは夏と冬という季節の概念が導入され,季節によってランダムイベントが変わる。冬のランダムイベントと言われると,酷いことになる気しかしない。

 収録される職業は,新規のものが17種類。コマやカード,マップタイルも,グルームヘイヴン同様に山盛りだ(コンポーネントの量はKickstarterページで確認できる)。
 またどっぷりと冒険に浸れる日々が送れるかと思うと,発売が先(2022年予定)なのは分かっているのに,今からワクワクしてしまう。

 もし,本稿を読んで興味を持ってもらえたなら,フロストヘイヴンは予約して発売日に手に入れてほしい。そして,高いハードルを乗り越えて,最高の冒険を楽しんでもらえれば幸いだ。遊んでくれるメンバーが集まらない? 発売までに作れ! 友達を!!

「アークライトゲームズ」公式サイト

  • 関連タイトル:

    ボードゲーム(アークライト)

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