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「マジック:ザ・ギャザリング」で次期プロ入りを果たす市議会議員・藤江竜三氏インタビュー。仕事と家庭,そしてゲームを並び立たせる秘訣を聞いた
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印刷2020/07/28 12:00

インタビュー

「マジック:ザ・ギャザリング」で次期プロ入りを果たす市議会議員・藤江竜三氏インタビュー。仕事と家庭,そしてゲームを並び立たせる秘訣を聞いた

藤江竜三氏。1985年生まれの国立育ちで,2011年に無所属で国立市議会議員となる。2020年現在は3期目で,5歳,4歳,2歳の三児の父。2020年8月からのライバルズ・リーグへの招待を受け,マジックのプロプレイヤーとなる
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 トレーディングカードゲームの元祖である「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,マジック)には,プロ制度が用意されており,世界中から選ばれたトッププレイヤー達が,本作の開発元であるWizards of the Coastから年間報酬を受け取ってプロとして活動している。多くのプロプレイヤーはマジック専業であり,報酬のほかに大会での賞金や,企業などからスポンサードされることなどで生計を立てている。

 しかし,8月から新たにプロ入りする権利を得たプレイヤーの中に,“議員で三児の父”という今までにないタイプの日本人プレイヤーがいるというニュースが流れ,マジック界隈で話題を呼んだ。国立市の市議会議員である藤江竜三氏だ。また,これまでアナログのカードゲームを主体として発展してきたマジックにおいて,デジタル版の「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」(以下,MTGアリーナ)のみで世界トップランクへ登り詰めたというのも,2020年ならではの話と言える。

 マジックに限らず,eスポーツの世界でトップを維持するには,才能だけでなくたゆまぬ努力が欠かせないもの。そんな中,ゲーム以外の仕事と家庭,そして競技としてのマジックを並行して成り立たせられるのは,いったいどんな生活なのだろうか。そして,議員にしてプロゲーマーとなる氏はいったいどんな人物なのか。国立市に向かい,話を聞いてみた。

マジックのプロ制度とは


 藤江氏が所属することになった「ライバルズ・リーグ」は,「マジック:ザ・ギャザリング」の公式プロリーグである「マジック・プロリーグ」――通称MPLの下部組織にあたる。
 2018年末に発足したこのプロリーグに所属するプレイヤーには,開発元であるWizards of the Coastから年間報酬として5万ドル(およそ528万円),ライバルズ・リーグでも2万ドル(およそ214万円)が支給され,また本来であれば厳しい予選を勝ち上がらなければ出場できないすべての世界大会へ無条件で参加できる特典がある。
 2020年1〜7月のシーズンにおいて,MPLには24人(うち日本人が3人)のプロが所属しており,ライバルズ・リーグには32人(うち日本人1人)が所属している。

2020年2月に行われた世界選手権では,ブラジルのプロプレイヤー・Paulo Vitor Damo da Rosa選手が優勝を収め,世界チャンピオンの座についた。なおライバルズ・リーグはMPLの下部組織ではあるものの,ドイツのKai Budde選手をはじめ,名だたる強豪プレイヤー達が集い,昇格を競い合っている
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「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト

「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」公式サイト



市議会議員にしてプロゲーマー,誕生に至る経緯


4Gamer:
 本日は,お時間をいただきありがとうございます。まず,藤江さんとマジックとの出会いについてお聞きしたいのですが,最初に知ったのはいつ頃でしたか?

藤江竜三氏:
 小学校高学年の頃だから……もう20数年前かな。漫画「遊☆戯☆王」の懸賞で,マジックのカードが当たるという企画があって,友人がそれに当選したんです。それで一緒に遊んだのが最初だったと思います。

4Gamer:
 邦訳版の発売が1996年ですから,かなり初期ですね。では,本格的にプレイするようになったのは?

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藤江氏:
 大学を卒業して1,2年目くらいでしょうか。「Magic: The Gathering Online」(MTGアリーナの前身となったオンラインゲーム。以下,MTGオンライン)に手を出したんです。すきま時間にちょっと遊ぶのにいいかなと。

4Gamer:
 ああ,なるほど。MTGオンラインではさまざまな規模の大会がありましたが,ではそれらに出場されていた?

藤江氏:
 いや,時間で拘束されちゃうので,難しかったんですよね。普通に対戦して,レーティングを伸ばしていくのを楽しんでいました。そこから1年前ぐらいにMTGアリーナに移って……半年くらいは大会とかにも出ず,ただエンジョイしてたんですが,今年に入ったあたりから手持ちのカードが揃ってきました。「これならミシック(ランクマッチの最上位ランク)狙えるかも?」と思って挑戦してみたら,意外と簡単に1200位内に入れてしまった。

4Gamer:
 月間ランキングで1200位内に入ると,ミシック予選の出場権が手に入りますね

※MTGアリーナの世界大会「ミシックインビテーショナル」のオンライン予選大会。ミシックインビテーショナルは年に3回開催され(ただし2020年は1回のみ),1大会につき二度の予選大会が開かれる。なお1200位というとハードルが低いように聞こえるかもしれないが,これは世界ランクなので,実際にはそう簡単ではない。

藤江氏:
 そうなんです。じゃあその予選大会にも出てみようということになって……確か3月だったかな,9勝できたんです。でも,あと1勝足りなかった。

4Gamer:
 予選を抜けてミシックインビテーショナルに出場するには,10連勝が必要でした。

藤江氏:
 ええ。それで残念に思っていたんですが,その時点ではミシック・ポイントという制度があるのを知りませんでした。それで調べてみたら,すでに持っていたポイントで招待圏内に届いていて……「やった! アメリカで大会に出られる!」って思いましたね。

4Gamer:
 でも新型コロナの騒ぎが起こって……。

藤江氏:
 オフラインのミシックインビテーショナルは中止になってしまいました。さらに5月のミシック予選は10勝でき,2回分の出場権を獲得できただけに,1度のオンライン大会に置き換わってしまったのは残念でした。

4Gamer:
 仕方ないとはいえ,せっかくの権利が帳消しなのは悔しいですね。

藤江氏:
 2回もアメリカに行けると思ってたのに(笑)。でもその後,「獲得ポイントが世界トップ7に入ると,ライバルズ・リーグに入れるらしいよ」って友達から言われまして。「じゃあもっと気合いをいれなきゃ」となり……結果6月のミシック予選はボロ負けでしたけど,ギリギリ7位に入れました。経緯としてそんな感じです。

マジックのプロになるには?


 マジックのプロになるには,まずいくつかのハイレベルな大会で上位入賞し,それによって獲得できるポイントを集め,世界ランキングで上位に入る必要がある。するとライバルズ・リーグに入ることができ,その中で良い成績を残すことで,MPLへの入れ替え戦に出場できるようになる。そこで勝てば,晴れてMPL入りというわけだ。もちろん,一度MPLに入れば安泰というわけではなく,入れ替え戦でライバルズに落ちることもあるわけで,継続して好成績を目指さなくてはならないのだが

※7月15日にライバルズを経由せずMPL入りできる“超特急”ルートができること,またMPLとライバルズでそれぞれのリーグ戦の結果により,選手の大幅入れ替えが発生する制度が予定されていることが発表された。

 だが2020年2月以降は新型コロナの影響でテーブルトップの大会が軒並み中止となり,代わりに一部がオンラインで代替されることとなった。それに伴い,予定されていた入れ替え戦がなくなり,8月からの新シーズンでは,テーブルトップとデジタルの上位7名ずつがライバルズ・リーグに招待されるのみに止まっている。
 なお今回インタビューした藤江氏は,2020年1〜7月の間にデジタル部門で世界7位の成績を修めた結果,次期ライバルズ・リーグに招待された形だ。


4Gamer:
 じゃあ,本腰を入れてマジックに取り組んだのは2020年になってからなんですね。お話を聞いている限り,ほぼオンラインでプレイされているようですが,大会に向けた練習や調整はどうされているんでしょう。

藤江氏:
 2020年の5月までは完全に自己流でした。どんなデッキが環境にあるのか,ひたすら対戦で覚えて。ネットの記事なんかもちょくちょく読んでいますが,あまり参考にはしていません。ほかのプレイヤーの配信もこれまでは見なかったんですが,少し勉強しようと思って,6月から見始めました。

4Gamer:
 完全に独学なんですね。

藤江氏:
 オススメは睡眠学習ですね。寝る直前までMTGアリーナをやっていると,夢の中で続きができるんですよ。これで3倍くらい練習できるわけです(笑)。

4Gamer:
 夢の中で「あそこはこうプレイしとくんだった〜!」みたいな?

藤江氏:
 そんな感じです(笑)。それで目が覚めるとレベルアップしている……気がします。睡眠中に脳内が整理されるんですかね。

4Gamer:
 そんな練習法があったとは。じゃあ,アリーナしながら寝落ちするのが一番効きそうですね(笑)。

藤江氏:
 寝落ちはしたことはないですけど,理想的かもしれません(笑)。

4Gamer:
 「5月までは自己流」とのことですが,それ以降は違うんですか?

藤江氏:
 年に1回くらいなんですが,紙(リアルのカード)でドラフトを遊ぶ機会がありまして,それを一緒にやる友人と話したとき,もっと強くなるにはやっぱりチームを組んで練習しないといけない,って話になったんですよね。なので6月は,その友人と2人でデッキの相談をしていました。結果,さっきも言ったようにボロ負けだったわけですけど。ティムール再生デッキで行けば,8割くらい勝てるはずだったんだけどなあ(笑)。

4Gamer:
 確かに,ティムール再生が鉄板の環境でしたね。

藤江氏:
 5月の予選ではジェスカイルーカデッキがうまくハマったんです。完コピのデッキだったんですけど,運も良かったんでしょう。基本的に強いカードしか使わないですし,鉄板のデッキをやり込むタイプです。

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仕事と家庭,ゲームをどう並び立たせるか


4Gamer:
 新型コロナの影響があったとはいえ,議員として忙しく活動されていると思うんですが,ゲームに割く時間をどう捻出されているのでしょうか。

藤江氏:
 議員の仕事って,実は人と会うことがメインなんです。それが新型コロナで軒並み中止になってしまって,ものすごく時間ができてしまった。3〜4月は,本来なら定期総会や年度末に向けた会合がたくさんある時期で,夜は夜で飲み会ですとか,あちこちに顔を出して話を聞いてまわることになるんですが,そうしたものが全部できなくなったんです。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

藤江氏:
 一方で,議会は絶対に休めません。国立市の市議会って,現状だと与野党が半分ずつくらいなので,誰か1人休んだだけで,予算の使い方が300億円くらい変わる可能性があるわけです。なので万一のリスクを考えて,自粛が本格化する前の2月くらいから,大勢が集まるような会合は断るようになりました。結果として,空いた時間がMTGアリーナにも注ぎ込まれることになったという(笑)。

4Gamer:
 じゃあ今回の好成績は,タイミングが噛み合った結果なんですね。言い方はあまりよくないかもしれないですけど。

藤江氏:
 マジックに関してはそうなります。

4Gamer:
 しかし時間に余裕ができたとはいえ,お子さんもいらっしゃるわけですよね。確か,3人いらっしゃるとか。

藤江氏:
 ええ。なので子供の昼寝している時間とか,寝静まったあとに集中してプレイする感じです。妻もゲーム好きなので,理解があるというのも大きいと思います。ただ,マジックは一緒にやってくれないんですよね(笑)。

4Gamer:
 結婚して子供が生まれたりすると,ゲームをするのにどうしても肩身が狭くなりがちですが,そういった人へのアドバイスはありますか?

藤江氏:
 子供の世話をしっかりすれば,妻の理解も得られるかと。僕の場合,半分とはいかずとも,1/3くらいは育児をやっていると思います。妻からの後押しは超重要です! もともとゲームへの理解もあるし,良い妻がいてくれて本当に良かったと思っています。

藤江氏に書いてもらった,大会前の一日のスケジュール割り。小さなスキマ時間も練習に当てようという意図と工夫が見てとれる
画像集#009のサムネイル/「マジック:ザ・ギャザリング」で次期プロ入りを果たす市議会議員・藤江竜三氏インタビュー。仕事と家庭,そしてゲームを並び立たせる秘訣を聞いた

4Gamer:
 議員さんのお仕事についてもうちょっと聞いてみたいんですが,具体的にどういうことをされているんでしょうか。市議会議員なら,例えば行政サービスの改善とか,公共施設をどうしていくかを話し合うとか,ボヤっとしたイメージはあるんですけど。

藤江氏:
 概ねそのとおりです。改善するためには,まず市民の皆さんに「こうしてほしい」といった意見を聞いてみるところから始めなくてはなりません。そのうえで要望をまとめて,「こうするための予算を作ってください」と市長にお願いするわけです。で,予算案が出てきたら,それをチェックする。

4Gamer:
 予算案に問題がないか,議会で話し合うわけですね。

藤江氏:
 そうです。話し合う内容は予算だったり,条例だったりさまざまですけど。賛成・反対といった意見を表明して,市政に反映していく流れになります。

4Gamer:
 その市民の意見を聞くために,たくさんの人に会う必要があると。これはそもそもなんですが,藤江さんはどうして市議会議員になられたのでしょう。

藤江氏:
 自分の育った街でやりがいのある仕事に就きたいと思っていたのと,税金の使われ方を見て「これって無駄では?」というのが目について,直すには自分でやるのが一番早いと思ったからですね。

4Gamer:
 なんというか,立派な動機だと思います。

藤江氏:
 国立には優しい方が多いんですよ。最初に選挙に出たときなんかも,身銭を切って応援してくれるような方が多くて。ほかの街ではあまりないと聞くので,ありがたいことです。

4Gamer:
 ちなみになんですが,ゲームの知識や経験が,議員の仕事で生きることってあったりします?

藤江氏:
 もちろんあります。例えばゲームを攻略するときの統計的な考え方って,政策を進めるときにどうお金を使うべきか,といった部分にもつながります。麻雀界のバイブルと呼ばれている「科学する麻雀」(講談社現代新書 / とつげき東北著)という本があるんですけど,あれなんかまさにです。

4Gamer:
 麻雀の指南書として有名ですね。麻雀もお好きなんですか?

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藤江氏:
 議員になってからはできませんが,好きです。「科学する麻雀」はオンライン麻雀の「東風荘」にハマっていたときに手に取ったんですけど,あれで最高位である超上級ランキング卓の中盤くらいまで行けました。
 だからマジックも,「科学する麻雀」ゆずりの統計的な考えでプレイするようにしていて……まあ,MTGアリーナはデータが少ないので統計とは呼べないですが,できるだけ試行回数を増やして分析的にプレイするようにしています。「先攻勝率何割」とか。

4Gamer:
 デジタルだと,アナログよりもデータは取りやすいですよね。

藤江氏:
 とくにMTGオンラインの頃は,公式側がいろんなデータを公開してくれていたので,ドラフトで強いカードなんかも分かったんですけど。MTGアリーナはあまりそういうことをしてくれないので,データ野球みたいなのはやりづらくなりました。

4Gamer:
 あー,あれは隠してるんじゃないですか。環境理解が進みすぎないようにって。

藤江氏:
 やっぱりそうですよね。だからこそ,チームで練習する大切さが身に染みます。データを集めるという意味でも。

4Gamer:
 少し話がそれるんですが,マジック以外のゲームもプレイされるんでしょうか。さっき麻雀の話がありましたけど。

藤江氏:
 アナログのカードゲームだと「ガンダムウォー」とかもやってましたし,高校生のときは「ファイナルファンタジーXI」にハマって引きこもりでした(笑)。1人用のRPGも「ドラゴンクエスト」など基本的なものはかじりましたけど,高校以降は触れてないです。

4Gamer:
 議員として活動されていて,「ゲームが悪者扱いされる」ような場面に出くわすことってあったりするでしょうか。

藤江氏:
 あります。ゲームどころか,「コンピュータは敵だ」と思っているような同業者もいますし。総じてゲームのイメージはあまりよくないですね。

4Gamer:
 うーん,なるほど……。

藤江氏:
 今回のプロ化を公表したのも,だから,僕がゲーム好きってことを分かってもらおうと思ってやったことなんです。例えばゲームに規制をかける方向の議論が出てきた場合は,ゲームをやっている立場で,それに待ったをかける動きを作りたい。まあ,市議会議員ではなかなか限界もありますが……。

4Gamer:
 「ゲームを擁護するなんてけしからん」と反発される可能性がある一方で,ゲームが好きな若者は味方になってくれるかもしれないですね。

藤江氏:
 「あの人はゲームに理解がある議員だ」って,ゲーマーの皆さんに認知してもらえたらと思っています。実際,今回の件で僕のTwitterのフォロワーが200人くらい増えましたし。その200人の方達に,少しでも政治に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

4Gamer:
 先日はマジック用のTwitterアカウントで,投票に行こうって呼びかけてましたね。

藤江氏:
 ええ。実は,YouTuberにも挑戦してみようかと思ってるんですけど……。

4Gamer:
 えっ,それはマジックのプレイ配信ですか?

藤江氏:
 そうです。政治絡みの発信もしたいところですが,政治話じゃアクセスが伸びないでしょうし。国立市の話をしても市外の方には関係ないですし,全国一般の地方議会のことを話しても,興味がある人はごくわずかです。一方で国政レベルの話になっちゃうと……あまり立派なことは言えないなぁと(笑)。

4Gamer:
 でも,国立市のゲーマーの心はがっちりつかんだんじゃないでしょうか。

藤江氏:
 マジックプレイヤーは,僕はまだ2人しか知らないですけどね(笑)。国立にはカードショップがないんですよ。学園都市だから,学生向けに1つくらいあったらいいんですけど。


次のステージに向けて


4Gamer:
 ここからはプロとしての今後の抱負をお聞きしたいのですが,次の大舞台は8月末のミシックインビテーショナルになるかと思います(※取材時の予定。この後9月に延期された)。自粛も解けて,議員としての活動が増えてくる時期ですが,準備はどうされるのでしょうか。

藤江氏:
 夜中にやるしかないと思ってます。夜の会合とかはまだそんなに復活していないですし。平日の仕事終わりからの数時間,それと土日は子育てに割いているので,子供が寝てからの数時間が勝負ですね。

4Gamer:
 なるほど……。

藤江氏:
 あと子供を送り届けたあとの朝の時間も練習に使えます。議会の仕事って,概ね朝10時がスタートですから。兼業が前提の制度設計になっていて,士業や農業をやっている人も少なくない。だから融通は利くんですよ。

4Gamer:
 あっ,そうなんですね。

藤江氏:
 普通の公務員はダメですけど,市議会議員は兼業が可能なんです。とはいえ,マジックに専念できたら……5%くらい勝率が上がりそうなんですけど(笑)。

4Gamer:
 ではもう少し長期的な視野で,ライバルズ・リーグでの目標はいかがですか?

藤江氏:
 どこかの大きな大会で1回くらい優勝できたらと思っていますが,まずは勝ち越しですね。ただ,なかなか難しいと思います。今回世界7位に入れたのは運が良かった結果だと思っているので。権利獲得につながった10勝のうち,5〜6勝は徹底的にメタった(対策した)デッキが相手でしたけど,自分のデータからするとその時点でかなりの幸運なんです。

4Gamer:
 何をメタったんです?

藤江氏:
 速攻デッキには8割5分くらい勝てるよう,いつも調整しています。

4Gamer:
 じゃあ速攻が流行している環境だったら行けそうですね。ただ,今度のミシックインビテーショナルはヒストリック(通常のスタンダードと異なり,一部古いカードが追加で使える環境)なんですよね。

藤江氏:
 そうなんです。今までヒストリックは全然触ってなくて,最近少し始めた程度です。しかも,また環境が変わるじゃないですか(取材後の7月13日に禁止改定が行われた)。まあ,勉強して無駄になることはないので頑張りますけど。

4Gamer:
 勉強するにしても,あまり時間がないのが辛いですね……。ちなみにライバルズ・リーグの報酬は,今のところ年間2万ドルとの発表ですが,その使い道は決まっているのでしょうか。

藤江氏:
 報酬は議員の仕事にも役立つように使っていきたいなと思っています。議員の使える経費って,実は年間12万円しかないんですよ。

4Gamer:
 えっ,そんなに少ないんですか?

藤江氏:
 そうなんです。海外視察なんてもちろん無理ですし,外から知識を仕入れようにもなかなか難しくて。だからミシックインビテーショナルでアメリカに行けたら,大会にかこつけて向こうの都市の勉強もできるし,最高じゃん! と思ってたんですが……。

4Gamer:
 ……オフラインの大会は,当分難しいでしょうね。ミシックインビテーショナルは渡航費も宿泊費も出ますし,それができたら一石二鳥なんでしょうけど。

八十岡翔太選手。MPL所属で,今の日本で三指に入るトッププロ。他人には使いこなせない独特なコントロールデッキ(通称ヤソコン)を得意とし,脳内理論のみでデッキを構築したり,MTGオンラインで1時間おきの大会に1日24回ずつ出続けて年間最優秀プレイヤーレースを制するなど,数多くの逸話で知られる
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藤江氏:
 とはいえオンラインでも,すごいプロの人達と戦える機会だと思うので,純粋に楽しみですね。MTGオンラインのとき,「とても勝てない」と思っていた八十岡(翔太)さんとか。プロリーグってそういう人達の世界だから,自分がプロになるなんて絶対ないと思っていましたよ。

4Gamer:
 オンラインだと実感が湧かないかもしれないですね。

藤江氏:
 まだまだと思いながらやり続けていたら,いつの間にか世界に手が届いてて。「意外と近かったんだ!」という感じです。

4Gamer:
 そう聞くと,夢がありますね。それに仕事と家庭を両立しつつご活躍いただけたら,多くの社会人ゲーマーの希望にもなるのではないかと。

藤江氏:
 頑張ります!

4Gamer:
 期待しています。本日はありがとうございました。



 インタビュー中でも触れたように,9月10日にはミシックインビテーショナルが開始となる。会期は3日間の予定で,YouTubeおよびTwitchでの生中継が行われる予定だ。オンライン大会のため,「現地からレポート!」というわけにはいかないが,興味のある読者は藤江氏を始めとしたトッププレイヤー達の戦いに注目してほしい。
 また2020年10月にはライバルズ・リーグのリーグ戦がスタートし,その成績次第で藤江氏にもMPLへの昇格や,高額賞金が与えられる世界選手権への出場チャンスが生まれることになる。こちらでの活躍も期待したいところだ。

国立の象徴である,赤い屋根の旧駅舎前にて
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「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト

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