連載
世界がハマった中毒性の秘密とは?――連載「徹底解説:ドミニオンのひみつ」第2回,「東方祀爭録」で始めるドミニオン入門
レミリアに勝つために。
中級者にステップアップするための4つのポイント
残念ながら,またもレミリアに負けてしまった霊夢。そんな霊夢のために,本作で勝つためのコツを,ここでこっそり公開してしまおう。もちろん選ばれたサプライカードによって戦略が大きく変わってしまう本作なので,必勝法などは存在しないが,基本となるポイントはいくつかある。初心者から中級者へステップするためには,このポイントを押さえておくのが重要なのだ。これを読んでいる読者も,さっそく覚えて打倒レミリアを目指してみよう。
その1.リソース戦略は強い!
ほかの参加者が初心者ばかりのゲームなら,試しにアクションカードには目もくれず,ひたすらリソースカードだけを買い,ある程度「御神酒」がたまってきたら「紅魔館」だけ買っていく,というプレイングをしてみるといい。おそらくそれだけで,ほとんどの場合は勝ててしまうはずだ。それくらいリソース戦略は足が速く,強い。
「アクションカードを使わない勝ち方は,このゲームを十分楽しんでいるとはいえず,邪道だ」と考える向きもあるが,本作における定石の一つとして,このリソース偏重型戦略は頭に置いておいたほうがいいだろう。そのうえで,より強いデッキを目指すためにこそ,アクションカードを揃えていくべきなのだ。
その2.デッキは圧縮せよ!
厚いデッキ(枚数の多いデッキ)と薄いデッキ(枚数の少ないデッキ)では,当然ながら薄いデッキのほうが強くなる。薄ければ薄いほどカードの回転が速く,買ったカードもすぐに使えるようになるからだ。
つまり「リソースが1しかなくて買うものがないから,とりあえず『お賽銭』を買っておく」といったプレイングは,あまり賢いとはいえない(デッキをできる限り分厚くしたい「紅魔館地下室」狙い戦略の場合は除く)。「お賽銭」や「博麗神社」のような弱いカードは,極力デッキに入れないようにすべきで,レミリアのように「ミニ八卦炉」や「フランドール・スカーレット」など使ってこれらを破棄していくのは,とても理にかなっているのだ。「博麗神社」に住んでいる霊夢には悪いが,どんどん燃やして,よりコストの大きいカードに入れ替えていこう。
その3.アタックに固執すべからず!
アタックカードを使った攻撃は強力だし楽しいが,アタックばかりしていては,自分のデッキがちっとも育たない。いくら強いからといってアタックカードをデッキに溜め込んでも,例えば「レーヴァテイン」はマイナスカードが尽きてしまえば,ただの2ドロー効果のカードになってしまうし,「マスタースパーク」はほかのプレイヤーと被ると効果が半減するなど,デメリットが用意されているのだ。
他人のデッキを弱くするより,自分のデッキを強くしたほうが最終的に勝ちにつながることが多い。自分がアタックカードを使っている間にも,他のプレイヤーのデッキは強化されている,ということを忘れずに。
その4.得点をカウントし,終わりのタイミングを見極めよう
自分がもっとも得点が多いプレイヤーなら,3種類のサプライを売り切れにして,ゲームの早期終了で逃げ切りを目指そう。自分が2位ならば1位に追いつくために全力を尽くし,3〜4位なら逆転の時間を稼ぐためにゲームのスピードを落とすなど,戦略を変えていくのだ。
また「レーヴァテイン」を誰が何回使ったかを覚えておけば,配られたマイナスカードの量もカウントできるはず。ただし,マイナスカードが「ミスディレクション」などで回ってしまうと,さすがに計算できなくなるので,そういうときは大雑把でいい。
サプライが減ってきてゲームの終わりが見えてきたなら,普通なら買いたくない「博麗神社」なども,なりふりかまわず買っておくのもいいかもしれない。デッキを使い切って再構築するまでゲームが持たないなら,そういう選択肢もありだ。そのわずかな点差が勝利につながることもある。
■おまけ:初心者向けのサプライ&攻略アドバイス
1.初心者用お勧めセット
使用するサプライの組み合わせによって,戦略が大きく変わる本作。サプライセットごとの攻略についても,少し触れておこう。まずはルールブックにも書いてある,初プレイにお勧めのセットから。アタックカードがないので,他人に邪魔されることなく自分のデッキを作っていけるサプライセットだ。【攻略アドバイス】
実はこのセットは,先ほどのレミリアと霊夢の対戦で使用していたのと同じ物。この組み合わせでは,霊夢が実践していた「魔法の森」と「パチュリー・ノーレッジ」のコンボが安定して強い。ただし「魔法の森」と「パチュリー」,どちらのカードが多すぎても,コンボが途中で止まってしまうので,両方同じバランスで買っていきたい。またアクションばかりだと,やがて息切れしてしまうので,適宜リソースを買うのを忘れずに。
2.ちょっとアタックもしてみたい,ステップアップ用お勧めセット
1の組み合わせに,少しだけアタックカードが加わえたサプライセットがこれ。相手に対応して戦略を変化させるという,本作のだいご味が味わえるセットだ。【攻略アドバイス】
アタックカードに対抗できる「パーフェクトフリーズ」だが,なかなかほしいときに手札に来ないので過信は禁物。「レーヴァテイン」には「ミニ八卦炉」でマイナスカードを地道に除去していくか,逆に自分も「レーヴァテイン」を取り,マイナスカードを散らしていく方法が有効になる。ただ「マスタースパーク」を食らうと「ディマーケイション」が弱体化するので,取りすぎないようにしたい。
3.経験が物をいう,中級者向けセット
勝つための戦略が幾つも用意されている中級者向けサプライセット。全員の戦略を見極め,それに対応する柔軟性が求められる難度の高い組み合わせだ。【攻略アドバイス】
「フランドール」や「稗田阿求」でデッキを圧縮して「紅魔館」につなげるか,「紅美鈴」や「夢想封印」でデッキを厚くし,「紅魔館地下室」ルートに進むかで,戦略が大きく分かれる。
地下室勢が多いと「紅魔館地下室」の取り合いになって,点数が全体に低くなるため圧縮勢が有利だが,地下室勢が少ないと,1人が地下室をたっぷりガメられるので,地下室勢が有利となる。自分の立ち位置をどちらにするか,周囲の動向を見極めよう。
「東方祀爭録」はなぜ面白いのか〜本家「ドミニオン」とは
ボードゲームやカードゲームなどのアナログゲームになじみがなかった層にもよく遊ばれているという本作。もちろんその人気の背後には,「東方Project」のキャラクター人気があるのは間違いないが,何度もプレイしたくなるゲーム自体の面白さも見逃せない。
というのも,本作の元となった「ドミニオン」というゲームは,連載第1回でも触れたように,世界中で数々のゲーム大賞を受賞している名作タイトルなのだ。「ドミニオン」はアメリカのリオ・グランデが発売しているカードゲームで,2008年秋に基本セットが発売されるや否や世界で大人気となり,日本語版もホビージャパンより2009年春に発売されている。現在まで定期的に追加セット(エキスパンション)が発売されており,全部合わせたサプライは,無限大に近い組み合わせがある。「東方祀爭録」でその面白さに目覚めた人は,本家であるドミニオンに手を出してみてもいいかもしれない。
カード500枚入り 4,725円(税込)発売中
とりあえずこれだけでも10年は遊べる完成度。
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カード500枚入り 4,725円(税込)発売中
トリッキーなカードが多く,良い意味での“グダグダ感”を楽しめる。
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カード300枚入り,プレイヤーマット,コイン,トークン入り 4,725円(税込)発売中
次のターンまで持続するカードが多数入った強力な追加セット。
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カード150枚入り 3,150円(税込)発売中
追加要素「ポーション」によって複雑なゲームが展開されるようになる。
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カード300枚入り,プレイヤーマット,コイン,トークン入り 4,725円(税込)発売中
1枚で9点の勝利点カードが登場し,インフレ状態で盛り上がる追加セット。
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※最新追加セット「収穫祭」は8月下旬発売予定。
カードを種類別に取り出しやすく収納できるつくりなので,収納ボックスはかなり大きめ |
トークンやマットを使う特殊なカードもあり,「海辺」には重量感のあるトークンやしっかりと厚いマットが同梱されている |
■あのキャラクターは、元はこんなカード
「ドミニオン」のゲームシステムはまったく変えず,カードイラストに東方Projectの世界観を採用した「東方祀爭録」。ということは,両者には同じ効果を持つカードが存在するはずだ。というわけで,ここではその一部を並べて紹介してみよう。元のカードに,なぜ東方Projectのそのキャラクターが当てはめられたのか,想像してみるのも面白いはずだ。
「泥棒」→奇妙な魔法使い「霧雨魔理沙」
なんでも勝手に借りていったあげく,返すことのない魔理沙の元カードは,納得の「泥棒」。ほかのプレイヤーのデッキを上から2枚めくり,見つけたリソースを「借りていく」ことができるという効果だ。借りたカードは自分のデッキに組み入れられ,もちろん返却されることはない。誰からも異論のないチョイスとはこのことだろう。「鍛冶屋」→知識と日陰の少女「パチュリー・ノーレッジ」
手札をたくさん増やせる便利カード「鍛冶屋」は,知識がため込まれた紅魔館の図書館に住まう「パチュリー」に置き換えられた。このカードにはアクションの追加がないため,引いた中にアクションカードがあっても使えない欠点があるのだが,そのあたりがぜんそく持ちですぐ息切れしてしまう,パチュリーのイメージにピッタリ,かもしれない。「宰相」→湖上の氷精「チルノ」
「チルノ」の元となったカードは,「ドミニオン」では最弱といわれることの多い「宰相」カード。しかしプレイヤーがデッキの内容さえ把握できていれば,デッキの回転を早めてゲームを有利に運べるカードなのだ。デッキに残っているカードが強ければそのままで,弱ければ全部墓地に落としてしまえば良い。使いこなすにはプレイヤーの腕が要求されるという,チルノらしい玄人好みの“サイキョーの”カードだ。「魔女」→禁忌「レーヴァテイン」
自分はカードを引けるのに加え,ほかのプレイヤー全員にマイナスカードを押しつけるアタックカード,禁忌「レーヴァテイン」。マイナスカードをデッキから除去する手立てがなければ,あっという間にデッキの中身が薄まってしまう。「ドミニオン」で恐れられる「魔女」と同じく,まさしく「禁忌」の名にふさわしい強力なカードだ。デッキ構築型カードゲームの魅力
デッキ構築型カードゲームというジャンルを生み出した「ドミニオン」と,そのリパッケージ版である「東方祀爭録」。その面白さは,実際に遊んで確かめるのが一番だが,あえて言葉で説明するなら次のようになるだろう。
1.組み合わせを変えて何度でも遊べる
1回のゲームにかかる時間が30分程度と短かく,「次はもっとうまくやってやる!」と何度も繰り返し遊んでしまう中毒性がある。しかも25種類あるサプライから10種類を選んで使うので,組み合わせによりまったく違うゲーム展開が期待できる。公式サイトに踊る100万回遊べるというウリ文句も間違いではない。2.対戦相手によって戦略が変わる
対戦型ゲームの常ではあるが,仮に同じサプライの組み合わせだったとしても,対戦相手の戦略によって自分の戦略も変わっていく。例えば相手が妨害カードを多く買っているなら,それに対抗するカードを取っていくべきだし,対戦相手がじっくり勝ちにいく戦略を取ろうとしているなら,こちらは早い戦略に切り替える必要がある。刻一刻と変わっていく状況が単純な「必勝戦術」を許さず,そこが本作の奥の深さとなっている。もちろん参加プレイヤーの人数によっても,戦術は大きく変わってくる。3.絶妙なゲームバランス
デッキから次に何を引くかわからないので適度なランダム要素に加え,経験によって上達が実感できるプレイフィール。これが本作を,初心者から上級者までが共に楽しめるゲームにしている。言葉にすると簡単だが,ゲームデザインでこれを実現するのは,意外と難しいのだ。とくにデッキ構築がうまく回り,コンボが繋がるときの喜びは非常に大きい。連載第2回の今回は,「東方祀爭録」とその原作「ドミニオン」について,実際のプレイフィールを中心に解説してみた。今回の記事で興味を持った人は,ぜひ最寄りの販売店で本作を購入してプレイしてみてほしい。普段はカードゲームを遊ばないという人でも,その魅力にとりつかれること請け合いだ。販売店はホビージャパンのオンラインショップのほか,公式サイトの「こちら」のページで確認できる。
さて最終回となる次回は,本作「東方祀爭録」の開発者インタビューをお届けする予定だ。また「東方祀爭録」だけでなく,原作「ドミニオン」とその広がりについても紹介していく。お楽しみに。
「東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜」公式サイト
ホビージャパンオンラインショップ「東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜」
- 関連タイトル:
東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜
- 関連タイトル:
ドミニオン
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