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[GDC 2013]ゲーム開発はアフリカへ集まる? 言語能力を武器に戦う,アフリカのゲーム開発会社とその展望
「アフリカでゲーム作り」と聞くと,今回のセッションを公聴するまでの筆者と同様,今ひとつピンとこない人が多いかもしれないが,ベラルーシやアイスランドはもちろん,ペルーやベトナム,イランなど,一見するとゲームとは関係の薄そうな地域において,大ヒットゲームが生まれているのは,4Gamerでもなんどか紹介してきている(関連記事)。
アフリカにおいても,数千円程度のスマートフォンが大いに売れ始めているといい,インターネットやモバイル端末の普及に伴うグローバリズムが,芽吹いているというわけだ。
Kirinya氏によると,2011年度のモバイル端末を使ったトランザクションは,アフリカ全体で610億ドル。これは,ゴールドマン・サックスの資料を引用したもので,実に北アメリカ市場の倍にあたる金額が,モバイル端末で利用されていることになる。そればかりか,ケニア一国に目を向けると,GDPの20%にも及ぶ金額がモバイルでやり取りされるというから驚きだが,信用の低さから,手形やクレジットカードの利用はほとんどないとのこと。ほぼ現金が主体のトランザクションというわけだ。
ともかく,アフリカにおけるゲーム開発はそれほど古い歴史を持つわけではない。その始まりはといえば,Ubisoft Entertainmentが2005年にカサブランカにUbisoft Moroccoを設立し,「Rabbids」シリーズなどの開発を手掛けたのが最初であるという。
2006年には南アフリカにLuma Arcade,そして2009年にはTawia氏によりLeti Gamesがガーナで発足し,ケニアやソマリアなどを含め,現在までに10社ほどがアフリカ各地に拠点を構えている。決して多くはないものの,かなりの速度でゲームの開発環境が整い始めていると言っていいだろう。
この躍進の原動力となっているのが,大学機関や企業のインターネット化が進み,モバイル環境の充実によって高まった,潜在的なゲーム需要だ。
Leti Gamesも,2009年に処女作となったモバイル端末とFacebook向けアクションゲーム「iWarrior」を発売しており,2.99ドルのAndroid向けアプリとして,3000ほどのダウンロード販売本数を獲得したとのこと。アフリカはまだまだ人件費も安く,モバイル端末向けのアプリなら5000ドルほどで1本を作れるらしいので,利益は十分に獲得できたとのことだ。
まだ30代前半のTawia氏だが,こうした活動でさらに若い世代を育てていくことで,ゆくゆくはローカライズやQA(Quality Assurance=品質保証)などの分野で,秀でた企業が生まれてくると予想しているという。アフリカは多民族地域であるため,3000種ほどの言語や方言があるのだが,旧宗主国の影響から,英語,フランス語,ポルトガル語などを国語として採用している地域も少なくない。そうした多彩な言語能力を利用することで,採算が取れるビジネスは十分に考えられるだろう。
一方,ゲームの受け手側――ファンの側に目を向けてみると,ゲームイベントでの入場者数は,大きいものでようやく400人ほどになってきたという。こちらも規模としてはまだまだこれからといったところだが,Leti Gamesではコミック制作なども請け負うことで,ファン層の拡大を狙っているという。
Tawia氏によれば,ファラオやシャカ・ズールーといった,アフリカ地域ならではのヒーロー像を強化することで子供達に夢を与え,ひいてはアフリカならではのポップカルチャーが生まれてくることを目指しているという。
Tawia氏とKirinya氏の目指す道のりはまだ始まったばかりだが,その健闘が実を結ぶ日はそう遠くないのかもしれない。やがて生まれてくるであろう,アフリカ発のビックタイトルに期待しよう。
Game Developers Conference公式サイト(英語)
- 関連タイトル:
Rabbids(仮称)
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