連載
冒険者マフィアは,ドラゴンの財宝を手にできるか。TRPG連載「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で遊ぼう」第2回は,初のダンジョン攻略に挑戦だ
テーブルトークRPG(以下,TRPG)の元祖である「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下,D&D)の魅力を,全4回にわたってお伝えしていく連載「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で遊ぼう」。その第2回では,TRPG初心者ライター・マフィア梶田が,いよいよ本格的な冒険に挑戦する。「ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版 スターター・セット」に入っているシナリオ「ねじれた迷宮」に,新米パーティが挑んだ顛末を,プレイヤーの視点からレポートしていこう。
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これまでのあらすじ
マフィア梶田が前回の記事で作成した“拝金ローグ”ことマフィアと,イラストレイター・hounoriのキャラクター“脳筋エルフファイター”ことナツメグは,旅の商人トレウスの依頼の元,ゴブリン達の巣くう洞窟の攻略に乗り出した。目的は,トレウスがゴブリン達に奪われたという,“大事な箱”の奪還である。多少苦戦しながらも,首尾良く見張りのゴブリン達を片付けたマフィア達だったが,洞窟はまだまだ奥深くまで続いているようで,二人だけでの攻略はかなり厳しそう。そう悟った二人は,攻略を手伝ってくれる冒険者を募るべく,近場の街を目指したのだった。
そして頼もしい熟練冒険者2名の助力を得ることに成功し,4人パーティを結成した一行は,いよいよ洞窟の最深部へと足を踏み入れる。なおここでいう熟練とは,中の人の熟練具合のことで,キャラクターのレベルは全員1である。ちなみに今回のダンジョンマスターは,前回の記事を執筆したライター瀬尾氏が担当する。
※ダンジョン・マスター……モンスターを動かしたり,ルールの裁定をしたりする係。そうそうたるメンバーを前にちょっとドキドキ(瀬尾氏談)。
いよいよ冒険の旅へ
どうも。マフィア梶田です。いつもは「RADIO 4Gamer」でアシスタントをやったり,「マフィア梶田の二次元が来い!」という週刊連載を書いたりしているんですが,今回はどういうわけか4Gamer代表としてTRPGの企画に参加させて頂くことになりました。
実は,個人的にも以前からTRPGには興味があったのですが,本格的にプレイしたことはあまり無かったんですよ。ライターの専門学校に通っていた頃,講師をやっていたTRPGデザイナーの朱鷺田祐介さんに触りだけ教えてもらい,その繋がりでちょっとプレイしたことはあるんですが,今回のようにキャラクターメイキングからシナリオのクリアまでやり通したのは初めての経験でした。
なので本稿では,初心者の視点から感じた「D&D」の面白さ,TRPGの奥深さなどをお伝えしていければと思います。
自己紹介から始まった冒険
生まれた頃からデジタルゲーム漬けだった,スーパー現代っ子の筆者としては,キャラクターメイキングの段階から新鮮なことだらけでした。メイキングの様子は前回の連載で詳しく書かれているのでここでは省きますが,実際にセッションを開始する段階になって,まず最初に行ったのが各々のキャラクター紹介だというのが非常に印象的だったんですよね。
仲間の大半が魔術師になるという集落に生まれながら,ヒューマンの戦士に憧れ,バトルアックスを手に冒険へ飛び出したエルフ(♀)のファイター,ナツメグ。
石鹸やマッチを作るために魔術師に弟子入りしたはずが,魔法をぶっ放す快感に目覚めて冒険者になってしまったハーフリング(♀)の“トリガーハッピー”ウィザード,コーラ・アンダーヒル。
ドワーフ(♂)のクレリックで,修行の果てに“何か”を見つけたいと思っているアニキ気質の求道者アイオーグ。
そしてマイキャラであり,粗暴な拝金主義者でお宝のためならどこへでも飛んでいくヒューマン(♂)のローグ,マフィア。
各々自分の口からキャラクターの生い立ちや冒険に出た動機などを語り,一気に脳内で世界観が広がりましたよ。もう楽しい。この時点でこんなに楽しいのに,「ゲームが始まったらどうなってしまうんだ?!!」と,筆者のテンションはこれから読み切り番外編に挑まんとする範馬刃牙の如くウナギ登りでした。
初めての戦闘
と,ここで初めてのエンカウントが! 岩陰からウルフ“らしき”クリーチャーが飛び出してきて,さらに奥にはゴブリン“らしき”クリーチャーも控えていました。ちなみに,なぜ“らしき”なのかというと,ここで全員が敵の正体を探るためにダイスロールを行ったのですが,みんなビックリするほど出目が悪く……敵を目の前にしてお互いに「なんか,犬っぽくね?」「あれはゴブリンだろ……うん,多分ゴブリン」などと相談しあうという,これまで冒険者として生き延びてきたのが不思議になるくらいアホ過ぎる状況に陥っていたからです。まぁ,こういうのもTRPGの醍醐味なんですかね。多分。
そんなこんなで戦闘に突入したわけですが,ここでカッチリ各キャラクターの役割が固まったんですよね。
とにかく魔法をぶっ放して敵を撹乱しつつヒットポイントを削るコーラ,とにかくデカい一撃を叩き込むメインダメージソースのナツメグ,高いAC(アーマークラス)で盾役をこなし,負傷者の回復まで行ってくれるアイオーグ,そして,機動力を生かしたポジション取りと急所攻撃で弱った敵のトドメを狙うマフィア……実際に戦闘へ突入して初めて,今回のパーティ構成は非常にバランスが良いことに気付きました。まぁクラスが完全にバラけているので当然といえば当然なんですが,全員が全員,自分の役割をしっかり持って活躍できるのには感動しましたよ。
ちなみにコーラに至っては,敵をビビらせるために獅子の幻影を出そうとして失敗し,なんと猫の幻影を召喚。全員の中でキャラクターのイメージがドジッ娘に決定するというオマケ付きでした。
TRPGならではの戦略性
途中,コーラがウルフをカエルに変身させるというナイスプレイを見せるも,アイオーグが肝心の攻撃を外して“メメタァ”とダメな波紋法を繰り出すなど色々ありましたが,幸い大した被害も無くウルフとゴブリンを殲滅した冒険者一行。ついに目的のアジトへと到達して扉を蹴破ると,大当たり。そこは商人を襲ったゴブリンの詰所でした。
もちろん,有無をいわさず再び戦闘へ突入。先程のザコとは違い,敵の中には比較的強い部類に入る暗殺者タイプと魔術師タイプのゴブリンもいます。……ですが,そんなのは序の口。ここで思わぬ伏兵が登場しました。
ほとんど眼中に無かったザコのゴブリンが入り口横の扉を開け放ったと思うと,そこから凶悪なワンワン,「ガード・ドレイク」が飛び出してきたんですよ。こいつは脳みそを持たないゴブリンの忠実な下僕。命令がないと何もできないくせに,高い攻撃力を持っています。
まともに戦えば確実に無傷では済まない強敵……運悪くこいつの近くにいたマフィアは一撃で重傷状態にされました。
唯一心配だったのは再びゴブリンに扉を開けられてしまうことでしたが,当然そんなことはさせません。錯乱したガード・ドレイクの一撃が大きかったですし,そのうえで全員の集中攻撃を浴びて,ゴブリンはあえなくボロ雑巾にされていました。南無。
いやはや,ここまで自由度の高い戦略をとることができるとは……やはりベテランは違うなぁと感じましたね。目の前でTRPGの奥深さの一端に触れることができて,非常に興奮しました。
ホワイト・ドラゴンとの邂逅
しかし,やはり回復役はパーティの要ですね。「D&D」というか,TRPG全般がそうなのかもしれませんが,ザコの攻撃でもヒットするとかなり痛いんですよ。なのでアイオーグがいなければあわや戦闘不能……という場面も多々ありました。軽く惚れそうになりましたよ。ガッチリで厳しそうな50代ドワーフに。
正直戦闘の連続にもう疲れていたマフィア,ここでかなり乱暴な作戦に出ました。全身を血で染めながらゴブリンの首を切り落とし,それを手に「クエストの話の時間だ! コラァ!!」と背中に巨大な“!?”を背負いながら扉を蹴破ったのです。まぁ,威圧で強引に乗り切ろうとしたわけですね。
すると,扉の向こうではコボルドの集団が縮み上がっていました。作戦成功です。完全にビビっているため,すぐに戦闘に突入するような雰囲気ではなく,優位な状況で話し合いに入ることができました。
さっそく「生かしてほしくば所持しているお宝をすべてよこせ」と,持ち前のガメツさを発揮しましたが,どうやらコボルド共はまったく金品を所持していない様子。「ボスならお宝を沢山持っている」と言うのでボスの部屋まで案内させると,そこには目も眩むような金銀財宝と……凶悪そうなホワイト・ドラゴンがいました。いやいやそれは予想外すぎますって。せいぜいちょっと大きめのコボルドくらいだと思ってましたって。もうその瞬間,「あ,オワタ」って思いましたね。
ところがここで,またもやコーラが土壇場の有能っぷりを発揮したんですよ。なんと,身に付けていた竜語で,流暢に交渉を始めたんです。ここ一番という時には確実にピンチを救ってくれるコーラに,もはやドジッ娘という認識を改めざるを得ませんでしたね。
……一方,その頃マフィアは何をしていたかというと,ホワイト・ドラゴンがコーラの話を聞いている隙に財宝の中から宝石をいくつか盗み取っていました。転んでもタダじゃ起きませんよ。ここにきて,やっと筆者もTRPGの楽しみ方というのが分かってきた感じでした。少々歪んだ形ではありますが。
レア装備でパワーアップ
「ドラゴンさんカッケェっす! パネェっす!」(大体こんなニュアンスだった)というコーラの竜語お世辞ラッシュでホワイト・ドラゴンとの交渉が上手く行った結果,戦闘を回避してゴブリン共のボスへと繋がる部屋へ通してもらうことができた冒険者一行。どうやらコボルドとゴブリンは完全な別勢力であり,お互いに不可侵条約は結んでいたが仲良くは無かったのも幸いしたようです。
しかしまぁ,ピンチを乗り越えて安心したのも束の間。次の部屋にはゴブリンの上位種であるバグベアが控えていました。しかも,殺した相手の命を吸収するという魔法の斧“ライフドリンカー+1”を装備しているというかなりの強敵です。
「これは辛い戦いになるでぇ……!」と,みんな覚悟を決めたんですが,なんと開幕一発目にコーラの幻惑魔法がヒット。バグベア様ご乱心。部下のゴブリンを瀕死になるまで殴り,挙句の果てには一発も冒険者にダメージを与えることなく倒されてしまいました。完全に拍子抜けです。というか,debuff系の魔法が頼りになりすぎる……。
なお,ノーダメージで中ボスを乗り切ったのもそうですが,ここではそれ以上に大きな収穫がありました。倒したバグベアから“ライフドリンカー+1”を入手できたことです。斧といえば,ナツメグの得意武器。それが彼女の手に渡ったことにより,パーティの火力がさらに強化されたんですよ。RPGでレア装備を入手した瞬間の喜びは,デジタル・アナログに関わらず大きいものですねぇ。
「それもしかして邪悪な装備じゃね? ワシ,ここで怒るべきじゃね?」とでも言いたげなアイオーグさん(属性:秩序にして善)の目がちょっと怖かったけどさ。
ダイス神が降臨したボスバトル
ついにクライマックスですよ。バグベアを完封し,万全の状態で最深部の部屋へと突入すると,そこにはネクロマンサーのマラレスと,数体のアンデッドが。どうやらゴブリン共を使って商人を襲撃させたのはこいつのようで,机の上には奪われた小箱も置いてありました。
気合を入れて挑んだものの,ネクロマンサーの魔法は強力だし,アンデッドの攻撃力は高いしで大苦戦です。かなりマズイことに,デカぶつに立ち塞がったアイオーグが,早々に集中攻撃で戦闘不能にされてしまい,回復役がいなくなってしまったのも厳しい状況に拍車をかけました。
しかし,ここでコーラから「ネクロマンサーに近接戦を仕掛ければ魔法の使用を防げるよ!」というアドバイスがあり,機動力の高いマフィアが決死の特攻作戦を決行。護衛のアンデッドから手痛い迎撃を受けて体力を半分まで削られてしまったものの,一気にネクロマンサーの眼前まで迫り,ダガーによる一撃を叩き込むことができました。
しかし,ナツメグはまだまだ攻撃の手を休めません。行動回数を1回増やすことができる“アクションポイント”を使用し,一気に畳み掛けます。そして,奇跡が起きました。この最もアツいタイミングでダイスの出目が20。クリティカルヒットです。今度は“メメタァ”ではなく,“ドグチァ”って感じでした。ミンチよりひでぇや。
いやぁ,この時ばかりはダイスに宿る神の存在を感じましたね。目に見えないプログラムで計算されるデジタルゲームとはまた違った興奮。みんな「オオーー!!」って大歓声を上げましたもん。
とにかく,戦いは終わりました。司令塔だったネクロマンサーが倒されたことによってアンデッド共も動かなくなり,アイオーグのことも命の灯火が消えてしまう前に助けることができて万々歳です。これにてクエスト「ねじれた迷宮」は終了! 第一部完! ……なんちゃって。実はもうちょっとだけ続くんじゃ。
ちょっとドラゴン殴ってくる
なので,地獄のミサワ的「ちょっと殴ってくるわ」のテンションでちょっとホワイト・ドラゴン殴りにいくことにしました。軽いです。フワッフワです。観光地での記念撮影感覚です。
まぁこちらから交渉を持ちかけておいてレベルアップしたら殺しに行くとか,外道ここに極まれりって感じですが。「D&D」的にはドラゴン=脅威ですから。何してもいいんです。手段がド汚くても正義は我らにあるんですよ。それに,ホワイト・ドラゴンってドラゴンの中じゃ最弱らしいですし,しかも今回の奴はまだ若くて小さい。初のドラゴン狩りには最適な相手ってことです!
というわけで,再び迷宮へと突入。ザコは掃除済みだし,部下のコボルド達は上手いこと言いくるめて外に出してしまったのでホワイト・ドラゴンのいる部屋まで直行できました。
とにかく先手必勝。開幕,魔法でスリップダウンさせ,みんなで囲んでよってたかってタコ殴りです。しかし相手も小さいとはいえドラゴン。テイルスラップで薙ぎ払われたり,ブレスを吐かれたりでダメージソースとして重要なナツメグが戦闘不能になるなど,一進一退の攻防が続きましたよ。
しかし,こちらはレベルアップでステータスが強化されていますし,マフィアが物々交換で“ダガー+1”を手に入れるなど装備も整えています。ジワジワとホワイト・ドラゴンは体力を削られて行き……ついにはマフィアのダガーを急所にねじ込まれて息絶えました。後でDMに聞いたところによるとホワイト・ドラゴンのヒットポイントは128。最終的に与えたダメージの総数は129とホントにギリギリの戦いでしたね。
何はともあれ,初セッション約4時間でクエストクリア。オマケに死者を出さずにドラゴンまで討伐して金銀財宝ザックザク。出来過ぎなくらいイイ結果じゃないでしょうか。やり遂げた後の達成感といったらもう……確かに,この感覚を一度味わったらTRPGの虜になっちゃいますわな。まだまだ足りない。もっとやりたいって思いましたもん。
やっぱプレイしてみるのが一番ですよ
でも,筆者がこんなことを言うのは本末転倒かも知れませんが,やはり記事で読むより自分でプレイしてみるのが一番ですよ! 未経験者に是非挑戦してみてほしいのはもちろん,元TRPGプレイヤーだったという方々にも改めてこの感覚を思い出してほしいです。プレイヤー人口が増えれば,自ずと筆者がセッションに参加できる機会も増えるでしょうしね! あ〜あ……時間の有り余っていた学生時代にTRPGと出会っていればと,ちょっと後悔しています。
おせちとカレー然り,デジタルとアナログ然り,どちらも楽しむことができれば非常に豊かなゲーマーライフを送れますな。少なくとも筆者は,TRPGの面白さを知ったことで趣味の視野を広げることができました。これからはまた少し違った視点でゲームというコンテンツに取り組むことができそうです。この気持ち……ゲーマーなら一度は味わってみないと人生5割くらい損しますよ。マジで。
サポートしてくれた,熟練プレイヤーからひとこと
コーラのプレイヤー,柳田氏より
楽しく,あてになる仲間達でとても楽しかったです。真っ先に敵陣に切り込んで頭を抑えてくれたマフィア。パーティで一番の固さを生かして敵攻撃を引き受けてくれたアイオーグ,そしてここぞというところで安定して攻撃をヒットさせるナツメグのおかげで,後列にいて安心でした。あと,マフィアの〈威圧〉超大事,でしたね!
アイオーグのプレイヤー,上田氏より
普段から比べると怖いくらい出目が良く,ドワーフのクレリックとしてキップの良さを発揮して,最後の遭遇でも大物を防ぐのに立ちふさがってみました。そしたらあっという間にノックアウトされましたが,前衛お二人の切り込みの鋭さで救われましたね。ヒヤヒヤもあって,楽しいセッションでした。
次回の第3回では,今回の冒険をマスター側の視点から振り返りつつ,TRPGの醍醐味の一つである,ゲームマスターの魅力に迫ります。hounoriさんの体験レポートマンガも掲載の予定なので,そちらもお楽しみに!
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※今回の記事で使用した立体ダンジョンやミニチュア,ペーパークラフトなどは,本製品には含まれていません。ご注意下さい。
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